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1. 今回も学び炸裂!「大人の教養シリーズ」第2弾、まずは前回のおさらいから

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ICCサミット KYOTO 2019の好評セッション「人間を理解するとは何か?(シーズン2)」を全9回シリーズでお届けします。まずは、リンクトイン村上さんによる「前回のおさらい」から。諸科学における理解の作法、京都の洛中洛外図に見る大局観、そして楽天北川さんが放った青春の証明とは。ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパンにサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 2B
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン2) (90分拡大版)
Supported by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

川上(全龍)隆史
春光院
副住職

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン2)」の配信済み記事一覧


本編

村上 臣さん(以下、村上) こんにちは!モデレーターを務めますリンクトインの村上です。


村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。2000年8月、株式会社ピー・アイ・エムとヤフー株式会社の合併に伴いヤフー株式会社入社。2011年に一度退職した後、再び2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月に6億1000万人が利用するビジネス特化型ネットワークのリンクトイン(LinkedIn)の日本代表に就任。複数のスタートアップの戦略・技術顧問も務める。

人気シリーズのシーズン2ということで、本日はどうぞよろしくお願いします。

▶本セッションの「シーズン1」の全文書き起こし記事は、以下よりご覧いただけます。
【一挙公開】大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(全7回)

北川 拓也さん(以下、北川) (マイクを持たず)まず、僕らを皆さんに理解してもらわないといけませんね。


北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

ハーバード大学で数学と物理学を専攻し、同大学院物理学科博士課程を修了。物性物理の理論物理学者として、『Science』、『Nature Physics』、『Physical Review Letters』などの学術雑誌へ20本以上の論文を出版。その後、楽天でデータサイエンスの組織を立ち上げ、現在は、CDO(チーフデータオフィサー)としてグループ全体のAI・データ戦略の構築と実行を担い、日本だけでなく、アメリカやインド、フランス、シンガポールを含む海外拠点の組織も統括。データに関しては、収集から管理、データサイエンスに関連したプロダクト開発、コンサルティング、プロダクトのセールスまで、あらゆる価値の創造に貢献している。現在、消費者及び人間行動の理解を目指して科学的なアプローチを加速化させること、さらに、消費者のより深い理解を基にした新たなビジネスの創造に注力している。楽天データマーケティング株式会社では2017年より取締役を兼任。データ基盤作りや科学的な理解に基づく顧客体験の提供、広告事業の立ち上げ、データによるビジネスイノベーションなどを推進している。

村上 北川さん、まずマイクを持ってもらっていいですか?

(会場笑)

この「大人の教養シリーズ」は、前回のICCサミット(ICC FUKUOKA 2019)から始まったシリーズです。

最初から申し上げますと、今日話される内容は明日の皆さんのビジネスには全く役に立ちません!

石川 善樹さん(以下、石川) でも「意味があるか」と言われたら?


石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。2017年7月、子ども向け理系絵本『たす』〈白泉社〉が刊行。また近日『思想としての予防医学』が刊行予定。

村上 意味はあります! それは、なぜか?

そもそもなぜ、我々リンクトインはこんなセッションをサポートしているのか?

「モデレーターの趣味だろう」というご指摘がありますが、その通り!趣味です。

一応真面目に説明すると、雅さん(ICC代表・小林雅)と「教養は大事だよね」という話から、前回のサミットで「教養シリーズ」をやろうという話になりました。

KPIや売上、経営の話題もいいのですが、なんだかTipsのようなものばかりになってきたので、もう少し深い話をしたほうが良いだろうと、このセッションが企画されました。

ビジネスにおいて、あるいは人生において高い頂に長い時間をかけて登るとき、色々なことがあります。

浮き沈みあり、ハードシングスありという中で、我々は所詮人間、弱い生き物です。

弱い生き物が寄り集まっていくためには、お互いを理解し合っていくことが必要です。

リンクトインはアメリカの会社にもかかわらず、企業文化の中にコンパッション(思いやり)を大事にした「コンパッション経営」を掲げています。

What is compassionate management? (LinkedIn)

ですから、シリコンバレーでは大変ユニークな会社として有名です。

「大人の教養シリーズ」の登壇者はサブカルの人たちですから、前回はすごく小さい会場でやりました。

北川 大きな会場に出てきたらだめな人たち(笑)。

村上 そう、前に出てきたらだめなんですが、セッション後のアンケートではオーディエンスの82.1%の方に「最高だった」と回答していただき、すごく満足度が高いセッションということで、今回はメイン会場になりました!

(会場拍手)

井上 浄さん(以下、井上) やはりビジネスするのも人間ですから、人間を理解しないといけませんよね。


井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学特任准教授(現任)、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授(現任)、慶應義塾大学薬学部客員教授(現任)に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者。多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。株式会社ヒューマノーム研究所取締役、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会委員、NEDO技術委員、株式会社メタジェン技術顧問、株式会社サイディン技術顧問、等兼務。

村上 そおのとおりです!

「東洋から来た刺客」春光院・川上さん

村上 そして今回はなんと、人間を理解するプロ中のプロ、川上さんが初参加です。

よろしくお願いします!

川上(全龍)隆史(以下、川上) よろしくお願いします。


川上 (全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

臨済宗妙心寺派本山塔頭 春光院 副住職。米・アリゾナ州立大学で宗教学を学んだ後、宮城県の瑞巌寺にて修行を行う。2007年より春光院の副住職として、国内外の企業、大学、学会やイベント(イートン校、MIT、ブラウン大学、HBS, INSEAD, Mind & Life InstituteのISCS 2016とIRI 2018、TEDx、マイクロソフト社など)で禅やマインドフルネスの講演やワークショップを行う。また2008年からは米日財団の日米リーダーシッププログラムのフェローとしても活躍。著書「世界中のトップエリートが集う禅の教室」(角川書店)。

村上 前回もそうだったのですが、登壇者の5人中3人がPh.D.ホルダー(※)で非常にサイエンスに片寄っているところを、雅さんがそのバランスをとるかのように東洋から来た刺客、川上さんを送り込んでいます。

(会場笑)

▶︎編集注:石川さんはハーバード大学公衆衛生大学院修了後に自治医科大学で、井上さんは東京薬科大学大学院薬学研究科で、北川さんはハーバード大学院物理学科で博士号の学位(Doctor of Philosophy:Ph.D.)を取得されています。

石川 「宗教」対「科学」ですね。

村上 そう、「アート」と「サイエンス」です。

でも飛びぬけた企業やそのトップというのは、アップルのスティーブ・ジョブズを例に出すと、やはりサイエンスとアートの交差点に立っていたわけです。

井上 確かに。

村上 今まさに交差点が出来上がろうとしている中で、人間を理解したい!

北川 したい!したいです。

村上 おそらく一番ICCの中で主語が大きいテーマです。

シーズン1の詳細は全7回の書き起こし記事がICCのサイトにありますので、ぜひ見ていない方はご覧いただきたいのですが、私のほうで駆け足で振り返りをさせていただきます。

シーズン1の要点①:諸科学で異なる「理解の作法」

村上 前回はまず、石川さんから「そもそも、理解するとはどういうことか?」という話をしていただきました。

科学は「自然科学」「社会科学」「人文科学」の3分野に分けられますが、それぞれ理解する様式、アプローチは違うという話でした。

1. 諸科学は万物をどのように「理解」しているか? 自然科学・社会科学・人文科学で異なる“理解の作法”(ICC FUKUKOA 2019)

「自然科学」は“分解”することで理解しようとするアプローチで、A=B×Cのような方程式です。

私は物理系なので、非常になじみがあります。

北川さんや僕のような、森羅万象を1つの数式で表したいという欲求が強い物理系のアプローチです。

「社会科学」は“近似”で似たものを探すというアプローチで、A≒Bの式で表すことができます。

石川さんが専門の予防医学で言えば「健康≒Well-beingなのではないか?」と議論を進めていくアプローチです。

「人文科学」は川上さんのような宗教家や哲学者的なアプローチだと思いますが、「大元は何なんだ?」ということで、A→Bの式です。

例えば「退屈とは何か」を理解しようとしたとき、それは「事件を望む気持ちがくじかれることである」という表現になります。

うまいことを言っているようで、何も言っていないんじゃないかという説がありますが(笑)。

川上 それがつらいんですよね。

井上 理解した気にはなるけど、後から「あれは何だったのかな?」と思ったりしますよね。

シーズン1の要点②:雲だらけの『洛中洛外図』の解釈

村上 そうした話の後に、今度は『洛中洛外図』の話が出ました。

2. 人間を理解するヒントは、京都の『洛中洛外図』にあり!?(ICC FUKUOKA 2019)

『洛中洛外図』は、「京都とは何か?」という大きなテーマを1枚の絵で表したすごい絵です。

でも絵の半分ぐらいが雲で隠れています。京都を分かろうとしているのに、見えていないのです。

前回は、見えていないところは“Big Picture”と“Detail”の間に存在する「間(ま)」であり、そこを想像で埋めていくような作業において「理解する」ことの高みがあるのではないか、という結論になりました。

その流れで、西洋と東洋のアプローチの違いも議論されました。

例えば『洛中洛外図』の対極を考えると、「Google Earth」のように車や衛星を使い大量の写真データを集めて、Detailまで分析しようというアプローチがあります。

これはやはり「神が何でも知っている」的な思想です。

「神がつくりし給う人間」からスタートした西洋思想と、「そもそも、人間は空(くう)だ」という東洋の「円相」の考え方があります。

このように西洋と東洋に考え方の差があるものの、我々の多くは日本に住んでいるので、東洋思想をベースに進めていくことになりました。

シーズン1の要点③:日本画鑑賞における「Zの法則」

村上 その中で、視点がZ型に移動していく「Zの法則」を北川さんが解説してくれました。

日本画は左上からZの形で視点を移動していくことによって、時系列が出てきます。

二次元の絵やアニメが三次元に見えるのは、そういった視線移動が加わることによります。

さらに四次元の「時間」については、絵巻物は右から左に捲くっていくことで、時間自体、空間自体がずれていき、想像と近似によって時間表現を生み出しています。

これは非常にハイコンテクストなもので、ある程度共通の理解があるところで、経験とセンスがある者は同じような理解をするということが、ここで話したことです。

シーズン1の要点④:北川さんによる「青春」の存在証明

村上 そして、これが前回の大ヒットのグラフです。

詳細は書き起こし記事を読んでいただくと分かるのでご覧ください。

4.『青春と僕』――楽天CDO・北川拓也は今、科学者として「青春」を理解する(ICC FUKUOKA 2019)

登壇者一同に「グラフでここまで興奮したのは初めてだ」と言わせたグラフです。

石川 なかなかグラフで興奮することはないですよね(笑)

村上 このグラフは、なんと「青春が存在すること」を証明しているんですよ。

面白いですよね。北川さん、これを一言でちょっと説明してください。

北川 一言で?(笑)

村上 一言で「青春とは何か?」を。

北川 「青春とは、リスクをとることだ」ですね。

村上 皆さん、「青春とはリスクをとること」ですよ!!

「小さい成功などあっても満たされないと思うのが青春である」というのが、このグラフが意図しているところでした。

この会場にはリスクテイカーがたくさんいますよね。スタートアップ関係者はリスクが大好きです。

何歳か知りませんが、皆さんは「青春真っただ中である」と。

また人生100年時代、青春は何回も来そうだと予想して、我々は晩年にくる青春を「白秋(はくしゅう)」と名付けました。

5. 人間の理解における「FACTFULNESS」とは? 変わりゆく“常識”をアップデートせよ(ICC FUKUOKA 2019)

このピークが70歳くらいに来るのではないかと予想して、今後生きるのが楽しみになりました。

シーズン1の要点⑤:一卵性双生児が「違う人間」な理由

村上 そして、遺伝子の話題も出ました。皆さん、DNAはご存知ですよね。

我々は遺伝子を持っていますが、その遺伝子の素養が発現するかしないかに関わるのが、エビゲノムといっていましたね、浄さん。

井上 エ「ピ」ゲノムですね。

石川 エビになっちゃった(笑)。

北川 違う生物の遺伝子が入ってますね(笑)。

ちなみに「エピ」は「乗っかる」という意味ですね。

村上 やはり学の無さが出ました。カタカナは恐ろしいですね。

我々もリンク「ト」インなのか、リンク「ド」インなのかと言われるんですけれども。

さてこのエピゲノムの本題は何かというと、遺伝子の素養が発現する・しないが環境によって変わってくるというのが、浄さんが指摘されたことです。

井上 まさに双子の例がそうですよね。

7. 人間を理解するとは何か? その探究の価値は「理解しようとしている」ことにある(ICC FUKUOKA 2019)

遺伝子の配列が全く同じはずの一卵性双生児でも、育つ環境が違うと全く違う表現型(フェノタイプ)になるというのは、世界中で分かっていることです。

村上 面白いですよね。

シーズン1の要点⑥:「知った自分」は「それまでの自分」と違う

村上 そして、色々なデータを集めて分析ができるようになったことで、「ヒューマノーム」という新しい学問が出てきました。

6. 個人データの蓄積が拓く新学問「ヒューマノーム」は、人間の未来を予測する(ICC FUKUOKA 2019)

井上 はい。学問をつくっちゃいました。

村上 ということで、結局のところ、(スライドを切り替える)ほら浄さん、嬉しいでしょう?

井上 嬉しい!すごい嬉しい。

村上 「さあ研究だ!!」です。

結局シーズン1は何に帰着したかというと、やはり色々なことを知っていくことによって、「知った自分はそれまでの自分と違う」ということです。

新しいインプットを得て、それを消化することによって、どんどん自分自身が変わっていく、日々トランスフォーメーションしていきます。

そして、我々が「理解する」と思っていることのそもそもの知識が、かなり古くなっていることが分かりました。

先ほどのヒューマノームの話もそうですが、ここ10年間で、今まで分からなかったような科学的なデータが急速に解析できるようになりました。

例えば脳であれば、fMRI(※)という技術の進化により脳のどの部位が活動しているかがリアルタイムで分かるようになりました。

▶︎編集注:fMRI (functional MRI) とは、MRIによって撮像した脳の構造情報上に、脳の機能活動がどの部位で行われたかを画像化する手法。その基本原理となる「BOLD効果」の発見およびfMRIの開発は、日本の物理学者・小川誠二博士による業績。(参考:東北福祉大学「fMRIとは」)

この10年での「科学による人間の理解」の進化を考えると、やはり我々はその見方そのものをアップデートしないといけません。

シーズン1は、「継続的に人を理解しようとする姿勢そのものに価値があるのではないか」というところで終了になったわけです。

というのを受けて、シーズン2に入りました。

石川・井上 行きましょう!

村上 ですから、理解し続けることが大事です。

今回は色々な視点でさらに見ていくのですが、やはり口火を切るのは石川さんですよね。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 2. 言語のグローバル化が「人間の理解」を加速する〜マインドフルネスの概念を例に をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成

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