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「最先端の研究者/クリエーターが描く未来像」9回シリーズ(その6)は、5名の登壇者が、おすすめのSF作品を語り合うという意外な展開に。『オデッセイ』『TIME』『LUCY』『第9地区』『新スタートレック』、皆さんはいくつ観たことがありますか? 登壇者の“SF愛”あふれる解説をぜひご覧ください!
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ICCサミット KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 8B
最先端の研究者/クリエーターが描く未来像
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
稲見 昌彦
東京大学先端科学技術研究センター 教授
博士(工学)
川原 圭博
東京大学 情報理工学系研究科
准教授
澤邊 芳明
株式会社ワントゥーテン
代表取締役社長
森本 典繁
日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 研究開発担当
(モデレーター)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
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最初の記事
1. 東大先端研・稲見教授が語る「人機一体のロボットシステム」とは?
1つ前の記事
5. “関節なしで動く”イモムシやナメクジはロボット工学の最前線?
本編
田川 それでは、ここで少し話題を振りたいと思います。
今未来の話もいくらか出てきていますが、未来というのはやはり、ドラえもんのような漫画であったり、フィクションに牽引される未来というのがかなりあるのではと思います。
SF、つまりサイエンス・フィクションというのは、何かが100個描かれている時に、そのうちの98個くらいは今と完全に一緒なのだけれど、残りの2個くらいに、決定的な科学上の嘘をつく。
テクニカルに言うと、その決定的な2個くらいの嘘が牽引する形で、その周りの状況が少しずつ脚色されていくというのがサイエンス・フィクションの作り方なんです。
僕はデザインを仕事にしていますが、「デザイン・フィクション」という手法ががあり、さらにその手法の1つに「スペキュラティヴ・デザイン」というものがあります。
今日いらっしゃる皆さんにも参考になるかもしれませんが、スペキュラディブ・デザインでは、最初に、今と基本的には同じ世界を描写します。
その中で、それこそ2個か3個くらい、生活様式とか、サイエンスではないところに、2箇所くらい嘘をつくんですね。
そうした時に、その人々の生活がどう変容するかという、その差分を見て、オポチュニティを探索するという手法があります。
▶参照:『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』(ビー・エヌ・エヌ新社)
未来を描いていく時のやり方というのはいくつかありますが、いずれにしても、過去の人たちが書いてきたSFにある程度感化される形で、皆さんも物を作っているところがあると思います。
そこで、ぜひ会場の皆さんに「これは読んで欲しい・観て欲しい」というものがあったら教えて欲しいなと思うのですが、どうですか?
全員でなくても、「これはぜひ」というものをお持ちの方でいいです。
火星での自給自足を描いた『オデッセイ』
川原 SFにはそれほど詳しくないので、軽いところから行きますが、今農業に興味を持っています。
水耕栽培でもいろいろなものが作れるので、植物は簡単に育つのかなと思うとそうではなくて、土の力などがとても大事です。さらに土の中の微生物のような話もあり、自然をコントロールして小さな地球を作っているんですよね。
農業というのは、本当は制御できないものをいろいろと制御していく世界なのですが、『オデッセイ』(原題: The Martian)という映画ではそれが描かれています。
火星に取り残された人が、あの手この手を使って、いろいろな野菜を作れるところまでいくという話がとてもリアルです。
農業の専門家から見ても完全にリアルではないにしても、ある程度リスペクトを感じる程度には精密に描かれていて、その熱い思いを感じて面白かったです。
田川 野菜を育てるシーン、ちょっと燃えますよね、理系少年としては。
稲見 ジャガイモばっかりで。
澤邊 私もあった!思い出しました。
時間が通貨として流通する世界を描いた『TIME』
澤邊 『TIME/タイム』(原題:In Time)という映画知っていますか?
田川 5年くらい前の?
澤邊 そうそう、腕にデジタルの表示が出るのね。
田川 どんなシナリオでしたっけ?
澤邊 人間が25歳から歳を取らなくなった世界で、自分の命というか、残りの寿命を言わば数字に換算して、それが“通貨”として流通しているんです。
だから大金持ちは長生きできるのですが、人が増えすぎないよう人口が抑制されている世界なので、お金の代わりに時間をたくさん使ってしまうとすぐに死んでしまうというストーリーです。
それが今の評価経済とシンクロしてきていると僕は感じます。
田川 時間がやり取り可能だと。
澤邊 そう、あれはとても面白い。
田川 自分の命のような、究極のICOを発行して人にあげるみたいなストーリーですね。
澤邊 そうですね、あれは観た方がいいと思います。
人工知能が知能を吸収してゆく『LUCY』
森本 私は、昔で言えばドラえもんが好きでしたし、『ミクロマン』という、人がすごく小さくなって普段入れないところに入っていったり、血管の中に入っていったりする話がとても好きです。
最近で言えば、『LUCY/ルーシー』(原題:Lucy)という人工知能の映画が好きです。
機械がどうやって知能を吸収していって獲得していくのかという部分は、非常に深いなと思いますね。
田川 なるほど……稲見先生、たくさんあると思いますがいかがでしょう(笑)。
稲見 ではライトな方から(笑)。
現実になりつつある『新スタートレック』の世界
稲見 あまり話したことはないのですが、『スター・トレック』のTNG(※)がちょうどいい塩梅になってきたのかなと。
▶編集注:『Star Trek: The Next Generation』(略称TNG)は、人気SFテレビドラマシリーズ『Star Trek(スタートレック)』の実写テレビ番組としての2作目。日本では『新スタートレック』の名称。
田川 いい塩梅になってきた、今見るべきと。
稲見 はい。
田川 ようやく。
稲見 ハイテクというか、研究は「熟成が大切」という話を以前したことがあったかどうか分かりませんが、研究ワイン議論というのがあって、研究は成果が出てそのままでは渋くて飲めないんですよ。
でも分かっている人は、その研究が「いいワイン」になるかどうかが分かるんです。
10年後にぜひとも飲んでください、という感じです。
そういう意味では、TNGで描かれていた、研究的ないしは実験的に使われていたようなホロデッキや、3Dプリンター的なものなど、そういったものが今ようやく実現してきています。
それが実現してきたときに世の中の関係性がどうなるのかということが、きちんとドラマとして描かれているという点で、もう1回見直すべき価値があると思いました。
田川 なるほど。
映画も多かったですが、皆さんは普段からSFを読んだり観たりしていますか?
稲見 飛行機では、ずっとSF系の映画を見ています。
しかも、自分のお金を払ってまで見たくないような、駄目なSF映画をちょっと見ておこうという感じで見ています(笑)。
田川 そういうものから着想を得たりすることはありますか?
稲見 大抵……ないですね。
(会場笑)
でもたまに、先ほどの『TIME』のように着想を得ることはありますね。
森本 映画で言うと、『Short Circuit 』(1985年)という映画で1つだけとても頭に残るシーンがあって、あるロボットに、過去の映画を全部覚え込ませたんですね。
そしてロボットがしゃべるセリフは全部、映画のセリフから取ってくるのですが、その時のシーンをディスプレイに表現するんです。
「おはよう」と言う場面では、ディスプレイに「おはよう」と出てくるのだけれど、これをハンフリー・ボガートが言ってみたりだとか。
いろいろな「おはよう」のシーンが出てくるのですが、そこから場面に適した映画のシーンを出してくるんです。
非常にナレッジと、サーチと駆使して、その時々に感性的に合うものを出してくるという、もちろんそれは映画だからフィクションなんですけれど。
田川 それ研究でもありませんでしたっけ?
確かAIの文章の合成のところで、映画の脚本で学習をかけると、結構まっとうなことを言うという研究です。
森本 最近IBMが取り組んでいるものの1つに、2分くらいの映画の予告ムービーを、AIを使って自動的に作るというのがあります。
例えばその映画がドラマなのか、アクション映画なのか、SFなのかを判断します。
そして過去の予告ムービーからパターンを学習して、例えばホラーだったら叫び声が多いところや、暗いところが急に明るく変わるところなど、そういうパターンを拾い出して、2分だったりの所定の時間内にバチっとまとめたものを作ります。
それが雰囲気的には似ているかもしれません。
稲見 田川さんはどうでしょう?
“身体性とは何か”を考えさせられる『第9地区』
田川 僕のお勧めは、『第9地区』(原題: District 9)です。
南アフリカにいきなり、エビみたいなエイリアンが出てくる映画です。
まだ観たことのない人は、最高なので、観ていただきたいですね。
澤邊 あれは面白いね。
田川 確か、人格の移動の話も出てくるし、ロボティックスの話もあるし。
稲見 兵器が滅茶苦茶マニアックでいいですよね。
田川 兵器がマニアックですよね。
最後は衛星から打ったりしますよね、確か。
稲見 あの映画は、「身体性とは何か」という話題が全部入ってきて、それからアイデンティティをどこに感じるかという話もあります。
田川 そう、結構深いですよね。
まぁ、エビが最高なんですけど、一番(笑)。
稲見 基本的にはエビと(笑)。
田川 そうしましたら、セッションも後半に入ってきたので、ここで皆さんのビジョンというか、イマジネーションを伺いたいと思います。
よく「未来」と言った時に、何年先くらいを未来と想定するかという話がありますが、何だかよく分かりませんが、皆「2030年」と言うんですよね。
何となく2030年と言うんです。
では仮に2030年を一番手の届きそうな未来だと置いた時に、今と決定的に変わっているところは何だと思いますか?
(続)
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続きは 7. 東大・稲見教授「2030年には『人型』という概念はなくなる。私はコップになっているかもしれない」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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