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産業エコシステムづくりを継続するための大切なモチベーションとは?【K17-5E #6】

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「産業を創るためのエコシステム作りを徹底議論」【K17-5E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その6)では、産業エコシステム創りが儲からない中でどのようなモチベーションで仕事をするかについて議論しました。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


2017年9月5日・6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 5E
産業を創るためのエコシステム作りを徹底議論

(スピーカー)
石田 真康
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル / 一般社団法人SPACETIDE代表理事

各務 亮
株式会社 電通
プロデューサー

榊原 健太郎
株式会社サムライインキュベート
代表取締役

丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO

(モデレーター)
西村 勇哉
NPO法人ミラツク
代表理事

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最初の記事
【新】産業を創るためのエコシステム作りを徹底議論【K17-5E #1】

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産業エコシステムの発展に必要な「触媒」とは?【K17-5E #5】

本編

榊原 思うのは、自分たちがこうして新しいものを創っているのに中々自分たちは儲かっていないということですね(笑)

(会場、笑い。特に丸さんが爆笑)

榊原 残念ながらエコシステムのリーダーシップをとっている人は儲かりません。周りは儲かっているのに。

西村 見えない山の神様みたいなものですね。

榊原 例えば、イスラエルには今週と来週で200社位が行っていて、皆イスラエル政府からどんどんお金を貰って皆タダで来ています。

西村 でもサムライインキュベートは儲からないと。

榊原 本当にそうなんです。

西村 だから山の神がどうしたらやっていけるかということが大事ですね。

ムーブメントは起こせても儲らない…

榊原 ムーブメントを起こすことは僕たちは得意です。のべ一万人の方をイベントに寄せれば、あるジャンルのムーブメントは起きると思います。

今ではオープンイノベーションは当たり前になりましたが、僕たちがはじめた時は誰も大企業は来なかったので、スタートアップのイベントを年200回、10年間やり続けてオープンイノベーションやスタートアップに皆が投資してくれるようになりました。

榊原 イスラエルもミサイルが飛んでいる中で僕は一人で行って開拓して、最初は日本企業の5出張所しかなかったのが、今では60社のR&Dセンターがあります。

投資額は3億円から300億円くらいに増えました。しかし、自分は儲かっていないとふと思いました。

それなので、社会的意義を感じられる人しかできないと思います。

それか物凄いお金持ちになってその資産を運用して寄付に回すとかですね。

イスラエルでは成功した起業家が皆、SpaceILというNPOで月に宇宙船を飛ばそうというプロジェクトに全員参加します。

西村 例えば丸さんは山の神としてどうやっているのですか。

丸さん「多分、10年後くらいに有名になります!」

 僕は研究者ですからビジネスの世界では新参者ですし、お金にはもともとあまり興味がありません。

知識と研究の世界を、一番知りたかっただけです。

 僕は自分の中では、この年齢でこれだけの知識にアクセスできるのは世界一で、一番資産を持っていると勝手に思っています。

自分流の「研究」という通貨ですが、100兆研究という資産を持っています。だから気持ちが良いです。あとは牛丼を食べていれば満足です。

お金の価値はこれから絶対に下がります。だから宇宙は上手くいきます。でも好奇心は上がっていきます。

だから僕は多分10年後くらいにとても有名になると思います(笑)

西村 大富豪としてですね。

 違います!お金持ちになるのではないです!

金融経済の意味ではなく、銅像が立つということです(笑)。

(丸さんと榊原さんが固い握手をかわす)

榊原 僕らはそっちの方です。

 火星に立ててください。お願いします。

西村 石田さんはどうやって山の神経営をしているのですか。

仲間のモチベーションを保つ

石田 真面目に言うと、好きだからやっているという側面が本当に強いです。どちらかというと気になるのは一緒にやっている仲間がどうやったら継続・拡大するかということです。

SPACETIDEに先日、恒常的なプロボノメンバーを募集したら興味のある人が20、30人来てくれました。

HAKUTOと僕も4年半一緒にやっていて分かります。ずっと続ける人と入れ替わり立ち代りする人もいます。

産業もない中でやっているのですぐ雇用ができるわけではありません。しかしその中でもそういう意思ある人たちができるだけずっと関われるためにはどうしたら良いのか悩みます。

石田 自分にとっての限界点は自分で分かります。泣き所も分かっているので誰かのところに行けば良いのですが、一緒にやっている仲間や同志が皆で一緒に行くために何をしなければいけないのかについては答えがケースバイケースで違うので、そこが肝だと思います。

産業がない中でエコシステムを創る時には手弁当でやらなければいけないことが必ずあります。

ベンチャーキャピタルの投資のJカーブがありますが、上昇カーブが見えない中でどんどん沈んでしまう時もあります。

そこを気持ちだけで行ける人もいれば、例えば気持ちにプラスしてちょっとした何か。本当に小さいことかもですが、名刺を持てるとその仕事に誇りを持てるもあるかもしれません。
SPACETIDEではカンファレンスの最後に、登壇者はもちろんプロボノメンバーも含めて、全員が登壇して会場に挨拶をするのですが、そういう場を創ったり。

あるいは何かタスクをお願いするよりも自分でやりたいことを手を挙げてもらう方が良いとか、そのようなちょっとしたことに答えがあるのかと思います。

榊原 また先程寄付の話をしましたが、イスラエルではお金持ちになった人が不動産投資をしていて何もしなくても儲かる形をつくっていて、それを寄付で回しています。僕たちのようなインキュベーターも寄付で回っているのです。

そのような仕組みを僕たちも創る必要があると思っています。

SpaceILもそうで、多分寄付で回っているのでそこもきちんと雇用しお金が回る仕組みというのを創ってあげないといけません。日本にはあまり寄付の文化がありません。

 寄付の税制優遇がないからでしょうね。

榊原 そうでしょうね。

 政府の方がいらっしゃったら是非優遇をして頂きたいですね。

エコシステムを創るなら生命科学を学ぼう!!

 またもう1つ、僕たちも起業した時は学生15人で始めたのですが、事業はインターンシップで回していました。社員は2人しかいなくて、20人以上の学生が出前授業をやったりしていました。まあ、それ以上社員を雇えるほど儲かっていなかったという背景もあるのですが。

そこで僕がやったのは、最長で2年までしかインターンをさせないということでした。期限を区切ることで、何を得るのかが明確になり、最大風速で走れるようになります。卒業することは絶対決めておくんです。

 学校もそうですが、卒業があるから回ります。卒業生がプロモーションして新しい学生を入れるのです。

何度も言いますが、排出系をどう創るのかというのは、実はそこにものを滞在させる循環のサイクルを創るということです。

これは生命科学では当たり前のことです。生命科学を学んでください。

皆さん、生命科学は世界を変えます。生命科学が全ての原点ですから、そこを理解しない人がエコシステムを語ってはいけません。

溜めてはいけません。流してください。排出系が必要です。老廃物を流せばできるだけ長く生きることができます。それは老廃物を捨てているからです。これは覚えておいてください。

西村 各務さんは、下がっていって落ちるどころか急降下で落ちていく産業の中に人を巻き込んでいっていますが、どうやって巻き込んでいるのでしょうか。数字は非常に速い勢いで落ちていると思いますが。

各務 僕も本当に、単純に好きだという感情と美しいという感動です。

お茶、お華、能や、伝統工芸の職人さんとお付き合いさせて頂いて億万長者の気分です。毎日職人さんたちに囲まれて何て幸せなのだろうと思います。

まして、それを仕事にさせてもらえるのは至福です。

各務 前向きな兆しも出てきています。仲間の工房に優秀な学生が入ってきて、まだ社数は限られてはいますが、収益も年々改善されています。

世の中の空気的にも手作りのモノづくりや、顔が見える人のモノを使うというのが素敵という風に、この5年間で大きくシフトしてきていると実感しています。

自分ができる範囲で成功事例を作り続ける

各務 ただ、リアルでいうと、プロデューサーは儲かっていない業界からお金を預かるのはすごく難しいです。

例えば、東京から京都へ勇気をもって移住してきた新しいプロデューサーが失敗してしまうと、あの業界は危ないということで、暖まった空気が冷めてしまうことも考えられるので、とにかく僕が出来る範囲で成功事例を作り続けるしかないとがむしゃらに実践を重ねています。

その中の手法として2つ心がけていることがあります。

僕は常にプロジェクトを30程手がけていますが、そのポートフォリオはイメージを持ってプロジェクトを組んでいます。プロジェクトの半分は、真逆なものを組み合わせること、もう半分は本来を取り戻すことです。

真逆の組合せを考えるときに、伝統産業と一番遠いものは何だろうと考えます。
例えば、伝統工芸品の「おひつ」に取って代わってきたのは電子ジャーです。そのような真逆のものを組み合せると何か生まれないかと考えます。先程例で出たパナソニックの取り組みであったりですね。

「GO ON x Panasonic Design」プロジェクト

今日も真逆の方に囲まれているので、いろいろアイデアが湧きだしています。

Back To The Basic

もう1つは「Back To The Basic」というか、本来繋がっていた京焼と京料理が京都においてさえも、繋がっていないというアンバランスな状況があります。

ここを当たり前のこととして取り戻していくことをプロジェクトの中で常に意識して挑戦します。

失敗も多いですが、中から何個かは成功が生まれてくるというのを歯を食いしばってやっています。

僕は好きでやっているので全く問題はないのですが、エコシステムとしては、これからが本当の正念場だと感じています。

全ての伝統産業をサイエンスしよう

 僕は、サイエンスと組み合わせたら面白いと思います。すぐテクノロジーに行ってしまいますが、例えば生花を見てきれいだと思う感覚、これを見ることが人の感性を増加させる、というデータを出せば良いのです。

エビデンスが重要で、たとえば能についても、その動きが見る人の心にどんな影響を与えるのかエビデンスが取れるはずです。禅があれだけ流行っているのですから。絶対、教えたのは日本人ですが、海外で大きなビジネスになっていますよね。

サイエンスとテクノロジーが入らない限り、世界戦には持っていけません。

これから日本の人口は減っていくので、所詮日本で頑張っても無駄です。サイエンスとエビデンスを持って世の中に発信していくために、是非我々と組みましょう。

各務 是非おねがいします!

 全ての伝統産業をサイエンスするのです。人が気持ち良いと思ったから今でも残っている訳です。

各務 確かに伝統文化はどうしても暗黙知という話があり、それを神聖化してしまう傾向があります。

だから伝統産業をサイエンスすることに対して怠ってきた気がします。

本当は仰る通りやりきってこそ本当の原石の部分が出てくると思います。

本来、職人が持っている技術・美意識を探求するためにもサイエンスは絶対やらなければいけないと思います。

世界中の試作案件を日本に

 斜陽産業になっている町工場に関して、実はリバネスが進めているプロジェクトがあります。まだリリース前ですが、言っちゃいます。「スーパーファクトリーグループ」というのを作ります。

日本の町工場が何をするかというと、プロトタイプだけです。そのプロトタイプも海外に持ってかれてしまってという話を皆がしていますが、やっぱり日本の匠の技術は凄いです。

プロモーションやPRをする人がいないだけです。

そこでどうするかというと、東京の墨田区、大田区、板橋区、大阪の港区、大正区の町工場から、やる気があり世界戦に出たい猛者たちを集めるのです。

まず、「世界を見に行こうぜ」と、今年の3月と7月に、町工場の匠に声をかけ、シンガポールにビジネス視察ツアーに行きました。このとき集まったのはたったの20人くらいでしたが、その町工場が一体となって、世界中のプロトタイプの製作をやろうということです。

実は、プロトタイピングはもっとも利益率が高いです。量産の方が、利益率が低いです。

「年間幾つプロトタイプをやっているか」聞くと、「3か4」と答えていたところに、「1日100個のプロトタイプをチームでやろう、そしてそれを毎日回そう」と言いました。

そんなにたくさんできるのかと言われましたが、世界から集めれば良いのです。その話をしたら皆乗ってきました。

トヨタを作ったのは町工場です。世界の大きな下請けを日本でまとめてスーパーファクトリーという名前でやろうというビジョンに対して猛者たちが集まって来ました。

今はシンガポールやマレーシアのスタートアップの隣にはスーパーファクトリーグループがいて全部そこに出すような仕組みをつくっています。しかし、プロトタイプしかやりません。

量産は、台湾や中国やもっと安いところでやってもらいます。その代わりプロトタイプは死ぬ気で最強のものを作るというビジョンを作り直しました。

それは伝統産業にも生きるのではないかと思い各務さんのお話を聞いていました。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

「ムーブメントは起こせても儲からない」という、榊原さんの赤裸々な想いが発端となって、登壇者のモチベーションをうかがい知れるセッションとなりました。(横井)

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