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「リアルテック・ベンチャーが世界を変える」7回シリーズ(その2)は、サイボーグベンチャーMELTINを率いる粕谷さんが、同社のサイボーグ技術が可能にする未来の暮らしを解説します。朝起きたらアメリカにある身体に“ログイン”して仕事をこなし、夜はイギリスのバーで一杯。そんな生活が可能になるそうです。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月3〜5日 京都開催を予定しております。
ICCサミット FUKUOKA 2018のシルバー・スポンサーとして、内田・鮫島法律事務所様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 10D
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Supported by 内田・鮫島法律事務所
(スピーカー)
粕谷 昌宏
株式会社メルティンMMI
代表取締役
平田 勝則
コネクテックジャパン株式会社
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ 取締役副社長 /
リアルテックファンド 代表
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1. 注目リアルテック・ベンチャー「MELTIN」「メタジェン」「コネクテックジャパン」は世界をどう変えるのか?
本編
永田 おそらく、会場にいらっしゃる方々は皆さん賢く、非常に幅広い知識を持った方ばかりだと思うので、個々の技術の理解やそれが何かということをいちいち説明する必要はないと思います。
今日ぜひ、皆で話したいなと思っていたのがこれです。
「自社の技術の果てに実現される世界とは?」という問いを、登壇者の皆さんに事前に聞いています。
「この技術はもっとこんな風に使えるのではない?」というようなやり取りを通して、自分たちの生活や世界がどう変わるのか、というのをイメージできたら面白いなと思っています。
最初はMELTINの技術です。
サイボーグ技術が発達すると「どの星にも住める」「生活圏が莫大に広がる」と書いてありますが、これはどういう意味でしょうか?
粕谷さん、解説をよろしくお願いいたします。
サイボーグ技術により、身体の制約がなくなる未来
粕谷 どの星にも住めるというのは、火星移住計画でコロニーをつくろうとか、そういう話ではありません。
どの星でも「生身で生活できる」ということです。
宇宙服も別に着なくていい、そういう世界です。
永田 生身というのは?
粕谷 「生身」の定義が少し理解しづらいですよね。
サイボーグの身体を、自分の身体として認識できるということです。
別の星にコロニーをつくったところで、コロニーの部屋の中は結局のところ地球環境なので、それは地球にいるのと同じ、さらに言えば地球で部屋の中で閉じこもっているのと同じです。
せっかく違う星に行ったのであれば、その星の風を感じたいですよね。
「あそこの星って、すごく放射線が強くて肌が焼けるんだよね」みたいな、そういう会話が生まれると面白いかなと思います。
福田 その星にはどうやって行くんですか?
粕谷 普通にロケットとかで行くと思います。
永田 ある種、「義体」を持っていくという話ですよね。
粕谷 そうです。義体を持っていく。
平田 それは『攻殻機動隊』のファンしか分からない話だと思いますが(笑)。
永田 ここにいる人ならば、攻殻機動隊を見ていない可能性は少ないのではないでしょうか。
▶参照:「義体化」については、以下の記事をご覧ください。
2029年、かくして機械と人間は融合する:松田卓也──「攻殻機動隊」をめぐる5つの考察(1)(WIRED.jp)
粕谷 2つ目の「生活圏が莫大に広がる」という意味は、自分の体がもはやボトルネックにならなくなるので、体を複数持つことが可能になるということです。
先ほどの話にも出ましたが、別の体に意識だけを飛ばして生活するということができるようになります。
当然、他の星まで行ってしまうと通信の遅延などがあるので簡単ではありませんが、例えば地球の中であれば、「“本体”は日本にいるのだけれど、朝目覚めて『行ってきます』と言ったら次の瞬間にはアメリカの体にログインしていて、帰りにイギリスのバーでちょっと飲んで帰る」といったことが普通にできるような世界になっているというイメージですね。
福田 空も飛べますか、これ?
粕谷 空も飛べると思います、ジェット的な感じで飛ぶのか、羽が生えているのかは分かりません。
永田 僕からの投げかけは「現在の技術の果てに」という位置づけでしたが、今のお話はどれくらいリアリティがあるのですか?
粕谷 どれくらいリアリティがあるか……まさにこれをリアルにすることを目指して今、研究開発をしています。
永田 なぜ、それをやりたいと思ったのでしょうか?
粕谷 「人間は『創造性』という素晴らしいものを持っている」というのが大前提としてあります。
僕がもともと、こういったサイボーグ技術をやりたいと思ったのはかなり小さい頃でした。
小さい頃というのは、もしくは小さい子というのは、発想が豊かですよね。
それなのに、できることは大人に比べて圧倒的に少ないわけです。
それを考えると「自分はこんなに色々なことを考えているのに、実際にできることは何でこんなに少ないんだろう」と感じ、何か段々と、自分の体というのは実はすごく“足枷”なんじゃないかと思うようになりました。
そうすると、空想の世界ではないですが、人間が考え付くありとあらゆるものを何も縛られずに実現できる世界が作りたい、と思いました。
最終的に、僕が考えるサイボーグ技術が実用化すると、一番ぶっ飛んだところではこんなことになるかな、というのを今回出してみました。
永田 なるほど。
今のサイボーグ技術は、筋電(筋肉の収縮に伴って発生する電流)をベースにしていますよね。
この世界を作ろうと思うと、他にセンシングしないといけない生体情報にはどのようなものがあるのですか?
粕谷 最終的には、やはり脳です。
脳が根幹だと思っているので、脳からありとあらゆるデータを抽出することができて、かつ今の自分と同じ、もしくはそれ以上のスペックを持つハードウェア/身体、この2つを手に入れることができれば、今お話したことが普通にできるようになると思います。
永田 ありがとうございます。井上さん、ご質問ですか?
サイボーグ化で変わる「人間の在り方」とは?
井上 浄さん(以下、井上) リバネスの井上です。
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井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学特任准教授(現任)、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授(現任)、慶應義塾大学薬学部客員教授(現任)に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者。多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。株式会社ヒューマノーム研究所取締役、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会委員、NEDO技術委員、株式会社メタジェン技術顧問、株式会社サイディン技術顧問、等兼務。
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サイボーグを操る側の人間の進化がすごく気になります。
つまり、手が3本になった時にきっと脳が色々な反応を起こして、それに対応するように拡張していくと思います。
これを子どもの頃からずっとできるようになる世界がそこに存在していると、先ほどもおっしゃっていましたが、人間自体の進化が大幅に進むと思います。
そうなると、その時の人の在り方というのは、どのような感じになるのでしょうか?
僕のイメージはまだそこまで全然届いていなくて、ガンダムでいうニュータイプぐらいまでしかありません。
あのように何かを操れる人がどんどん優位になっていく、操る能力が強い者ほど残っていく、というような選択が起こるのでははにでしょうか。
そうなった時に、その世界はどうなっているのだろう、ということが気になっています。
粕谷 私は誰しも、“限られた人間”になれるのではないかと思っています。
最初に、どの星にも住める、感覚すらも拡張されて宇宙に実際に行く、地球環境でないところに存在する感覚をも受けることができる、という話をしましたが、そのようにインプットが増えていくとともに、その刺激を受けて脳が変化/成長するので、アウトプットも増えると思っています。
今までこの地球上で、例えばせいぜいマイナス数十℃ぐらいからプラス数十℃ぐらいまでの環境で生活している人間と、マイナス200℃ぐらいからプラス500℃ぐらいまでの環境で生活している人間というのは、考えが大きく変わると思います。
そのため、サイボーグになることによって自分の創造性を解放する機会を得ることができます。そうすると、もう……
井上 人が今から枝分かれするんですね。
粕谷 そうですね。
だからこそ、その先に破綻が待っているのか、もしくは素晴らしい世界が待っているのかというのは、結構丁寧に舵取りをしないといけないと思っています。
今でも、色々な生き方があるように、人の在り方の多様になってくるだろうと思います。
体の形とかをも含めて、色々な生き方の選択があるという未来になるのではないでしょうか。
井上 面白いです。ありがとうございます。
福田 僕からも質問していいですか? 人間がサイボーグになることと、ロボットがAIを持って登場することというのは、どのような違いがあるのでしょうか?
サイボーグ化した人間と、AIを獲得したロボットの違い
粕谷 最終的に目指しているところは一緒なのかなという気もします。
ロボットが人間的なものを獲得していくというアプローチと、人間が機械的なものを獲得するアプローチというのは、右回りなのか、左回りなのかみたいな感じの違いでしかなくて、最終的に行き着くところは同じです。
ポイントとなるのは、僕たちが何をしたいか、ということかなと思います。
あくまで、人間という種の延長上でサイボーグという文脈なのか、それとも僕たちの存在は別にどうでもいいから、次のステップとして新たな“種”を生み出したい、というアプローチなのか、それによって変わるのではないでしょうか。
そして僕はどちらかというと、人間の延長上にあった方がいいなと思っているので、AIという文脈よりは、サイボーグをやっているわけです。
永田 下手したら、15歳ぐらいまでは「人間生活」を送らないと、サイボーグに拡張してはいけないというルールがないといけなくなるかもしれません。
粕谷 もしかしたら、未来にはそうしたルールがあるかもしれませんし、逆に15歳まで生活したという記憶を植え込めばいいのかもしれませんし、そこは分からないですね。
永田 完全に攻殻機動隊ですね。
福田 それは「人」と呼べるのでしょうか?
粕谷 そうした操作を、どこまでやっていいのか、ということですよね。
15歳までの生活の記憶を与えると、もしかするときちんと15歳まで生きた人に比べて少しねじ曲がった人ができてしまうかもしれないですし、そうなるということが分かった場合は、きちんと15年間生きた方がいいでしょう。
そこはやはり、やってみないと分からないですよね。
福田 もう1つ聞いてもいいですか?
その未来というのは、今の見積もりで、何年後ぐらいにできる想定なのでしょうか?
粕谷 本当にここまでの段階に到達するのは、僕が死ぬまでにできたらいいな、という感じです。
福田 だいぶ近いですね。
永田 ただ脳みそだけ残せば、いつ「死んだ」と言えるのか分からなくなりますね。
粕谷 そうですね。
僕がもともとこのサイボーグ技術に取り組もうと思ったきっかけは、「なぜ自分がこの世界に生まれて、なぜ自分がこの世界に存在するのだろう」「この世界はそもそもなぜ存在するのだろう」という疑問があって、それを解明せずには死ねないという思いがあったからです。
この無限とも言われる世界を理解するには、無限の時間が必要ですし、無限の理解力が必要なので、サイボーグなどのアプローチで自分を拡張しなければいけないだろう、という考えがありました。
だから、僕個人としてはそういう方向に進みたいなと言いつつも、僕たちMELTINとしてそういう存在になることを強要しているわけではなくて、選択できるよと、あくまでも選択肢を増やすというスタンスですね。
永田 なるほど、ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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