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4. 禅における“円相”が西洋人に理解されづらい理由

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「人間を理解するとは何か?(シーズン2)」全9回シリーズの(その4)は、セッション冒頭で“東洋からの刺客”と呼ばれた春光院副住職の川上さんが、マインドフルネスの歴史的背景を解説します。「自己」や「今」の認識において、なぜ西洋と東洋に違いが見られのか? これぞ大人の教養シリーズ。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパンにサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 2B
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン2) (90分拡大版)
Supported by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

川上(全龍)隆史
春光院
副住職

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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1. 今回も学び炸裂!「大人の教養シリーズ」第2弾、まずは前回のおさらいから

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本編

村上 川上さん、先ほどの石川さんのこのスライドは本当なんですか?

▶編集注:本セッションPart2では、石川善樹さんがサンスクリット語の「サティ」という言葉が“Mindfulness”と翻訳されたことをきっかけに、数千年の時を経て世界に認知されたとする説を論じました。

梵語「サティ」は100の概念をもつ言葉

春光院 副住職 川上(全龍)隆史さん

川上 「サティ」の翻訳語というか……その意味は、100個ぐらいあるんですよ。

村上 !? (石川さんを指して) 全然理解できてないじゃん。100分の1だよ!

井上 急に前提が崩れましたね(笑)。

村上 本当はここで石川さんにも振りたいんですが、まず川上さんから学びましょう。

石川 はい。川上さんは本職ですからね。

川上 「サティ」という言葉の意味は、1つの経典をとっても100個ぐらいあるんですよ。

確かに西洋人的に分かりやすい概念は「今ここに」ですが、その他にも「覚えている(remembering)」という概念もあります。

「覚えている」のほうが東洋的にはメジャーな解釈になるかと思います。

石川 どういうことなんですか? 確か日本語だと「サティ」は、念仏の「念」と訳されたりするんですよね。

川上 言葉的に言うと、「念」というか「覚えている」というか、覚えているといっても「理論的に覚えている」のではなく、概念として「大局的に覚えている」ということなんです。

石川 なるほど……。

川上 結局のところ、自分がある状況でどういう反応をしているのか、自分の体験を言葉ではなく感覚的に覚えていくということです。

石川 確かに「念」て、今の心って書くじゃないですか!

川上 そうそう。

石川 だから、それを覚えておくっていうことなんですね。

川上 そう、おっしゃる通り。ただ西洋人的にはそこが難しいんですよ。

やはり理論的に色々考えてしまうし、ベースとなる文化も違いますから。

北川 ああ、分かる、分かる。

100ある概念から「今ここに」が広まった背景

川上 確か1800年代のイギリス人ですよね、この「Mindfulness」を言ったのは。

石川 そうです。1900年にこの言葉が初めて出てきますね。

川上 そこから現代的な仏教的な学者たちが、「今」ということを無理やり売り出そうとしていた流れがあり、そこにジョン・カバット・ジンが「今ここに」を概念にもっていったほうが楽だ、と思いつきました。

石川 マインドフルネスを基本とするストレス低減療法をつくった人ですよね。

川上 そう。だからどうしても、医学ベースの発想にならざるをえなかった。

痛みの軽減法を専門としているので、やはり先ほど言っていたように病気などで苦しんでいる人は「今」に注意をもっていかないと、やはりしんどいですよね。

スタンフォードのロンジビティセンター(Stanford Center on Longevity)では年配者の研究をしていて、それこそ年配の方は若い人に比べて「今」を大切にしていて、だからこそ満足度が高いという報告が出ています。

ただ、これも先ほどの青春の話(本セッションPart1参照)ではないですけれど、若い人は未来を見てしまいます。

石川 リスクを取ってですね。

川上 はい。でもそれは重要なことで、今に不満があるからこそ、人がモチベートされることもあると思うんですよ。

東洋と西洋で異なる「自己」の概念

リンクトイン・ジャパン株式会社 日本代表 村上 臣さん

村上 今、マインドフルネスの話がありました。

これは、西洋から見ると面白い概念、理解できない概念だということです。

よく禅の絵で「円相」というのがありますが、「人の真ん中は結局空っぽだ」というようなことです。

全然思想が違いますよね。

そういう意味で、訪日外国人の方々にマインドフルネスや坐禅を説明するときに、どういうふうに翻訳されているのでしょうか?

多分、日本語でする説明を英語に翻訳するだけでは、分からないことが多いですよね。

川上 そうですね。やはり「自分というものがない」とする概念は、西洋にありませんから。

それこそデカルトではないですが、彼らの思想というのは、自分というものは確かに存在するし、自分というものは他者とは独立して存在している、という概念ですよね。

対する東洋の考え方は、「自分というものは存在しない」です。

結局あるのは、常に変化している肉体と、常に変化している外の環境とのインタラクションなんですよね

(写真右)株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹さん

石川 それって「動的平衡」じゃないですか?

川上 まさにそうなんですよね。

井上 結論にもっていこうとするなあ、本当に(笑)。

川上 インタラクションがあるからこそ、「自分というものがなんとなく存在しているんじゃないか」と勝手に我々が思い込んでいる、という考えなんです。

そこを説明するのは、確かにすごく難しいです。

どうしても西洋的な考え方というか、今の我々の教育のベースで考えると「自分」は存在するし、それこそ、今の教育概念のベースは「自己実現」だったりするじゃないですか。

「自己というものは絶対的である」という考え方ですから。

石川 自己肯定感とか、そういうところですよね。

川上 そうそう、そういうところです。

ただ「自己がない」というより、やはり常に変化しつつ、でも安定しているようなところを見ていくということではないかという気がしますね。

井上 円相というのは、どうしても人間は円柱だと言っているわけですよね。

(写真右)株式会社リバネス 代表取締役副社長 CTO 井上 浄さん

確かに、人間は口から肛門まで中空の円柱じゃないですか。

でも、その中には微生物(腸内細菌)がたくさんいるんですよ。

村上 さっきの丸の中にね。

井上 最近の研究では、人間はそうした微生物にコントロールされているんじゃないかというデータも出てきているわけです。

外部と内部という意味合いで行くと、途中で微生物はいるし色々な層があって……、何の話でしたっけ?

(一同笑)

石川 忘れました(笑)。

北川 でもセザンヌからピカソに流れる絵画の流れでは人間を円柱と表現するというキュビズムの流れがあったので、一応西洋の中でも「真ん中は空っぽ」の思想はあったのでしょうね。

石川 アートの話題が入ってきましたよ!どんどん行きましょう!

ここまでのまとめ。そして次の話題は……

村上 では、ここからはさらに視点を変えます。

石川さんのおみくじの話から、動的平衡のような話まで行きましたので……

北川 僕らも次に何が来るか分からない……(スライドが切り替わり)あっ、僕が来るんですね。

(会場笑)

村上 実は皆さんから資料はもらっていますが、どう僕が振るのかは一切知らせていません。

北川 いつ振られるんだろうと、だいぶドキドキしていました。

(続)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成

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