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「M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメント」【F17-7A】9回シリーズ(その5)は、M&A後の統合プロセスの実務について、ご経験を踏まえて成功のコツをお話し頂きました。「寝食を共にする」「完全アウェー」などリアリティあるお話の数々です。是非御覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 7A
M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメントの秘訣
(スピーカー)
上原 仁
株式会社マイネット
代表取締役社長
留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
/NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
平尾 丈
株式会社じげん
代表取締役社長
(モデレーター)
青柳 直樹
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最初の記事
【新】M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメントの秘訣【F17-7A #1】
1つ前の記事
事業を再定義するプロセスの中にM&Aがある(レノボ・ジャパン留目)【F17-7A #4】
本編
上原 弊社の場合は今私が行なっていますが、PMI(M&A後の統合プロセス)責任者がどれだけ気合を入れ、この仲間を引き連れて次のステージに行くのかということに気合を入れているかだし、その気合に共鳴してもらえるかという話だと思っています。
青柳 お三方にお聞きしたいのですが、PMIにおいて「この気合」を体現していくには、どのように表現していくのか?
言葉で表現することもあると思いますが、あらゆる日々の行動が最適化されると思います。
「こんなことまでしている」ということが何かあれば、会場の皆さんも「そこまでしなければならないのか」と分かると思いますので、教えていただきたいと思います。
上原 クルーズさんのゲーム事業を取得した時の話をさせていただきます。
▶編集注:2016年11月に、マイネット社は、クルーズ社のゲーム事業を分割して新設された「株式会社C&Mゲームス」の株式を100%取得することで、クルーズ社のゲーム事業を買収しています。
クルーズさんとマイネットを比較すると、過去5年間位に扱ったブランドの度合いは完全にクルーズさんの方が上という状態なので、クルーズさんのメンバーはとても強いメンバーでした。
その強いメンバーを、同数程度の弊社のメンバーで飲み込みにいくということなので、それは気合を入れました。
退路を断て。そして、同じ釜の飯を食え
上原 そこでまず一つ目に行なったことは、退路を断つということです。
私がこの案件のPMI責任者なのですが、マイネット側の300人のゲームチームについては若手に完全に代表取締役を任せ、私の権限は外しました。その上で、六本木のクルーズ新会社、CMG(株式会社C&Mゲームス)の代表に座りました。
C&Mゲームスで、「俺は完全に六本木に住み、六本木の会社の社長になるんだ」ということを話し、まず退路を絶ちました。
二つ目は、完全に寝食を共にするということです。
青柳 分かる、とても重要ですね。
上原 それまでとは全く異なるマネジメント方式だったようですが、机を並べ、すぐ側にいるということです。
すぐ側でヤキソバを食べているという状態。
皆でお昼のお弁当を買い、一緒に食べ、「今日のはあまり美味しくないな」ということを話しながら寝食を共にする。
もちろん難しい問題も発生するので、夜まで現場で一緒に取り組む。
クルーズさんの案件は、社運を掛けた一点物のアートのようなPMIでしたし、チームのメンバーが強いことは分かっていたので、初日にメンバー300人の前で「あなたたちのキャリアのケツは俺が持つ」と宣言しました。
私自身が絶対に逃げられない状態を作りました。
これは全ての案件で行うことではないと思いますが、気合の見せ方として、退路を経つ、寝食を共にする、「ケツを持つ」ことを宣言するということを行いました。
青柳 留目さんはどうでしょう?
絶対的アウェーから始まるのが統合プロジェクト
留目 「寝食を共にする」ということは本当にそうだなと思います。
統合プロジェクトの最初の環境は本当にアウェーです。
M&Aの後、二千人の社員の前に出て話しをしても、当然「何だこの若造は?何ができるっていうんだ?」という反応です。
その中で徐々に信頼を築いていかなければならないのですが、早い話で言うと、一緒に飲み食いし、場合によっては朝までトコトン付き合うということを通じて「少なくとも悪いやつではないな」という所から入ります。
また、ビジョンや、やりたいことを伝えるということは結構難しくて、社外よりもむしろ社内の方が伝わらないなと感じています。
プレスや社外の人の方が、当事者としての利害関係が無いので、シンプルにやりたいことが伝わるんですよね。
第三者の目から見てリーズナブルな内容であれば当然賛同してくれますし、「当然そうだよね」と言って応援してくれまするので、社外から味方につけることが意外と早道なのではないかと思っています。
最初に社内で「パソコンではなく、パーソナルコンピューティングだ」と言い出しても、「こいつは何を言っているんだ。俺が長年やってきた仕事をどうしようとしているんだ」というように見られてしまいます。
一方で社外は、フェアに評価されるので「そうだよね、当然パーソナルコンピューティングを目指すことになるよね」と納得されて広まっていき、変革を進めて成果を出していく経験を共有しながら、2年位遅れて社内の大半の人も「あー、なるほど。言っていたことはこういうことだったんだな」と腹落ちしていきます。
そのためにも、短期的な成果を1つでも2つでも上げなければならない。
売上を立てるということに関して言えば、トップの自分が自ら力技で売りに行くですとか、(上原さんが言うように)それを含めて気合ですが、結果をとにかく作りにいくことが大事かなと思います。
組織統合を円滑にするメディアの使い方
青柳 ありがとうございます。
気合をベースとして、寝食を共にするという所から、PRについては社内に言っても「あぁ、言ってる言ってる」と空回りしている感があるものですよね。
留目 そうですね。
青柳 そのような中でも、きちんとPRをする。
上原さんも最近クルーズの方々と、4、5人の座談会形式でPRをされていますが、すごく良いなと思いました。
これにより、30分や1時間の社内ミーティングでは伝えられない、あるいは全員と会うことが不可能という所に対してきちんと伝えることができるのかなと思うのですが。
上原 そうですね。
客観的にメディアの方に書いていただくことで皆に伝わる。
すごくその通りだなと感じます。
青柳 最初、例えば空回りしている感から、カチッとはまったなとどのような瞬間から感じますか?
上原 私はご覧の通り「気合だ」と言いながらやってきているので、未だに空回りしています。(笑)
(会場笑)
それぐらいの感じで取り組みしていると、メンバーも「この人はこういう人だ」「仕方ないな」という感じになってくれる。
PMIのリーダーは少し抜けているくらいが丁度良いと思うんです。
パキパキと上手にできる人は「この人は本当にリストラをしに来た」という感じになる気がしています。
「気合だ、気合だ」「お前たちのことは俺が面倒見る」と言っているおっさんが来たら「仕方ないな」という雰囲気になってくれると思っています。
青柳 しょうがないから協力してやるかと。(笑)
上原 そうです。(笑)
青柳 では、平尾さん、「愛情、友情、平尾丈」ではなく、もっと地味な部分。
PMIの現場では実はこんなこともしているという話を聞いてみたいのですが。(笑)
キャラを出していきましょう。
平尾 ありがとうございます。
僕はあまり気合で行くタイプではないかもしれません。(笑)
青柳 (上原さんと)違うと。(笑)
平尾 もちろん「気合だ」という部分もあるのですが、気合とは言わずに気合を出すということを行なっています。
自分の生き方もそうなのですが、やはり経営には「絶対」と「相対」というものがあると思います。
絶対的な価値と、相対的な価値を上手く使い分けながら、お見せしていくということを行なっています。
絶対的な業績の成功と相対的な経営体制が必要
平尾 絶対的な価値では、事業に関しては数字がまずあるので、業績の成功を見せるということです。
ただ、その数字がどのような価値をもつのかはM&A先の人にとっては相対的です。業績での成功は、先程のお話しに出てきた2:6:2(買収後、それに対してポジティブな人が2割、表情が変わらない人が6割、ネガティブな人が2割で被買収側の社員の姿勢が出るということ)の6の人が付いて来る瞬間だと思います。
全ての皆さんを救い出すことはできないかもしれませんが、ベースがない会社は沢山ありました。
私たちは、未上場の会社を買収することが多いのですが、なかなか組織の型が行き届いていなかったり、等級制度がなかったり、昇級に対して説明責任を果たしていなかったりと、経営に透明性が確保できていない場合がありました。
我々は、その辺りを相対的に変えていき、2割+6割の人たちが変わるタイミングでそのことが浸透してくると、残りの2割にも勝手に伝染する、もしくは遠心力が働くと思います。
後はリスクについてです。
未上場の会社が「エイエイオー」と経営していたものが、ガバナンス面を含め価値を拡大再生産していく中で、事業の価値はもちろん上がっているけれど、リスクパラメーターが見えない所で上がっている会社が多くあります。
法務や、労務において今まで問題が沢山起きてきたけれど、ここをゼロに近付ける努力を一緒にする。
例えば、弊社が買収したリジョブという会社は、採用成果型の求人媒体というものを取り扱いしていたのですが、なかなか採用効果というものが良くありませんでした。
私たちが買収する以前は、お客様もお忙しいのか、採用しているのにその効果をご報告いただけないケースが結構ありました。
「このような良くない慣習も是正していくんだ」ということをセットで行ない、経営の質が改善していき、その成功体験を特にミドル以下の方々と一緒に共有させていただき、一枚岩になるということに取り組んできたと思います。
青柳 会場の皆さんには、もしかすると「気合の話」と対比して、「冷静」と「情熱」のように見えているかもしれませんが、今のお話をおうかがいしていると平尾さんの話も真理をついています。
これは多分お二人も賛同される所だと思いますが、平尾さんはより難しい、業態の違うものを買っているからこそ、ドライな真理の部分をきちんとつかなければならないということを表していると思います。
(登壇者頷く)
平尾 ありがとうございます。
青柳 ある程度の期間で結果を出さないと、人はその後付いてこないということですね。
最初は空回りでも良いのだけれど、ある所からはすごくシビアに成果を出すことがPMIの重要な成否を分けるということをおっしゃっているのかなと思いました。
私の経験でも、買収した会社の売上が何倍にも伸びたという時は、アメリカ人であれ、誰であれ指示に従ってくれ、マイカンパニーとして自分の経営する会社の名前を言ってくれるようになります。
成果が伴わなければ、社内で着ているTシャツのロゴが違う、つまり「まだ僕は前の会社に気持ちがあります」というようなことはありますよね。
平尾 ありますね。
(続)
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続きは M&A後のドラスティックな組織変革を成し遂げる秘訣とは?(レノボ・ジャパン留目) をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鎌田 さくら
【編集部コメント】
所属企業が買収した会社のメンバーと一緒にプロジェクトをした経験も、所属企業が買収された経験もあるのですが、マイネット上原さんの「隣で弁当一緒に食べる」というのは素晴らしいお話だなと思いました。ある日突然やってきて、オフィスも違うままで「一緒に頑張りましょう」と言われたところで被買収側の従業員がモチベーションを保てるはずないんですよね。(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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