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6.ブランドづくりにおける、マス広告 とファンコミュニティの価値を徹底議論

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「ファンとの”絆”をどのように構築するのか?」【K17-4C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その6)は、マス広告におけるタレントや歌手などの有名人起用について+コミュニティづくりにおける「顔が見える」仕掛けについて登壇者で議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンス KYOTO 2017のダイヤモンド・スポンサーとして、Motivation Cloud (Link and Motivation Inc.) 様に本セッションをサポート頂きました。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 4C
ファンとの「絆」をどのように構築するのか?
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)

(スピーカー)

青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長

嶋 浩一郎
株式会社博報堂ケトル
代表取締役社長 共同CEO

戸田 宏一郎
CC INC.
Founder & CEO/Creative Director/Art Director

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

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最初の記事
【新】ファンとの”絆”をどのように構築するか?【K17-4C #1】

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Amazon 全盛時代に、本屋「B&B」をつくった理由とは?(博報堂ケトル嶋)【K17-4C #5】

本編

戸田 僕から質問させて頂きたいのですが、僕はまだ半分以上を、マス広告のようなことをやっている世界で生きていて、つい最近も、これからの車会社とファンとのリレーション(関係)について考えていたところでした。

最近、シビックを使って、ホンダさんのブランド広告を作ったんですよね。

その時に結構苦しんだのは、若い人達が車離れをしていき、車が社会から必要なくなるのではという危惧を持った状況において、車会社がこれからしていくべきことをどのように発信していくかというところでした。

こうした課題がある中で、リレーションや「絆」をもう一度取り戻すということに取り組んでみようと思い、今回は、ある意味車から一番離れているであろう若いターゲット層に人気のある、ONE OK ROCKさんというアーティストの力をお借りすることにしました。

ONE OK ROCK×庵野秀明 「Go, Vantage Point.」 60秒 Honda CM

ONE OK ROCKさんと組ませて頂いて、そのコミュニティの力を使いながら、そこのファンの能力を最大限に高めてあげて、それをマス化する。

要はTwitterやデジタルの世界で最大限に高めてあげて、それを最後にマスに振り戻すといったことをやらせて頂きました。

映画監督の庵野秀明さんの力もお借りして、そういう少し特殊なコミュニティの方々と組んで、その方々がきちんと気持ちをエンゲージしながらも、一方的にマスに早出しするのではなくて、一度熟成させて出していくということにトライしてみました。

(2017年9月時点で)1か月経ったばかりなので、まだどうなるかは分からないのですが、佐渡島さん、そういう広告はこう見えているんだよねとか、何かお考えになっていることはありますか?

佐渡島 今、ONE OK ROCKのコミュニティを借りたとおっしゃっていましたが、本来は商品自体を中心にコミュニティが出来上がっているのに、そのコミュニティ管理がなされていないが故に、タレントのコミュニティを借りてこなければいけなくて、ずっとマーケティング費用が掛かり続ける状態になっているなと思っています。

そこのマーケティング費用自体をコミュニティの管理費に充てていった方が、健全な商品が育っていく気がしますね。

やはり商品自体の原価を考えた時に、限りなくマーケティング費用が大きく乗っかってきているところに対して、そうしなくて済むような時代ができていくのではないかなと思いますね。

戸田 ONE OK ROCKの例も、旧文脈というか、少しカンフル的に使うやり方もあります。

コンビニのペットボトルにおまけをつけて売れましたという理論と比較的似ていて、おまけが付いていれば売れるけれど、おまけがなければ売れないよという話です。

日本の消費社会では、そもそもファンがそのモノときちんと向き合っているかどうかというと、どうしてもおまけや他のものの力を借りてやらざるを得ないようなところがあるのも事実です。

でも、ホンダさんの作業に関しては、借りてきたというよりは、時間をかけながら、デジタルの力も使って上手に熟成させてあげてやっていくということにトライしています。

佐渡島 そうですね。

お金ではなく、「時間」でファンを作る

佐渡島 ちょうど今、僕は、Takramの田川欣哉さんに経営の相談など色々とさせて頂いているのですが、田川さんとのお話の中でなるほどなと思ったことがあります。

起業する時って、ゼロからイチを作るじゃないですか。

そこに最大のパワーを必要とするんですよね。

次に一人雇うという、(メンバーを)1から2にする時も、パワーを必要とします。

2が4になる時もパワーを必要とします。

4が8となる時、8が16になる時、16が32になる時、32が64になる時、64が128になる時というのも、パワーを必要とするんですよね。

株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島 庸平氏

このように、会社の組織を作る時には、それぞれのタイミングでパワーと取り組むべき施策が変わってくるのですが、実はファンコミュニティも全く一緒だと思うんです。

マス広告のファンコミュニティを作る際には、そこにいきなり1,000人入れるだけではコミュニティは成立しないと思うのです。

核のないコミュニティはファンコミュニティではなく、そこに1,000人のファンの名簿があるというだけなので、そこから1,000人を1万人にしていくことはできないんですよね。

まずは(ファンを)1人作って2人作って4人にして、としていくと、あるところで一瞬でガーッと増えるので、ここの、初めのガーッと行く前の2年間くらいをどう我慢するかということかなと思うんですよ。

小林 短期的な成果を求めるクライアントと、相反するという風に感じるのですが、どうなのですかね。

戸田 やはり、その部分を説得しながら、それこそクライアントさんとリレーションを築くことでそこを乗り越えていくべきだと思います。

一方、やはり時間が結構長くかかったり、微々たるものだけれども体力が要るということをなかなかよしとできないクライアントさんも、実際に多いですよね。

佐渡島 先ほど、(「金麦」の広告に)10年間取り組まれているとおっしゃっていましたよね。

そうすると、同時並行で何かをやっていくというのはできるかなと思います。

基本的に、ネット上のコミュニティサイトというのは、クックパッドにしても、価格.comにしても、食べログにしても、@cosme(アットコスメ)にしても、全部、初めはずっと低予算で回っていた訳ですよ。

お金を後から投下しても、いきなりファンコミュニティが大きくなったりしないので、資本力を持っている人でも追いつくことができない。

大抵の資本というのは、時間をお金で買うためにあるものなのですが、それがコミュニティを作る場合には必ずしも有効的に働かないです。

だからこそ、資本を一定額でもいいから使っていく、そして2年くらい経ったところから普通の予算を使っていけばよいという形で、そこはもう時間を投下するかどうかかなと思いますね。

小林 青木さんはいかがですか?

青木さんの会社は、最初は小さかったけれども今では大きくなられていますね。

「人」で伝えていくブランドづくり

青木 そうですね。

僕は本当に小さいところから始めて、今年10年目でやっと今の規模になったのですが、ファンについて話す時に最も重要なのは、人の存在しないマークや社名やブランドには、誰もファンにはならないということなんですよね。

株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平氏

例えば、浦和レッズのサポーターは、そこに浦和レッズの選手というものが可視化されているからこそ、彼らと一体感を感じたいと思ってファンになった訳で、マークだけのものに対して一体感を感じたいとは誰も思っていない訳です。

今はマークだけが提示されているハイブランドのようなものも、そこに紐付く「人」に関連したエピソードが沢山あるからこそ、ファンはそれらと自分とを一体化したいと思うのです。

僕が庵野秀明さんやONE OK ROCKのCMを観た時に思ったのは、この人達がブランドを代表することによって、この人達のような人と仲間になりたいという効果があるので、CMに有名な人が出てくることによる効果という点では、非常に意味のあることだなと思っています。

我々には、CMにそういう趣向で有名人に出て頂くような資本力がないので、むしろ我々自身が出て、我々と仲間になりませんかというコミュニケーションをしています。

そういう意味では、一体誰の仲間になるのか、誰のファンになるのか、誰と一体感を持ってほしいと思うのかという風に、「誰」をどのように伝えていくかということがすごく重要なことであるし、そのための方法論も色々あると思っています。

一つの方法論として、例えば大きな会社で一社員や一社長にそれを負わせることには合理性がないので、だとしたら一貫性を持たせるような有名人の出し方をすればよいのでははいでしょうか。

アウトローな人ばかりが出ますとか、そういうことの中で、こういうブランドなのだなというイメージを作っていくことができるのだと思います。

僕達は自分達でモノを売るだけではなくて、企業さんのブランデッド・コンテンツ(「BRAND NOTE」)のお仕事もさせて頂いているのですけれども、大きな会社の方であればあるほど、開発者の方に一緒にコンテンツに出て下さいということをお願いしています。

【BRAND NOTE】憧れだけじゃ決められない。もっと知りたいWALL DECORのこと。

引用:【BRAND NOTE】憧れだけじゃ決められない。もっと知りたいWALL DECORのこと。

やはり、大手のブランド名や会社名を聞くと、お客さんはどうしても工場や、ビルといったものをイメージしてしまうのです。

ところが実際には、我々のお客さんと同じような、例えばお子さんがいらっしゃる主婦が洗剤の開発をしていたりする訳です。

そういう方が開発しているということを知るだけでも、イメージは全く変わってくると思っているので、誰の仲間になるのかや、誰のファンになるのかという、「誰」ということを、色々な方法でお客様と共有していくことが本当に重要だと思っています。

「売る」広告と「売らない」広告

 マス広告を援護するということではないのですが、僕は両方必要だなと思っています。

認知がゼロの時に認知を拡大することは必要ですし、コミュニティにとっても、それが報道されてたり広告されたりすることによって「話題になっている感」を感じられることは、すごく大事だと思うんですよね。

この10年くらい、商品をターゲットに伝える時のアプローチが明らかに変わってきています。

おっしゃったように、子育て中の主婦の関心や抱えている問題に基づいて、このコミュニティの中に実はこの商品が使えるという落とし込みをしたり、こういう商品があるので使って下さいとバンバンCMで広告したりするというアプローチがあります。

一方で、きっとこういうコミュニティの中ではこういう課題解決の方法があるだろうなと、生活者側の視点から入っていくやり方もどんどん増えているところで、その両輪かなと思いますね。

戸田 誤解を恐れずに言うと、例えば「金麦」のブランド作業をする時に、売る「金麦」のアプローチと売らない「金麦」のアプローチの2つがあるという話を結構させて頂いています。

売らないというのは語弊があるかもしれませんが、作るほうの「金麦」、要はエンゲージしていくほうの「金麦」があるという感覚です。

2軸とは言わずもう少し多面だとは思うのですが、クライアントさんとは、なるべくその感覚を共有してもらう作業をしたいと思っています。

今のホンダの話は出力も結構大きかったので、そこの部分だけ刈り取られて理解されるとなかなか難しいのかなとは思うのですが、売らないホンダのブランド広告というものと二軸を置いた上で考えていきたいと思っています。

売らないといっても、今は力を持たないけれどもいずれ力を持っていくベースになるものの作り方を考えるという意味で、それに関しても10年前とはやり方が変わってきていると感じています。まさに投資をするという感覚です。

でも、確かにドカンと出力を上げて最初にある程度認知を上げていくという作業も必要ですよね。

僕も実際、それに関しては興味を持ってやっています。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/Froese 祥子

【編集部コメント】

「売る」広告と「売らない」広告というお話が非常に印象的でした。短期売上と長期エンゲージメント、プロモーションとブランディング、そういった関係性と類似していそうですが、少し違うような気もしていて、面白いです(榎戸)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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