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「革新的な新規事業/プロダクトを生み出すには?」6回シリーズ(その3)は、新規事業を生み出す人材の伸ばし方がテーマ。現リンクトイン日本代表の村上臣さんは、ソフトバンクとヤフーの二足のわらじの経験から、複数の仕事を持つことの重要性を語ります。ぜひご覧ください!
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 2D
革新的な新規事業/プロダクトを生み出すには?
Supported by 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(スピーカー)
大宮 英紀
株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部 グローバルソリューション事業ユニット長
林 信行
ジャーナリスト/コンサルタント
平井 陽一朗
BCGデジタルベンチャーズ
パートナー&ジャパンヘッド
村上 臣
ヤフー株式会社
執行役員CMO(当時)
(現:リンクトイン 日本代表)
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
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▶「革新的な新規事業/プロダクトを生み出すには?」の配信済み記事一覧
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最初の記事
1.「革新的である」とはどういうことか? ゼロイチの発明か、華麗な横展開か
1つ前の記事
2. 2007年、最初のiPhoneは「革新的」とは評価されなかった
本編
琴坂 大企業とスタートアップの間で新規事業の方法論に違いがあると思うのですが、どう見ればいいでしょうか?
平井 スタートアップと大企業とでは、持っているアセットと強みが全然違います。
大企業さんの場合は当然お金と体力があるので、それをフルにレバレッジして時には時間をお金で買います。
スタートアップの強みは意思決定のスピードであり、色々な調整事項がなくて済むという強みを生かして、ゴールに向かって愚直に走って行けるということです。
大企業とスタートアップには、そういった決定的な違いはあると思います。
ただ最近、大企業でのスタートアップ的な新規事業がクローズアップされています。
その背景には、アプリ完結、ウェブ完結で終わるサービスのみならず、従来のリアルのサービスを包含した新規事業が求められてきている中で、大企業もそれをやっていかなければいけないということがあります。
スタートアップの知を大企業は欲していますし、スタートアップは大企業のアセットとかキャパシティを欲しがっている傾向が見えます。
革新の種を、継続的なビジネスに育てるには?
琴坂 それは現状で難しい状況ですよね。
単に革新的なサービスを作ればいいという状況ではなくて、すでに存在するアセット等をうまく組み合わせていかなければいけない状況に、次第に変わってきているということですよね。
村上 革新の種を、継続的なビジネスにするのはまた違う、という話ですね。
種についてはスタートアップの方は得意だと思いますが、継続してビジネスとして意味のある規模にするというのは、別のノウハウやアセットがいるということだと思います。
そこはおそらく大企業とスタートアップの補完関係もあるでしょうし、M&Aとかが起こるのでしょうけど、やはり継続的に持続可能なビジネスにするというのはすごく難しい。
特にIoTがそうなのかもしれませんが、面白いものだといってもマネタイズのポイントが全然見えないとか、アプリでも色々なものができたけれど、どうやって儲けるのかとか。
カメラアプリもコミュニケーションアプリも山ほど出ましたけど、今どれくらい生き残っているかというと、5年前にブームになった時からほとんど残っていない。
これはスタートアップの多産多死の状況に似ているんですが、どうしても利益を上げない限りは続かないという、シンプルなビジネスの原則にどう乗っかれるかです。
それをどうやって生み出していくのかが、革新的だと後に言われるかどうかというところのポイントだと思います。
大企業に必要な、責任と覚悟を持たせる仕組み
林 大企業の場合、僕もいくつか関わらせていただいているんですけど、組織の中に隠れみのが多すぎますよね。
途中で逃げられる場所がありすぎて責任を取らない。
Appleは大企業になっても、世界最大のスタートアップだとずっと言っていて、Appleの社員と話しても「うちはなんだかんだ中小企業なので」とよく言うんですよ。
彼らの仕組みで面白いのは、大企業でありながらもプロダクトベースで、そもそもiPhoneを作っている時に、お互いに他にどういうチームがあるか社内でも知らない。
顔を知っている10人ぐらいのチームで動くんだけど、その中にDRI(Directly Responsible Individual)というのが1人いて、iPodならこの人、iPhoneならこの人という人が常に上へのリポートをしなければいけない。
Airレジで言うと大宮さんがDRIですよね。
何のプロジェクトであれ、その顔になっているのがDRIです。
そうすると会社はどうなったとしても、自分の立場を悪くするわけにはいかないから、その人もその人が引っ張ってきた人たちも皆、死ぬ気で頑張ります。
それが強いプロダクトにつながる。
それをやらないと途中で投げ出してしまって、俺は頑張ったんだけどね、と逃げ道を作ってしまうと思うんですよね。
責任と覚悟を持って、ものを作る仕組みがあれば大企業でもうまくいくのではないか。
琴坂 そこを深堀りしたいですね。
AppleのDRIは、例えばどこらへんにリポートしているんですか?
林 Appleの経営陣ですね。
週1でレポートをやっていて、進捗状況もずっと報告する。
大して進捗がない時ももちろんあるので、その時はさっとミーティングを終わらせる。
でも、何か大きな変化があると深めのディスカッションをやるそうです。
当事者が逃げられないようにする
琴坂 どういう仕組みが成功するのでしょうか?
大宮 特に新規ビジネスで言うと、当事者には本当に「思い込み」が大事だと思うんです。
よく言われるように、未来はこうだと言って自分が作用したことによって未来が来るパターンと、未来に対して自分が向かって行くことは、やっている本人からするとどっちか分からない状態です。
大企業でいえば、兼務をしていたり、特に上のポジションに上がるほど事業を見たり、売上規模に責任を持つようになるので、新規事業を育てることについては責任を明確にして、その当事者が逃げられないようにする。
責任を明確にする、というのは本当に大事だと思います。
琴坂 それはどちらかと言うと兼担して逃げられないようにする?
大宮 そうですね、新規ビジネスなんてやったら嫌なこともたくさんありますよね。
社内調整も面倒臭いですし、ユーザーも思った通りに使ってくれないし、自分で自信を持っても砕かれることが多いときに、それでもやり続けるという意思を持つにはそれなりの覚悟が必要です。
スタートアップだと自分も会社も含めそこで終了なんですけど、大企業になればなるほど逃げ道もあるしサラリーも出る状況です。
制度として責任者を明確にするのと、インセンティブ設計が制度として変わるかどうかは組織としての考え方として非常に重要だと思います。
新規事業を生み出す人材の伸ばしかた
平井 大宮さんに質問ですが、リクルートさんは人事の定期異動があるんですか?
大宮 あります、人事異動をしていった方が、人はより伸びるという考え方です。
必ずここに固定させるというよりも、3年ごとに色々なことをしてストレッチをさせるという考え方で、新しい領域でストレッチさせて、とにかく伸びしろを伸ばしていくことが多いです。
ただ昔は本のビジネスをしていたわけで、人もすごいかもしれないけど、仕組み自体がすごかったわけです。
仕組みがすごいときは、飽きさせないようにしながら経験を積ませて幹部候補を育てるやり方が一般的だと思います。
しかし、今後はスタートアップも含めてすぐにビジネスをスタートさせられる状況になると、その業界の専門知識をより増やしていく育成方法を取らなければいけないと思っています。
今までのように人材流通が是であるというよりも、シニアで同じ領域で活躍している方が人材としては素晴らしいというような流れも出てきています。
平井 私の知っている会社で、どこかは言えませんが、この人が絶対適材でこの人しかできないと言っても、2年ほどで絶対的に人事異動をして総務とか信じ難いところに行くんですよ。
ある意味やりきっていてすごいなと思うんですけど。
村上 総務のあともどこかに異動するんですよね?
平井 子会社に行ったりとかですね。
村上 総務から子会社ってそれ大丈夫ですか(笑)。
平井 ある程度固定して専門知識を深めて、新規事業であれば立ち上げからやりきるというところは重要なのかなと思います。
琴坂 大宮さんが明日から総務に異動だと言われたらどうしますか?
大宮 明日から総務ですか? それはちょっと自分の人生もありますので(笑)。
会社と自分の人生は対等ですからね。
村上 おっしゃる通りですね、僕が言うと深みが出てしまいます(笑)。
伸びる人材は、仕事の疲れを仕事で癒やす?
村上 ヤフーも結構リクルートと同じスタイルで、仕事を積極的にローテーションするタイプです。
今マネージャークラス以上だと、カンパニー全体が集まって一日中会議をする人材開発会議というのがあって、担当のカンパニーがこの人は今これをやっていて、将来これをやりたいと言っていると説明します。
例えばメディアビジネスをやっているけど、ECの経験をさせると伸びしろあるかもしれないですねというような話を全執行役員でやります。
それによって定期の組織変更時、人をアサインする時に、そういえばあんなこと言っていたからこっちにどうか、新しい仕事があるよという形で積極的に異動させています。
やはり伸びている人たちを見ると、複数の仕事を持っていたほうがパフォーマンスが出ています。
これは何らかの研究もあると思うんですけど、僕の感覚では、伸びている人たちには「仕事の疲れを仕事で癒す」という傾向があるのかと。
遊んでいても仕事の疲れが癒されないんだけど、僕も通信のソフトバンクとヤフーという二足のわらじを履いて10年以上ですが、ヤフーで辛い時は携帯電話を作る仕事をやったりとか、その逆もまた然りです。
そうすることで自分の精神も安定します。
違う刺激を得て別のところから思いもよらなかったノウハウ、例えばハードのものづくりからインターネットのものづくりのノウハウを得たりとか、自分の中でこういうやり方があるんだ、こっちで試してみようとやってみてうまくいき始めたりとか。
そういうことが経験上あるので、複数持っていると面白くなると思います。
(続)
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続きは 4. テクノロジーが進化する時代、革新性を打ち出す人材の特徴とは? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/横井 一隆/尾形 佳靖/戸田 秀成
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