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「上場企業の資本市場との向き合い方を徹底議論」【K17-3B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その5)は、CFOやIR担当といった役職を務める人の人材要件を議論しました。登壇者それぞれ、こんな人が良いのでは?という意見のリアリティがあり、非常に鋭いです。是非御覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3B
上場企業の資本市場との向き合い方を徹底議論
(スピーカー)
武田 純人
UBS証券株式会社
マネージングディレクター
藤野 英人
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長・最高投資責任者
安田 昌史
GMOインターネット株式会社
取締役副社長 グループ代表補佐 グループ管理部門統括
米島 慶一
クレディ・スイス証券株式会社
株式調査部 マネージング ディレクター
(モデレーター)
齋藤 剛
SMBC日興証券株式会社
株式調査部シニアアナリスト
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最初の記事
【新】上場企業における資本市場との向き合い方を徹底議論!【K17-3B #1】
1つ前の記事
IRとは、株価を「上げる」活動ではなく「フェアバリュー」に近づける活動である【K17-3B #4】
本編
齋藤 これは僕がいろいろな事業会社の方々から受ける質問として、「CFOとか、IR担当として誰かいい人いない?」と聞かれることが度々あります。
皆さん意見が違うと思うので、それぞれにお聞きしたいのですが、どのような人が適していると思いますか?
今のように「CFOに誰かいない?」とか、「IR担当にはどんな人がいい?」と聞かれた時にどのような回答をするかということを教えていただければ思います。
まずは安田さんからお願いします。
安田 (齋藤さんを示しながら)成功事例はこちらにいらっしゃいますが……。
▶編集注:齋藤さんは、「大和証券、JPモルガン証券にて中小型株セクター担当アナリストとして活動した後、2011年よりスタートトゥデイに入社。同社では財務経理、経営推進、法務を管掌する傍らIRヘッドとして資本市場との繋ぎ役を担ってきた。」(本人プロフィールより)という経歴をお持ちです。
齋藤 会場内が失笑しています(笑)。
安田 失礼致しました(笑)。
CFOやIR担当に向く人材の要件とは
安田 取りあえず自分は置いておいて、非常に大事なことは、良くも悪くも経営のコンディションをマーケットと同期させる、これを上手く行うというところですかね。
コミュニケーションが上手なことに越したことはないと思いますが、IRというのは、いい時もあれば悪い時もあるので、悪い時でも、経営のそうした状態を安定的に、きちんと資本市場と同期できるようなコミュニケーションを取れる方でしょうか。
胆力があって誠実な方。
齋藤 分かったような分からないような(笑)。
では武田くん、いかがですか?
武田 ポジショントークとしては、自分のセカンドキャリアも見据えて「セルサイドアナリスト出身者」というところでしょうか。
(会場笑)
ただ、本質的にどういう人がよいかなと考えると、そのセルサイドアナリストの中でも、売り推奨の上手い人がよいと思いますね。
今の安田さんのご意見とも少し近いのかもしれませんが、自分達への評価が割高なんだということを冷静に言える社内の人というのは、非常に貴重な存在です。社内であるが故にどうしても様々なバイアスが入ってしまうからです。
自分は仕事柄、未上場の企業経営者と、「将来の上場と更にその先を考えて」というような内容でディスカッションをさせていただく機会がよくあります。
その際、必ず1つ決まってお話をすることがあります。
何かというと、上場後会社の中で「想定時価総額」を必ず持ち続けるようにしてくださいと、伝えています。
先ほど米島さんがおっしゃった通り、その「想定時価総額」をどんな業績指標やバリュエーション手法を基に計算するのか、というところの共通言語を、社内はもちろんのことそして社外とのコミュニケーションも通じてしっかりと作ってください、というお話をします。
ただ、残念なのは、これが上場後に、きちんとできている会社は極めて少ないという印象があります。更に残念なのは、株価を自ら理解し説明する努力を忘れているにも関わらず、株価は高ければ高いだけいい、と考えている経営者が意外なほどに多いことです。
経営トップがその役割を全て担う必要は必ずしもないと自分は思います。市場との対話者としてのCFOやIR担当者がその役割を担えばよいわけです。
経営者と同じコンテクストで同じ言葉を語る。一方で我々のような外部のステークホルダーとも共通言語で対話をし、その結果として外部者の「目」を共有する。そしてその「目」で自社を冷静に見つめ、必要な時には内外に対して売り推奨も厭わない。
そういう人が理想と考えます。
セルサイドアナリストにはそういう人がきっと多いのではないかと思っています(笑)。
ちなみに、僕は売り推奨、非常に下手です。はい。
齋藤 いや、上手いと思いますよ。
(会場笑)
米島さんはどうですか?
「攻めるCFO」・「冷めたIR担当」が必要
米島 僕はどうしてもカバレッジしているネット業界に創業経営者が多いということがあるのですが、CFOは創業経営者に対して、まずある程度対等に物が言える人でないと駄目だと思いますね。
具体的には2つあります。
止めるべきは止める、行くべきは行く、というようなところをしっかり持っていて、そのCFOなりにこの会社がどのような状態にあり、何ができて、何ができないのか、ということを判断基準としてきちんと持っている人というのが1つ。
もう1つは、いろいろ話していると「止めるのが僕の仕事だよ」というように思っているCFOもいるんですね。
財務の観点からしっかりと。
堅実にやろうと思ったら、どこまでもできるのですが、そうではなくて、やはりリスクを取るべきところというのはあると思うんですよね。
やはり勝負を賭けないといけない場面はでてきます。
ゼロリスクで絶対に行ける機会というのはなかなかありませんから、やはりリスクを取るべき時に、そのリスクをできるだけ最小化するソリューションを持っていることが重要です。
その際は、その個人の能力だけでなく、どれだけネットワークを持っているかも非常に大事になります。
その会社がやりたいことをやるために、ソリューションを提示し、リスクも取れるCFO。
「攻めるCFO」と言ったら少し語弊があるかもしれませんが、そういうことができる人というのが、やはり適性かなという感じはありますね。
クレディ・スイス 株式調査部 マネージング ディレクター 米島 慶一氏
僕らとの対話という観点からは、証券業界・株式業界というのは共通言語を持つことが非常に大事だと思いますので、「御社は何を伸ばしたいんですか?」と聞かれて、「うーん、売り上げだけでいいよ」というような感じで言われると、どうしようかなと思ってしまいます。
株式市場の評価をきちんとしてもらうために、会社として何を見ているのかということを、きちんとサポートできる人が、やはりCFOとしては適任なのかなと思っています。
齋藤 IR担当者はどうですか?
米島 まず、基本的にPRとIRというのは大分異なるものだと思っていまして、IR担当者というのは会社の実情をよく知っていることが非常に大事だと思います。
社外コミュニケーションよりも、社内のコミュニケーションが上手い人でないと、会社の現状というのはよく分からないと思います。こうした「内の」コミュニケーションも上手な人というのがふさわしいと思っています。
もう1つは、会社の実情という意味では、アナリストに対していいことばかり言うよりも、きちんと、どこが良くて、どこが駄目なのかをきちんと言えるIRの人はいいと思います。
一部のIR担当者に言えることとしては、会社愛が強すぎて感情移入しすてしまう人がいます。
会社に対しての課題をいうと拒否反応を示されることもあります。
そうすると、もうアナリストとのディスカッションになりませんので、意外と、冷めた人はIR担当としては適任なのではないかなと思っています。
「私この会社が駄目になったら、次の会社に行くからいいわ」ぐらいの気持ちの人の方が、案外IR担当としてしっかりと本音トークができるということが多いような気がしています。
以上です。
齋藤 同じような観点から、僕はIR担当者は、自社株を持ってはいけないとずっと思っているんですね。
持った瞬間に、1株でも持った瞬間にネガティブな情報を絶対に出さなくなると考えています。
自分の資産が増える、減る、という場合には、大きく見せたくなるじゃないですか。
ですので、CFOなどは逆に「Same Boat」(同じ船に乗る)という発想で、当然持っていることが当たり前かもしれませんが、IR担当者は持たない方がいいなと、ずっと思っていました。
あくまでも私見です。
では藤野さん、お願いします。
CFOに必要な専門性・IR担当に必要な人柄
藤野 CFOというのは、経営者の考えやビジョンやミッションを財務的に表現する人ですよね。
ですから、ビジョンやミッションに対する深い理解を持ち、経営者そして経営者がやりたいことを深く理解して、それを財務という形でどのように表現するか、行動に移していくかというのが仕事だと思います。
ですので、ここには明らかに専門性がありますし、知識も必要です。
それからまさに銀行であったり、証券会社の人と専門的な用語で会話ができなければその会社の信用を失うということになるので、非常に重要な専門職だと思っています。
それに対してIRというのは、財務や株式に関する知識はある程度あった方がいいけれども、どちらかというと、会社の内容について、より深くよく理解して、それを投資家やアナリストとコミュニケーションできる人だということが大事です。
そこにはどちらかというと、CFOに求められるような専門性というよりも、人格というのでしょうか、率直であるとか、正直であるとか、そういった要素が重要です。
レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長・最高投資責任者 藤野 英人氏
そしてもう1つ、結構重要なことは、IRのポジションが会社の出世コースに組み込まれている会社がいいですよね。
IRというのは特別な仕事だと思いつつも、何となくどこかからヒョイと連れてきてしまうということが結構あります。
しかし、とても大事な仕事なので、できれば会社の中の人事コースに組み込んだ形で、この人がIRを経てまた営業に行きますとか、経理に行きますというような形になるといいのかなと思います。
もちろん、プロフェッショナルとしてIRをやって、それを専門にA社からB社へ、そしてC社へ行くという人もいますし、そういう人で尊敬されている人もたくさんいます。
キャリアプランというものはまちまちですが、「この人、次のキャリアどうなってしまうのかな?」というような人も結構いますので、そういう風にならないことが結構大事かなと思っています。
齋藤 ありがとうございます。
(続)
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続きは レオス藤野氏とセルサイド・アナリストたちが語る「このIRが凄い!」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
想定時価総額という概念からも、フェアバリューを考える皆様の姿勢が伝わってきました。資本市場と対話をするための共通言語・KPI設定というのももっと深く聞いてみたいところですね!(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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