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「人間を理解するとは何か?(シーズン2)」全9回シリーズの(その7)では、近代フランス芸術と盛期ルネサンスを代表する二人の巨匠の作品から、人間がWell-beingを感じる仕組みを探ります。その鍵を「世界との統一感」に見出した楽天北川さんに対する、宗教家・川上さんの見解とは? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパンにサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 2B
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン2) (90分拡大版)
Supported by リンクトイン・ジャパン
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
川上(全龍)隆史
春光院
副住職
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター
(モデレーター)
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
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最初の記事
1. 今回も学び炸裂!「大人の教養シリーズ」第2弾、まずは前回のおさらいから
1つ前の記事
6.「日本の世帯年収=550万円」の統計データをどう読み解くか
本編
村上 という感じで、ちょうどセッション時間も半分が過ぎました。
ここまで、「人間を理解するアプローチ」として2つの軸が出てきました。
1つは、石川さんの「言葉」によるアプローチです。
言葉+カルチャーから見た人間の理解を解説いただきました(本セッションPart2〜5参照)。
もう1つは、我々は資本主義社会をばりばりに生きているので、GDPやお金の面から見た分析の仕方もある、ということを北川さんにお話しいただきました(Part6参照)。
加えて、実は北川さんが送ってくれたもう1つのスライドデータがありました。
題して「Well-beingな絵」というものです。
世界との一体感が「Well-being」をもたらす
北川 こちらの絵です。まずみんなで10秒間鑑賞しましょう。
『金魚鉢のある室内 / Intérieur, bocal de poissons rouges』(アンリ・マティス)
石川 マティスですね。
北川 僕はこれを見て“Matisse, perfect!”って思いました。
村上 どの辺がパーフェクトなのでしょうか?
北川 これは僕にとってすごくWell-beingな絵だったんですよ。
皆さんもぜひ、パリのポンピドゥー・センターに足を運んで見ていただきたいと思います。
マティスはピカソも認めた、実に珍しい色彩をもった天才芸術家です。
パッと見ると、まずは真ん中の赤い金魚が目に入って、主題は金魚なのかな、とふと思います。
でもじっと見ていると、金魚は中心にあるわけではないと気づきます。
絵は全部フラットで描かれていて、遠近法を無視した描き方をされています。
それに加えて、青が絵全体に散りばめられているので、全体に溶け出すような感覚があります。
村上 水路と空の青とで基本的に青がにじんでいる感じですね。
北川 そうなんですよ。なので全体との一体感が出るので、主題があるようでないと感じます。
先ほど川上さんが、外部とのインタラクションがあってこそ「自己」や「実存」が見つかるというお話をされていたと思います(本セッションPart4参照)。
これはまさに逆の感覚を催すもので、世界との一体感を感じることでWell-beingを感じさせる作品なのではと思うわけです。
宗教体験もそうですよね。禅をしていると外部と自分とのバウンダリー(境界)が無くなったように感じて、人はすごく幸せに感じるという宗教体験があります。
だから全体との交わりによってWell-beingを感じる、そしてどちらかと言えば、実はそこに神の存在を感じる絵だなと僕は解釈したのです。
マティスの『金魚鉢のある室内』は東洋的?
川上 こういう描き方をしているということは、マティスの初期の頃の作品ですよね。
石川 うお、川上さんすごい!「大人の教養シリーズ」にふさわしい名解説ですね。
川上 マティスの作風は後期にかなり変わっていくので分かります。
この作品の何が面白いかというと、この絵はすごく東洋的に描かれているんですよね。
どういうことかと言うと、大局観で描かれているでしょう?
西洋と東洋の絵を比較すると、「西洋人は木を見て、東洋人は森を見る」という概念の違いを感じますが、まさしくこれは「森」なんですよ。
対象物を物質として描くのではなく、森を見るような大局的な視点があって、面白いと思います。
あとは、外と中のバウンダリーがないというのは、まさに日本の庭や建築がそうです。
日本の建物は入るときに靴を脱ぎますが、それ以外は外と中の区別がありません。
外と中の区別をするのは「茶室」ぐらいです。
村上 縁側も外だか中だか分かりませんし、障子だなんだというのも全部取れますしね。
北川 それが沁み出るような東洋的な絵だということですね。
川上 そうです。
絵を愛するように、人間を理解できないのか
北川 先ほど「言葉がなければ理解できない」という話があったと思いますが、絵画が面白いのは、モダンアートが特にそうであるように「この絵の何がすごいのか理解できない」という点にあります。
ピカソが言ったとされる言葉に「誰もが芸術を理解しようとするのに、なぜ小鳥のさえずりを理解しようとはしないのか」「なぜ、理解せずして愛することができないのか」といった内容の名言があります。
ピカソは「絵そのものを愛しなさい」と言ったんですね。
だから人間を理解すると言ったときに、まさに非言語、もしくはノンロジカルに「愛する」ことも大事だということを感じさせてもらいました。
石川 さっきの話で言うと、小鳥のさえずりを愛するようにGDPを愛しなさいと。
北川 そうです、そうです笑
それで僕は、なぜそうした感覚を受けるのかという謎解きをやってみたんですよ。
その答えが次の絵に隠されています。
「ラファエロの聖母」と「マティスの金魚」の共通点
北川 こちら、ラファエロの『大公の聖母』です。
『大公の聖母 / Madonna del Granduca』(ラファエロ・サンティ)
皆さん、気づかないですか? こうやってみていると(先ほどのマティスの絵画と交互に表示)。
石川 色づかいが一緒?
北川 一緒ですよね。
村上 興奮してきましたねえ。
井上 えらい興奮してきました(笑)。
北川 マティスは天才だったんですよ。
マティスは、やはりヨーロッパの人間がこれまで辿ってきた「絵画を見る姿勢」を深く理解していました。
今までマリア像というのは、決まって赤と青のコントラストで描かれています。
これはラファエロの絵だけではありません。何を見てもこうなっています。
その中で彼は、赤と青のコントラストこそが宗教観、もしくは自分より「大なるもの」を感じさせるものとして直感的に理解していたがために、先ほどの構図を使ったわけですよ。
ここにWell-being、つまり世界との一体感を感じさせたのでしょう。
言語処理するとこうなるのですが、おそらくこの絵を見ていた人は、何か知らないけれども、そういったものを感じていたはずだと思います。
だから2枚の絵を見たときに、やはり「人間を理解する」ということは、こういうこともあるんだなと思いました。
もっと踏み込んで言えば、僕はこれからディープラーニングにつなげる話を連想しましたが、話が長くなるので、ちょっとやめておきましょう。
村上 そうですね(笑)。
人間の深層心理に訴えかけるマーケティング事例
村上 今のお話は、ある種の暗黙のハイコンテクストの持ち込みですよね。
我々日本も含めた東洋文化は「ハイコンテクスト文化」と言われています。
みんな知っているものを再構築・再構成することによって絵に安心感を感じさせるとか、何らかの感じ入るものがあるだろうという、要するにサブリミナル効果ですね。
広告では、そういう手法を色々なやり方で差し込んできて、深層心理に訴えかけることがあります。
石川 マーケティングでものすごく有名な事例が、冬にコーラが売れない問題を解決するために、20世紀初頭にコカ・コーラが作り出したサンタクロース像です。
サンタクロースは赤と白で、コカ・コーラに似ているじゃないですか。
でも実は、それまではサンタクロースは赤や白ではなかったんですよ。
それをコカ・コーラの代理店のマッキャンエリクソンがサンタを使って、冬に暖炉の前でサンタクロースに抱かれた子どもがコーラを飲むという広告をやって、コーラが冬でもバカ売れしたんですよ。
そういう暗黙のハイコンテクストをつくるんです。
村上 そうですね。そういう深層心理に訴える手法をとりました。
それは人間を深く理解したものを、マーケティングに利用したということですよね。
(続)
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続きは 8.「みんなちがって、みんないい」を科学する〜湯野浜ヒューマノームの事例 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成
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