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「エンタメ・ビジネスは今後どのように進化するのか?」8回シリーズ(その5)では、SHOWROOMの前田さんが第3世代のエンタメ・ビジネス「直接支援モデル」を語ります。キーワードとなるのは「更新頻度」と「親近感」。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 7D
エンタメ・ビジネスは今後どのように進化するのか?
(スピーカー)
岡田 一男
株式会社CAMPFIRE
執行役員
峠田 浩
TBSテレビ
制作局 ドラマ制作部
前田 裕二
SHOWROOM株式会社
代表取締役社長
(スピーカー&モデレーター)
新井 拓郎
株式会社Candee
代表取締役副社長 CBDO
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最初の記事
1. 次世代エンタメ業界をリードするプレイヤーを一挙紹介!
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4. 今、コンテンツの創り手に求められることとは?
新井 さて、次のテーマに行ければと思います。
端的に言うと今後のエンターテインメントとはどうやって儲かっていくのか、もしくは儲からないのか、今後もさらに新しいビジネスが展開していくのであろうか、というところをお話できたら良いと思います。
新井 1つ分かりやすい事例で言うと、まさにCAMPFIREのような新しいお金の生み方、集め方が出てきていると思います。
CAMPFIREとしては、今後新たにどんなビジネスが考えられるのかについて、何か議論をされていたりしますか?
エンタメにおけるCAMPFIREのビジネス展開
岡田 弊社はコンテンツと非常に相性が良いと思っています。
Makuakeさんが「この世界の片隅に」をクラウドファンディングで製作し、素晴らしい映画が世の中に出ました。
僕らも勇気づけられました。
CAMPFIREで一番シェアが高いのは「音楽」です。
今も音楽業界のお仕事をさせて頂いている中で、本当に全盛期に比べると資金がなさすぎて、PVに掛ける予算も全盛期の10分の1や20分の1であることもザラです。
メジャーデビューしていても、バンドの子がバイトをしていないと生きていけないとか、実家暮らしでないとやっていけない、というような現実があります。
その中で普通にCDを売ってライブをやるだけではなく、それこそSHOWROOMで新しいマネタイズの方法をやってみるとか、さらに僕らが提案しているのはどちらかというと体験型の、あなたのために一曲プレゼントしますとか、あなたのためだけにライブをしに行きますとか、そのようなことです。
今まではアーティストがそれをやっては駄目だという声がありました。
アーティストがクラウドファンディングで「お金をください」というのはダサくないかというのは今でも言われたりもしています。
アーティストのブランディングの仕事もしているので、それはそれで分かります。
しかし、現状やりたいことは純粋にPVを作り、曲を作り、普通にツアーをするだけではなくて、「どうやって日常的にファンとコミュニケーションや絆を作っていくか」というところです。
その中で先立つものを、今までのやり方ではどんどん先細りになってしまう部分があります。
クラウドファンディングがそういうものの絶対的な解決策だと思っているわけではありませんが、そのような中で色々なマネタイズの方法が出てきている中でうまく活用して頂ければ良いと思っています。
新井 切り口は違いますが、SHOWROOMのギフティングのシステムは、クラウドファンディングと近い部分があると思います。
ビジネスモデルはどう広げていこうとされていますか?
第3世代のビジネスモデル「直接支援モデル」とは?
前田 僕たちはエンタメ業界のビジネスモデルを3つの分類で整理しています。
1つ目の軸は、「パッケージ、ダウンロード(DL)、サブスクリプション」です。
僕たちは第1世代と呼んでいます。
これはCDやDVDなどのパッケージです。
また、ダウンロードやサブスクリプションもここに入れています。
つまりこれは対価が明確に提示されていて、1,000円払ってくれればこのパッケージを提供します、というものです。
そのものに対する価値としてお金を払うという市場があった訳です。
みなさんご存知の通り、これは今ゼロに向かってシュリンクしていっています。
それはなぜかというと、インターネットのせいでコピーが可能になっているからです。
複製可能になってしまっているものは、モノの価値だけで訴求していくとゼロに近づいていってしまいます。
第1世代の市場が縮まっている中で、第2世代の「興行」という軸が出てきています。
エイベックスさんもアミューズさんも、決算資料を見ればそうだと思いますが、ほとんど「ライブ」で稼いでいます。
ライブの売上には、当然チケット単価×人数もありますし、グッズ販売などのマーチャンダイジング(版権ビジネス)も含まれます。
ここに来ると、パッケージの世界よりも、岡田さんが先ほどおっしゃったような「体験価値」というようなリアルな場に行く体験が楽しいということです。
EDMフェスもチケットは1万円以上するのに、多くの人が行くのは、友達と飲んで騒ぐのが楽しいというところに価値を感じるという、2番目の軸ができあがっているからだと思います。
(写真中央)SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田 裕二 氏
ここまで来ている、というのは皆さんの共通認識だと思います。
この第2世代に感じている課題は、「キャパシティ×単価でしかない」ところです。
キャパシティというのは、オフラインに閉ざされているので東京ドームで年何回ライブできるのかというようなことに依るビジネスでしかありません。
金融市場にいたときの自分を思い出すと、投資家から「エンタメの会社に投資したい」と言われても、「これ以上は限界で収益が伸びません。もう一度あのようなアーティストを生めると思いますか」という話になってしまいます。
ヒットの再現性はその会社自身も分かっていないのだから難しいですよね、となってしまいます。
しかし、今から言う3つ目の軸ができるとエンタメの市場が拡大できると思っています。
これが一番言いたいことです。
ユーザーの購買理由は“モノ”から“ヒト”へ
前田 「第3世代」は、僕たちが「直接支援モデル」と呼んでいるもので、まさにクラウドファンディングもそうですし、僕たちのSHOWROOMのようなビジネスモデルもそうです。
基本的に演者とその演者に紐づくファンがいて、その間の取次や流通、媒介などができるだけ少ない状態を作ります。
そうすることで、第1世代、第2世代では活躍できなかった、表に出ていくことができなかったような人たちもきちんと一定のファンを抱えてそのクリエイティビティで生きていくことができるという世界が作れるようになると思います。
CAMPFIRE的に言うと、第1世代、第2世代でしか稼ぐ仕組みが存在しなかったエンターテインメント業界においては「小さな声」は届かなかったと思いますが、第3世代の市場がちゃんとできあがってくると、その「小さな声」がきちんと届くように世界が変わっていく、ということです。
これを一緒に作っていきたいと思っています。
第1世代から第3世代に移るにつれて、「モノ」のクオリティの定義がどんどん変わっていっているのが面白いポイントです。
歌が芸術的にうまいからとか、この人の演技が最高にうまいからという理由でモノを買うのではなくて、その「ヒト」が好きだから信頼しているから買うというように、購買理由がモノからヒトに移っていっているというのがポイントです。
例えば、キングコングの西野さん(西野亮廣氏)は何かが特別うまいわけではありませんよね(笑)。
しかし日本一クラウドファンディングでお金を集めています。
それは、西野さんという人が言えば、またはそのような人が歌ったら、今までの既存の世界におけるクオリティの高さにかかわらず人がお金を使うようになっている、という意味です。
これがエンタメ業界における新しい市場の1つの特徴だと思っています。
新井 今日会場に来ていらっしゃる方の中にも、まだ「直接支援モデル」の価値にまだまだ実感が湧かない方もいるかもしれません。
そのような方にやって頂きたいのは、どのプラットフォームでも良いので「同じ人のコンテンツを毎日観ること」です。
それにチャレンジして頂きたいです。
「直接支援モデル」というのは、概念で理解するものでもないと思っています。
僕はYouTubeを2カ月くらい1日8時間観ていたのですが、ヒカキンなどはやっぱり好きになってしまいます。
好きな理由をなかなか言語化できませんが、毎日観ているとやはり翌日どうなるか気になります。
体験していただく方が絶対に最短距離で理解して頂けると思います。
「ファンの数」と「更新頻度」には相関がある
前田 まさにおっしゃる通りで、それを言うための資料を用意しています。
ファンの増え方が科学的に分かりましたという資料です。
横軸がファン数で、左から右に行くにつれてファンが増えていますという意味です。
ファンの増え方には、基本的に更新頻度と極めて高い相関があります。
ヒカキンは未だに、何かしらの動画を毎日上げています。
新井 先日は「休みましょう」という動画を上げていましたね。
前田 ポイントはそれです。
縦軸はコンテンツの更新頻度や、ファンとのインタラクションをどれくらい密にやるかということです。僕らはこれを「密度」と呼んでいます。
下に行けば行くほど、密度が濃いという意味です。
TwitterもYouTubeも、とにかく更新をしてリプライを返し続けるというようなものが下です。
ヒカキンはこの中の「C」だと漠然と思っている人が多いと思います。
しかし実はそうではありません。
彼は凄い時間を投じて丁寧に丁寧に更新している「B」のタイプなので、親近感が湧いてくるのです。
新井 そうですね。
前田 そうすると「毎日観なきゃ」となります。
毎日観ているうちに次の日に学校で話題になります。
昔のテレビのようなものでで、それこそ「『学校へ行こう』の告白を観たかどうか」という話題が僕らの世代にはあった訳です。
その「昨日あれみた?」がヒカキンの動画に取って代わられています。
彼の更新頻度と一定のクオリティが1つのキーになっていると思います。
人気を獲得するのは、身を削ることを恐れない演者
新井 自分の中で理解できなかったのが、出る側の人の気持ちです。
これは相当に自分自身の身を削るというか、消耗しますよね。
前田 非常に消耗します。
新井 このようなことを、どれだけの人がやっていけるだろうかと思っています。
CAMPFIREも自分の名前でお金を集めている訳ですよね。
これも消耗が激しいような気がします。
岡田 そうですね。
一度やった方はもうクラウドファンディングしたくない、自分でやるのは大変だと相談されることが多いです。
そのため、もう少し楽にできるように色々な仕組みを整えています。
そうにしても、自分の責任でお金を集めるということには、揶揄されたり、ときには炎上したりということが伴うことがあります。
誰でもできるものの、心が折れたりして非常に大変です。
そうは言っても、よほど飛びぬけた才能やルックスがない限りは、今後はセルフブランディング、例えばファンに近づくということや、ファンの強い興味を引くために自分の身を削るようなことなどができないと、中々コンテンツが世に伝播しにくいと感じています。
例えば、音楽で言えば、いい曲を作る人はたくさんいます。
その伝わり方が強いか弱いかだと思います。キャラクター的に愛されるとか、ファンがその友達も巻き込むというような、そのようなことができているアーティストには特徴があります。
自分の身を削るではないですが、毎日動画配信するとか、ツイキャスするとか、Twitter、クラウドファンディングなどできることは色々あると思います。
そのようなことを恐れない、むしろそれがデフォルトになっているような子が多い気がします。
前田 先ほどの4象限の「D」のところにあたる、「ファンが少ないくせに偶像ぶっている人」ですが。
新井 ディスっていますか?(笑)
前田 もちろん偶像ぶらないといけないということはあると思いますが(笑)。
実はファンは5人くらいしかいないというようなことがほとんどだと思っています。
この「D」の象限から「C」の象限に何らかの力で引き上げられる(「密度」は低いままファン数が増える)というのが、先ほどおっしゃっていた今までのヒットの生まれ方でした。
身を削っている姿は、ある種、あまり表に出してはいけないというか、一定のミステリアス性があるから「D」から「C」にぽんと上がれるということもあると思います。
この真ん中の線には分厚いプライドの壁みたいなものがあり、それを皆突き破ってこれないというのがあると思います。
SHOWROOMでは、そのプライドの壁を突き破って、今度は縦軸は努力軸だと思いますが、一生懸命努力して下に行ける子がとてもファンを増やしていると見ていて、全演者の分析をしていて思います。
やはりやる気があったり単純に頑張っている子が人気になります。
良い世界が来たと思っています。
新井 それについては僕たちも今Live Shop!の中で個人の方々とコンテンツを作るということをやり始めています。
これはLive Shop!もSHOWROOMも、CAMPFIRE ももしかするとそうかもしれませんが、エンターテインメントのビジネスが個人に依存すればするほど、逆に言えばプラットフォーマーのリスクがあるかと思っています。
簡単に言うと、人気者が大量に移籍した瞬間にそのプラットフォーマーはどうなるだろうか?ということです。
そこはある種のリスクとしてあると思いますが、そこについてはSHOWROOMはどう考えていますか?
プラットフォーマーは演者の移籍リスクをどう考えるべきか?
前田 SHOWROOMは、僕たちは「セミUGC」(※)と言っているのですが、コンテンツの90%以上が法人経由です。
▶編集中:UGC(User Generated Contents)とは、企業などの事業体ではなく一般ユーザーによって製作・配信されたコンテンツのこと。
SHOWROOMのアプリをぱっと見ていただくと、素人がやっていてクオリティが低いと一見思われるかもしれませんが、僕たちがオーガナイザーと呼んでいる事務所に所属しています。
オーガナイザーがコントロールを効かせているので、そういうことは起きません。
新井 とは言え、オーガナイザー自身もいつも色んなプラットフォームを見てはいますよね。
前田 その意味では僕たちとオーガナイザーとの信頼や絆を担保することは非常に大事で、それこそICCのオーガナイザー版みたいなコンベンションを開いたりしています。
また僕たちはデータ分析も得意なので、そういった蓄積した分析データをお渡しして、コンサルティングをするチームがいます。
そういったことも競争優位性となっているかもしれません。
新井 要するに、常にフィードバックや色々な還元をしていることと、信頼関係を維持していることで、ある種の密着性を作っている、ということですね。
前田 そうですね。
すでに多くの企業にオーガーナイザーとして参加頂いているため、一定のサンクコストがある中で信頼関係を一からひっくり返していくのは難しいと思います。
また、必ずしもITリテラシーが高かった訳ではない人たちが、「SHOWROOMでファンを増やするためにはこうする」と覚えているので、そこから移行するトランジションコストは大きいと思いますね。
新井 既にファンもいますしね。
前田 そうです。
新井 峠田さん、この辺はテレビが苦手な部分だと思います。
まさにマスメディアと言われている通り、パーソナルなところに対して個別最適化したサービスやコンテンツを作るのが非常に苦手な媒体です。
テレビは個と向き合うのが難しい中で、そこは難しいと割り切るのか、ネットの補完関係によって個とコンテンツやサービスを作っていく、そのような発想や議論はありえるのでしょうか?
峠田 あると思います。
しかしテレビという媒体はマスであることを考えると、ビジネスモデルは1度崩すと戻れないということがあり難しいとも思っています。
僕たちはたくさんの人に見てもらうことを前提にしている中で、どこまで身近なところに落としていくのかというところはなかなか難しいという気はしています。
ただ補完関係という意味では、インターネットを使いながらうまくやっていくということはできると思います。
例えば深夜番組など時間帯によってはそれに近いものもやっています。
また、僕たちはコンテンツを作るチームだという気概もあります。
だから、ある1人の人に頼りすぎるような作り方は、制作者が伸びるのか、制作チームとしてのスキルが上がるのかなど、場所だけを提供していて僕たちに未来があるのかということを考えると、難しいこともあるのではないかという気はしています。
バラエティもそうですが、スポーツも、報道、ドラマもある中では、「個人」ではやっていけない部分も多いので、その辺は色々考えながらやっていかなければいけないという気はしています。
新井 クラウドファンディングにおいて、ユーザーがどのプラットフォームを選ぶかという要素は、1つは単純に手数料でしょうか?
岡田 手数料とブランディングというか、「ここのジャンルが強い」ということがなんとなく日本においてできています。
今度Kickstarterの日本版も始まります。
▶︎編集注:Kickstarterは、2009年に米国で設立された、クリエイティブ系プロジェクトを主体としたクラウドファンディング・サービス。2017年9月13日に日本版がスタートした。
強みによって住み分けられるのか、もっと混沌としていくのか。
手数料というところもあると思いますが、属人的な関係だったりとか、ここを使ってみて嫌だったからこちらに行こうということもあると思います。
ただし、クラウドファンディング市場は非常にまだ小さいので、他のサービスに移られると小さな数字の部分では悔しい気持ちはありますが、より強いプレーヤーが増えていくことでマーケットの認知がもっと広まって動く金額がより大きくなっていくというところの方が大切だと思っています。
(続)
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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/立花 美幸/尾形 佳靖
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