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「IoTからIoAへ」最先端の研究者が考える人工知能と人間の未来

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「人工知能によって人間の仕事は代替されてしまうのか?」や「ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation=人間拡張)テクノロジーが人間の存在をどう変えうるのか?」といった、20〜30年後の人工知能時代を見据えた問いを第一線の研究者たちが真剣に議論。ICCカンファレンス TOKYO 2016の参加者から賞賛を集めた、最先端研究の動向に関する記事を是非ご覧ください。

(その1)は登壇者の研究内容の紹介と参加者の問題意識の共有を行いました。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 3B
最先端研究の動向(人工知能 コグニティブ IoA)

(スピーカー)
武田 浩一   日本アイ・ビー・エム株式会社 技術理事
松尾 豊    東京大学大学院 特任准教授
暦本 純一   東京大学大学院情報学環 教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長

(モデレーター)
田川 欣哉 takram design engineering 代表

「最先端研究の動向(人工知能 コグニティブ IoA)」の配信済み記事一覧

20〜30年後の世界を議論する

田川欣哉氏(以下、田川) 皆さん、こんにちは。どうぞ宜しくお願いいたします。今日は皆さんよくご存知の、世界の最先端を牽引していらっしゃるこの3人の研究者の方々をお招きしてのセッションとなります。

今日ここに集まっていらっしゃる100人くらいの皆さんは想像するに、上場とかね、ビジネスで活躍されているところはもちろんあるんだけれども、多分自分自身で自分のことを、多少ビジョナリーだと思っている人たちが集まっているんじゃないか、と思う訳です。

自分のそのビジョンを、最先端の方々の考えを聞くことで、特にAIとかビッグデータとかそういったところの話があるので、自分の想像が合っているのか間違っているのか、知らないことが聞けるんじゃないかという期待を持って、ここにいらっしゃっていると思います。

なので、このセッションは20年から30年くらい先を目指したところで、ちょっと掘っていきたいと思いますので、宜しくお願いします。

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田川 欣哉
takram design engineering 代表
ハードウェア、ソフトウェアからインタラクティブアートまで、幅広い分野に精通するデザインエンジニア。主なプロジェクトに、トヨタ自動車「NS4」のUI設計、日本政府のビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS-地域経済分析システム-」のプロトタイピング、NHK Eテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなどがある。日本語入力機器「tagtype」はニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定されている。東京大学機械情報工学科卒業。英国Royal College of Art, Industrial Design Engineering修了。LEADING EDGE DESIGNを経て現職。英国Royal College of Art客員教授。

では、まず今日の進め方なんですが、全体でこのセッションは15時半までなので、今から70分程度あります。まずお三方に自己紹介して頂きたいと思いますが、それぞれもう著名な方なので詳しいことは、皆さん今ここで検索して下さい。それで分かります。

5分ずつ自己紹介のお願いをしていますので、まず導入として皆さんでいきましょう。その後60分くらい議論をしたいと思うんですけれども、せっかくICCカンファレンスは選抜制で、いらっしゃる方々も本当だとスピーカーレベルの方が聴衆側にいるので、こちら側から一方的にやるのももったいないので、お三方が5分ずつしゃべる15分間のあいだに、僕がその後、聴衆の皆さんにリクエストを出します。

それは、その5分ごとの3セットが終わったあとに、隣の人たちとちょっと会話を持って、ここが気になるなとか、自分はこう考えているからここをぶつけてみたいというのを、ちょっと心の中に思い浮かべて下さい。その2、3人で話し合ったことを挙手して投げてもらいます。投げてもらった後に、僕の方からその回答をお三方にお願いしません。

ただ聴くだけにします。その聴いたのを、お三方に頭の中に入れておいて頂いて、ディスカッションをしていきます。最後には、皆さんから10分くらい質問を受け付けますので、それはそれで、その機会を活用して下さい。

ではですね、自己紹介ということで、まず武田さんの方から、よろしくお願いいたします。

武田浩一氏(以下、武田) 日本IBM東京基礎研究所の武田でございます。1983年にIBMに入社しまして、30年以上自然言語処理の世界で研究をしてきました。

個人的には、機械翻訳ですとか、日本の産業がこの30年間、自然言語処理を必要にしてきた背景で、一緒に成長してきたような感じがします。IBMがまだPCを売っていた頃に、翻訳ソフトを作ったり、これは本当に必死になって作ったものです。

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武田 浩一  
日本アイ・ビー・エム株式会社 技術理事

1983年日本アイ・ビー・エム(株)入社. 以後,東京基礎研究所にて、自然言語処理,機械翻訳,情報の可視化,テキストマイニングに関するプロジェクトに従事.インターネット向け機械翻訳ツール製品化(翻訳の王様),可視化を利用した情報検索ツール,医療文献テキストマイニングプロジェクト,電子カルテからの知識発見ツール,グローバルなテキスト分析技術の製品化に貢献.2007年12月より,質問応答技術を利用し,クイズ番組で人間の解答者に挑戦するWatsonシステムを開発するグランド・チャレンジ・プロジェクトに参画.2011年同社技術理事.博士(情報学).国立情報学研究所客員教授.情報処理学会フェロー

自分的にも満足出来た研究でしたが途中で止めてしまって、そこからはテキストマイニングですとか、今はWatson(ワトソン)ですね。もともとは地味な研究者だったんですけれども、Watsonに関与したおかげで、こういうところに呼ばれるようになったということで、大変有り難く感じています。よろしくお願いします。

松尾豊氏(以下、松尾) 松尾と申します。人工知能の研究をしています。メインではウェブのマイニングですとか、ビッグデータの分析とかというのをずっとやってきました。

最近ここ2〜3年はディープラーニングというのに注目してやっていまして、ディープラーニングというのは人工知能の歴史の中では、僕はかなりすごいイノベーションだと思っています。

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松尾 豊
東京大学大学院 特任准教授

1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了.博士(工学).同年より,産業技術総合研究所研究員。2005年10月よりスタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より,東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。2014年より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 グルーバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(2002年)、創立20周年記念事業賞(2006年)、現場イノベーション賞(2011年)、功労賞(2013年)の各賞を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、2010年から副編集委員長、2012年から編集委員長・理事。2014年より倫理委員長。日本のトップクラスの人工知能研究者の一人。

これをきっかけに、大きく色々な技術が進んでくるんだろうと思っているんですけれども、それを色んな所でしゃべって、特に色んな企業の方に、ディープラーニングの技術を使ったものをどんどん創っていってほしいな、という風に思っています。よろしくお願いします。

暦本純一氏(以下、暦本) 東京大学の暦本と申します。私は、ヒューマンインターフェースの研究をやっています。最近は、ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)というような、人間がテクノロジーによってどう拡張するか、ということに非常に興味を持っています。

▶参考資料:暦本研究室Webサイト「Human Augmentation (人間拡張)」

AIが絡んでくると、人間と人間だったり、人間とAIだったり、ネットワーク上でどんどんつながってきて、新しい時代がくると考えています。

よくIoTと言われますが、その次は何かと考えて、Internet of Abilities(インターネット・オブ・アビリティズ)、IoAではないかと思っています。Internet of Things(インターネットオブシングス)は、Thingがインターネットにつながるんだけれども、そこに人間が入ってきて人間の能力がネットワークを超えていったり、コンピューターの能力が人間につながったり、さらに人間とAIの能力が融合したりということで新しい時代が来るんじゃないかということを思って研究を進めています。というのが自己紹介です。

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暦本 純一  
東京大学大学院情報学環 教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長

東京大学情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長。ヒューマンコンピュータインタラクション研究者・発明家。世界初のモバイルAR(拡張現実)システムNaviCamを1990年代に試作、2001年にはマルチタッチの基礎研究を世界に先駆けて行うなど常に時代を先導する研究活動を展開している。最近ではHuman Augmentation (人間拡張)、IoTの次の潮流としてのIoA (Internet of Abilities)を提唱している。日本文化デザイン賞, グッドデザイン賞best100, 日本ソフトウェア科学会基礎科学賞, ACM UIST Lasting Impact Awardなど受賞多数。2007年にACM SIGCHI Academyに選出される。

研究の全部じゃないんですけども、一部日経エレクトロニクスで今年2月に書かせて頂いた「IoTからIoAへ」という論文がありますので、もしご興味があったら、お読み頂ければ幸いです。以上です。

▶参考資料:IoTからIoAへ、人類を拡張するネットワーク

田川 ではですね、ちょっと2〜3分時間をとりますので、お隣の見知らぬ人たちだと思うんですけど、例えば、最近アルファ碁が世界最強の棋士に勝ったみたいなそういうトピックもありますし、例えばGoogleが自動運転をどんどんやっていくみたいな、自動運転がホットになって来ていて、自分たちのビジネスへのデプロイもあれば、もう少し未来の話で、本当に機械が人間を飛び越えていくのかみたいな、皆さん色々と疑問をもやもやお持ちだと思います。

2〜3分、隣の人と自分の興味とか疑問をシェアしてみてもらっていいですか。で、僕の方で3分できります。では、ちょっと3分くらいやりましょう。

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田川 ではですね、1回切り上げてもらってもいいですか。それでは、ここで挙手してもらって、発言してもらった話のいくつかが、今日のディスカッションのキーノートになっていくと思うので、ちょっとこれは皆とシェアしたいという思いがあれば、挙手してもらってもいいですか。

どんな意見でもいいですよ。まずそちらの方。他の方いますか。3〜4個とっていきますよ。そちらの方とそちらの方。そこで腕組みしている(スマートニュースの)鈴木健くんとかどうですか。好きそうでしょう、じゃあはい(笑)。

もう1人くらい。大丈夫ですか。では、この5人にマイクを渡してもらっていいですか。順番にいきましょう。

発言者1 Googleの◯◯と申します。よろしくお願いします。今日伺いたいのは、今世間でディープラーニングがあらゆる可能性を持っているという風に言われる中で、実際に世間で言われるほどちょっと出来ないんだけどな~というところと、世間で言われていることと同等、またはそれ以上に、ディープラーニングにはこういう可能性があるというところがすごく気になっております。

田川 有難うございます。では次の方。

発言者2 スマートニュースの鈴木です。インターネット・オブ・アビリティーはすごい面白いなと思っていて、アビリティーというときには全然インテリジェントである必要もなくて、例えばエネルギーを生産するっていうのは能力ですよね。

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例えばミトコンドリアが出来る、と。そういう色んな、もはや人類とか機械とかを超えて、ある意味エコシステムとか、そういうものとどういう風に我々はコミュニケーションとか、もしくは、新しい能力を創っていけばいいのかみたいなことを最近考えています。

自己複製とかコミュニティを創るとか、そういうところも新しいイノベーションが起きるんじゃないかな~というのを考えています。

田川 有難うございます。

発言者3 博報堂の◯◯と申します。今ベンチャー投資とか、ビジネスのトランスフォーメーションのサポートをさせて頂いております。

ここでちょうど、メディアと写真を撮るビジネスをしている方と私と、ということで話をしていたんですけれども、大きく分けて2つ質問が出てきましました。

特に写真なんかは、いろいろなことが自動で制御したりとか、シャッターも顔認識で撮れてしまうというところからすると、特に人工知能のトピックでよく話題になっている、仕事をどこまで代替出来るのか、というところをですね、実際仕事を奪う可能性のある研究をしている皆さまからすると、マインド的に、実はここまで踏み込んだら出来るんだけど、ここまでで止めているよとか、もしそういうところがあればですね、本音のところ、ここ2〜3年くらいでどこまでいけるかっていう見通しも含めて教えて頂きたいなという話をしていました。

もう1つは、メディア系の部分で、オーグメンテッドリアリティ(AR:拡張現実)ですね。テレプレゼンスでも、拡張的に、もう自分の目の前に電話をする相手が、ホログラフィックで立ち上がるみたいなプロダクトですね。

先日もSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)でmeta(メタ)という会社のホロレンズに似たようなものを見たんですけど、これもう945ドルなんていう価格なので、1人1台買えちゃうというぐらい、非常に身近な状態になっている。

こうなったときにメディアだったりとかUIの部分や表現だったりとか、かなり変わってくるだろうと考えています。

この辺についての技術的なスタンダードやホログラフィックUIというか、簡単に言うとアイアンマンの世界とかですね、そういうものってのが実際どのくらいのスパンで普及してくるのか? 一般的に使われるようになってくると思われるのか?というこの2点について伺いたいな、という話をしておりました。

田川 有難うございます。あとお2方ですか。

発言者4 1番最初の質問とも結構重複するんですけれども、よくやっぱりメディアとかだと、とにかく人工知能で人間が超越されるとかですね、またアビリティーのところについても、とにかく何でも出来るようになっちゃうみたいな話が、ついついまるっとまとめられて語られることが多いと思います。

実際の研究の現場にいらっしゃる皆さんから見てですね、この領域に関しては実際に実現できるし、実現する方向で進んでいるよとか、これに関してはよく語られているけれども、そもそもピントが外れていて無理ですよとかいうところをですね、解説を頂けると嬉しいなと思っています。

田川 有難うございます。では次の方。

発言者5 初めまして。リディラバの安部と申します。私すごい興味があるのが、インターネット・オブ・アビリティーがすごく面白いなと思っています。

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例えば、自分が今しゃべっている内容だとか、私が私であるという意識というのは、別に私の脳細胞の神経発火とかそういうところから来ているんだけれども、別に神経細胞AとかBとかが、今私の「安部敏樹」の意識を創っているという自覚って、なかったりするじゃないですか。

じゃあ、我々自身が構成要素の神経細胞Aみたいな形として、社会の一部としてあったときって、インターネット・オブ・アビリティーみたいなものが広がっていったときに、社会の生命性とか、社会としての意識みたいなものってこれまで可視化もされなければ、理解もされてこなかった。

それは実は存在していて、僕らが認知できなかっただけであり、そのインターネット・オブ・アビリティーだとか、あるいは、人工知能の色んな知性を集めていく中で、社会としての意識とか社会としての生命性みたいなものが見えてくるのかどうかとか。

そういう部分はこういう可能性があるんじゃないかな、みたいなものが、皆さんのお考えの中にあるのであれば、聞いてみたいなと思っていました。

田川 有難うございました。来場者の皆さんの中でも、活発な議論をして頂いて良かったです。

今5つ伏線を頂きました。僕の方がもともとお三方と話が出来たらな、と思っているところと被ってくるところもあるので、この5つの質問の中で、最初の入り口として、ぶっちゃけAIってどの程度のいわゆる跳躍、あと限界、そこらへんはおそらく、かなりまだら模様なのかもしれないけれども、どう思っていますか?

(続)

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編集チーム:小林 雅/藤田 温乃

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