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8.「子どもが売られない世界はつくれる」カンボジアでの“売らせない・買わせない”ための活動を通じて(かものはしプロジェクト村田さん)

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「ソーシャルビジネスが世界を変える!」全14回シリーズの(その8)は、かものはしプロジェクトがカンボジアで実施した2つの取り組みについて、共同創業者の村田さんが解説します。そうした活動の甲斐もあり、カンボジアの売春宿に従事する児童数は激減したのだそうです。その実績をもとに、村田さんは「子どもが売られない世界はつくれる」と力強く語ります。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 12F
ソーシャルビジネスが世界を変える!(レクチャー編)

(スピーカー)

今井 紀明
認定NPO法人D×P
理事長

高田 修太
一般社団法人HLAB / 株式会社エイチラボ 共同創設者・理事
プロマジシャン

田口 一成
株式会社ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長

村田 早耶香
特定非営利活動法人かものはしプロジェクト
共同創業者

(スピーカー&モデレーター)

三輪 開人
特例認定NPO法人 e-Education
代表理事

「ソーシャルビジネスが世界を変える!」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 孤立する10代の若者にセーフティーネットを(認定NPO法人D×P 今井 紀明さん)

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7. かものはしプロジェクト創業のきっかけは「12歳で騙され、1万円で売られた少女」の物語(共同創業者・村田 早耶香さん)

本編

「売らせないための活動」〜貧困家庭への仕事の提供

村田 まず売らせない活動についてですが、貧しい家庭のお母さんやお姉さんを雇って、雑貨工房を経営しています。

なぜなら、農村の最貧困層の母子家庭や親がいない世帯から被害者の子どもたちが出ているからです。

農村でお母さんやお姉さんに仕事をつくれば、その収入で暮らせるので、出稼ぎに行かなくてすみます。

40歳のシングルマザーが母子で住んでいる家は、写真のとおり壁がはがれてしまっています。

この男の子は何歳ぐらいに見えますか?

(会場から、3~4歳?との声)

そうですね。3~4歳に見えます。

カンボジア語で「何歳?」と聞いたら「僕は11歳です」と言っていました。

私の腰の高さくらいしか身長がなくて、栄養が足りないのかと思い聞いてみたら、1日に1食しか取っておらず、味のしみたゆで卵とご飯少量だけを食べている状態でした。

このままでは誰かが出稼ぎに行かないと生活できないので、お母さんを私たちの工房で雇って、安定した収入を提供していきました。

お母さんは月収が安定して入ってくるようになったので、7年後には家の建て替えをしました。

同じ場所に立派な家が建ち、三食食べられるようになりました。

男の子は小学校に行き始め、5年生になっていました。

2回進級できなかったのですが、学校に通い続けています。

家には米俵もありますし、牛も飼えるぐらいになりました。

将来的にはコンクリートの家を建てたいと言って、建築材料を買いためています。

このように貧しかった人たちが安定した収入を得ることによって、三食食べられて、子どもが教育を受けられるようにする活動をしています。

写真のように、雑貨を作っています。

全員が最貧困層出身ですが、貧困から脱却することによって、この地域では子どもの危険な出稼ぎは起きない状態になっています。

その指標として、この地域では小学校の就学率が100%になっています。

出稼ぎのために学校を辞めていなくなる子が、基本的にはいない状態になっています。

「買わせないための活動」〜カンボジア警察への研修の提供

村田 ただ、安定した収入の提供だけでは被害者はなくせません。

子どもを買う人がいる限りは、違う地域から子どもが売られてしまいます。

そこで「買う人を減らす」「需要を減らす」ための取り組みを、途中から始めました。

需要を減らすには、加害者逮捕が最も有効です。

加害者が逮捕されないので、海外からカンボジアに子どもを買いたい人が集まってきます。

そして売春ビジネスは儲かるので、違法だと知りながら、18歳未満を雇って働かせているのです。

私たちはその現状に対して、摘発を増やし、加害者の逮捕件数を増やすことによって被害を減らそうと考えました。

そのためには、警察の意識と能力を上げていく必要があり、国と組んで警察官に研修を行いました。

例えば16歳の子どもが売春宿にいたときに、今まで警察はその子が被害者であるのに、彼女たちを逮捕して牢屋に入れていました。

その子たちは被害者であるという認識を持ってもらい、保護することを研修で伝えています。

売春宿からホテルに連れていき児童ポルノを撮影する人がいましたが、ホテルの前に警察官が立っていても、10歳の子が被害にあっているとは思っていないので、これまで調べていませんでした。

年頃の子だけでなく、小さい子も被害にあっているので、「ちゃんと質問をして、その子が18歳未満の被害者であれば、加害者を逮捕してください」と伝えています。

地元警察への働きかけで、加害者逮捕件数は飛躍的に向上

村田 このようにして法律の内容を理解してもらい、動けるように訓練していった結果、加害者の逮捕件数は飛躍的に伸びました。

簡単に子どもを買えなくなったため、そうした目的の海外からの客も来なくなりました。

売春宿も摘発をされては儲からないので、売春宿をやめたり、ビジネスを鞍替えしたりするようになりました。

その結果、被害件数はだいぶ減りました。

このグラフは、売春に従事している人に占める子どもの割合です。

2000年頃には30%ぐらいいましたが、現在では2%ぐらいまでに減っています。

このように18歳未満の被害者数については大幅に改善しています。

私たちが活動を始めたころは、被害者保護施設には定員を大幅に上回る被害者が保護されていて、どこもいっぱいという状況でしたが、今保護施設に行くと、対象者が全くいなかったり、いても1人しかいないという状況になってきています。

街中では取り締まりが厳しくなって、通報の電話番号が貼られています。

以前は客引きをしていたトゥクトゥクやバイクタクシーのドライバーの中には「今は警察が捕まえに来るから、無理だよ」と言う人や、「自分は絶対に関わりません」と書かれているジャケットを着たりする人も出てきています。

それぐらい改善されてきました。

子どもが売られない世界はつくれる

村田 カンボジアは、この15年間で問題の状況はすごく改善しました。

一番の要因は、法律をつくって警察がそれを実行できるようになり、取り締まりが厳しくなったことです。

さらに、毎年7%ずつ経済成長をしていて、貧困層の数が劇的に減少しています。

その結果、危険な出稼ぎに行く子どもの数は減っていて、小学校の就学率は上がり、卒業する修了率も上がっています。

そういったことが重なり、カンボジアでは被害者数が一気に減少しました。

私がカンボジアに住み始めたころは、問題解決に40~50年かかるのではないかと、色々な先輩たちから言われていました。

「君が還暦を迎えるころにならないと絶対なくならないから、早く帰国して日本で青春を謳歌したほうがいいよ」と言われていました。

しかし、きちんと取り組めば子どもが売られない世界はつくれるのだということを、これまでの活動を通して実感しています。

(続)

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続きは 9.【世界最大の被害者数】インドの「子どもの人身売買」を解決するために、日本から支援の輪を をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成

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