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7. チーム内のスターを輝かせるため、咲かせるための土になる【終】

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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」7回シリーズ(最終回)は、日本ラグビー協会の中竹さんが「逆境との向き合い方」をご自身のエピソードと共に語ります。登壇者からの熱いメッセージとあわせて、ぜひご覧ください。

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレイベント・スポンサーとして、日本アイ・ビー・エム株式会社様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年6月26日開催
ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレ・イベント
パネルディスカッション
最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)
Supported by 日本アイ・ビー・エム

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社TEAMBOX 代表取締役

渡邉 康太郎
Takram
マネージングパートナー / コンテクストデザイナー

(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策学部)

「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.「ドラえもん」にリーダーはいるのか? 多様性が求められる時代のリーダーシップを考える

1つ前の記事
6. 自己受容を促し、価値翻訳できることが新しいリーダーシップ

本編


渡邉 時代における需要も、(リーダーシップの在り方が変化する)要素としてあるかもしれないですね。

石川 例えば楽天の三木谷さん(三木谷浩史氏)は、哲学は変わりませんが、時代や入ってくる情報が変わると、言うことが全く違ってくるのです。

そうすると、「ブレる」リーダーだと見られがちなのですが、楽天には『三木谷浩史の取り扱い方』というマニュアル本があって…(笑)。

(会場笑)

楽天がヴィッセル神戸の全株式を取得した時も、ヴィッセル神戸の職員にそのマニュアルを配ったらしいです(笑)。

「価値観は変わらない、でも言うことは変わります」ということらしいです。

中竹さんも、大学チームの監督をしていた際は、毎年言うことが変わると言っていましたよね?

仮想敵が存在したことで、胴上げ監督に

中竹 言うことをコロコロ変えていて、そもそも誰も聞いてくれなかったという事実もありますが(笑)。

先ほどの仮想敵について面白い話があります。

僕は当時「この練習、本当につまんねーな」と舌打ちをされたり、タメ口で話されたりしていました。

旧・2ちゃんねるに書かれるくらい、チーム内では悪口ばかり言われていました。

「辞めろ、死ね」と叫ばれたり…。

しかし選手は、僕のことを馬鹿にしているのに、僕がメディアから馬鹿にされていると怒るのです。

(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター / 株式会社TEAMBOX 代表取締役 中竹 竜二 氏

「俺たちが言うのはいいけど、メディアから馬鹿にされたくない」と。

そして途中から、「この監督、大したことないけど、メディアからああやって言われるのは悔しいから、勝たせてやろうぜ」という雰囲気になったわけです。

そして実際に勝った時も、選手は「俺たちが勝たせてやったぞ」という態度でした。

(会場笑)

「俺たちが胴上げしてやるよ」、みたいな(笑)。

そういう状況が逆に、選手たちのエネルギーになっていたようです。

琴坂 リーダーは、逆境をどう克服していくべきでしょうか?

リーダーとして、数字が上がらなかったり、信頼を得られなかったりする場合です。

平時に逆境を作り出し、逆境を克服する力をつける

石川 中竹さん、ちなみに当時はどういうお気持ちだったのでしょうか?

舌打ちされて…。

岡島 「死ね」と書かれて…。

中竹 これは、三浦梅園の地震の話に例えると、「地面が揺れている時が当たり前」だと思っていました。

僕が監督に就任した際、前任は清宮幸太郎選手(北海道日本ハムファイターズ)の父親である、清宮克幸さんという大監督でした。

誰もが期待していましたから、逆に、僕にがっかり感満載だったわけです。

その「がっかり感満載」が、デフォルトでしたね。

渡邉 学級崩壊状態ですね。

琴坂 むしろ、逆境だと思っていなかったと。

中竹 そうですね。

石川 逆境がデフォルトだったということですね。

中竹 自分が逆に学生の立場であれば、「何でわざわざ会社辞めて来たの?迷惑なんだけど」と思っていたと思うので、選手の対応は健全だったと思いますね。

石川 ネスレ日本の高岡さん(高岡浩三社長)は、逆境ポイントを見つけるのがとても上手いらしいです。

一見、ビジネスがうまくいっているように見えている時、同じトレンドやデータを見ていても、「あれ?おかしいぞ」と最初に気づくのは大抵、高岡さんらしいです。

ですから逆境がデフォルトだと思っている人は、気づくのも早いのかなと思います。

中竹 そうですね。

僕も、チームがうまくいっていると見えていた時に、「これちょっとやばくない?」と感じたことがありましたね。

岡島 社外取締役としての価値はそこにありますよね。

同じ数字を見て、「あれ?ちょっとまずいのでは?」と思えるかどうか。

琴坂 そうですね、そういう視点を持てるかどうかは大事です。

岡島 平時の時に、平時じゃない状態を見つけられる能力ですね。

中竹 あとは平時に、どれだけ逆境を作るか。

例えば、あるシーズンで怪我人が続出することを予想した時は、トレーニングの段階でキャプテンやバイスキャプテンを外し、13人でプレイさせました。

もしくは、リーダーを外し「下級生がリーダーの役割をしないといけない状況」を作ったりという具合ですね。

岡島 それは正しいと思います。

マネックス証券の松本さん(松本大社長)も、危機感がなくなってきた場合、M&Aで自社よりも大きい会社を買うなど、危機感を作ると仰っていました。

琴坂 あっという間に75分が経ってしまいましたので、Q&Aに移りたいと思います。

会場から、質問のある方は挙手をお願いします。

質問者 中竹さんに質問です。

私はサッカーについてはにわかファンなのですが、先日のワールドカップについて、西野朗監督(当時)の交代のタイミングと選手の選び方は、素人目にもすごいと思いました。

推測になってしまうかもしれませんが、彼がどういう視点でああいった判断をしたのか、ご意見をお聞かせください。

中竹 僕もご本人とはお話ししたことがないので分かりませんが、勇気を持って良い決断をされたなと思います。

もし彼が4年間かけて準備をしていたら、あの決断はできなかったのではないかと思っています。

(良い決断ができたのは)急に依頼を受けて、プレッシャーがあって…という状態だったからかなと思います。

戦略云々よりも、交代タイミングこそが「監督の決断力」が試されるところです。

僕も監督を経験しましたが、調子が良い時ほど、交代タイミングを延ばしてしまいがちです。

逆に崖っぷちで、失敗してもいいと思える時の方が大胆な決断ができます。

それが結果的に、良い結果を生むこともあります。

ですから西野さんにはこのまま、素晴らしい指導者になってほしいなと思いますね。

石川 「人生いつも崖っぷち、死ぬこと以外はかすり傷」ということですね!

中竹 名言ですね、それ。

スポーツ界で進んでいる研究ですが、「考える時間がある中での意思決定」と「反射的にすべき意思決定」は別物です。

コーチ向けにも、選手向けにも、別のトレーニングメソッドが出来上がっています。

琴坂 ありがとうございます。

前回と比較して、今回のセッションは今の時代に求められるリーダーシップを議論できたと思います。

今後、人工知能やロボティックスが出てくることで、クリエイティブな人たちが集まりチームを作っては離散する、ということを絶えず繰り返す組織の在り方になっていくと思います。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策学部)琴坂 将広 氏

このような時代性におけるリーダーシップについて、皆さんから一言ずつ頂いてこのセッションを終了したいと思います。

チーム内のスターを輝かせるため、咲かせるための土になる

中竹 自己受容の部分が大事だと思っており、これがフィロソフィーにつながると思います。

エディー・ジョーンズに哲学を聞いた時に、「俺は選手の奴隷だ」と言っていました。

僕は彼こそが王様ではないかと思ったのですが(笑)、実際に彼は、寝ずに研究してコーチをしていました。

「私はどんなに嫌われて、文句を言われても、勝たせるために奴隷になる」と彼が言った時、こういう哲学なのかと腹落ちしたのです。

僕が学生時代にチームのキャプテンをした時、「チーム内のスターを輝かせるため、咲かせるための土になる」と模造紙に書きました。

今でも、選手を輝かせるための踏み台になりたいと思っています。

これは、僕自身が自分を受容しているので、仮に「死ね」と言われても「踏み台になっている」と思えて、とどまれるわけです。

石川 死ねと言われるのがKPIなわけですね(笑)。

(会場笑)

今の時代性を考えると、インターネットができた後の「分断」の時代だと思っています。

先ほどの山口文洋さんの意見のように、自分から離れたところにいる人たちを結びつけられるのが、今の時代のリーダーシップではないかと思います。

今後、世界人口の中で一番大きくなるのはイスラム教徒(※)ですから、イスラム教徒の友達がいなければリーダーとは呼べないのではないかと僕は思います。

▶参考:「イスラム教徒、2100年には最大勢力 世界の宗教人口予測」(日本経済新聞)

宗教を表す「religion」という言葉は、「再接続する」という意味から来ています。

これからのリーダーは、自分から遠い人たちと再接続することが大事だと思いますね。

渡邉 ちょっとズルですが、今日とったメモを朗読します(笑)。

Takram マネージングパートナー / コンテクストデザイナー 渡邉 康太郎 氏

パートタイムリーダーシップ、フリーランサーの時代、ドラえもんにリーダーはいるか?、成果を出し続けるチームの条件、健康的な新陳代謝、ゲストキャラがいる、Takramは動物園、ミドルマネジメントは必要か?、チームのことはスポーツに学べ、コーチのポジションが変わっている、状況のコーチ、アタック、土壇場にいるリーダー/いないリーダー、個人的に好きなリーダーは誰?、三浦梅園、内村鑑三、後世に残すべきは金、会場大笑い、事業・思想・生き様、全部できそうなのはジャック・マー、生き様とは?(好きになるが1.0、国ごと好きになるが2.0、自分自身のことも好きになるが3.0)、盛田さんのテレビ・Another productを見せる、ナショナル・ストーリー・プロジェクト、セルフエフィカシー、自分でもやれるかどうか、プロフェッショナルとは?、本田圭佑である、ウイニング・カルチャー、コーチの四要件(プロフェッショナル、人間関係、自分の理解、フィロソフィーとビジョン)、最悪の状況で勝てるような練習、失敗の数をKPIにしていく、失敗という練習、ビヘイビアから始める哲学、インナーゲーム(セルフ1とセルフ2)、あるがままの自己受容、西野監督・逆境でのリスクテイク、リーダー=哲学×時代性、自己受容・選手の奴隷、分断の時代に接続できる人、リーダーは宗教家たれ。

今日の議論が蘇ってきました。

個人的には一番最初にあったような、多様性を包摂できる経営やリーダーシップについては、「オーケストレーション」をキーワードにしたいと思います。

全員が輝く時間を作るために指揮棒を振る、1つのハーモニーとしてメッセージを伝える、ということです。

そこには、「1つの良い体験」と「無数の印象」があります。

「1つのプロダクトなのに、使っている人の数だけ取扱説明書がある」というのが究極の状況だと思うので、それを目指したいと思います。

岡島 気をつけないと組織の寿命は短くなる一方、人間の寿命は長くなっています。

株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島 悦子 氏

つまり、同じ組織にずっといる必要がなくなりますし、1人の人間が色々な役割を担う状況も出てきますね。

その時にリーダーがやるべきことは、「変化の方向性についての仮説を、世の中に投げかける」ことだと思います。

それを投げかけた際に、その人の指にとまる人々の中からキャスティングをするのがリーダーの役割ですね。

もっと言うと、その人々が自己受容できるように、「意義」をもっと与えるのもリーダーの役割です。

リーダーとは、そういう「ストーリーテラー」のような存在ですね。

石川 ちょっと思ったことがあります。

株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏

なぜ、岡島さんが色々な会社から声が掛かっていて、僕はどの会社の社外取締役にもなれないのかと(笑)。

(会場爆笑)

それで今日は岡島さんから何かを盗んで帰ろうと思って聞いていたのですが、1つ気づいたことがあります。

今日「行動が大事だ」という話が挙がったと思いますが、岡島さんは誰かが何かを言った際に必ず、「それ、面白い」から始めるんですよね。

そこから議論を育てていっているので、「それかあ!」と思いました。

琴坂 すごいまとめですね(笑)。

石川 それともう1つ思ったのが、リーダーの特徴には「時代の変化が遅い」と言っているというのがある気がします。

みんな「時代の変化は早い」と言っているのに、リーダーは「時代の変化は遅い」と言っていると。

そういう口癖にも表れるのかもしれませんね。

琴坂 今日は概念の話をしましたが、いわゆる“伝統的なリーダーシップ”は時代遅れになると思います。

誰かより優れているとか、道を示すだけ、というのはもはや違うのではないかと思います。

今の時代は、多様性を確保しながら自分の哲学を持ち、多様性のあるメンバーをリードできるリーダーが求められているのではないかなと思います。

石川 琴坂さん…「それ、面白い!」

(壇上&会場笑)

琴坂 というわけで、今日もありがとうございました(笑)!!

(終)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/吉名 あらた/尾形 佳靖/大塚 幸

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