恋愛、感情伝達、「共に生きている感」…音声コンテンツはこんなに凄い! | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

3. 恋愛、感情伝達、「共に生きている感」…音声コンテンツはこんなに凄い!

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「ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力とは?」、全6回シリーズの(その3)は、音声メディアの特異性についてディスカッション。「声」が伝える共感や愛情、実験で実証された感情伝達の高さ、ながら聞きができる機能性などなど、音声がメディアとして持つ強みを再発見する議論が続きます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。最新情報は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのベクトル にサポート頂きました。



【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 5B
ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力とは?
Supported by ベクトル

(スピーカー)

井上 佳央里
Radiotalk株式会社
代表取締役

嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

中村 洋基
PARTY Founder / Creative Director ヤフー株式会社(MS統括本部ECD) / 電通デジタル(客員ECD)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

中竹 竜二
株式会社チームボックス 代表取締役

ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力


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最初の記事
1. 元ハガキ職人、ラジオで活躍するスピーカーが集結! 音声コンテンツの魅力を語り尽くす!

1つ前の記事
2. Radiotalk井上さんが解説、「しゃべりが上手い」のはどんな人?

本編

アフガニスタンのことわざ「恋の半分は声でできている」

 ラジオは聴いている人が勝手に、「パーソナリティが俺のために話してくれている」と思うじゃないですか?

中村 そうそう!

 自分一人のために話してくれると思うことを、僕は「銀座のママ理論」と言っているのですが、銀座のクラブに通う客は全員、「ママは自分のことが好きだ」と勝手に思っているのと同じで、ラジオのリスナーも、「パーソナリティは自分のために話してくれている」という理論があるなとずっと思っていましたが、この前、なぜ「自分のことが好き」と思うか、ある本を読んでいて分かりました。

ある仕事でマーシャル・マクルーハンの『グーテンベルクの銀河系』という古典の名作をもう1回読み返していたら、素晴らしいことが書いてありました。

グーテンベルクは、もともと中世の英文学の研究者です。

中世は活版印刷が無いので、写本したり口頭で文学を伝えたりしていて、書いたものも「音読」していました。

活版印刷ができてから「黙読」という世界が広まりましたが、グーテンベルクは活版印刷ができたおかげで、大量に流通するなどいろいろいいこともあるけれど、それまで声でメッセージを伝えていたのが黙読するようになってしまって、それが残念なことだと本の中で書いていています。

中村 分かります。

 彼はイヌイット(エスキモー系諸民族の1つ)の研究もしていますが、イヌイットは言語でお互いにやり取りするとき、身体を動かしたり、とても感情豊かに声で相手にものを伝えたりするそうです。

声はそもそもメディアとして、人に共感や愛を伝えます。

この話を『BRUTUS』の西田善太編集長にしたら、彼が本当に素晴らしいことを言いました。

「嶋さ、アフガニスタンのことわざを知ってる? 恋の半分は声でできているんだよ」と。

「かっこいい!」と思って。

もう今日言いたいことはほぼ終わった(笑)。

(一同笑)

中村 西田さん、言いそう(笑)。

渡邉 (挙手して)ハイ! ハイ!

中村 渡邉君どうぞ(笑)。

音声だけのほうが感情を正しく感じ取れる

渡邉 今、ハガキ職人になった気分です(笑)。

採用されるかな?みたいな。

(一同笑)

今の話の学術的裏付けになるようなものがあります。この前、嶋さんとも話していたのですが、イエール大学のマイケル・クラウス(※)博士の実験で、1,800人の学生に、ある映像を見せるものです。

▶編集注:アメリカの言語学者。マイケルE.クラウス – Michael Hayden (actor) – Wikipedia (japan2.wiki)

映像に映っている数人の登場人物が、冗談でからかい合っている様子を視聴して、彼らが何を考えているかを当ててもらう実験です。

視聴側は、「映像と音声があるグループ」と「映像だけのグループ」と「音声だけのグループ」各600人ずつに分かれて、正答率を比較しました。直感的には映像と音声の両方があるグループの正答率が一番高いと思いきや、なんと音声だけのグループが、映っている人たちの感情を一番正しく当てたんです。

相手の感情を感じ取るためには、顔を見るのではなく、耳を澄ました方がいい(Newsweek日本版)

中村 へえ! 面白い!

深井 なんでだろう?

渡邉 面白いですよね。

さっきの中村さんの話で、音声のいいところは「隙間の時間」に入り込むことができるからだという話が出てきたけれど、「感情の隙間」に入り込むことができるからだとも言えるかもしれません。

人間の心、つまり想像力を惹起するという嶋さんの話もあるし、それだけではなくて、受け取る時の感情そのものがちょっと刺激されていて、しゃべっている人の心に寄り添っているのかも。

さらにもう1つ別の実験の話をすると、シカゴ大学のニコラス・エプレイ教授の調査によると、自分と異なる主張を持った情報に触れる時に、テキストを読む場合は、「こいつ、頭悪いな、何言ってんだ」という反応になるのが、声だと「僕と違う考えの人がいるな」という反応になるらしいんです。

The Humanizing Voice: Speech Reveals, and Text Conceals, a More Thoughtful Mind in the Midst of Disagreement(SAGE journals)

深井 すごく面白い!

渡邉 文字情報と音声情報では、入ってくるときに心構えが全然違うんですね。

いつの間にか心が開いてしまうというような力が、実は声にはあるのかもしれません。

深井 受け手が受けるときに、もう違うんですね。

それはすごい感じますね。「そんなことまでばれる?」というくらい、僕がしゃべっている時の感情を読み当ててくる人がいるんですよ(笑)。「なんでそんなことまでばれているんだろう?」と。

(一同笑)

音声だからこその「ま、いっか感」

中村 ICCのセッションは文字起こししてくれるじゃないですか? あれ結構直したりしませんか?

(深井さん、渡邉さんが頷く)

僕はめちゃくちゃ直してしまうんです。

申し訳ないなと思いながら、「俺、こんなこと言ったっけ?」みたいな(笑)。

だから、かなり受け取るほうの感覚も変わってくるということだと思うんですね。

音声だと流れていってしまうので、それほどセンシティブにチェックしないんですが文字にすると硬くなるし、厳密に直してしまう。音声だからこその「ま、いっか感」というか。

テレビや文章になると言えない話が、ラジオだと言えてしまう。楽屋オチ感というか身近感というか。

 流れ去っていくということですよね。

中村 そうそうそう。

 これは大事ですよね。最近、深夜放送のパーソナリティたちが、「ネットニュースにするんじゃないよ」と言うのは、すごく分かる気がします。

「これをしゃべると、またネットニュースにするんだろう?」とか、伊集院 光さんたちが言いまくっているのは、すごく分かる気がしますね。

中村 Clubhouseが録音や再編集を基本的に許していないというのも、そういうことが分かってやっているのかなというふうに感じて、粋には思いますけれどね。

音は「五感」で聴くものである

渡邉 ある小説家が言っていたのですが、「声というのは消え入る時にしか存在しない」と。

だから「音が留まる」という表現がある時に、「留まる」といった瞬間、「とど」の音も「まる」の音も消えていってしまう。だからこそ声は尊いのだと。発話された瞬間に、現前していると思いきや、すぐ失われていくというような。

深井 おしゃれだなあ、おしゃれ。

渡邉 朝吹真理子という、私の妻の言葉ですが(笑)。

中村 ショーペンハウエル(ドイツの哲学者)とかかと思った(笑)。

深井 めちゃくちゃいいことを言っていますね。

 先ほどのグーテンベルクも、音だけなのだけれども、音を聴くためには五感を総動員しなければいけないというふうに書いています。

音は五感で聴くものであるという、眼だけで文字を追うと、それはできないのであるという。

渡邉 それは本当にそうですよね。

深井 それは音を聴いていたら眼で見ていないけれど、さっき言っていた、想像するみたいなことも含めてということですか?

 そうだと思います。中世の英文学で培った人間の受信する能力が、本ができたことによって後退したのではないか、みたいなことなんですよね。

「ながら聞き」で、より日常生活に近くなる

井上 嶋さんが選考委員を務めていらっしゃる、ACC(ALL Japan Confederation of Creativity)のラジオCM賞などは、すごく想像力をかき立てるものが多いなと思っています。

2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 入賞作品リスト ラジオ&オーディオ広告部門 Aカテゴリー

例えば「ザーッ」という音が上がって、「あがりました」と言って、雨が上がったのかなと思ったら、それは実はトンカツが揚がった音だった。音のクリエイティビティというか、しっかり聴くとすごく面白いものが音声コンテンツにはあると思います。

一方で「ながら聞き」できてしまうところもあります。機能性でいうと、アイロンがけしながらでも聴けて、半分ぐらい聴いていないような、でもそこが利便性でもあるみたいな、そういう機能的な良さも一方であると思います。

音声コンテンツを聴くときに、「こういうときにはこういうコンテンツを聴いたほうがいい」みたいな、使い分けをするようなイメージなのでしょうか?

 ACCは広告・メディアと得意先からなる業界団体で、毎年テレビCMやラジオCMなどの優れた作品を評価しています。ACC賞という日本の広告の中で最高峰の賞があるのですが、それのラジオ部門のCMですね。

中村 さっきの渡邉君の話(Part.2)に近いのだけれど、ながら聞きできるのは機能的なマーケティング上、「すでに人の視覚は、動画コンテンツなどいろいろなものに奪われているけれども、聴覚だったらまだ空いている時間があるから、そこに攻めていける、攻略できる」みたいなことをおっしゃる人もいます。

それはそれでその通りで、耳が空いている時間は眼が空いている時間より多いから、そこを取っていくというメディアとしてのマーケティング戦略があると思いますが、ながら聞きできるということは、より本当に生活に近くなるというか、人生に近くなるというか、何ですかね、あの感覚は。

日常生活に忍び寄る、「共に生きている感」を、「ながら感」は演出しますよね。

カエサルの最後の息をわれわれは吸っている!?

渡邉 あとは声にまつわる肉体性みたいなものが大事だと思っていて、誰かが声で空気を震わせていて、それが耳に届くわけじゃないですか。

まあ、一度電気を介するかは置いておいて。

身体性みたいなものはすごく大事だと思います。すごく普通の話をしてしまうと、先日サマリー代表の山本 憲資氏の軽井沢の新居にお邪魔して、バーベキューしたりワイワイしたりしていました。夜、バングアンドオルフセンの大きいスピーカーをブンブンいわせて、みんなで90年代の懐メロをかけまくるみたいな楽しい時間があったんです。

お隣の別荘が40mぐらい離れていて誰も住んでいないので、爆音を鳴らせるんですが、その時に音を耳だけではなく、身体全体で震えを聴くのは本当に尊いなあと、うっとりしたんです。普通のことだけど。

最近のBluetoothスピーカーは結構いい音が出ると思っていたけれど、その時の音に比べたらあれ、全然良くないぞ、と気づきました。音と身体性みたいなことについて改めて考えさせられます。関連してもう一つ僕の好きな話があります。1300年前に「ブルータス、お前もか」と言って、カエサルが刺されますよね。

ブルータスお前もか(コトバンク)

あの時の空気の分子を、今われわれも呼吸しているという話があるんですよ。突然関係のない話と思うかもしれませんが、ちょっと聞いてみてください。

カエサルが刺された時、カエサルはきっと追われていて息が上がっていた。

その1回の呼気の体積がおよそ1L、体温がだいたい37℃、1気圧だったとして、理想気体で近似(※)して計算する。酸素や窒素の平均的な大気の滞留時間が5,000年と言われているので、まだカエサルの吐息は、充分大気中に残っているわけです。

mol(モル)の計算と公式①【感覚でカンタンに考える化学】 (juken-benkyou.info)

死後1,300年の間にまんべんなく大気が混ざったと仮定すると、われわれが1回吸う500mlの中の空気の中に約2.7個カエサルの最後の呼気の分子が入っている計算になります。

私たちは「シーザーの空気分子」を吸っている(BOOKウォッチ)

まあ、「だから何?」って感じですが(笑)、基本的には身体性をありありと感じるというのは、「身体」と「想像力」の両方があると思います。

つまり物理的に身体を震わす、鼓膜を震わす、空気が触れているのをいま・ここで感じる。そしてそれを超えて、スピーカーの向こうやラジオの向こうに思いを馳せること、つまりカエサルの息に思いを馳せることというのは、すごく密接につながっている。これは単に脳の中で起こっていることというよりも、もうちょっとリアルな触れられる距離のようなところや動物的なところだろうな、と思いますね。

深井 それを聞いて僕も思ったのが、僕はすごく音楽が好きで、それこそ爆音でベースを聴くと、身体で聴く楽器だから、「これがベースだな」というふうに思うのですが、それと一緒ですよね。

だから音声が真に迫る理由が何かと言ったら、人間は音楽を昔から好きなわけですよね。

音が人間にとって、非常に親しみやすいものなんだということなのかなという気がします。

渡邉 そんな気がします。

やっぱり古代から、洞窟の中で絵を描きながら、みんな太鼓を叩いて身体を揺らして、同じリズムに身体を預けていたはずですよね。

深井 そこは今でも変わっていなくて親近感が湧いて、みたいな話なんでしょうね。

(続)

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続きは 4. 音声コンテンツは、睡眠時間以外のすべてに入り込める をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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