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「IoTやAIによって人間社会はどう変わるのか?」【K16-1A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その5)は、「現代の魔法使い」を呼ばれる筑波大学 落合陽一さんにデジタルネイチャー研究の具体的な各プロジェクトについてお話し頂きました。どこまで思考が追いつけるか、試されます。是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年9月7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 1A
「IoTやAIによって人間社会はどう変わるのか?」
(スピーカー)
落合 陽一
筑波大学助教 ・ メディアアーティスト
河瀬 航大
株式会社フォトシンス
代表取締役社長
矢野 和男
株式会社 日立製作所
理事 研究開発グループ技師長 兼 人工知能ラボラトリ長
(モデレーター & スピーカー)
中村 洋基
PARTY
Creative Director / Founder
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最初の記事
【新】IoTとビックデータの活用で3分間の歯磨きが劇的に変わる(PARTY中村)【K16-1A #1】
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15歳の子供が5年前の修士論文レベルのことを3日間で実現できる(落合陽一) 【K16-1A #4】
本編
「Fairy Lights in Femtoseconds」
落合 事例を紹介すると、例えば、空中メディアをするために、ホログラフィックに作ったプラズマを扱って、3次元的に触れる映像を作るというのが、去年リリースした中で1番面白かったです。
昔はこういうのを機構部品で作っていて、鏡を振っていました。
それを液晶で、ホログラムを使ってフォーカスさせることで、コンピューテーショナルに問題を解けるのが面白い点です。
これがボクセル(デジタルデータの立体表現における最小の立法体の単位)になるには、ピークエナジーがキーなのか、どれくらいエネルギー量が違うのかを調べていき、将来的にタッチインターフェースを作ったときに、サイズに応じて、どのくらいのエネルギーパルスが必要なのかを研究しています。
つまり、メディア装置を作っています。例えば、こういうのを作ったら、指にどれだけ穴が開くのか、指先が削れても火傷はしない、などを調べています。
中村 この場所は、空気しかないのでしょうか?
落合 ただの空気しかないです。空気をプラズマ化してタッチディスプレイにしています。
「Leaked Light Field from Everyday Material」
レーザー加工や穴を開けるのが得意なので、木や鉄のディスプレイ化など、マテリアルをどうやって加工するかという加工技術に興味があります。
例えば、鏡がある瞬間からライトフィールドディスプレイになるには、どういう加工をしないといけないのかを考えています。
(参考資料:「ライトフィールドとは」(東京工業大学))
こうして考えていくと、向こうから見ると「止まれ」という表示がされていて、反対側から見ると「進め」と表示されているようなミラーが簡単にファブリケーション出来ます。
(参考資料:Leaked Light Field from Everyday Material)
アイシン精機さんという車会社と研究しているので、車部品が多いのですが、片方から見るとニューヨークの時計で、もう片方から見ると日本の時計が出ているような鏡が出来たら面白いのではないか、と思いながらやっています。
加工技術でどうエネルギーパルスを強めるか、どういう焦点形で作るかというのは、コンピューテーショナルな問題で、それをどうやって解くかを材質ごとに調べています。
つまり、ハードウェアを作るためのメソッドをソフトウェアで考えるということですね。物質にどうやってデータを付加するかというのを考えています。
例えば、腕時計は所有したいですよね?
実質の時代においても、物質は欲しいです。そのために、どんな加工法がいいのかをコンピューテーショナルに解いています。
触覚ディスプレイ
あとは、最近ですと、触覚ディスプレイに興味があります。
マニピュレーションの精度が上がるとしたら、1品に100万円くらいしてもいいんですよね。例えば、心臓の手術のために、心臓のように脈打つディスプレイがあってもいいと思っていて、磁性流体を制御して作ろうとしています。
人間はVRで触覚が必要な時というのは、ただ見ているだけのモノは必要ないのですが、遠隔地で真面目に作業しないといけない時には、指先のフィードバックがものすごく重要です。
そういった用途に特化した触覚インターフェースは絶対必要になると思って作ろうとしています。
本当は空中に表示された方がいいので、空中触覚ディスプレイを、プラズマと超音波を足し合わせて作ると、ちょうど良く解像度が細かい空間と解像度が粗い空間を出せるようになって、心臓を空中に映し出して腫瘍に触れるようになります。
VRゴーグルをして手術をしても、指先にしっかり触覚を感じられるような空間が作れます。
ディスプレイは、人のモノを見たい欲求とかなり関係があります。ただ面白いディスプレイを作るのではなくて、どういう物理現象が背景にあって、ソフトウェアシミュレーションにするために物性をどう組み込むかというのが重要だと思っています。
霧でしたら霧の散乱係数と、それをコンピューターの中でモデリングしたときにどういう反射分布を持っているのかというのを調べさせるということです。
ディスプレイは、モノによって輝度が違ったり光り方が違ったりするなど、色々な要素の間でトレードオフがあるので、それを計算して作っています。
この実験のときはとても面白いことがありました。25キロヘルツのスピーカーが必要だったのですが、論文を書く1週間前に足りなくなってしまって、(中国の)深センに電話をかけて依頼したら、5日間で送ってくれて、ハードウェア工場の凄さに感動したことがあります。
コンピューターが人間を制御する
最近では、人間をどうやって視覚的にマニピュレーションするか、あるいは聴覚的に操るのかということに興味があります。人自体の行動をソフトウェアに落とし込むときの係数を探したり、見栄えを作ったりしています。
最終的に僕が信じている生態系は、人間はコンピューターによって制御されて、コンピューターがあらゆる物質に関与するような生態系です。それをデジタルネイチャーと呼んでいます。
(参考資料:「Optical Marionette」)
後ろからラジコンでシースルーのHMD(ヘッドマウンドディスプレイ:頭部接着ディスプレイ)を操ると、Aに進んでいるはずの人がBに着きます。これも、どうやったら行動をソフトウェアに落とし込めるかということですね。
例えば、利き目に対して画像を動かすと、人間が何メートル、何方向に進むというのを測定出来るのですが、実験を繰り返すことで、それをソフトウェアで実装すれば、人間を操作出来るということですね。
Human Coded Orchestra
これは、人間の耳に、カラオケのガイドメロディーのような音が当てられると、人間はきちんと音程をとって歌えるものなのですが、先ほどの実験は光によって人間をマニピュレーションする実験で、こちらは音でマニピュレーションするというものです。
【参考資料】
Human Coded Orchestra<
練習したことがない人が歌えるようになるんですね。どうやってコンピューターで音波分布を解くかということに取り組んでいます。
中村 壇上にいる人たちだけ、メロディーが聴こえているということですよね。
落合 5人セットにすれば音痴を解消出来るので、最小5人いればハーモニーをつくることが出来ます。
ロボティックス
最近で言うと他に興味があるのは、ロボティクスですね。
やがて、人間はテレロボットでどこかに入ると思うのですが、遠隔地にいるロボットの骨格をどうやって3Dプリンターで出すのかが重要で、汎用のロボットが必要なのではなくて、汎用のロボットを作るためのソフトウェアは何かと考えています。
制御と3Dプリンター出力の両方において、どうしたら、どのアルゴリズムで解けるかということに取り組んでいます。
そうすると、人間の動く関節と、どの骨をどれだけリッチに再現するかが問題なので、モーターの数はそのリッチさに応じて決定出来ます。それをテレプレゼンスさせるのに視覚情報はどうやって転送するのかですね。
例えば、くまモンとミッキーマウスでは、違う骨格が入るわけですよね。それをどうやって考えるのかということですよね。人間の行動をどうやってソフトウェアロボティクスに落とし込めるかということに取り組んでいます。
そういうアクチュエーターを数理的にどうやってコンピューター解析するかにも非常にも興味があります。
有限要素法で計算したものをアクチュエーションするアクチュエーター自体も、プリンター、シミュレーション、ソフトウェアで解いています。
IoTになって何が変わるかという話ですが、ハードウェアの基板を持っているのではなくて、ソフトウェアでどうやってデザインするかというのが最も重要な要素になってくるわけです。
そうすると、物理現象をどうやってモデリングして、ソフトウェア、現象、インタラクション、作品というパイプラインの中の最大公約数を見つけられるかというのが勝負になります。
これを繰り返しやり続けたところが強いのではないかと思っています。
中村 70%くらいは分からなかったですが、何かすごいんだなというのは分かりました(笑)。
(編集注:編集メンバーも分からなかった!)
落合 あとでYouTubeを探してもらえれば事例が出て来ると思います。
(編集注:探しました! )
大体の研究がソフトウェアとハードウェアのパイプラインで、現象を見つけてインタラクションを作るというのをずっとやっています。
中村 ソフトからハードというのは分かりました。
落合 パイプラインに最大公約数というのがあるんですね。
例えば、木や鉄に穴を開けるときに、最大公約数がどこにあるのかをひたすら探します。
それがキーで、この肌感覚をソフトウェア系のグローバル企業は持っています。同じアルゴリズムで車も人も動くので、ここだけやっておこうという狙いを持っているんですよね。
研究をたくさんしていると、それが何となく見えてきたなと思っています。
中村 とにかく、インターフェースが興味の対象なのでしょうか?
落合 人間をどうやって数理モデルで解いて、最終的にどのアウトプットにするかは自由なので、そこは比較的遊んでいます。中のコアの数式は結構真面目に調べています。
中村 有難うございました。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
続きは (日立の)人工知能”Hくん”はものすごく少ないデータで学習し、最適解を導く」(日立 矢野) をご覧ください。
【編集部コメント】
続編(その6)では、日立製作所 人工知能ラボラトリ長 矢野さんに、AIに対する目的設定の重要性と、日立製作所の人工知能「Hくん」を活用した各プロジェクトについてお話し頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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