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「M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメント」【F17-7A】9回シリーズ(その6)は、レノボ・ジャパン留目さんを中心にM&A後の統合プロセスの実務について、ご経験を踏まえて成功のコツをお話し頂きました。NECのPC事業といった伝統ある組織の統合プロセスのハードルとポイントとは?是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 7A
M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメントの秘訣
(スピーカー)
上原 仁
株式会社マイネット
代表取締役社長
留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
/NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
平尾 丈
株式会社じげん
代表取締役社長
(モデレーター)
青柳 直樹
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最初の記事
【新】M&Aによる成長を実現する組織統合マネジメントの秘訣【F17-7A #1】
1つ前の記事
まず隣で同じ釜の飯を食おう – M&A後の組織統合を成功に導く第1歩【F17-7A #5】
本編
青柳 ここからは難しいタイプのイシューに入っていきたいと思います。
まず一つは、マネジメントの統合について話していきたいと思います。
皆さんの会社のプラクティスとして、そもそも買収先の経営陣を受け入れないという選択肢もあるかもしれませんが、受け入れるケースではどのようなチームを作っていくのか。
ここからは編集が必要かもしれませんが、よくあるPMI(M&A後の統合プロセス)のセッションは、登壇者が今後のM&Aへの影響も考え、すごく耳触りの良いことを言っていたり、それを期待するスタートアップコミュニティも「こうあるべきだよね」といった話が非常に多すぎると思っています。
(会場笑)
ここからはそのようなセッションです。
実際に取り組みしてきたマネジメント統合と、その中での学び、今後こうしていくべきだというお考えがあれば自由にお話し下さい。
上原 はい。
気合の話ばかりしてしまったのですが。(笑)
私はただの気合のおっさんですが、弊社メンバーの名誉のためにもしっかり取り組んでいる話をしたいと思います。
アメーバ方式で人事と成果を可視化する
上原 まず初めに取り組むのは人事の可視化と、成果の可視化です。当社は多数のゲームタイトルを個々の利益事業体としてマネジメントするアメーバ方式の組織・管理会計体制を敷いています。このマネジメント方式の導入が最初のキーになります。
M&Aを行う前の段階は、事業者さんは売却しようとする事業に対するマネジメントの精度が下がりがちになるものです。
リソースの偏在といったことが、多くの場合起きています。また成果数値が適切に現場にフィードバックされずに組織のモチベーションサイクルが崩れている場合が多くあります。
ここに、精度が高い人事と成果の可視化を行います。弊社の場合は、先程お話ししたように粒の形が同じような事業を買取するので、自分たちのメソッドがおよそそのまま適用できるんです。
あるべき指標といったものもそうです。ゲームタイトル毎の地力をデータ算出し、メンバー一人当たりの対計画営業利益差である一人当たり付加価値をチームごとに可視化して、タイトルプロジェクト毎をアメーバ方式でマネジメントできる状態にします。
人事と成果の可視化が進みサイクルが一巡した段階になるとやはり炙り出されてくるんですよね。本質的にユーザー価値に向き合えていないマネジメントメンバーといった人が炙り出されます。
それは、結果的にそもそもの組織やサービスへの取り組み方にギャップがある場合が多いです。
自分たちが行うゲームサービスのあり方は、基本的には原理原則に乗っ取った「ユーザーバリューファースト」や、「利益は社会からの通信簿」というものですが、その概念ではないやり方をしていると上手くいかないんです。成果が出ないんですね。
弊社の方法で成果の可視化を行なった時、明らかに過去の評価と実態の成果にギャップがある人が炙り出されます。その場合はPMI(M&A後の統合プロセス)責任者がその方とマンツーマンで「あるべき姿はこうだよね」ということを伝える。
当社はユーザーデータに基づく合理判断で成果を導くアメーバチームが多数横並びになる組織構造ですので、上意下達の官僚制多階層組織ではなく責任権限を委譲して結果にケツを持つサーバントリーダーシップが求められるマネジメントスタイルになります。
この場合、自分は上だから偉いんだ、というような観念で偉そうに振る舞いたがる人アウトなんですね。
そういった組織構造において期待される行動ができていない、分かってくれない人とは根気強くずっとやりとりし続けますが、そのような方は結果的には自分からいなくなってしまうことが多いです。
「誰をバスに乗せるか問題」をどう考えるか
青柳 買った側の責任者、経営者として、難しい決断をしなければならない時、どのように意思決定をしていますか?
まずは成果の可視化のような所が入り口だと思いますが、様々な影響を考えますよね?
僕は初めてPMIを経験した時、マネジメントで「誰をバスに乗せるか問題」のようなことを行なった時、精神的に本当に辛かったのですが、どのように整理をされ、どのような苦さや辛さがありましたか?
上原 …あまり辛くなかったですね。
青柳 なるほど。
上原 私は、前の事業をヤフージャパンに売却しています。その時、事業とともに売却先に行っていただいたメンバーと、残ってもらったメンバーがいました。
残ってくれた12名のメンバーは売却発表時に気持ちの表明として「マイネットが好きだから残ります」と言ってくれ、ゲーム事業を一緒にやろうということになりました。でも結果的に会社に残った12人はゲーム事業への気持ちを持ちきれず、事業売却後1年半の間に当社を自ら去って行ってしまいました。
前の事業は彼らが立ち上げから携わり日本一にまでした誇りがあった。事業が頭打ちになっても揺るぎない誇りを持っていたし、自分のキャリアはそこにあるというマインドがあった訳です。いくら会社が好きでこちらに残ろうという気持ちがあったとしても、事業に注いだ誇りの火は容易に移し替えることはできなかった。
その後になって私は強く後悔しました。彼らの誇りとキャリアは前の事業とともにあったのに、私はそのことよりも会社への愛着を選ぶよう促しました。そのことが彼らのキャリアを傷つけることになった、と。人のキャリアは会社と共にあるのではなく、一人ひとりの仕事への誇りとともにあるのだと強く認識しました。
人にはそれぞれ合ったキャリア、それぞれ合った道があると捉えました。
要するに、その人が活躍すべき場所か否かこそが大事で、その人のキャリアが一番輝く場所を私が提供できているのであれば、もちろんいてもらう。
ハッピーな場所でなければ、ここから出た方が彼らにとっても幸せになる。
この概念が、売却の経験から体に入ったんです。
先ほどお話したように、弊社のマネジメント方式が合わない人でも、それまでは評価されてきた訳ですから、別の場所へ行けば成果が出せるかもしれない。
そのような方には、きちんと「ここではないどこかであなたのキャリアは輝くに違いない」という話をし、お別れをします。
青柳 留目さんの場合は、外資系の会社に、M&Aによって50代60代のシニアマネジメントの方が入って来るということもあると思います。
どのようになるのですか?
優先すべきは事業であって、共同体ではない
留目 経営において人に関わる問題は本当に難しいのですが、私は、やはり優先すべきは事業であって、共同体ではないと思っているんですね。
僕自身は創業経営者ではないので、私自身も、事業のために経営者、あるいは経営陣の役割を与えられているだけだと割り切って考えています。
事業ありきでの経営者ですので、自分が一番上手くこの事業を経営できるのであれば、自分がいる必要があり、そうでなければ誰かもっと上手くやれる人に変わった方がいいと思うんです。
パソコンという事業から、「パーソナルコンピューティングだ」とビジョンを語り、そこに進化させていくための大変革をやっていく、そのために最適な人材が経営陣にいるべきだと思うんです。
もし今の経営陣が適任でないのであれば、自分も含めてですが去った方が良い。
その点については、割とドライに考えています。
一般的な外資系の企業であれば評価の仕方もきっちりしていて、フィードバックの仕組みもありガバナンスも効いていますので、それこそ上手くできなければそこに居続けることはできないのですが、大事なのは経営陣である以上、最適なチームであることを示すということだと思います。
自分も含めてですが、そうでなければ変わって頂く必要がありますし、次を見つけてもらった方が良いと思っています。
青柳 実際に統合されてからの数年間は、マネジメント体制という意味ではどのような変遷をされたのですか?
留目 統合後、経営陣として残って働いている人も、残っていない人もいます。
かなりドラスティックな抜擢をしたこともあります。
例えば、NECのような会社ですと、通常役員になるのは50代後半から60代になってからです。
そこを30代から抜擢し、役員に入れたメンバーもいますし、逆に退任してもらった方もいます。
ドラスティックな変革を行い、再定義した事業を作りあげていくということを行なっているので、優先順位に基づいてメリハリがついていくことは当然ですし、それを合理的に決断して正しく行っていくことで示せるものもあると思うんです。
このような時、扱いが難しいようでいて、実は役に立つのが労働組合です。
労働組合が味方につくととても力強いんです。
経営陣と違う目を持った労働組合を味方につけよ
青柳 それは想像し難いのですが、どのように味方につけるのですか?
留目 労働組合には組合執行部というものがあります。
企業の経営陣とは異なる若手のメンバーで、社員を代表する組織ですよね。
つまり、経営陣とは違う目で会社を見てくれ、また、経営について考えてくれる存在ということです。
先程平尾さんがミドル層についての話をしていらっしゃいましたが、「昔からの経営陣が言っていることよりも、新しく外から来た人が言っていることの方が良いのではないか?」「既得権益にあぐらをかいている人よりも、自らリスクを取りながらも“何かを作っていこう”としている人の方が正しいのではないか?」と分かってもらえると強いですよね。
青柳 なるほど。
留目 上手く理解してもらえると、組合の方からサポートしてくれるようになります。
青柳 これは、第2の創業という意味で、新しい経営の責任者から引き上げられ、その会社で生きていく人たちを作っていくことはすごく重要ですよね。
留目 そうですね。
どの産業もそうだと思いますし、大きな話でいうと日本の現状もそうかもしれません。
機能しなくなっている業界構造や事業構造を変え、再定義した業界や事業を、本当に必要な人材、実行できる人材がマネージしていく体制に移行していく。
これはNECレノボ・ジャパングループという1つの組織体にだけ起きることではなくて、そもそも社会的、世の中的に「そういったことが必要なんだろうな」という追い風を受けていくということだと思います。
青柳 なるほど。
(続)
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続きは 増収増益の注目企業「じげん」平尾丈が上手く行かなかった投資から学んだこと をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鎌田 さくら
【編集部コメント】
労働組合を味方に付けよ、という留目さんのお話、目からウロコでした。確かに、労働組合の役員をやるような方々って、現場からの信頼は厚く、それでいて現体制に対して(剛柔の程度はあれ)変えていきたい部分、対話をしていきたい部分をもった社員がなっている印象です。そういった意味で、新たな資本を持つ会社が味方につけられれば心強い推進力ですね!(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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