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インド・イスラエル・アフリカへの進出を成功させる秘訣とは?【K17-6E #5】

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「ビジネスのフロンティアはどこにあるのか?(インド/イスラエル/アフリカの投資機会)」【K17-6E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その5)では、新興市場で日本企業がどのような成功事例を生み出しているかについて議論しました。現地の日本人社員もしくは外国人社員に権限を渡すことの重要性など、大事な示唆があります。是非御覧ください。

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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 6E
ビジネスのフロンティアはどこにあるのか?(インド/イスラエル/アフリカの投資機会)

(スピーカー)

蛯原 健
リブライトパートナーズ 株式会社
代表パートナー

榊原 健太郎
株式会社サムライインキュベート
代表取締役

椿 進
Asia Africa Investments & Consulting Pte.Ltd.
代表パートナー

(モデレーター)

本間 真彦
インキュベイトファンド
代表パートナー

「インド/イスラエル/アフリカの投資機会」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】インド・イスラエル・アフリカ…、ネクスト・マーケットのベンチャー投資家が語るフロンティア【K17-6E #1】

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“地球上最後の超大国”インドを支えるITベンチャーのエコシステムとは?(リブライト蛯原)【K17-6E #4】

本編

本間 アフリカ、イスラエル、インドというアングルで地球を一周しました。概略はこういう話で、マクロの話も伺ったことがある方もいらっしゃると思います。

最初の質問としては、日本企業や外国企業がこれらの市場で、具体的にどういうことができているのか。

(左)インキュベイトファンド 代表パートナー 本間 真彦氏

本間 特に日本にいて知らない方もいらっしゃると思うので、このぐらいのことはもうやっている、こういう事例がある、といった具体的な事例があれば披露してください。

リープフロッグの事例でも構わないですし、大企業と先端技術の組み合わせでも良いですし、アフリカで農業と言っても実はこのぐらいの会社がこんなことをやっているというような話でも構いません。

では、椿さんから。

アフリカでは日本車のプレゼンスが高い

椿 アフリカで日本企業を目にするときの1つは自動車です。

ケニア等、特に東アフリカの右ハンドル系は走っている車の9割が日本車でさらに8割がトヨタ、そのほとんどが中古車、向こうでは新古車と呼ばれるものです。

日本の中古車の最大の行き先がアフリカになっていて、ビィ・フォアードさんのように5年で500億円ぐらいの会社になるところもあります。

壊れにくい日本の自動車に対する信頼性は非常に高い。日本人のことは見たことがなくて我々に対しても「ニーハオ」と言うぐらいなのだけども、車はトヨタという状況で、自動車におけるプレゼンスがすごく高い。

Asia Africa Investments & Consulting 代表パートナー 椿 進氏

椿 他にすごく頑張っているのが味の素さんで、ナイジェリアでまさに「味の素」を売って100億円ぐらいになっている。

おそらくあそこまでやっている会社は日本だとあの会社だけです。ナイジェリアで30か所ぐらいのデポがあって、ボコ・ハラム(イスラム過激派組織)があろうと拉致があろうとやっていますから。

アルジェリアの事件後もビジネスを続けている日揮さんのような大手の資源会社や商社はもちろんありますけど、それ以外ではこの2社(トヨタ、味の素)がやはり目立ちますね。

今それに続こうとして、ユニチャームさん等の消費財や医療系の勝ち組の会社が入ってきている。

テクノロジーはやはり全然ないので、どちらかと言うと市場を取りに行く、もしくは新しいビジネスモデルができるのではないかと考えての進出ですね。

ルワンダや、ガーナでドローンの会社が来て道路の測量をやってみようとか、定期的に色んな事をトライしています。AI等を活用したオペレーションはもちろんインドもありますけども、おそらくアフリカが最初に応用されるのではないかと思います。

イスラエル進出企業のR&D戦略

榊原 雑談的なものとしては、イスラエルとかユダヤ人はすごく遠い存在だと思われているんですけど、実は非常に近い存在で、たぶん皆さんヘブライ語の歌が歌えます。

小学校の時にキャンプファイヤーで歌うマイムマイムという歌はヘブライ語なんです。

「マイム、マイム、マイム、マイム、マイム、ベッサッソン」というのは、(ヘブライ語で)「水、水、水、水、水が出たぞ」なんです。

イスラエルは元々は農業の国でスタートして、灌漑農業も雨が降らないため始められました。日本もアフリカもそうですけど、かなり進化すると思っています。

(左)サムライインキュベート 代表取締役 榊原 健太郎氏

榊原 本題としては、日本の大企業や世界的な大企業がイスラエルをどう見ているかと言うと、R&Dセンターの国です。

300社ぐらいR&Dセンターがあって、日本が来たので今は全体で350社ぐらいになっていると思います。

もちろんイスラエル内部でR&DセンターをやっているのがR&D戦略の1つなんですけど、プラス彼らは日本で言うハッカソンとかアクセラレータープログラムというのを戦略としてやっています。

最近日本でオープン・イノベーションに取り組む会社が増えましたが、イスラエルはもっと多くて、R&Dセンターが300あったら、それと同じぐらいのアクセラレータープログラムが走っている。

僕らも日本郵便さんとアクセラレータープログラムをやっていますが、これが300ぐらい走っているイメージです。

だから、スタートアップは10個ぐらい掛け持ちでやって世界中の人脈を作っているというのも当たり前になってきている。

広報に終わらない本気のハッカソンやアクセラレーター

榊原 日本のアクセラレータープログラムとかハッカソンと違うのは、日本はアイデアソンで終わってPOC(Proof of Concept ※)まで行かずに終わってしまって広報的、宣伝的な形で止まってしまうことが多い。

▶Proof of Concept:新しい概念や理論、原理などが実現可能であることを示すための簡易な試行

一方で、彼らは実際にハッカソンをやる1か月前ぐらいから開発をし始めて、大企業に売り込み、投資やM&Aを求めて行くという本気度でやっています。

日本企業のやり方としては、大手のコンサルに伸びているスタートアップのリストを出してもらってマッチングしてミーティングするというのが普通のやり方です。

最近の僕らもそうですけど、世界中のアクセラレータープログラムをやっているような会社は、誰も見つけられないようなシードの会社をハッカソンとかアクセラレータープログラムで見つけて一緒に技術を開発していきます。

僕らも、ある大手メーカーの方に、センサーを使って新しいものを生み出したいんだけど自分たちだけでは分からないからサービス作りを手伝ってくれと言われました。

その会社さんはセンサーを活用したヘルスケアの分野はやっていなくて弱かったのですね。

なので、ハッカソンをやって5社選出して、そのうち優勝したAIを使ったヘルスケアの解析会社に、僕らがシード段階で投資をして、コワーキングスペースにも入居頂きました。

半年間インキュベーションして、1年後にはその大手メーカーさんに約10億円投資していただきました。

他の事例で武田薬品工業さんが上手くやっていました。

武田さんはジョンソン・エンド・ジョンソンと一緒にアクセラレータープログラムをやっていて、スタートアップを支援しています。

加えて、合弁で設立したジェネリック製薬会社の武田テバが一番上手くいっていて、日本で今売上が1,000億円を超えています。

IT系以外で実は成功しているケースは多くあります。

榊原 イスラエルのR&Dセンター流のやり方で言うと、まず投資した会社と一緒に事業を作るという案件をハッカソンとかミートアップで見つけてくる。

あるセンサーの会社は、現地に日本人1人がいてその下にユダヤ人がいて、向こうの5社ぐらいと一緒になって5サービスぐらい作るという形からR&Dセンターを作り始めました。

いきなりM&Aをするのではなくて、現地のスタートアップとコラボレーションをするR&Dセンターを作って最終的にそれらのスタートアップを買収し、研究開発の施設にしていくという流れが一番日本人の会社にとってはやりやすいと思います。

本間 僕の勝手な経験則では、日本の大企業でベンチャーとのコラボレーションをやろうとしてもなかなか難しいケースはお互いに問題があると思うんですけど、事業開発の担当者がうまくベンチャーを使えなかったりとかプログラム化できなかったりしています。

榊原さんの話を聞くと上手にさらっとやられているというのが不思議です。

日本の大企業もトップの意思決定スピードは早い

榊原 おっしゃる通りで、センサー会社さんは僕がイスラエルに行った半年後に来られた時に、第一線の人を送り込んでいて、その時点でイスラエルがすごいことをきちんとわかっていました。

技術担当役員の下にいるような方なので、トップクラスとツーカーの仲でコミュニケーションが取れる。

日本の大企業は意思決定が遅いというイメージがあると思うんですけど、既にイスラエルに来てR&Dセンターを作っている会社は実はとても速いです。

3年前ぐらいから僕らと一緒に来られている会社の決定スピードはとても速い。

僕はイスラエルに行ってから、日本の大企業でもトップレベルの人はのスピード感が速くて、現場レベルの人が言い訳として「うちは意思決定が遅い」という話をしている人たちが多いのではないかと思うようになりました。

次期社長になるとか、日本の大企業を動かしているようなトップクラスの人たちはものすごくスピーディーだと思います。

エースを海外に送り込まないと上手くいかないと思いますし、他国での失敗事例を知っていて来ている方も多いですね。

榊原 アメリカだと敷居があって自分たちのやりたいものしかスタートアップはやらないと言われるんですけど、イスラエルはより柔軟性があって、どういう悩みがあるのと逆に聞いてくれて合わせてくれるのに日本の大企業の人たちは驚かれています。

あとはアクセラレータープログラムとかハッカソンは合宿みたいな感じで、そこでお互いの人となりを知ることができる。

なるべく失敗事例を減らすというか、僕らが間に入る場合があるので、経営者がどういう出身なのかとか、親戚・兄や妹が成功しているかとか色々話をして、”身体検査”をしてからやるというのもあります。

現地財閥と一緒に組むと失敗する

蛯原 インドで一番成功している会社を1社挙げると自動車シェアトップのスズキです。

ただし30年頑張ってきているので、かなり時間がかかった上でです。

これは公知の事実だと思いますが、一番失敗しているのはドコモさんで、華々しい撤退戦を繰り広げています。

また、日本の関西の製造業さんはほぼ100%出ていて、きちんとR&D、製造、調達をしています。

製造業とデジタルエコノミーというかAI、IoTというインターネット系のスタートアップの境目がだんだんブレンドされてきたというモメンタム(勢い)があると思います。日本の大手製造業もそこに対しての感度が上がってきて、実際にいくつか出資や買収の案件が出てきている状況です。

リブライトパートナーズ 代表パートナー 蛯原 健氏

蛯原 どういうタイプが失敗するのかという話では、私が7年近く見てきた東南アジアもそうだと思うのですが、だいたい皆さん財閥を紹介してくださいと言うんです。

大手から中小、スタートアップも一部そういうところもありますが、これはほぼ100%失敗します。ジェトロとか色々な統計が出ています。

そもそもジョイントベンチャーは失敗確率は高い上に、ましてやカルチャー的なインターフェイスが違う人たちと成功するわけがないというのが大前提としてある中で、さらに財閥というのは非常に特殊なプロトコルを持った人たちなのでほとんど失敗します。

海外現場にいる人に裁量を渡して投資させることが重要

蛯原 ではジョイントベンチャーではなくて、独立資本が良いかというと難しくて、シビアネスが高い新興国では現地の水先案内人が必要になる。

最近そういった中でもパナソニックさんが非常に頑張っていますね。ほぼ独立資本なんですけど、トップをインド人に据えて裁量をほぼ全面的に渡している。

やはり、製造業の方が成功します。結局グローバルスケールメリットが効くので、製造業とかIPを持っているようなビジネスは成功しますが、サービス業はかなり苦戦してしまいます。これは仕方がないです。

蛯原 日本で一番頑張っている(ソフトバンクの)孫正義さんもおっしゃっていますけど、技術はグローバルで取れるが、サービス業はローカルのものだと。

だからどんどんローカルのイケてる会社に出資、買収するんだと。

それは理にかなっていて、実際にそういう統計も出ています。

そんな中で成功しているのは電通さんですね。

なぜ成功したかと言うとイージスさんを買収したからです。アジアも含めた世界で買収しまくっていて、インドでもすでに20社近く買収しています。

どうやっているかと言うと全部イージスがやっていて、最終的にBoard Approval(決議)は東京でやるんだけれども、現場ではイージスの人がバンバン交渉してほとんどやっている。

電通が海外企業を買いまくっている理由 (ZUU online)
買収から2年、電通イージス・ネットワーク これからの戦略—ジェリー・ブルマンCEOインタビュー(アドタイ)

ターム(契約書)の書き方もなかなかしびれるものをやっています。

やはり昔から言われている当たり前のことかもしれないですが、現場に裁量を渡すということじゃないかと思います。

電通・イージスさんのパターンというのは1つの学ぶべきロールモデルだと思います。

本間 ローカルの方が暴走しないのでしょうか?

また、ローカルが、電通の(意思決定等の)プロトコルを守っているから、本社で決済の許可が出るわけであって、それが曖昧で、日本の会社で意思決定に失敗しているところもたくさんありますよね。

蛯原 まず、広告代理店のエージェンシーモデルとIBMやアクセンチュアのようなITモデル、そしてコンサルティング業のモデルが業種的にブレンドされてきている環境があります。

その中で、ビジネスフロンティアを拡大しようという共通認識をボードの意思決定における基礎として持っているというのはあるのではないでしょうか。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝

【編集部コメント】

日本の製造業が海外でどのようなR&Dをしているのか、自分の目で確かめたくなってきました。(横井)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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