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ICC KYOTO 2025のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)」、全5回の②は、Well-being for Planet Earthの石川 善樹さんがプレゼン。留学時代に味わった「正・反・合」への葛藤と、そこで考えた「合」とは異なる「和」の心について、憲法や皇室ウェブサイトまで参照しながら語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)
Supported by EVeM
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
リバネス
代表取締役社長CCO
中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター
林 要
GROOVE X
代表取締役社長
(モデレーター)
村上 臣
スマートニュース
VP of JP Product
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▶『大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)』の配信済み記事一覧

石川 こんなタイトルで話すのは初めてだし、今日は楽しみで……(笑)。

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石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事。
「人と地球が調和して生きるとは何か」をテーマとして、雲孫世代(約200-300年)にまたがるような長期構想に取り組む。
近著は、『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました-日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA)、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。
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村上 普通はないですよね(笑)。
石川 「合」という(笑)。
井上 「合」(笑)。
村上 アウフヘーベンしましょう。
井上 アウフヘーベン…(笑)。
「白黒はっきりつける必要ある?」ーー石川 善樹さんの留学時代
石川 「正・反・合」と言われる、絶対者に対する西洋の作法があるわけですね。

今で言えば、経済価値と社会価値をどう「合」にするかみたいな時代なのだと思います。
個人的な体験からお話ししたいのですが、この「正・反・合」について、本当につらかった思い出があります。
過去にアメリカに留学していましたが、その際、英語のTOEFLという試験をクリアしなければいけないのです。

こちらは、TOEFLの典型的な問題です。
「あなたは休みの日、家にいるのが好きですか? それとも外に行くのが好きですか? どちらか一つをえらび、理由と共に述べよ」、つまり、どちらが正でどちらが反かということを考える訓練をめちゃくちゃさせられるのです。
例えば他には、「成功するには努力と才能、どちらが大事ですか? どちらか一つをえらび、理由と共に述べよ」とか。
皆さん、どうですか。
日本的な感覚で言うと、それは時と場合によるでしょ、と(笑)。
村上 どっちも好きだよって話になりますよね(笑)。
井上 それ、みんな言うね(笑)。
石川 ただ、これが西洋なのです。
村上 そうですね。
石川 必ず線を引いて、正と反で戦わないといけない。
村上 ディベートをして、ロジカルに説得するという。
石川 これを経た上で、留学中は、この「正・反・合」をいろいろなテーマで死ぬほどやらされるのです。

テーゼというのは、世の中で一般的とされる説です。
それに対して、そうではない説や主張があります。
テーゼとアンチテーゼは、英語で別の言葉で言うと、「argument」と「counter argument」です。
それらをうまく統合すると、良い成績がもらえるのです。
僕はこれをやりすぎて、結果、得意にはなったのですが(笑)、気持ちとしては、合わないと思っていたのです。
肌感覚として、マッチしていない感覚がずっとあったのです。
なぜわざわざ、白黒はっきりつけなきゃいけないのだと。
日本人として染み付いている「和」の感覚
石川 それで、もう少し違う「あう」がないのかと考えました。

それで、僕は日本人として、「和」という感覚が染み付いていることを実感したのです。

井上 和える。
村上 一応どちらも、「あう」と読めますね。
石川 例えば、日本語だと、全然違うものですが、「天」と「海」はどちらも「あま」と読みます。
井上 確かに。
石川 違うものなのに、なぜ同じ読みか。
海に行けば分かると思うのですが、地平線の彼方では、天と海はつながっていますよね。
同じものから違うものが出てきているというか。
でも、無理やり「合」はしていないですよ。
村上 あるところまで行けば境目が曖昧になって、溶けていくということですよね。
石川 そうです。
ですので、和を理解すれば、うまく合を理解できるのではないかと思います。
国の特徴を知る手掛かりは憲法第一条
石川 僕が、和はつくづく日本的な感覚なのだと思ったのは、この問いです。
「日本とは何か?!」と。

留学をする人は、おそらくみんな、これを自分に問います。
もう少し言えば、例えば、アメリカとは何か、インドとは何か…、いろいろな国がありますよね。
それに対して、自分はどういう意見を持っておくのか。
もちろん、独自の意見を持って良いです。
この問いに対し、多くの人の共感と合理性をもって「それが日本の特徴だよね」と答えるためには、何を手掛かりにすればいいのかと考え、僕が行き着いたのは、憲法の第一条をみることです。

(一同笑)
井上 第一条(笑)。
石川 どこの国の憲法でも、第一条は国体を示すのです。
村上 確かに、第一条は一国としての宣言ですよね。
石川 その国は何であるか、です。
憲法の第一条を見れば、日本という国がよく分かるのではと思いました。
十七条憲法の第一条は「和をもって貴しとなす」
石川 十七条(じゅうしちじょう)憲法(604)という日本最初の憲法を見ると、第一条には「『和』をもって貴しとなす」と書いてあるのです。

▶十七条憲法(Wikipedia)
かつ、和が大事すぎたのか、最後の第十七条にも、もう一回、「和が大事」と書いています(笑)。
(一同笑)
それくらい和が大事だと(笑)。
次なる問いは、どうやって和を実現するか。
合ではないですよ、「『合』をもって貴しとなす」とはしていないですから。
村上 (笑)
石川 和なんです!
村上 和ですね。
「しらす」とは慈愛をもって国を治めること
石川 明治憲法の草案では、第一条は、「天皇が『しらす』所なり」です。

「しらす」というキーワードが、和を考える上でめちゃくちゃ重要です。
「しらす」の反対語は、「うしはく」です。

しらすとは、知る、慈愛をもって治めるという意味です。
何かを統治するのには2種類の方法があって、「しらす」と、主人が所有して支配する「うしはく」があるのです。
『古事記』(712)や『日本書紀』(720)には、もともとこの国は、大国主尊(おおくにぬしのみこと)がうしはく国だったと書いてあります。
それに対し、天孫降臨してきた天皇家の先祖が、しらすという方法で治めなさいと送り込まれているわけです。
ですから、天皇陛下のお仕事は、知ることなのです。
先日、それを象徴するエピソードを聞きました。
2011年に3.11がありましたよね。
その際、天皇陛下は避難所にいる方がどういう状況なのか、どういう物資があって何が足りないのか、宮内庁の職員に事細かに聞いたらしいです。
職員は「そんなに細かく知ってどうするんだろう」と思ったかもしれません(笑)。
なぜなら、何もできないからです。
でも、知ると他人事ではなくなるので、祈ることもできます。
天皇陛下は、そういう治め方をしているのです。
▶東日本大震災関連(平成31年以前)(宮内庁)
国民の心を歌から知る歌会始

石川 毎年1月に行われる歌会始の儀というものがあります。
このセッションと同じく、毎年キーワードが設定され、それに関する歌を国民から集めます。
僕の友達のおじいちゃんが、天皇陛下の歌の先生なのですが…(笑)。
(一同笑)
全国から数万通集まる歌を、天皇陛下は事細かに読むらしいのです。
井上 すごい。
石川 やはり、知りたいのです。
平成16年の歌会始の儀のテーマは、「幸」でした。
明仁上皇は、即位された後、15年かけて全都道府県を訪問されたのです。
▶︎祈りの旅(朝日新聞)
ですので平成16年に、皆さんは幸せに過ごしていらっしゃいますでしょうか、何を幸せに感じていらっしゃいますでしょうか、という意図があったようです。
とにかく、日本は知ることで和をもたらすのです。
無理に「合」はしない。
だから、徹底して知る。
「和をもって貴しとなす」から始まっているこの国の歴史は…、知るということの持つ力の大きさたるや、ということです。
村上 なるほど。
石川 それは、所有することや支配することよりも大きいのです。
「合」の道、「和」の道の違い
石川 合の道は、スライドの丸が自分だとすると、お前はこっち、あんたはあっち、みたいな感じで無理やり正と反を分けて、「よし、我が統合するなり」という感じです。

人間を理解するとは何かシーズン14石川さん_page-0012-1一部カット.jpg
強き者のやり方なのです。
(一同笑)
これはまあ、M&Aですよ(笑)。
井上 分かるわー(笑)。
石川 PMIですよ。
「さあ、ジンテーゼ(合)なり」と(笑)。
M&Aのことはこれから、ジンテーゼと呼んでください(笑)。
(会場笑)
村上 PMIではなくジンテーゼ(笑)。
井上 でも別に、アンチテーゼを推進しているわけじゃないからね(笑)。
石川 一方、和の道は、テーゼやアンチテーゼがあっても、それらを一旦置いておくのです。
さらに、別のテーマでテーゼやアンチテーゼがあっても、それらも置いておくのです。
いろいろな立場があるので、和を実現するにあたり、自分をどこにも置かないのです。
「空(くう)」にする。
「空」や「無」というのは、何もないということではなく、無尽蔵の無であり、無限の無です。
それが「空(くう)」です。
村上 それはまさに、禅の思想ですね。
「More is Better」と「Less is More」の世界観
石川 この考えを経て僕が思ったのは、合の道は「More is Better」の世界であるということです。

どんどん所有していく、統合していくということで、僕はこれを「玄人の道」と名付けました。
井上 ほう。
石川 なぜなら、いろいろな色を混ぜていくと黒になるからです。
合の道は玄人の道で、いろいろなものを網羅していきます。
一方、和の道は素人の道です。
いろいろな色を取っていくと、最後に白になりますよね。
白で、素人です。
これは「Less is More」の世界で、しらすの思想ではないかと思います。
今日は「合」がテーマですが、和という考え方と合わせて残りお三方の話を聞けば、合の人か和の人か…。
(会場笑)
石川 皆さん、テーゼとアンチテーゼをしてください(笑)。
井上 和の道は…。
石川 自分を空(くう)にしてください(笑)。
宮内庁HPのコンテンツはたった3つ
石川 最後に、今回は京都での開催ですが、京都には御所もあります。
皆さん、宮内庁のホームページをご覧になったことがありますか?

宮内庁のホームページは当然ながら、正・反・合ではできていません。
もし皆さんが宮内庁のホームページのコンテンツをつくる担当者だったら、どうつくるでしょうか。

日本というものを象徴している天皇家を、国民の皆さん、あるいは世界の皆さんにどうやって知ってもらうでしょうか。
すごいですよ、宮内庁のホームページには3つしかコンテンツがないのです。
それは、見る、知る、訪れる、です。

これはまさに、天皇陛下がずっと行ってきていることなのです。
和の実現のために、まず見るのです。
そして知って、訪れる。
皆さんも京都にいるので、ぜひ、宮内庁のホームページを見ながら、京都御所を……。
井上 訪れる、と。

石川 見る、知る、訪れる、これが日本的な合というか、和の道なのではないかと思います。
私からは以上です。
村上 ありがとうございます。
石川 ちなみにこのホームページは英語版もあり、Watch, Learn, Visitと書いてありました(笑)。
村上 そのままですね(笑)。
石川 シンプルで、まさにLess is Moreだなと(笑)。
村上 確かに日本は引き算の文化です。
要人が皇居を訪れる際、あまりにシンプルな部屋で…中東あたりだとキンキラキンで威厳を示すとか、最近はホワイトハウスもキンキラキンに改装されてMore is Moreになってきていますが。
対比がとても分かりやすかったと思います、ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成


