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ICC FUKUOKA 2025のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)」、全5回の④は、石川 善樹さんによる「まつり」論。「まつり」の語源は「間」を「つり」あげるという説もあるそうです。そんな「まつり」は人間の結束にどんな意味があるのでしょうか。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM
(スピーカー)
青木 俊介
チューリング
共同創業者 / 取締役CHRO
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
リバネス
代表取締役社長 CCO
中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター
(モデレーター)
村上 臣
スマートニュース
VP of JP Product
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)」の配信済み記事一覧
セッション中盤の中締め

村上 今ちょうどセッション全体の半分なので、中締めです。
青木さんからは、AIの自動運転システムを作る中で、開発している人も驚いてしまうような挙動が、動画を見てもらったように観測されています。
AIは、ブラックボックスではありますが、何か知性を持っているように振る舞う気もするという重要な投げ込みでした。
機械に知性はあるのか。
また、AGIと呼ばれる汎用人工知能のシステムを、主にサム・アルトマンが信じていて、それに惚れたのが孫 正義さんです。
そういう言説がありつつも、まだもやもやしています。
我々のワークプレイスにもCopilotなどAIが入ってきており、実際に役立つことが増えている中で、付き合い方が分からない状況です。
私もパートタイムで大学教員をしていますが、必ずChatGPTに書かせたレポートが出てきます。
今はまだ、こちらも見ていてそれが分かります。
なぜなら、共通している文体の癖みたいなものが出ているからです。
例えばブログで言えば、テンプレートのような「いかがだったでしょうか?」みたいな。
そういうテンプレートのようなものを感じるので、ChatGPTで書いたでしょうと言うと、すみませんとなります。
でも、今年の授業については、ChatGPTの出力のクオリティがだいぶ良くなっているので、自信がなくなっています。
AIを使っているかどうかをチェックするためのツールも作られているので…機械の書いたものを機械でチェックしていると、自分のいる意味とは何かと感じますし、人間の存在感がなくなっているように感じます。
そんな重要な投げ込みを頂いた後は、浄さんから境目について、やはり間が重要であることについて、お話しいただきました。
シーズン3のリンパ組織論で、何でもかんでも一緒にすると危ないという結論になりました。
当時はイノベーションや新規事業開発について、異業種の人を混ぜこぜにすると、ぽんとすごいものが生まれるという幻想がはびこっている時代でしたね。
井上 そう。
村上 しかしそんなことはなく、混ぜてもダメなのであると。
AIの世界でも、しっちゃかめっちゃかデータを混ぜているように見えても、最初にデータをクレンジングして良いデータにして食べさせないと良い出力が出ないということが明らかになっているので、非常に似ていますね。
境目を持つというのはつまり、自己の確立ではないかというわけですね。
自分には何ができて何ができないか、できないから助けが必要、だからお互いの手を握り合うと良いことができる、それが間なのではないかと、浄さんの話から感じました。
井上 境目を作るには、カロリーが必要です。
リンパ組織もそうですが、あの形を保つには、すごくエネルギーを使うのです。
単に外に行くのではなく、覚悟を持って外に行った人がしっかりと反応するというのは事実です。
村上 だから、老化すると境目がぐちゃぐちゃになるのですね。
井上 そうです。間も同じで、何か物事を起こしている人の間はすごいのです。
時にはテープを貼って剥がして注入し、時には良い距離感で間を活用して、次々に物事を起こしたり、人を集めたりします。
それができるのはやはり、自分の境目をきちんと持っている、つまり「自分がこういう人間である」ということを確立しているからではないかと思いますね。
村上 ありがとうございます。
では、次に善樹さんからお話を頂きましょう。
後半は、文化人類学の側面からというか、これまでの定量から定性に方向転換する形で進行していきたいと思います。
よろしくお願いします。
石川善樹が語る「まつり」
石川 「まつり」というテーマで…。


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石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
予防医学研究者、博士(医学) 1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事。 「人と地球が調和して生きるとは何か」をテーマとして、雲孫世代(8世代後)にまたがるような長期構想に取り組む。 近著は、『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました-日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA)、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。
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村上 まつりです。
井上 その「ま」は、間ではない?
石川 その「間」です。
間というのは、どうしても悪くなります。
その壊れかけた間を、吊り上げて元に戻すことが、「まつり」というそうです。

村上 「間」を「つり」あげるということですね。
石川 間を吊り上げて、元に戻す。
井上 すごい行事ですね。
青木 本当の話ですか?
石川 本当です。
村上 その話、今、作ったと思っていますよね(笑)。
石川 いやいや、お祭りの語源を調べてもらえれば…。
井上 もう一回聞きますけど、本当ですか(笑)?
石川 唯一の正解かどうかは分かりませんが、そういう説があるのです。
井上 へー、面白い。
石川 我々人間は地球にいるけれど、宇宙空間という間があるねというのがこのスライドの写真です(笑)。
井上 いや、これはいつも使っている写真ですよね(笑)?
村上 毎回使っています(笑)。
石川 ほら、AIによる概要も出ていますよ。

ChatGPTですら、「祭り」は破綻した間を「吊り上げ」て元に戻すという意味がありますと。
あと、僕は2016年に、間の本質とは何かについて話していたようで(笑)。
▶︎【新】自己紹介とは何か?(石川善樹×マツダミヒロ)【SP-YI3 #1】
「石川 そして、『間』についていろいろ調べてみると、面白い発見があり…」とありますが、一体何があったんだろうと(笑)。
村上 何を話したんですかね(笑)。
人が他の動物と違うのは協力し合うところ
石川 僕も忘れたので、まあそれは放っておいて(笑)、なぜ「まつり」に至ったのかを考えると、人間について理解できるのではないかと。
人が、他の動物と明らかに違うのは、協力し合うというところです。
1人で何かを全部やろうと思っても、どうしても限界があります。
この場も、誰かがマイクというものを作ってくれたから、声が大きくなっているわけですよね。
マイクを自分だけで作ろうとすると、一生かかっても作れないかもしれませんよね(笑)?
村上 アンプもスピーカーも必要ですからね(笑)。
井上 もしかしたら、マイクも、「間」を「いく」と…。
石川 気づきましたか(笑)。
村上 さすが(笑)。
井上 間をいかせましょうと。
石川 まあ、おじさんたちは放っておいて(笑)。
村上 前頭葉の体操です(笑)。
人類はいかに結束してきたのか
石川 一方で、人が集まるともめるのです。

村上 そうですよね。
石川 この、もめごとをうまく解消する方法が、年に1回のお祭りなのかもしれません。
どうやって人はもめごとを乗り越えて、 組織として、国家として、国際社会として結束するようになってきたのか、についてお話しします。

間を築いていくというか、結束するための一番簡単な方法は、毛づくろいなのです。

こうやって触ると…。

青木 今、めちゃくちゃやられています、私。
石川 今、エンドルフィンが出ています。
▶︎幸せ感よぶ脳内ホルモン 「エンドルフィン」の作り方 一日に一度は「ウフフ、エヘヘ」も(日本経済新聞)
すごく時間がかかるので、今日ずっとやりますね(笑)。
青木 若干怖いですけど、いいですよ(笑)。
石川 毛にはC触覚繊維というものが付いており、これが脳までつながっていて、めちゃくちゃ気持ちいいと感じるのです。
▶︎触れることが感情を促す理由(ディアケア)

例えばヘッドスパは、まさにこのC触覚繊維を刺激しているわけです。
村上 このC触覚繊維は、歯にはないのでしょうか?
石川 ないと思いますね、あくまで毛に付いています。
一般的に五感は年を重ねるほどに鈍くなりますが、C触覚繊維は年を重ねるほど鋭くなるのです。
ですから、おじいちゃんおばあちゃんの毛があるところを撫でてあげると、めちゃくちゃ気持ちいいのです。
もう、年をとる唯一の楽しみが、このC触覚繊維!
(一同笑)
井上 なるほどね(笑)。
村上 毛自体がなくなったとしても…。
石川 C触覚繊維は残ります。
ちなみに、C触覚繊維の一番気持ちいい触り方は、秒速5cmと言われています。

村上 (笑)、かなりゆっくりですね。
石川 今日はこれだけを覚えて帰ってほしい、「秒速5cmで触るのが一番気持ちいい」んです。
村上 なるほど。
石川 つまり、間とは、秒速5cmです!
井上 これは、誰かが秒速10cm…。
石川 それは間が壊れます!
井上 秒速10cmで試したけど、5cmが良いと結論づけたのですね。
石川 そうです、動物も秒速5cmで毛づくろいをしています。
ちなみに、新海 誠監督が、『秒速5センチメートル』というショート映画を作っています。
村上 それは、ここからですか?
石川 関係ないです(笑)。
(一同笑)
井上 C触覚繊維ではないと(笑)。
石川 毛づくろいをするのが相手と関係を築くには最強の方法なのですが、残念ながら現代のマナーでは相手の体にそんなに触れてはいけないのです。

村上 まあ、事案になりますよね。
石川 なりますね(笑)。
一方、マナーにかかわらず、触ることで築けるコミュニティのサイズは、どうしても小さくなってしまいます。
村上 直接触れられる範囲内ということですからね。
石川 サルの群れの最大規模は50だと言われていますが、人間だと150人が限界だと言われています。
結束を促すエンドルフィンを出す方法
石川 エンドルフィンが、結束を促す脳内物質なわけです。
直接触れずして、遠隔でこれを行う方法を編み出しました。
人類が獲得した順番に説明しますが、この順番でしないと間が壊れてしまうということでもあります。

井上 重要ですね。
石川 最初は、「ともに笑う」です。
ともに笑うというのは、「笑わせる」ではないです。
毛づくろいは、1対1、つまり2人でしかできないです。
ともに笑うのは、大体3人か4人くらいが限界だと言われています。
次が、「ともに歌う」です。
村上 前回のセッションでしたことですね。
石川 歌うのは、3人ではなくても大丈夫です。
10人でも30人でもできます。
だから、社歌というものが存在しますし、サッカー日本団表の応援でもみんな、オーオー歌っていますよね。
あれは、とんでもない一体感を生み出すのです。
井上 エンドルフィンがめちゃくちゃ出ていると。
石川 出まくっています。

青木 ICCも歌を作った方がいいのではないでしょうか。
石川 小学校の時は、「起立、気をつけ、礼」をしたり、校歌を歌ったり、とにかく歌う機会が多かったですよね。
ちなみに、人類がまだ洞窟に住んでいて壁画を描いていた頃、どこに壁画を描いたかの研究がありますが、一番声が響くところに描いていたらしいです。
▶︎旧石器時代の洞窟はコンサートホール?(ナショナル ジオグラフィック)
井上 へー。
石川 きっと、焚き火を囲みながら歌って、結束を強めていたのだろうと思います。
そして次に、「ともに踊る」です。
人が踊っている様を映した動画を、YouTubeやTikTok、Instagramなどで、人はめちゃくちゃ見ています。
なぜかと言うと、人が同じ動作をしている様子を見ることは、脳にとってめちゃくちゃ気持ちいいからです。
これは、速足で一緒に歩く、でもいいのです。
また、今回のICCで始まった「一緒に拍手する」でもいいのです。
青木 一緒に体を動かしていますからね。
石川 明治時代には、結果として結束をうんだ、「ラジオ体操」というものが生まれました。
あるいは、童謡をたくさん歌いましたよね。
歌の次は、こんな悲しいことが、嬉しいことがあったという「感情に訴える物語を共有すること」です。
ここまでに、理屈の話はひとつもありません。
笑う、歌う、踊る、ストーリーを共有する、その後にようやく「宴を開く」、つまり飯を食うことが来ます。
この順番で方法を獲得してきているので、いきなり人とご飯を食べて仲良くなろうと思うなということです。
井上 なるほど(笑)、まず笑えと。
石川 まず笑えと。
笑って、歌って、踊って、感情を共有して初めて、食事が許されたということです。
村上 なるほど。
井上 結構遠いね!
祭りは「何によって生かされているのか」の確認
石川 そして6番目ですが…ここまでしても、人の関係が悪くなることがあります。
それで人類が編み出したのが、祭りです。

青森にある三内丸山遺跡は、縄文時代の遺跡で世界遺産です。
縄文時代、コミュニティの人数が増えると、それぞれの家族は周りにある小さな山のように、分かれて住むようになります。

そうすると、だんだんコミュニティ全体の結束が失われていきます。
例えば、お隣は美味しそうなものを食べているけれどうちは違う、あの人の給料の方が高い、など小さな問題や諍いが起こります。
そのような間が悪くなった時、結集するためにコミュニティの中心に置いたのが、何と墓地なのです。
また真ん中にはやぐらがあり、そんなところで祭りをしていたわけです。
笑う、歌う、踊るなど、色々した後にも間が悪くなることがあるので、年に1、2回、非日常という隔たりを作り、先人や神様を祭るのです。

現代風に言うと、先人を祭るというのは、我々がどこからきたのかを確認しており、神様を祭るというのは、何によって生かされているのかを確認しているのです。
ですから、年に1、2回は、どこからきて何に生かされているのかを、コミュニティ全体で、身体感覚として獲得するのです。
このように人類は、1から6の順番で、遠隔でエンドルフィンを獲得してきたのです。

ちなみに、7番目以降でようやく、ルールや教義、経典、ビジョン、ミッション、バリューなど、理屈の話が出てきます。
それでも7番目以降の話であり、理屈や言葉の前にもっとやることがあるぜということであり、間抜けにならないということです。
井上 なるほど、祭りが足りなかったね。
石川 足りなかったです。
井上 祭りのない組織や地域というのは…。
石川 どんどん失われていきます。
井上 残らないということなのですね、間が悪くて。
石川 はい。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成