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「AIやデータの活用が企業経営を変える」【F17-6C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その6)は、スポーツにおけるデータ活用事例について議論しました。特に、SAP(※当時)馬場さんにバレーボール日本代表でのAI活用について詳しく解説頂きました。TVでは見えない監督の仕事が理解できます。是非御覧ください。
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 6C
「AIやデータの活用が企業経営を変える」
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員
上野 勇
株式会社セプテーニ・ホールディングス
取締役
北川 拓也
楽天株式会社
執行役員
馬場 渉
SAP バイスプレジデント カスタマーエクスペリエンス担当 兼 SAPジャパン Chief Innovation Officer(当時)
(モデレーター)
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
馬場 AIとかIoT、ビッグデータというと、カスタマーフェイシングの(顧客と接する)華々しい部分にばかり目が向きがちですよね。
それはそれで面白いですし、いいと思うのですが、今言われたような地味な世界も、関係ないファンクションはないんですよね。
調達や人事など、正にやられている方がいるのに地味と言っては失礼かもしれませんが、そのような分野もやはり新しくなっています。
そのことが結構過小評価されている感はありますよね。
今まではデータを取りようがなかったので、やりようがなかったわけですが。
バレーボール日本代表の徹底的なデータ活用
馬場 先ほどバレーボールの話が出ましたが、真鍋監督にAIでデータをシェアしていたのは、実は我々のチームでして、私もリオデジャネイロ五輪に一緒に行きました。
ボロ負けしましたけれども、2年くらいずっと取り組んでいまして、あれは本当にリアルタイムなんですよ。
あそこまでやっているのは日本チームだけです。
あんなことをやっているから負けたんだとも言われかねませんが(笑)。
やり過ぎという程に過剰にやったのですが、ダメでしたね。
でも、それくらいやらないと絶対に勝てません。
身長差が20cmくらいありますから、そうすると手身長の差は35cm~40cmくらいになります。
背の高さや手身長の差が、パフォーマンスに与える影響というのは、ビッグデータを分析するまでのこともなく、エクセルでデータを並べれば十分に分かります。
簡単な数字で明らかで、ロシアやブラジルのアタッカーの、相手のブロックが0枚、1枚、2枚ある時のアタック成功率を取ると、壁があってもなくてもパフォーマンスが変わらないんです。
大きいですからね、前にブロックがあろうがなかろうがアタックが入るわけです。
バスケット選手が、2m50cmでも3mでもいいですが、背が高ければ楽にシュートが入るのと同じです。
同じことで、バレーボールで背が高ければ壁があっても関係ないと。
しかし日本の場合は、壁があると露骨にパフォーマンスが落ちることが数字に出ています。
ブロックがなければ、世界のトップパフォーマーの選手とほぼ同じ確率なんです。
トップパフォーマーは、45%くらいの確率でアタックを決めます。
残りはレシーブされるわけですが、パコーンとボールを打って決まる確率というのは、背の小さい日本の選手であろうが、世界のトップであろうが同じです。
つまり日本の選手にもアタック力はあるんです。
アタック力はあるのですが、ブロックが1枚あると、45%だった確率が突如20%くらいになり、ブロックが2枚になると6%くらい、つまりほぼ入らなくなります。
ならば、どうやってブロックのないシチュエーションを作るか、もしくはディフェンス時には、どのように相手の攻撃を読むかというように、何か対策を講じなければなりません。
今回のAIでは結局勝てませんでしたが、何かしないと勝てないわけです。
AIは予測精度においてプロセッターを上回った
山内 つまり、背の低い日本人が世界で戦うには、もうこれしかないという結論に達して、やり過ぎ感は否めないものの、そこまでやったということですよね。
もうそれしかないと。
馬場 もちろん試合結果が全てですが、中身は決して悪くなかったというか、むしろすごくて、先ほど予測精度が上がるという話がありましたが、人間よりもずっと当たります。
真鍋監督も元セッターでしたが、セッターというのは人間のアルゴリズムで相手側のセッターがどこに配球するかということを読む力を持っています。
ある時、真鍋さんと、コーチの2グループ、そして機械とで、セッターがどこに配球するかを予測するテストをしました。
ゾーンを決めて、後ろだ、前だというような記号があるのですが、その結果は、一応彼らもプロのプライドがあるので数字は申し上げられませんが、人間よりも機械の方が断然よかったですね。
もちろんばらつきはありますが、なんでこんなに当たるの?というくらい当たります。
もしくは、なんでこんなの外すの?というような予測を外すこともありますが。
機械というのは面白くて、サッカーでも、「どフリー」でボールが来たら、普通は転がして確実にボールを入れますよね。
人間だったらそういう風にやるところを、機械はわざわざ左のサイドネットを狙ってシュートを放つというような予測をたまにしたりします。
それはデータのサンプルの問題だと思いまですが、いずれにしても、予測レベルは相当上がりました。
どのように予測するのか一応お話ししておきますと、試合中というのはものすごくダイナミックですよね。
バレーボールは、サッカーや野球に比べると、とてつもないスピード感です。
私はもともとサッカーのデータ分析をやっていたのですが、野球に比べるとサッカーは動きが速く、サッカーのデータ分析は難しいと言われていました。
ところが、バレーボールの試合を見に行ったら、サッカーのスピードの比ではなく、最初はこんなことやって意味あるのかなと正直思ったくらいです。
あのダイナミックさの中で使えなかったら、まるで意味がないじゃないですか。
バレーボールの監督が試合中タブレットにかじりつくワケ
山内 そうですね。
馬場 でも予測精度やリアルタイム性を上げると結構使えることが分かりました。
どのタイミングで予測するかというと、今トスを上げるぞというタイミングで予測しても、当然対応のしようがないわけです。
そうではなくて、例えばさおりん(木村沙織選手)がサーブを打つ時に、どこにサーブを打つと、どのレシーバーがボールを拾って、セッターがどこにトスを上げて、誰がどこに打ってくるかを予測するんです。
前のプレーが終わってから笛がなるまで15秒、サーブを打つまでに8秒の時間があります。
その間に、「沙織、あそこに打ったら、あそこに戻ってくるからいけ!」というようなシフトを、プレーをする前に予測し、伝えることができるんです。
山内 そういうことなんですか!
馬場 だからずっとデバイスにかじりついているわけです。
ですから皆さん、AIなどをゴリゴリやられている方もいらっしゃると思いますが、従来のデータサイエンスというか、AIとかマシーンラーニング登場以前の教科書は、我々からしたら全て不要です。
完全にパラダイムが違いますので、全く役に立ちません。
できないと思っていること、気合を入れて一生懸命やっていることは、ほとんど不要という世界になっています。
いらないと思われているデータも含め、何からすべてを突っ込んで、ダーッと計算して、いらないものはいらない、相関のないものは相関のないものとしてスコアリングされるという、人間では絶対にできない処理をしています。
時代は変わりましたね。
山内 なるほど!分かりました。
馬場 それでもリオでは勝てませんでしたが……。
(続)
続きは 【喝!】大企業は若手人材全員に年間数千万円の教育投資すべし をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
日本バレーボール協会の理事には、バリバリの戦略コンサルタントの方も入っていて、コートだけでなく、指導法や戦術も、よりビジネスやテクノロジーの要素が加わって進化していくきますね!(榎戸)
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