編集と経営を分離する – BuzzFeedが重視するメディア組織倫理【K16-7C #7】 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

編集と経営を分離する – BuzzFeedが重視するメディア組織倫理【K16-7C #7】

Pocket

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!
ICC読者交流会を5/31 開催します!  申し込み締切間近

「今後のメディアはどう進化するのか?」【K16-7C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)は、BuzzFeedが重視する編集と経営の分離について、登壇者で議論しました。メディア企業ならではの論点です。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております



登壇者情報
2016年9月7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 7C
「今後のメディアはどう進化するのか?」

(スピーカー)
佐々木 紀彦
株式会社ニューズピックス
取締役 NewsPicks編集長

藤村 厚夫
スマートニュース株式会社 執行役員
メディア事業開発担当

古田 大輔
バズフィード・ジャパン 創刊編集長

吉田 大成
株式会社エブリー
代表取締役

(モデレーター)
瀬尾 傑
株式会社講談社
第一事業戦略部長兼デジタルソリューション部担当部長

「今後のメディアはどう進化するのか?」の配信済み記事一覧


瀬尾 どれくらいの規模感を目指しているのかによっても(コンテンツの質の評価は)変わってきますよね。ニューズピックスの場合、そこが結構難しい点かなと思って見ています。古田さんはいかがですか?

「クレイジー」なスピードで拡大するバズフィード

古田 年末までには恐らく社員数が50人を超えるのですが…

藤村 それはすごいですね。

普通、オンライン専業のスタートアップメディアで、そんなにものすごい勢いで人を増やしているところはないですよ。

古田 バズフィードの他のエディションの編集長に、クレイジーだと言われました。(笑)

そのくらいのスピードで、大きくなっています。

藤村 有名な記者が辞めましたと聞いたから、B社やF社に転職するのでしょうと言ったところ、そんなことを聞かないで下さいと言われましたよ。(笑)

古田 少し答え辛いところになってきているのですけれども(苦笑)、それくらいのペースで規模を大きくしていきたいし、その規模に見合ったコンテンツを作っていきたいと思うのですけれども、やはり我々はニュースも、エンターテイメントも、ライフ情報系みたいなものも、動画もやっています。

それ以外にビジネス部隊もいれば、ネイティブ広告を専門的に作る広告の専門家達がいる。

それである程度やっていこうと思ったら、それくらいの規模感は作っていかないとなかなか回らないと思っているのです。

瀬尾 50人の中で、コンテンツを作っている人はどれくらいいらっしゃるのですか?

古田 今は編集部員が30人になりました。

編集部は30人で、編集部以外の仕事をしている人が16人です。

瀬尾 エンジニアはどれくらいいらっしゃいますか?

古田 基本的なエンジニアリングは全てアメリカでやっています。

ただ、エンジニアリングにも色々あります。ツールを作る人や、データ分析をする人等、色々います。データ分析側で入って来て頂いた方の中には専門家達もいますので、それは日本でやろうと言っています。

瀬尾 なるほど。

バズフィードが重視する編集と経営(広告)の分離

瀬尾 テーマの一つである収益性についても少しお聞きしたいと思います。

バズフィードは、アメリカではネイティブ広告で知られているメディアですが、バズフィード・ジャパンさんはどういう体制でネイティブ広告をされているのですか?

古田 バズフィードは、編集と経営・広告との分離を、「Church and State」、つまり政教分離だと言ってかなり重視している会社です。

編集コンテンツが、「これは広告なのではないか?」と思われたり、所謂ステマ(ステルスマーケティング、つまり消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること)疑惑を持たれたりするのは絶対に嫌なので、そこを曖昧にすることはありません。

僕はその編集部の「長」(責任者)な訳ですが、ビジネス・広告については基本的には語らないでね、全く無視してやってねという風に言われているので、概論しかお話できないのですが、グローバルで、バズフィードの収入は、ほぼ100パーセントがネイティブ広告からのものなんですよね。

ですから、日本も同じ形態でやっていくことになっています。

瀬尾 それを作るために、バズフィード内に別の部隊があるのですか?

古田 バズフィード・ジャパンの中に、CEOがいて、編集長(僕)がいて、編集部があって、こちらにクリエイティブコンテンツ、つまりネイティブ広告を作る部隊がいて、そこにはそこのトップがいます。

ネイティブ広告って、コンテンツ数はそれほど作れないですよね。スポンサーがいないと作れない訳ですから。

でも、我々編集部は色々なコンテンツを作っていて、特にどういうエンターテイメントのコンテンツが人々に受けるのかについての大きな知見を持っています。

それがバズフィードのネイティブ広告が好調な理由の一つでもあります。

瀬尾 編集と広告の分離というのは新聞社の場合もそうなのですけれども、例えば古田さんの場合、CEOから編集においてはどういう目標、ミッションを与えられているのですか?

古田 基本的には編集に関しては僕に全権委任されているので、コンテンツの中身に関して相談をすることも全くないですし、編集部員の採用に関しても特に相談をすることはありません。

僕に与えられたミッションは、とにかく編集部をグロースさせて、バズフィード・ファンを増やしていくことです。

新しい価値やポジティブな影響を日本のオーディエンス(読者)に広げていこうというミッションの部分だけ共有して、後は全て全権委任されています。

瀬尾 先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、ファンを作っていこうという時、ファンの数はUU(ユニークユーザー)で見ておられるのですか?どのような指標で見られているのでしょうか?

街頭インタビューで体感したバズフィードファンの熱量

古田 色々な数値ですね。

もちろんUUも見ます。また、僕らのコンテンツは自社サイトだけで見られている訳ではなくて、色々なところで観られているので、コンテンツビューの総計がどれだけ伸びているのかも見ます。

繰り返し観て頂ける方々、そして「バズフィードがいいね」と言って下さる方々をどれだけ増やしていくことができるか。

僕が一度オーストラリアに出張に行った時、バズフィードの街頭取材のやり方を教わるために、オーストラリアの編集長と2人で街頭取材を行ってみたことがあるんですよ。

その時にすごいなと思ったのが、20歳そこそこくらいの女性に、「バズフィードなのですが街頭取材に答えていただけますか?」と言ったら、そのシドニーの女性が、「バズフィード?本当に?Cool!私にインタヴューしてくれるの?最高!ちょっと待って。面白い答えを考えるから」という反応だったんですよね。

僕は朝日新聞で記者を13年やってきて、街頭インタヴューで「朝日新聞?素晴らしい!」と言われたことはありませんでした。

「ちょっと待って。面白い答えを考えるから」なんて言ってもらえたことは、13年間1度もありませんでしたから。

瀬尾 朝日新聞の記者だと、どちらかというと飲み屋で絡まれるパターンの方が多いですよね。(笑)

古田 感動して、これだなと思いました。こういうオーディエンスを掴まないといけないな、あれこそが本当にファンだなと思いました。

瀬尾 編集と広告の分離について、吉田さんはどういう風にお考えですか?

吉田 まだ社員が10人しかいないので、分離できるほど人がいません。(笑)

制作に関していうと、日々のコンテンツを制作するメンバーの中から、更にブランドコンテンツを作るメンバーを厳選するというようなやり方をしています。

新聞社の実態は編集と経営の分離がない

瀬尾 そもそも編集と広告は、分離した方が良いのでしょうか。

デジタルメディアというのは、小さくやった方が良いですよね。

新聞社やテレビ局といった大きなところは、編集と広告の分離を言っていても構わないと思うのですが、こういう風に小規模に運営していこうという場合、本当の意味で分離する方が良いのでしょうか。

ただそれは見え方の問題で、新聞社は建前として編集と広告とが分離しているというけれども、実態的には全く分離していないですよ。記事が大スポンサーの影響を結構受けていますからね。

その辺、どう思われていますか?

吉田 そうですね。女性向けライフスタイルメディアにおいては、広告動画の企画・制作の部分は分ける必要はほとんどないかなという気はしています。ただし、広告売上の責任をもっている広告営業は人を分けています。

日々配信しているコンテンツと、広告主さんと一緒に作っているコンテンツ、共にファンの方に届けるコンテンツであるため、広告掲載の可否やコンテンツの内容については編集長が必ずチェックするようにしています。普段見てもらっているファンの方にとって何が大事か?という観点だと分けないほうが良いのかなと。

逆に一緒に取り組むことで、広告主さん達は何をメッセージとして届けたいのかということと、購買データや広告配信後のアンケート調査などから、僕らが提供しているメッセージがきちんと届けられているかどうかが分かり日々のコンテンツ制作にも活きてきます。

「Timeline」のようなニュース系のメディアに関しては、正直これはどうするべきかを、お聞きしたいと思っているくらいです。

まだ広告販売を行っておらず、今は敢えて女性向けライフスタイルメディアで収益をきちんと上げながら、ニュース系メディアはコンテンツをどんどん作ることだけに集中しています。

僕らみたいな新しく、メディア出身者から始まったわけではない会社に、今後どういう組織的・事業的・倫理的な課題が起こり得るのだろうかと考えさせられます。

ニュースを扱う組織の独立性を担保する

古田 その件に関してですが、つい最近バズフィードで発表があり、グローバルで組織変更が行われたんですよね。

日本でも日本語訳された記事が幾つか出たのですが、そこではバズフィードがニュース動画をどんどん強化していくという話がメインでした。

でも実は、根本的な部分にはもう少し別の思想があるんです。皆さんもおっしゃったように、ニュースというのは、やはり最も分離しなければならない分野じゃないですか。

藤村 エンターテイメントとしっかり分けようということですよね。

古田 はい。

今までは、バズフィード・ニュース、バズフィード、バズフィード・モーション・ピクチャーズ(動画部隊)という3つの構造があったのですが、それをを解体して、バズフィード・モーション・ピクチャーズの動画部隊の内、ニュースを作っていた人達だけバズフィード・ニュースに入って、バズフィード・エンターテイメントグループの方に、バズフィード・モーション・ピクチャーズの大方の部分がグッと入ったのです。

これでここをきっちり綺麗に分けたんです。

そこには、ニュースはニュースで、少しでも疑いを持たれないようにきっちり分けましょうという意図があります。

ただ、エンターテイメントに関していうと、先ほど申し上げたような、エンターテイメントで人を楽しませるということと、ネイティブ広告で人を楽しませるということには非常に近しい部分があるので、そこに関しては知見の共有をしましょうという風な組織構成にしたという感じですね。

ですから、ニュースに関しては絶対に分けましょうということです。

藤村 今日たまたま僕がFacebookでご紹介したのですが、世界140媒体社、雑誌社と書かれていましたけれども、ネイティブ広告の制作体制について経営幹部に聞いた統計があり、世界的にはやはり7割くらいが同居してしまっているということなんですよね(「Majority of Publishers Use Their Own Editorial Staffs to Produce Native Ads」)。

一方で、30パーセントくらいは、アドスタジオ的な、組織的な分離を行いつつあって、僕の知っている範囲では、やはり組織を分離する方向で動いているとは思います。

やはりネイティブ広告というのは、過去のような制作体制だと、今後目指しているスケールに追いつかないはずなので、生産体制やプロダクティビティ(生産性)を上げていくという意味でも、組織をきちんと分離した方が良いという議論があるのです。

編集⇔広告の人的交流は必要

藤村 ただ、瀬尾さんの質問に僕が感じるところがあるのは、広告の制作は、編集の業務よりレベルの低いものであるというようなキャリア的な位置付けをしてしまうと、良いものができてこないということです。

ですから、人的な交流はきちんと行われるべきで、キャリア・スキル的にも人間が行ったり来たりするべきなのですが、組織は分離する方向である方がよいと思っています。

「Church and State」と言われましたけれども、そこにどっぷり記者が入り込んでしまうと、色々匙加減が出てしまうようなことがあるといけないという点では、分離した方がいいと思うのですが、やはりクリエイティビティというか創造的な能力でいうと、広告主も編集の高いレベルを期待しているので、そういうものが使えるような仕組みになっていくというのが、大きな流れではあるのかなと思いますね。

古田 そうですね。

勘違いされたくないのですが、我々バズフィードも、広告を作る人を下に見るということは全くなくて、完全に並列の仲間として認識しています。

ニュースをやる人間がファクトを突き詰め、我々がそれをバズフィードの価値観に基づいて出すということですね。

広告を作る人達は、スポンサーのボイス、或いはスポンサーが持っている価値を、バズフィードっぽく見せてくれるクリエイティビティのプロ達ということで、そこはもう完全に分けています。

瀬尾 僕らが現場でよく言っているのは、今有体に言えば、ニュースを作ったり、コンテンツを作ったりすることではあまり儲からないので、そこにお金を遣いづらくなっているということです。

広告制作の方が予算が沢山あるので、そちらで新しいことをしてくれと。質の高いもの作ってくれと。

昔、西武セゾンなんかが売り出した時なんかは、やはりそうでしたよね。

糸井(重里)さんなんかと一生懸命やって、広告が文化を作っていくみたいな。百貨店そのものよりも広告の方がいいみたいなことがあったので、そういうものが出て来ると面白いなと思っているのです。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

続きは 「書きたいことを書けるのは有料課金ができるメディア」NewsPicks佐々木氏が占うメディア業界の未来 をご覧ください。


【編集部コメント】

続編(その8)では、会場からの質問を受け付け、メディア業界の集約や、広告代理店の役割等について議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

Pocket

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。