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「先端テクノロジー X スタートアップのCo-Creationを徹底議論」【F17-5D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その3)では、IBM森本さんに、コグニティブ時代とは何なのか・コグニティブ時代に達するためにはどのような技術的課題があるのか、などについてお話しいただきました。是非御覧ください。
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 5D
先端テクノロジー X スタートアップのCo-Creationを徹底議論
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
尾原 和啓
菊池 新
株式会社ナビタイムジャパン
取締役副社長 兼 最高技術責任者
西條 晋一
株式会社WiL
共同創業者ジェネラルパートナー
森本 典繁
日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 研究開発担当
(モデレーター)
高宮 慎一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー/Chief Strategy Officer
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▶「先端テクノロジーのビジネス化を徹底議論」の配信済み記事一覧
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最初の記事
【新】量子コンピュータなどの先端テクノロジーのビジネス化を徹底議論!【K17-5D #1】
1つ前の記事
AI分野においてスタートアップが巨大IT企業と勝負するには?【K17-5D #2】
本編
高宮 続いて、菊池さんが話題に挙げてくださった量子コンピュータの分野も踏まえて、我々スタートアップ界隈の人間がまだ聞いたことのないくらい先のテクノロジートレンドについて、少し解説していただければと思います。
森本 今のコンテクストについて、いくつかホットトピックということでご紹介させていただきますが、その前に少しフレーミング(枠組み)をご紹介させていただきたいと思います。
コグニティブ時代における基本要件
森本 我々は、AIの時代というのは「コグニティブ時代」ということで、AI(人工知能)やアルゴリズムだけではなくて、それを含む全体のビジネスプロセスやデータ管理、そういったものまで含めた幅広い形で捉えています。
▶コグニティブって知ってる?AIとは違うIBMの目指す世界とは(THINK Watson)
引用:IBM.com
森本 そのように考えた時に一番重要なのが、まずは適応分野における知見ということです。
先ほどお話しさせていただきましたように、そもそも何の問題を解くかというイシューがなければ、そこから価値を生むために何をすればいいか、という答えが出てきませんから、データがたくさんあるからいいということではありません。
したがって重要なのは、まず適応分野に関する深い知見があり、「ここに、こういうアルゴリズムやパターンを適応して(問題を)解決できれば大きな価値を生むぞ」といったことを考えられるかどうかです。
2番目が、それにともない、データをどうするかということです。
データについては、先ほどから繰り返しお話しているように、量だけではなく質が大切です。
一回トレーニングしたら、AIは動き始めるわけです。しかしながら、問題は、新しいデータや知見が出てきた時に、その前に既に入っているトレーニングデータをどのようにリフレッシュするかということです。
それから法律や制度が変わり、前に使っていたあるデータが実は使えなくなりました、という状況になった時に、それが修正可能なのかどうかです。
もう一つの問題は、AIというのは最終的に、データを何らか食べさせれば、質問に対して答えが出てきますが、それが正しいかどうかをどのように判断するのか?ということです。
どのように担保するか、という点も看過できません。
もし、AIが間違えたことを言い始めた時に、誰がチェックするのかということを含めた、データ全体の管理体制が必要となります。
AIというのは、教科書もできて、法制化も進んで、少し完成した感があるかもしれませんが、これからなんですね。
テクノロジーの面でいえば、アルゴリズムにしても、まだまだたくさんの進化が必要です。データの量や管理にしても、今お話ししましたように、多くの進化が必要になってきます。
そして、ハードウェアの面でも、今なお非常に電力を消費します。
10倍、20倍の世界ではなくて、千倍、万倍という単位なわけです。
ちなみに、クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」に出たIBM Watsonのマシンは、後ろで200キロワットのサーバが動いています。
▶編集注:IBM Watsonは、米国の人気クイズ番組「ジョパディ!」に挑戦し、2ゲームを通じて、過去最高金額を獲得しました。
森本 人間の脳が大体20ワットですので、200キロワットというのは、1万~10万倍くらいの単位の量の電力を消費しています。
AlphaGo(アルファ碁)にしても、後ろでカスタムメイドのスーパーコンピュータが動いていますが、ジョパディ!のワトソンよりも電力を消費している、という話が先日出ていました。
そのような状態ですので、まだまだハードウエアの進化が必要です。
それからデータに関していえば、IoTが進化していくと、大量のデータが垂れ流しで入ってくるようになります。
いくらネットワークが安くて、メモリーが安くても、これだけのデータが入ってくると、今度はコストの逆転が起こってきます。それを何とかしなくてはなりません。
エッジにあるセンサーのインテリジェンス(知性)をより高める必要があるんですね。何でもかんでもしゃべるのではなくて、「よく考えてからしゃべれ」というような形に移行していきます。
コグニティブ時代を創る新たなテクノロジー
森本 そこでいろいろなテクノロジーが出てくるわけですが、その一つが、省電力をターゲットにしたニューロモーフィック・コンピューティング(脳型コンピューティング)です。
先ほども申し上げたように、人間の脳は20ワット、機械は200キロワット、これで勝負しているんです。
大きく電力を消費する一つの原因は、プロセッサーが非常に高周波で動いており、使っていない時にも電力を消費してしまうことです。
それに対して、ニューロモーフィックのコンピューティングは、人間の脳のシナプスとニューロンの関係にヒントを得ていて、刺激があった時にだけ、スイッチがオンになるというタイプなんですね。
したがって、人間の脳でもアルファ波やベータ波というように十数ヘルスで動いていますが、それにならい、ベースの周波数は非常に遅いスピードであるけれども、速いレスポンスタイムを使うというデバイスです。
これによって、1000倍以上の電力消費の削減が可能になるという話があります。
もう一つのテクノロジーが、先ほども言及しました、IoTの世界でのスモーレスト・デバイスです。
データを垂れ流すセンサー、例えばセキュリティカメラにしても、ここにどのようにインテリジェンスを埋め込むかは、電力の問題もありますし、サイズの問題もあります。
スモーレスト・コンピュータは、日本IBMの基礎研究所でも研究開発をしています。
メモリ、エミュレーター、バッテリー、そしてシリアルのI/Oまで入った完全なサーバを人間の髪の毛ほどのサイズで作ろうということです。
今、これの数倍くらいの規模のものが、既に設計の最終段階にきていて、これからデバイスとして出てくるという段階に来ています。
このサイズまで進化すると、飲んだり、極端な話、目薬の中に入れて目にさしても、少しゴロゴロするかなというくらいのサイズなんですね。
こういった状態になれば、どのような小さなセンサーでも、「少し考えてからしゃべる」というようなことができるようになり、IoTの世界は特にそうですが、世の中が劇的に変わっていくと思います。
尾原 ちなみにコストはやはりまだ高いのでしょうか。
森本 いえ、純粋なコストはサイズによりますから、小さい分には良いのですが、問題はこのデバイスをカットする刃よりも小さいことなんですね。ですからカット代の方が、チップよりも大きくなりますから、確かに高くなります。
お酒でいえば純米吟醸、70%磨いて捨ててしまって30%が残るというような感じです。
そういう矛盾というか、苦しいところもあるにはありますが、基本的には一つのウェハーからどれだけ取れるかでコストが決まってきますから、遥かに安くなっていくと思います。
問題はバッテリーなんです。
尾原 そうですよね、バッテリーの容量とのバランスですよね。
森本 はい。これも解決しつつあります。
最適解を出すことにおける留意点
高宮 僕も含め、この会場の皆さんはビジネス側、文系の方が多いと思うので、僕なりの解釈を述べたいのですが、正しいかどうか、突っ込みを入れていただければと思います。
たとえばイシューから始めるというような話でいうと、ファッションECの分野などでは今、ハイブランドの商品検索した後に、似たようなものを楽天などの別のプラットフォームで検索し直して、安い類似商品を買うという購買行動があり、その機会を一気通貫して取り込めていない、というような問題があると思います。
しかし、良質なデータをきちんと入力すれば、このワンピースは、こっちのワンピースと同じようなものだよ、といったことをきちんとサジェストしてくれるようなものにもなりますと。
さらに、データをきちんとアップデートしていければ、来シーズンにはワンピースというコンテクストではなくて、水玉というコンテクストで同じものが出てきてもサジェストできるようになるかもしれません。
更にコンピュータの小型化が進み、演算力が高まると、小売りのところでもセンシングをして、人がどのような行動様式で商品を買っているのかが分かるから、適切なサジェストができるようになる。
このようなイメージでいいのでしょうか。即物的なところに落とし過ぎでしょうか。
森本 そうですね、表面的にはそのような現象にはなるかと思いますが、基本的にはデータの質が高まることにより、よりきめ細かく、細密的にできるようになるということです。
もう一つは、逆にデータが一般化してしまうと、今おっしゃったような形にはならないと思います。
一人のデータを継続的に取っていけば、その人にとって最適なサジェスチョンができるかもしれません。
でもたとえば、この会場の人全員のデータを取って、平均的にこういう服が好きだよね、というようなサジェストを出されても困るわけですよね。
ですから、大体において、量が増えていくことによって、精度が下がっていくという可能性もあります。
高宮 ニュースメディアで起こった、パーソナライズ/最適化と一般的なヘッドラインとどちらを優先するんだ、というような問題が起こってくるわけですね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
コグニティブ時代には、専門分野への深い知見が求められるという森本さんのお話を聞いて、私の学習意欲がフツフツと湧いてきました。(横井)
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