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メディアに理念がない限り、情報の質や正確さは失われる【K16-7C #6】

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「今後のメディアはどう進化するのか?」【K16-7C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その6)は、コンテンツの「質」をどのように評価するか?について、主にエブリー吉田さんとNewsPicks佐々木さんの考えをお話し頂きました。注目の論点です。是非御覧ください。

ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。



登壇者情報
2016年9月7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 7C
「今後のメディアはどう進化するのか?」

(スピーカー)
佐々木 紀彦
株式会社ニューズピックス
取締役 NewsPicks編集長

藤村 厚夫
スマートニュース株式会社 執行役員
メディア事業開発担当

古田 大輔
バズフィード・ジャパン 創刊編集長

吉田 大成
株式会社エブリー
代表取締役

(モデレーター)
瀬尾 傑
株式会社講談社
第一事業戦略部長兼デジタルソリューション部担当部長

「今後のメディアはどう進化するのか?」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】今後のメディアはどう進化するのか? -”NewsPicks”と”SmartNews”のいま【K16-7C #1】
1つ前の記事
「読まれた」と「バズった」は違う – BuzzFeed古田氏が語るコンテンツの”質”【K16-7C #5】

本編

瀬尾 吉田さんは、コンテンツの質の部分をどういう風に考えておられますか?

或いは、それを数値化して経営の中に取り入れていく方法については、どういう風にお考えですか?

吉田 実際に先ほどご紹介した4つのメディアは、僕が編集長をしている訳ではなくて、各メディアごとに編集長をつけています。

まず大事なこととして、メディア毎にどういうコンセプトや理念で進めるかについてを、最初に必ず決めるようにしています。

決めないことには、KPIが数字遊びになってしまうというか、それだけを追い求めてしまうメディアになってしまい、情報の正確さや質が損なわれる方に組織として力学が働いてしまうからです。

先ほどの料理系のコンテンツであれば、「明日すぐに作れるレシピ」であったり、ママ向けのコンテンツであれば、「ママの課題を解決するメディア」といったことは必ず決めています。各メディアに編集長をつけているのは、そのコンセプトや理念に基づいた情報であるかどうか?正しい情報であるか?を配信する前に最後は人の目で確実にチェックするためです。

そして、そのコンセプトに基づいてどう数値に落とし込むかなのですが、まずは動画で情報を提供しているので、最後まで観て頂いた率というのは、とても大事にはしてはいますね。

やはり観て頂かないことには、何かしらの次のアクション、つまり良かったのかや、悪かったのかや、意見が言いたいのかということは何も発生しないので、やはり「最後まで観て頂けるコンテンツ作り」をとても大事にしています。

その次に、エンゲージメントを大事にしています。ただ、料理系ですとシェアもし易いですし、「いいね!」もし易いのですが、ファッション系はなかなかシェアしづらいんですよね。

例えば、Facebook上で「おフェロメイク」という少しピンクっぽいメイクをしてシェアしたり、「男にモテる○○」というのをしたりしてしまうと、この人はモテたいのだなというのが分かるので(笑)、表立ってエンゲージメントしづらいコンテンツもあるのです。

そういう意味では、メディア毎に、エンゲージメントの指標として何を見るべきかというのは変えるようにしています。

最終的に何を大事にしているか?と言えば、エゴサーチ(自分の運営しているサイト名で検索してその評価を確認すること)を頑張っています。

「DELISH KITCHENを見て料理しました」や、「KALOSを見て化粧の楽しさを知りました」や、「MAMA DAYSのコンテンツを見て良かったです」や、「Timelineを見ることによってこういうことが起こっていたのを知りましたと」いった内容になります。

母数は一番少ないのですが、そこを結構大事にしながら見ているので、社内でそれらを全てカウントし、定性的なコメントがあれば全部残して、それを基に振り返ることでクオリティを上げる努力や、自分たちが届けている情報が正しいのか、役に立ててるのか?を確認しています。

瀬尾 最後まで観られる動画、これは実際に制作されてみるとコツが分かりましたか?

どういう動画が最後まで視聴されるのでしょうか?

吉田 すごくノウハウっぽい感じになってしまうのですけれども、動画の冒頭にある程度結論がないと最後まで観て頂けません。今までのWebの記事で例えると、タイトルや最初のサムネイルに似ているような気がします。

一方で、(動画を)無駄に長くして視聴時間を稼ごうというのも違いますし、(視聴)完了率を上げようと思って短くし過ぎると、次回以降このメディアは中身のないメディアだと思われてしまうので、適切な長さにする必要があります。

必ず45秒にしようとか1分にしようという決まりが逆にないんですよね。

ニュース系の動画であれば、2分や3分というものもありますし、ママ系のものですごく簡単な「How To」を教える場合は30秒のコンテンツもあるので、それぞれによって長さを変えることを大事にしています。

瀬尾 ニューズピックスさんは、その点はいかがですか?

どのコンテンツのためにユーザーが課金してくれたか

佐々木 定量と定性とがあるのですが、定量では圧倒的に、お金を払って頂けたかが大きな指標になりますね。

どのコンテンツのために皆さんが課金して下さったかというデータが、毎日送られてくるんですよ。

それを見て、このために皆さんがお金を払って下さったのだなというのが分かります。有料課金(での利益)がどう上がるかは、ページビューと比例するわけではありません。ですから、そこが一つ大きいところですね。

瀬尾 有料会員になって下さる記事と、なって下さらない記事とでは、どこが違うのですか?

佐々木 色々なところでお話していますが、今、5つくらいの法則があります。

けれどもやはり、人によるところが大きいかもしれません。記事の中身もあるのですが、誰が出ているかにも左右されますね。堀江さんの記事などは、(有料会員になって読んで下さる方が)多いですよね。

瀬尾 定性化される部分ではいかがですか?

佐々木 それはまさしく我々のメディアの特徴で、コメントがどんどん付きますよね。多いものであれば1,000以上のコメントがついたりして、そこでダメなものは酷く言われる訳ですよ。

ですので、読者の方々からの定性的な評価と、そしてやはり社内の他のメンバーやエディターなど、プロからの評価がどうであるかという視点も大事にしています。

プロから、或いは読者からはどう見えるかという定性的なところと、先ほど申し上げた定量的なところとの総合的な評価ですね。

瀬尾 プロからの評価というのは、社内の声ということですか?

佐々木 基本は社内ですね。それをもっと広くできたらいいと思うのですが、それは少し大変なので、今後何らかの形でやりたいなと思います。

瀬尾 間違えていると炎上しますものね。

佐々木 そうですね。常に叩かれたりして。

NewsPicksのコメントが編集のPDCAになる

藤村 Pickerの方々のコメントも、経営的な材料になるのですか?

佐々木 経営というか、皆見ていますよね。

エディターなどは、コンテンツ作る過程で、「ああ、こういう反応があるんだ」、「ここの突っ込みが少し甘かったな」とよく見ていますね。

それ自体がすごくフィードバックになるというか。毎日PDCA(Plan・Do・Check・Action)を回しているような感じです。

ただし、読者の方々の声を聞きすぎても良くないところもあるので、そこを自分の中で上手く取捨選択することが大事なポイントだと思いますね。

瀬尾 どれくらいの規模感を目指しているのかによっても変わってきますよね。ニューズピックスの場合、そこが結構難しい点かなと思って見ています。

要するに、経済メディアは、深くいけば深くいくほどお客さんがいなくなるというか、そういう世界でもあったりするし、また、多くの人に読んでもらおうと思うと、なかなか専門家を満足させられないといったところもありますよね。

それについては、どのように管理されているのですか?

佐々木 まだまだ伸ばさなければならないなと思っています。

最近よく言っていますが、西海岸、東海岸ということで、どちらかというと東海岸、つまり大手町や丸の内の大企業の方々がいらっしゃるエリアでは、若手にはかなり広がってきたのですが、まだまだですので、そういうところを広げると、規模感的にはまだまだ拡大できると思います。

けれども、その後は地方に広げていくというよりは、世界に広げていくイメージでしょうね。恐らくそうなると思います。

瀬尾 なるほど。

(続)

続きは 編集と経営を分離する – BuzzFeedが重視するメディア組織倫理 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

【編集部コメント】

続編(その7)では、BuzzFeedが重視する編集と経営の分離について、登壇者で議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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