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ICC FUKUOKA 2025のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)」、全5回の③は、リバネス井上 浄さんが登場。シーズン3と以前に執筆した論文から、人間の「間」、境目について考えます。生物学的な「間」もまた、人間関係を築くのにとても大切なようで……詳しくは本文をぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM
(スピーカー)
青木 俊介
チューリング
共同創業者 / 取締役CHRO
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
リバネス
代表取締役社長 CCO
中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター
(モデレーター)
村上 臣
スマートニュース
VP of JP Product
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)」の配信済み記事一覧
村上 ありがとうございます。
間について話す前に、人間の知性について、青木さんから投げ込みを頂きました。
ここからは、人の間と書いて人間なので、間の話をしていきましょう。
まず、浄さんにマッドサイエンティストぶりを発揮していただきます。
浄さんは、薬学、免疫学を専門としている、非常に賢い方です。

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井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役社長 CCO
博士(薬学)、薬剤師。2002年、大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教、慶應義塾大学特任准教授を経て、2018 年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者であり経営者。
北里大学薬学部客員教授、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授、経産省産業構造審議会委員、文部科学省技術専門審査員、JST START-大学推進型およびスタートアップエコシステム形成支援委員会委員等も務め、多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。
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井上 ありがとうございます(笑)。
石川 名前が斜めになっているので、既にマッドぶりが伺えますね。
名前を斜体にする人、初めて見ましたよ(笑)!
井上 僕もこういうスライドでは、初めて見たね(笑)。
(一同笑)
村上 あ、これは自分で作ったわけではないのですね。
井上 はい。名前を斜めにするんだ、と。
村上 その方の、浄さんについての認識がそうなのではないでしょうか。
石川 まさに間が生まれていますね。

もしも「あいだ」がなかったら
井上 では早速、本題に入りましょう。
色々研究をする中で、間はすごく大事です。
研究内容もそうですが、研究を進めていく上での人間関係もそうです。
(村上)臣さんからお題を頂いたので、間とは何かについて、皆さんに分かるように説明しようと思います。
間とは、物が並んでいるときの空間であり、連続している事と事のあいだの時間であり、ちょうどよい折、しおどき、ころあい、タイミング(機会)です。

まあ、当たり前のことを言っているのですが、「何かと何かのあいだ」です。
意識することはあまりないかもしれませんが、これがあることは感じていると思います。
では、この「あいだ」がなかったらどうなるのか、考えたことはありますか?

すごく近い、ぎちぎち…間がなくなると、どうなるかと言うと…。
間抜けになるのです。

石川 ちなみに…。
井上 あれ? ここはドカンを想定してたんですけど!?

村上 思いのほか、外しましたね(笑)。
井上 僕が間抜けになりましたね(笑)。
(一同笑)
井上 間の作り方、間違えましたね(笑)。難しいなあ。
村上 このスライドをもらった時、どうかな〜と思ったのですが。
井上 いや、それ先に言っておいてよ!
石川 おじさんになると、こういうことをしたくなるのですよね。分かりますよ。
井上 そうなんです、ウケないだろうと思いつつ、ここに間抜けという間を作ろうかと。
村上 桂 三枝よろしく、椅子から転がり落ちればいいのかと色々考えたのですが、放置することにしました(笑)。
▶︎桂文枝語る『新婚さん』での“椅子コケ”が始まったワケ(琉球新報)
石川 ちなみに、間という漢字について調べたところ、昔は門(もんがまえ)に、日ではなく月だったらしいです。
門から月明かりがふっと入ってくる感じ、あれが間なのです。
間がなくなるということは、門が閉じれば月明かりが入ってこなくなるということです。
井上 真っ暗になってしまうと。間抜けですね(笑)。
石川 間抜けになると。
しっかり間を作り、出入りするのが健康にとって重要
井上 それで、間の重要性については中村さんと石川さんがお話しされると思うので、僕は間を作るにはどうしたらいいか、間がなくなったらどうしたらいいかに注力しました。

参加されていた方は思い出していただきたいのですが、シーズン3でお見せした、皆さんよくご存知の一次リンパ組織である、脾臓の切片です。

皆さん、よくご存知かと…(笑)。
村上 これは、このセッションで何度も登場している、重要な図ですので、ぜひ覚えて帰ってください。
井上 脾臓を輪切りにした図です。
緑がB細胞、赤がT細胞で、左は若いネズミ、右は歳をとったネズミの脾臓です。
歳をとると、赤と緑の境目が非常に曖昧になり、これは免疫臓器として不具合が起きている状態です。
ですので、シーズン3では、しっかり境目を作ることが重要だとお伝えしました。
当時は、コロナも落ち着いて、コワーキングだ!と外に出て行っても、境目を作って出て行かないと反応が起こらないという、リンパ組織から学んだリンパ組織論を語りました(笑)。
もしご興味があれば、アーカイブ記事を読んでください。
人と人を隔てているものは皮膚である
間は、物と物、何かと何かのあいだなので、我々を隔てているものは何かと考えるわけです。

僕は免疫学者なので、我々を隔てているものは、人体最大の臓器である皮膚だと思います。

村上 皮膚は臓器という扱いなのですね。
井上 はい。
第一三共ヘルスケアの「ひふ研」というホームページは、そのようにおっしゃっていました。
▶︎皮膚にはどんな役割があるの?(ひふ研)
村上 なるほど。
井上 体重の約16%で、畳おおよそ1枚分の1.6㎡です。
村上 広い!
井上 そうなんです、皮膚は結構大事なのです。
村上 脳と皮膚を合わせると、結構な重量を占めることになりますね。
井上 そうですね。それが動いていたら、怖いですね。
皮膚の際の、隔てているところを見ていただこうと思います。

我々を我々たらしめている一番外側は、皮膚ですよね。
シュッとしたきれいな指ですよね。

これは、僕の指です。
村上 本当(笑)?
井上 はい、奥にある赤い帯の本は、『抗体物語』という、僕の書籍です。
ここに注目してアップにしてみると、初めに角質層があります。


そして表皮があり、真皮があります。
これが重要なのですが、角質層では、細胞が既に死んでいるのです。
お前はもう、死んでいますと。
(会場笑)
表皮の一番外側に、細胞がアポトーシスという細胞死を起こして層になり、角質層ができていくわけです。
絶えず代謝が起こっていて、それが我々の一番外側にいるのです。
この角質層こそが、僕は間なのではないかと思うのです。
村上 なるほど。
井上 なぜなら、生きていないし、どんどん入れ替わっているからです。
村上 どんどんターンオーバーしていますよね。
井上 そうなんです。
村上 ちなみに、僕はスキンケアが好きなのですが、僕が塗っているものが染み込んでも意味がないのでしょうか?
井上 皮膚を通る物質については、通れる大きさが決まっています。
分子量で言うと500です。
村上 え、全然ピンときてないんですけど(笑)。
井上 僕は、ピンとしかきていないです!
石川 単位は?
井上 分子量ですので、Mw(molecular weight)ですね。
間がなくなるということについては、この皮膚の角質層がなくなったとき、我々に何が起きるのかを見ればいいのではないかと。

角質層をなくすとどうなる?
井上 一番重要な、際の際がなくなるとどうなるのか、角質層を取ってみましょう。
村上 間抜けにするのですね。
井上 間抜けにするのです。
村上 どうやって?
井上 テープで剥がす。

村上 痛い(笑)。
井上 笑ったね?
僕はニチバンのテープを使わせてもらいましたが、テープで剥がすのです。
冗談抜きで、僕はこれを20年前に論文にしているのです。

真ん中に、tape-stripped skin(テープで剥がした皮膚)と書いてありますよね?
村上 ほんとだ!
井上 やばくないですか?
村上 やばいね!
井上 僕は博士課程の頃、ネズミの皮膚をテープで剥がしていたのです。
角質層は分子量500しか通過できないので、剥がさないと、もっと大きい物が入らないからです。
例えば、皮膚炎のモデルを作るにあたり、皮膚炎とは、角質層が少なくなって物が浸透しやすくなっている、つまり間がなくなっているということです。
その結果、どうなるかについての論文です。
上が空間で、下が皮膚です。

真ん中に角質層があり、下に表皮、真皮があります。
図の左側は、テープで剥がさずにタンパク質とDNAを塗って1時間後、右側は角質をテープで剥がして塗って1時間後ですが、剥がしていると、恐ろしいくらい浸透するのです。
すごくないですか?
僕はこれを見た時すごく驚きました。
間がなくなると何が起こるかというと、入ってきます。

村上 そりゃ、入ってきますよね(笑)。
井上 入ってくるのです。
入ってきたら、間も何もないですよね。
村上 自分でコントロールもできないですしね。
井上 例えば会話でも、良い間があるのに、入ってくる人がいますよね。
そういう人はtape-strippedであり、間抜けということです。
村上 なるほど。
境目とは間である
井上 この間が重要だというのはつまり、やはり境目が重要であり、境目が間というものをまとっていることなのかなと思いました。
石川 関係性が少しギクシャクして、間が悪いなと思う人がいれば、その人にテープを貼って剥がせばいいんですね?
井上 そう、そうしたらどんどん入ってきますから。
石川 (笑)。
井上 関係が良くなるかは分かりませんが(笑)。
もっと近づきたい人については、テープを貼って剥がしにいかなければいけない。
逆に、これ以上はいいかなと思う人には、保護クリームを塗って入ってこないようにするのがいいです。
侵入させない or 侵入をうまく使うのが重要です。

間というのは、見えそうで見えていなくて、それを自分でコントロールする必要があります。
皆さん、間が悪いなと思った時は、テープを思い出してください。
「あ、こいつ剥がしにきてる」と思えば、テープの届かない位置に、少し引きましょう。
逆に、もう少し近づきたければ、テープを貼って剥がしに行きましょう。
僕は20年前、皮膚から入れるワクチンを作れないかと思って、この論文を書きました。
村上 なるほど。
井上 外には色々なものがあるので、皮膚が開きっぱなしだと、どんどんそれらが入ってくるわけです。
逆にそれをうまく使えば、注射を使わないワクチンができるのではないかということを書いたのが、この論文です。
実際、このテーマでいくつかの論文を書いており、アレルギー予防については、できそうだなというところまで来ています。
ですので、間というテーマを臣さんからもらった時、最初にピンと来たのがこの境目の話でした。
境目が曖昧になると不具合が起こるもの
井上 リンパ組織論でも申し上げましたが、間を作るには、境目を作るのが重要です。

境目は、物と物の間にできます。
それを曖昧にしてしまうと、一体化して何なのか分からなくなり、とにかく不具合が起こります。
何かが侵入してきたら、テープを剥がした人との距離を感じると思います。
間は、何となく自分たちの境目を融合させていくイメージがあるかもしれませんが、まず自分の境目をしっかりとし、その外側にある間で交わっていくという考え方が良いのではないかと僕は思います。
直史さんが言っていた「つなぐ手の わたしの部分が 少しずつ わたしではなく あなたでもなく」のように、触れている部分の行き来について分子の話もしましたが、熱の交換もあるのではないかと思います。
まさに、あれがちょうど間になっています。
テープで剥がした手で握ってもダメだと思うのです。
きちんと間を持って相手が入ってこない状態でこそ、間となります。
僕は、間を作るには、自分の境目をしっかりと持つ方が良いのではないかと考えます。
間抜けになるな、ということで間抜けになったこのスライドは飛ばしましょう(笑)。

村上 2回すべるという(笑)。
井上 間抜けになってはダメですよ、間を作りましょう!
間のまとい方はその人の個性
井上 人間は、個人として境目を持って、その外側に間をまとっているのです。

その、間のまとい方が、その人の個性かもしれません。
皆さんがこれから人と接する際、「薄い間だ」と思う時は気をつけてください。
でもその間は、大きすぎると入っていけないです。
人がまとった間同士がうまく融合したところで物事が起こっているというのが、僕の考察です。

間を作るための距離感が大事であり、侵入はさせない、させるのなら、うまく活用する、お互いに良い状態を作るなどが必要です。
皆さん、これから人と話している時に何かおかしいなと思ったら、その人がどういう間をまとっているのかを一歩引いて見てみて、余裕があればその人の皮膚を見て、もっと余裕があればテープを貼って剥がしてあげるのが良いのではないでしょうか(笑)。
ということで、相変わらずのスライドですが「さぁ研究だ!!」

まだまだ、分かっていないことは多いです。
ただ、間については、しっかりと境目を持って、間をまとっているのが人間ではないかと僕は感じました。
以上です。
村上 ありがとうございます。
浄さんは、プレゼンの最後にはこの「さぁ研究だ!!」スライドを入れています。
みんなで研究しないと進まないということですから、研究者ではなくても研究しろってことですよね。
井上 その通りです。
村上 全員野球でいきたいということですね。
井上 全人類が研究者になるべきだと思っているので。
村上 ありがとうございます。

(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成