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“地球上最後の超大国”インドを支えるITベンチャーのエコシステムとは?(リブライト蛯原)【K17-6E #4】

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「ビジネスのフロンティアはどこにあるのか?(インド/イスラエル/アフリカの投資機会)」【K17-6E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)では、リブライトパートナーズ蛯原さんに、インドから続々と優秀な人材が輩出される理由などについてお話しいただきました。日本企業がインド企業と組むメリットとは?是非御覧ください。

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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 6E
ビジネスのフロンティアはどこにあるのか?(インド/イスラエル/アフリカの投資機会)

(スピーカー)

蛯原 健
リブライトパートナーズ 株式会社
代表パートナー

榊原 健太郎
株式会社サムライインキュベート
代表取締役

椿 進
Asia Africa Investments & Consulting Pte.Ltd.
代表パートナー

(モデレーター)

本間 真彦
インキュベイトファンド
代表パートナー

「インド/イスラエル/アフリカの投資機会」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】インド・イスラエル・アフリカ…、ネクスト・マーケットのベンチャー投資家が語るフロンティア【K17-6E #1】

1つ前の記事
日本企業×イスラエルのビジネスチャンスとは?(サムライ榊原)【K17-6E #3】

本編

本間 それでは、インドを語らせれば俺だ、という蛯原さん、よろしくお願いします。

蛯原 健氏(以下、蛯原) はい、宜しくお願いします。

リブライトパートナーズ 代表パートナー 蛯原 健氏

メディア等でインドがすごいというのは出てると思いますので、あまりマクロ的なことを語るつもりはないのですが、このスライドだけご紹介します。

地球上の最後の超大国になるのがインド

蛯原 10年前の中国とほぼ規模的に、あるいは成長モメンタムが一緒です。

赤線の中国を10年後ろにずらすとインドと同じで、2005年の中国と2015年のインドが一緒です。

現在、名目GDPが約2兆USドルなので日本の半分ぐらいです。

7.5%がマジックナンバーなんですが、7.5%ずつ伸びると10年で2倍になる。

単純に言うと日本にキャッチアップするのが10年後なのですが、だいたいどこの国際機関も今後5年から7年ぐらいで日本に追いつくと言っています。

ちなみに中国と違うのは、中国は年間10%成長をしていたので、5年で日本に追いついて次の5年で日本の倍になっています。

インドも、そこまではいかないと思うけれども、近いものにはなる。

簡単に言うと地球上の最後の超大国になるのがインドなはずです。

リージョン(地域)で言うとアフリカもあると思いますけど、国単位で言うと地球が核戦争でなくならない限り、おそらくインドが最後の超大国になる。

さらに、スマートフォンを持った人口をざっとビジュアルにすると以下のスライドのようになります。

蛯原 数だけで言うと、インドネシアですら無視して良いのではないかというぐらい、ほとんどインドと言うほどのスマホ人口です。

マクロなお話は主題ではないので、ここまでとします。

インドには優秀な人材を供給し続けるシステムがある

蛯原 今日は新興国のビジネスフロンティアというテーマですけど、それを語る時に市場を取りに行くのか、イスラエルのように技術を取りに行くのか等いくつか議論があると思いますが、共通しているのは人材です。

インドでは、世界一プログラマー人口が多いとか、プログラマーが500~600万人いるとか言われていますが、以下のスライドにあるのが従業員数です。

蛯原 タタグループの、日本で言うSIerが30万人ぐらいいます。

IBMも10数万人いますね。昨日アクセンチュアの方に聞いたら、インドにいるエンジニアが17万人まで増えたとおっしゃっていました。グローバル全体で20万人いて、そのうち17万人がインドにいるという会社です。

とにかくグローバル・メガカンパニーがインド人を取りに行っている。

私が注目しているのは、左下のデバイス系、半導体のエヌビディアとかも1,000人ぐらいトップノッチ(高度人材)を取っていて、トヨタやBMW等の自動運転系のプロジェクトもバンガロールでR&Dをやったりしています。

先日エヌビディア出身のエンジニアがやっている会社に我々も投資したのですけど、インドではAI系企業が増えています。

その供給源が理工系大学で、IIT(Indian Institutes of Technology=インド工科大学)という世界でもトップレベルの理工系大学では、ここだけで毎年1万人の卒業生が毎年出ています。

IIT DelhiのThe Co-curricular and Academic Interaction Council (CAIC)のウェブサイト(http://caic.iitd.ac.in/)より引用

蛯原 同じ人材レベル、”Tier 1.5”ぐらいの大学が他にも10個ぐらいあるので、毎年10万人とか10数万人のエンジニアが供給されている。

そこは後半で議論したいんですけど、イスラエルはそんなに多数の人材が出てこないですよね。

そうすると案件が枯渇しないのかなというのが素朴な疑問です。

インドの場合そういった意味では枯渇しづらい。

米国VCにはインド人キャピタリストが増えている

蛯原 優秀な人はその後アメリカにMBAを取りに行くか、スタンフォード大やMITなど理工系のマスターを取りに行くか、グーグルやマイクロソフト、アマゾンの本社で働くということをやります。また帰ってきてからの起業も非常に増えています。

インドマフィア化現象と私は呼んでいるんですけど、今アメリカのベンチャーキャピタリストはインド人が非常に増えています。

一番有名なのはビノッド・コースラ(Vinod Khosla ※)さんですが、更に重要なのは買い手の大企業、たとえばインテルやシスコのR&Dのトップやビズデブのトップもインド人が非常に増えています。

マイクロソフトもグーグルもトップはインド人です。

▶ビノッド・コースラ(Vinod Khosla): Khosla Ventures Founder。サン・マイクロシステムズの共同設立者でもある。シリコンバレーにあるインド人起業家支援組織の The Indus Entrepreneurs を設立した(Wikipedia

▶編集注:マイクロソフトの現CEOはサティア・ナデラ氏、グーグルCEOはサンダー・ピチャイ氏。どちらもインド出身。

ポイントは移民ではなくて、インドで大学まで出たインドインターフェイスの人がアメリカに渡って土着している。

インドとアメリカの人的な距離がとても短く、交流はものすごくあります。

リープフロッグ型の発展が起きている

蛯原 ここに5社挙げています。上場企業とかユニコーンが多いですけど、右側のオレンジのところを見るとほとんどIIT出身です。

サーバー系やセキュリティが結構強いです。

先ほどの椿さんの話とも重なるんですけど、リープフロッグという現象が新興国では起きます。

最近ようやく日本でも言われるようになってきた言葉ですが、「蛙跳び」という意味で、真ん中を飛ばしてしまうということです。

コラム -リープフロッグ(Leapfrog)とは何か-(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)

新興国では、元々二級都市に行くとコンビニもスーパーもなく、クレジットカードはもちろんのこと、普通の銀行カードや口座を持っているのは数%ぐらいの人。

そうすると最初からアリペイみたいな決済を使った方が早いといった形で、先進国よりもインフラがない分、デジタル経済圏が急速に伸びるのです。さらに、それが全部の産業について起きている。

こうした現象を「(産業の)真ん中を飛ばす」という意味で現地ではリープフロッグと言います。

インドでは、屋台でも(インド電子決済最大手の)ペイティーエムを使っています。

日本では、私、先ほど別のホテルからICCの会場まで来るのにタクシーに乗ったんですけど、現金しか使えませんでした。

リープフロッグは中国が顕著だったんですけど、同じことがインドでも起きます。

リージョナルなフロンティアということで今日は3つの地域から我々が呼ばれましたが、その意味では産業フロンティアで言うとインドは、デジタルトランスフォーメーションが非常に有望です。

先日我々が投資した会社はモバイルアプリで医者にかかるということをやっています。

病院に行くのに1時間かかってそこで2時間待たされて、その間に娘や息子がお腹が痛いと泣いているよりはアプリでやった方が良いですよね。

規制が緩いのでそこで処方箋が出せてしまう。Eコマースで薬も来ますし、お腹が痛いと言っている場合は処方箋をドラッグストアへ持って行けば薬が買えます。

日本とインドはベストカップル!?

蛯原 最近は日本でも若干緩和が進むようになってきましたが、色々と規制があって日本でできないことがインドではできる。

インフラがない分、一足飛びでデジタル経済にいきやすいため、既存の巨大産業でデジタルトランスフォーメーションが起きやすいのが大きなビジネスチャンスです。

東南アジアだとIT系はVC投資が盛んですが、それよりも日本で言うと経団連クラスの企業さんがそういうところに対して出資や買収をする動きがかなり出てきている。

もう1つが、元々算数が大好きな国なので、たとえばスライドに書いている「ミューシグマ」という会社がありますが、自称世界一のビッグデータ解析会社と言っています。

社内に3,000人ぐらいのデータサイエンティストがいます。

すごいのは社内に色々なフレームワークがあって、IITを卒業した新卒者が6カ月で一級のデータサイエンティストになるというのを売りにしている。

国をあげて大量にそういう人材が供給されて、そこからディープラーニングの実務をやってステップアップしています。

蛯原 ちょうど今日(2017年9月7日) トランプさんが移民で来た子どもたちの暫定処置を無くすというニュースがあって、そうするとアメリカの学校に通えないといった状況が起きるので、IT業界でも相当問題になっている。

アメリカで本来働きたいんだけどそれができない、という理由でインドに来ているような理系の人材もかなりいて、フォローの風が吹いていると思います。

蛯原 その中で我々は3年前ほどからインドに着手して今は10社ぐらいに投資しています。だいたい2つのセグメントに対して投資をしています。

榊原さんが先ほどおっしゃっていたように、日本と現地の市場、企業、イノベーションをつなげるファンドを、「ゲートウェイファンド」と我々は呼んでいます。どう成功事例を作ってお互い活性化していくかということをやっています。

特に、日本は製造業が強くてインドは算数が得意なので、今のAIやIoTというパラダイムの中ではベストカップルなのではないかと思います。

徐々にそういう案件も出てきていて、日本の大きな製造業がインドのダッシュボード解析を提供するような会社へ出資したり買収したりして、新しい物を売って、それをグローバル展開していくという動きもかなり出ていて、それが今後加速化していくのではないかと思います。

本間 アフリカ、イスラエル、インドというアングルで地球を一周しました。概略はこういう話で、マクロの話も伺ったことがある方もいらっしゃると思います。

最初の質問としては、日本企業や外国企業がこれらの市場で、具体的にどういうことができているのか。

特に日本にいて知らない方もいらっしゃると思うので、このぐらいのことはもうやっている、こういう事例がある、といった具体的な事例があれば披露してください。

リープフロッグの事例でも構わないですし、大企業と先端技術の組み合わせでも良いですし、アフリカで農業と言っても実はこのぐらいの会社がこんなことをやっているというような話でも構いません。

では、椿さんから。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝

【編集部コメント】

リープフロッグという言葉はネクスト・マーケットを語る際のキーワードのようですね。メモメモ。(横井)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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