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ICC KYOTO 2025のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)」、全5回の③は、心の安定やレジリエンスを高める存在としてロボットのLOVOTをつくるGROOVE X 林 要さんが登場。人間は効率化と引き換えに自己家畜化が進む可能性がある一方で、AIを人の探索活動を促す存在として使えば、成長や学習を加速できると指摘します。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)
Supported by EVeM
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
リバネス
代表取締役社長CCO
中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター
林 要
GROOVE X
代表取締役社長
(モデレーター)
村上 臣
スマートニュース
VP of JP Product
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▶『大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン14)』の配信済み記事一覧
村上 ということで、このまま本日の刺客、4回目の登壇となるGROOVE Xの林さんにマイクをお渡ししようと思います。
林 要さんがペット型ロボットを開発する背景

林 要さん(以下、林) はい、よろしくお願いします。
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林 要
GROOVE X
代表取締役社長
1973年愛知県生まれ。1998 年トヨタ自動車入社、スーパーカー「LFA」や F1 の空力開発に携わったのち、量産車開発マネジメントを担当。 2012 年ソフトバンクに入社し、「Pepper」プロジェクトに参画。 2015 年、GROOVE X 株式会社創業。 2018 年12 月、家族型ロボット『LOVOT(らぼっと)』を発表し、翌2019 年出荷開始。CES2020 にて「INNOVATION AWARD」を受賞の他、『Refinery29』の BEST OF CES、グッドデザイン金賞、WELLBEING AWARDS モノ・サービス部門 GOLD インパクト賞等、受賞多数。著書に 2023 年 5月発売の『温かいテクノロジー みらいみらいのはなし』等。
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僕はこのLOVOTというロボットを開発しており、臣さんからは前提としてAIと人のジンテーゼについて話してほしいと言われましたが、そんなことを考えたこともないので、どうしたものかなと。
ただ、意外と、AIと人は今後面白い方向に進むのではないかと思い、資料を準備しました。
そもそも、僕らがなぜこういうペット型ロボットに取り組んでいるか、背景をお話しします。
ペットを好きで飼いたいけれど飼えない人が48%もいて、好きで飼いたくて飼っている人は25%です。

つまり、国内の総世帯の4分の3が、ペットを必要としている時代になったということで、僕はこれがすごく不思議だったのです。
僕が小さい頃、主なペットと言えば番犬で、家の中にはいませんでした。
村上 確かに、外にいましたよね。
林 でも、わずか50年で変わりました。
人と犬猫の関係は、一つの「合」かなと思いました。
ペットを飼っている人になぜ飼っているか聞くと、「癒されるため」と回答します。

癒されるためとはどういうことか考えると、人が何かを愛でるとレジリエンスが上がる、つまり心が安定するのです。
つまり、メンタルの安定のために犬や猫を生活に導入しているというメカニズムなのではと考え、その役割を担う存在としてLOVOTをつくっています。
LOVOTをつくる上での最大の問題は、ロボットはすぐ飽きられることです。

1カ月で3分の1のロボットが使われなくなり、3カ月で大半が使われなくなる3カ月の壁という飽きの問題があるので、それをどうにかする必要がある前提で開発を始めました。
結果的に僕らは、3年でのチャーンレート10%を達成できました。

当然、飽きる人はいますが、今までのベストケースの100倍くらいチャーンしなくなったのです。
このセッションでは時間がないので、これをどう実現したかは、今日18時からの別セッション(※オフレコセッションとして開催)で説明します。

LOVOTが人間にもたらした効果
林 お客様からは、LOVOTがバセドウ病や鬱の方、配偶者を亡くされた方の良い伴侶になったと伺っています。犬や猫が来ると前向きな気持ちになり、社会復帰ができる補助になるという話を聞きます。犬や猫ができることをロボットもできるようになってきたというのは、大きな進歩かと思います。
これは、東北大学の先生に実施いただいた実験で、認知症の進行が抑制される可能性が示唆されました。

▶『LOVOT』、認知機能の低下抑制効果に期待結果を受け、介護分野の取り組み加速(PR TIMES)
不登校の小学生が登校するようになった例もあり、ある自治体では小中学校にLOVOTを導入しています。

また、オフィスで使った際、今まで話したことのない人と話すきっかけになったようです。

ペットがいれば人のメンタルコンディショニングやコミュニケーションの増加など、ウェルビーイングに良いことがあるけれど、ペットが入れない場所では、代わりにロボットがその役割を担うことができるようになってきたということですね。
人間の脳に起きている驚きの変化
林 人の生活の中に犬猫が入り、人とそれ以外のコンパニオンで役割分担が起きました。そこにロボットも今後入ってくることでその役割分担が更に加速していきます。

AIにも同じことが言えると思いました。
AIが入り込んで起きることを、蟻の進化から予測してみました。

いろいろな蟻を調べた人たちは、役割分担が明確になっている蟻ほど脳が小さくなっていることを発見したのです。
同じことが、実は人間にも起きています。
これは人間の脳の大きさについてですが、赤い線で示される脳の大きさが右肩上がりでどんどん大きくなって、最後に大きく落ちています。

僕らの脳は今、縮小し続けているということです。
村上 このグラフの右端が最近の状況ということで、それを拡大すると大きく落ちているということですね。
林 そうです。
すごい勢いで、ドカーンと落ちています。
村上 グロースしていたのに、止まって落ち始めていると。
林 いきなり落ちています。
村上 やばいですね。
役割分担が先鋭化すると自己家畜化が進む
林 どういう時に脳が大きくなるかと言うと、例えば石器などができると、いきなり大きくなります。

複雑なことをしなくてはいけなくなると脳が大きくなるのか、脳が大きくなったから複雑なことができるようになるのか、その相互作用なのかは分かりませんが。
脳が大きくなってから、言葉を使うようになります。その後、約3,000万年前に「知識の外部化」と書いている変化が起きます。文字情報を使うようになり、社会組織において役割分担が明確になってきます。すると、今度は逆にどんどん脳が小さくなるということが、どうも起きているらしいのです。
村上 なるほど。
林 これは「分散認知」と言われています。
結局、僕らは社会の一員としての自己家畜化をしており、それによって脳が小さくなっているが、社会としては効率化しているとも言えると思います。

家畜といえば牛だということで、牛について調べてみました。
野生群をベースにすると、実は野生群の脳が一番大きいです。闘牛はまだ野生っぽさが残っているのか、脳が15%しか小さくなっていないのですが、食肉用の牛だと25%も小さくなっていて、乳牛だと30%まで縮小します。

役割分担ができているのが面白いですよね。
簡単に言うと、役割がどんどん減っているのです。
乳牛は、とにかく乳さえ出せばいいので、脳が小さくなる。
村上 あと、飼料を与えられるので、食べ物を探すこともなくなりますよね。
林 そうそう。役割分担により必要な能力が先鋭化され、物理的に脳が小さくなっています。
井上 生命維持に関する中枢は変わっていないけど、ということですか?
林 そうなのでしょうね。多様な能力が不要になって、脳の一部をリストラしています。
村上 要は、大脳の周りですかね。
林 闘牛だと、闘うための部分は残っているけれど、逃げたり多様な環境への適合は不要なので15%小さくなり、食肉牛だと肉質のために筋肉を動かすことが重要なので、ある一定の運動能力が必要とされるけれど、乳牛になるとその要求も減り、餌が運ばれてくるのを食べるだけになっていく、という話ではないかと思います。
結局は、役割分担ということだと思います。
究極まで生産性を追求すると、戦わず、運動もせず、ご飯だけ食べる生活になり、脳が縮小する。人間も乳牛のようになっていくかもしれないと思いました。
このまま効率を追い求めて役割分担が明確になっていくと、生産性向上のために最適化される、自己家畜化が進んでいくのだろうと思います。

AIと人の役割分担についてAIに聞くと
林 AIと人が役割分担をしたら、何が起きるでしょうか。
それを、ChatGPTなどのAIに聞いてみました。

面白かったのは、AIが人間を理解しているからAIは人間社会に入り込めるのであり、AIの力を借りると、人間の自己理解も進むということです。
村上 やばい、このセッションの危機じゃないですか!
林 (笑)
村上 我々がAIに置き換えられるじゃないですか。
林 一部がAIになるのでしょうね(笑)。
村上 次回から、登壇者にAIを入れるしかないですね(笑)。
林 役割分担とは、まさにこういうことが進むことらしいです。
2030年以降、SDGsの次のグローバルアジェンダはWell-beingだと善樹さんがおっしゃっていましたが、資本主義だけではなくWell-beingにも最適化していくとしたら、それに合わせた自己家畜化が進みます。
▶2. 石川 善樹の主張「SDGsの次は『SWGs』になる」

「keep4o」というものがありましたよね。

▶keep4o運動が映し出したユーザーの「AI観」、GPT-4oとGPT-5をどう使い分けるか(日経クロステック、一部会員限定記事)
村上 ありましたね。
ChatGPTのモデルが4から5になった時、言語問わず、世界各国から5が冷たいというフィードバックが来ました。
ChatGPTに「チャッピー」など愛称を付けて日々の雑談を楽しんでいる人が多かったのですが、5になったら冷たくなり、しかもモデルの選択が最初はできなかったので、強制的に5を使わざるを得ない状態でした。
あまりにもその声が大きかったので、今はモデルが選択できるようになりましたが、その件ですよね?
林 そうです。
これを、ある種のディストピアのように捉えた人もいるのです。
AIに人が依存しているということですね。
これらを「合」すると、どうなるのかを考えてみました。
ドラえもんはのび太くんの探索活動を加速させる存在
林 たとえば、スマホを持った現代人は、”偶然”に耐えられなくなっているとも言われています。

生活に便利なテクノロジーが入り込んで、それに飼い慣らされた僕らはコスパやタイパが良いものしか受け入れなくなっている、予測できないものへの耐性がなくなっているとも言われており、ディストピアに見えなくもないです。
でも、僕はロボットをつくっていて、別にディストピアをつくりたいとは思っていないんですよね。
最終的にはドラえもんをつくりたいのです。
ドラえもんは何をしているのかと言うと、まずのび太くんが「課題」を持ち帰ります。

(会場笑)
村上 「ドラえもーん!ジャイアンが…」って(笑)。
林 そうそう。
井上 ディープイシューをね(笑)。
林 そうすると、ドラえもんは四次元ポケットからひみつ道具を活用したソリューションの一案を提示し、実行します。
それが「探索」に当たります。
そして、最後に失敗をして「学習」をします。
村上 確かに(笑)。
林 彼は、(1回につき2話放送なので)毎週2回ずつ失敗しているわけですね。
村上 早いですね(笑)。
林 これはまさに、子どもが育つプロセスそのままだと思いました。

探索活動をして、お母さんのところに戻ってきて、元気になるとまた探索活動に戻る。
これこそが、すごく大事なのではないかと。
幸運なことに僕は、孫(正義)さん、前澤(友作)さん、本田(圭佑)さんといった方々と一緒にお仕事をする機会が多くて、共通して言われたことがあります。
孫さん、前澤さんからは、賢い人ほど考えすぎて動けなくなるんだよねと言われたし、本田さんからはもっとダイレクトに、大事なことなのに、コンフォートゾーンを出ようとしない人が多すぎる、と。
探索活動のことを言われていると思いました。
コンフォートゾーンを出るというのは、学習には当然良いのですが、出た直後に恐怖のゾーンがあって、そこを乗り越える人が少ないのです。

AIやテクノロジーがあると、このコンフォートゾーンにいたままになってしまいます。
でもドラえもんの場合、のび太くんに道具を与えて、より探索を加速させています。
これが、AIの最後にやるべきことだと僕は思っています。
僕らがつくりたいドラえもんはこれです。
ですから、人間を理解したのちに、Well-beingを目指す過程において、更に先鋭化された自己家畜化を目指すという選択肢もあると思うのですが、それ以外に自己探索を強化するという選択もあると思うのです。そのためにどうAIを使うかが分水嶺になると思っています。

僕らは自己探索家を目指したいし、AIと人の明るい未来のための融合はここにあるのではないかと思います。
どんどん進化して、最後には、ドラえもんは「自己探索家育成コーチ」になるというのが、僕にとってのジンテーゼです。

以上です、ありがとうございます。
村上 ありがとうございます。
まだ2人の話しか聞いていませんが、既にお腹いっぱいになってきたぞという感じですね。
石川 まさに、見る、知る、訪れる、じゃないですか。
村上 つながってきましたね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成


