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ベンチャーファイナンスの基本④:ランウェイを何ヶ月で設定するか?等【K17-8C #5】

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「今さら聞けないベンチャーファイナンスの基本(ICCレクチャー)」10回シリーズ(その5)は、グロービス・キャピタル・パートナーズ今野さんと高宮さんによる「ベンチャーファイナンスの基本」レクチャーの続きです。今回は、応用編として、ピボット時/上場を見据えた時などに資本政策の検討をいかに行うか?といったシーン別の論点をお話いただきました。是非御覧ください。

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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 8C
今さら聞けないベンチャーファイナンスの基本(レクチャー形式)

(スピーカー)

今野 穣
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー COO

高宮 慎一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー/Chief Strategy Officer

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

山口 孝太
木村・多久島・山口法律事務所
パートナー弁護士

(モデレーター)

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授

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最初の記事
【新】今さら聞けない!ベンチャーファイナンスの基本(ICCレクチャー)【K17-8C #1】

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ベンチャーファイナンスの基本③:リードインベスターの価値を徹底議論【K17-8C #4】

本編

琴坂 ここまで高宮さん・今野さんのレクチャーを聞かれて、山口さんと水島さんで何かご質問があればお願いします。

水島淳 氏(以下、水島) 起業家の方が気になるところだと思うのが、ランウェイ(※)をどれくらいの期間取るのかということですかね。

▶編集注:ランウェイとは、ある企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間を、月数で表現したもの。

これについては、おっしゃる通り、最後のIPO出来上がりと希釈化というところから考えるのが一つだと思いますが、一方で、プロダクトの開発が遅れたり、有事が発生したりする可能性もあることを考えれば、ランウェイをある程度長く取りたいですよね。

そのあたりについては、起業家としてはどのように考えたらいいのでしょうか?

マイルストーン達成に何か月必要か逆算する

今野 教科書的には24(か月)や36(か月)と言われますけれども、36(か月)というのは結構長いので、僕は24(か月)なんて言いますね。

資金調達にはだいたい半年かかるので、僕達が入った時に、キャッシュ1億円を下回ると、絶対に次の資金調達準備に6か月以上の猶予を持たせますね。

先ほどの話にもあったように、VCが投資先企業に求めるマイルストーンを達成する・変えるために何か月必要かと逆算する方が、実は本質的なのかもしれません。

それに調達活動するリードタイムという意味で、プラス6か月というように。3か月で変えられるなら、バリュエーションを切り上げればよいので、1年分でもいいです。

(左)グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野 穣氏

水島 ありがとうございます。

それから、ピボットをした時に資本政策を一から作り直すと思うのですが、どのタイミングで資本政策の切り替えについて相談に行くべきなのかということも、起業家さんとしては気になるところではないでしょうか。

今野 基本的に、リードインベスターがピボットと共に下りた(株式を売却した)ら、資本政策も見直すことが多いですね。

だから、例えば既存投資先で、リードインベスターがいる場合、言葉は悪いですが投資家側がそのピボットで下りる(株式を売却する)かどうか(で変わってくる)ということですよね。

(投資家が)持ち続けるならば、資本政策を洗い替えずに、もう一度追加投資をして心機一転やっていこうよという話です。

逆に言うと、リードインベスターが下りるということはもう、リードインベスターとして首を差し出しますということなのかなと思います。(笑)

ピボット後には資本政策の洗い替えを

高宮 ご質問は、すごくグッドポイントだと思います。

シリコンバレーなんかだと、ピボットすれば資本政策を洗い替えるという感覚があると思うのですが、日本だとそれは起りにくいばかりか、「資本政策の洗い替えって、何ですか?」とおっしゃるピボット済みの起業家もおられると思います。

日本では、一度人に投資すると、ずっと入り続けてしまうようなところがあって、「ピボット、ピボット、ピボット、ピボット、受託」で食いつなぐようなことが起こりがちです。

(右)グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮 慎一氏

そうなるとリビングデッド (Living Dead=存続するために十分な収益は上げているが、今後の成長性が見込めない状態) 化し易くなったり、あるいは資本政策をずっと引きずるようなことになったりしてしまって、伸びる事業がが出てきた頃に、気づくと創業者の持分が既に過半を切っていたということもよくあるんですよね。

リードインベスターの役割としては、そこで潔く引くなり、「ウォッシュアウト(Wash Out)」という形、つまり既存の投資家が思い切りダイリューション(=希薄化)されて、新しいリードインベスターにバトンタッチすることも自らアレンジしてくようなこともしなければいけません。

あるいは、「武士の情け介錯を」ではないですが、本当にキツいと思ったら、このプロジェクト(会社)は一旦畳んで、次のプロジェクトでもう一度やろうよと言ってゼロにリセットする(清算する)というのも、リードインベスターの役割だったりするのかなと思います。

今おっしゃって頂いたように、「資本政策の洗い替えをちゃんとしましょうね」というのは、一つ大切なメッセージかもしれないですね。

琴坂 ありがとうございます。

もし会場の皆さんから、今のタイミングで聞いておきたいというご質問があればお願いします。

上場時の資本政策をどう綺麗にするか?

質問者1 シニフィアンという会社を始めて、ポストIPOを盛り上げたいと思っている小林(共同代表 小林賢治氏)です。

今後は、上場前の時点で、セカンダリー・マーケット(※)について考えていかなければならないのではないかなと思っています。

▶編集注:ここでは、株式を公開した後の上場した状態での資本政策といった意味

というのは、VCにせよ創業者にせよ、リクイディティ(Liquidity=市場における流動性)を持たせるイベントがIPOに寄り過ぎると、一気にそこで売ってしまうということが起きると思います。

一方で、実はPE(Private Equity=プライベートエクイティ)やバイアウトファンド(Buyout Fund)の場合は、彼らがたくさん(株式を)持っている場合は、「こういうストラテジックインベスターに当てはめよう」(事業と関連性の高い事業会社に株式を保有していただく)ということを、IPOよりも事前にやっていくと思うんですよね。

▶「 ストラテジックインベスターに当てはめよう」というのは、例えば当該会社の株式40%をファンドなどが保有している場合、例えば、上場後に40%全てを売り出して一般投資家が保有していくよりも、事業提携をしている他の事業会社に20%保有してもらうような、売り先の選好を指す。

VCと起業家が共に、そういったIPO前後の動きに対して、実際のところどのように向かっていけばよいのかというのが質問です。

それから、セカンダリー・マーケットの中で上場前にどう売るかについては、アメリカでは創業者が考えるのが一般的だと思うのですが、日本では精神論的なのも含めてやらないというところがあります。

それが、「実はもうしんどいので上場していいですか?」といったものを生んでしまっているようなことも少し耳にしたので、そのあたりについて、どうお考えなのかお聞きしてみたいと思いました。

高宮 すごく大事なポイントですね。

プロ筋な質問だったので背景をご説明すると、上場する時に我々VCを含め外部の投資家が持つ株式の比率が50%を超えると赤信号、40%超えると黄色信号といったような、何となくのイメージがあるのです。

つまり、上場した後に、それらVCなどが株を売り倒すのではないか、そうなったら株価が下がるのではないかという懸念が出るんですよね。

では、上場時の資本政策をどうやって綺麗にしましょうか、という論点が出てくる訳ですが、リードインベスターとして支え続けると、下手すると50%を超えてしまうケースも出てくる。

ではそういったケースの時にどうしましょうかという、すごく通なご質問です。(笑)

今野 ケースバイケースですが、僕達のガイドラインでは、上場時に(持株の比率を)30%くらいまで落とすことになっています。

40-45%くらいあっても、起業家と協調して30%くらいまでに落とすというのは、結局事前に上場時よりも低い価格で持分譲渡したとしても、上場時のVC比率が下がることで株価形成上の重しを軽減することになるので、Win-Winになりますね。

最近あった実例では、とある事業会社が投資先に対して、持分(比率)として25%欲しいと。

長期で持つので、その時点でのバリュエーション(企業価値評価)はそんなに気にしないと。

これを全部増資でやってしまうと、資金使途もあまりなく、ダイリューションも激しいので、半分は既存株主からの譲渡にしましょうということになったのですが、そうすると、VC(の持株)比率が25%だったところが、7~8%になったんですよね。

そして、ストラテジックな事業会社(の持株比率)が25%くらいになって、すごく綺麗な資本政策になっていきました。

そこでVCとしてリターンが減ったかというと、ダイリューションした後の上場の目線からすると、今売った方がもしかしたら高いかもしれないというValuation(企業価値評価)をつけてくれました。

先のことは分からないけれども、そういう(株主の)世代交代というのはあり得ると思います。経営者の持分移動も、実例として出ています。

ただ、僕の場合、東証マザーズだったら上場できる水準だよね、というレベルの段階に達してから、こうしたスキームに初めて「いいよ」と言っています。

琴坂 ありがとうございました。

ここまでは資金調達についての話をしてきましたが、次は優先株の話題にスイッチしていきたいと思います。

講師役を、山口さんと水島さんにバトンタッチして頂きます。

(続)

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続きは 起業家がおさえるべき投資契約の実務①:資金調達における契約の流れを理解しよう をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/Froese 祥子

【編集部コメント】

タイトルは、「ランウェイ」を使いましたが、その他にも多く論点をもらった回でした。「ランウェイ」なんて専門ワードだとプロ筋しか読みませんとタイトル会議で意見しましたが、もはや振り切っていこうということで決定しました(榎戸)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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