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「革新を続ける創業経営とは何か?」6回シリーズ(その4)は、カリスマ創業者のもとで初めてのM&Aを行ったポピンズ轟氏が、決断の背景を語ります。川鍋さんが語る文化の異なる親会社・子会社とよい関係性を保つための施策、笹川さんが得た教訓も必読です。ぜひご覧ください!
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のダイヤモンド・スポンサーとして、Motivation Cloud (Link and Motivation Inc.) 様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 7E
革新を続ける創業経営とは何か?
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)
(スピーカー)
川鍋 一朗
日本交通株式会社 代表取締役会長/
JapanTaxi株式会社 代表取締役社長
笹川 順平
株式会社ナスタ
代表取締役社長
轟 麻衣子
株式会社ポピンズ
取締役(当時)
(モデレーター)
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
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最初の記事
1. 成長を続けるオーナー企業経営者が「創業経営」の要諦を徹底議論!
1つ前の記事
3. ナスタ 笹川氏が語る、“非”創業家オーナー社長としての覚悟
本編
川鍋 轟さんは創業者のお母さんがピカピカで。
岡島 しかも大変パワフルですよね。
轟さんどうですか?
写真左から、プロノバ 代表取締役社長 岡島 悦子氏、ポピンズ 取締役(当時)轟 麻衣子氏
轟 はい、パワフルな創業者が現役のトップをバリバリやっている最中で。しかもすごくカリスマ性のあるタイプの創業者、ですから意思決定権は彼女に100%あります。
創業以来、すべてのことがらを彼女が判断してきた、だからこそ大胆な決定と実行ができたのです。
よく「代表が暴走しないように」みたいな話があるのですが、社員から見ると暴走であっても、彼女から見ると革新なのですよね。
岡島 中から見たら暴走と思われている。
轟 そうなんです。
本当に30年間走っていて、今も常にベンチャー気質、新しいことにチャレンジし「業界一」「業界初」であり続けようとするマインドでいます。ただ、IT時代の到来と技術革新に直面して、彼女の理解の中でも時代が変わってきた、と。この分野は次の世代に託そう、ということでスマートシッターの買収は、私が踏み切らせていただきました。
ファミリー企業での初めてのM&A案件をどう決断したのか?
川鍋 ポピンズさんにとっては初めてのM&A案件だったんですね。
轟 はい、初めてです。
川鍋 どういうふうに決断したのかすごく興味があります。
轟 押し切りました。
私の次期社長就任が大前提にあって、周囲もここは「挑戦」させようと。
経営陣も社員も次世代へと承継が進むなか、私の時々の決断を、3,300人(2018年現在は4,000人)の社員や関係者が注目していて、今はある程度チャレンジさせてもらえる環境にあります。これはファミリー企業ならではですね。
岡島 社員の方々の理解はあると思うのですが、お母様はどうだったのでしょうか?
轟 「ITはよくわからないけれども、もしかしたらそういう時代が来るのかもしれないのでやってみなさい」と。
自分が代表でいる限りはどんな間違いもできるので、まずはチャレンジして踏み込んでみろという強さがありました。
岡島 そこは大きいですよね。
イノベーションというのは善意の失敗をいくつやるか、仮説検証をたくさんやる中ででてくるものだと思いますので。
お母様がまだ現役でいらっしゃる中で失敗を許容できるうちに色々積ませるというのはすごく大きいですよね。
轟 私は30年間、彼女の経営判断を、誰よりも近くで、かつ深く、見てきました。
岡島さんのお言葉をお借りすると「代理体験」というのでしょうか。
どこでどのように判断するか、また不可能を可能にしてしまう場面も目の当たりにしています。そして、ここから次の世代へのチャレンジという点では応援もしてもらっています。
川鍋 これからまさにITの世界で違う文化で、これからどういうふうに強化しようとしていますか?
そもそも現状は上手くいっていますか?
買収したIT系事業と生じた、既存事業との文化的摩擦
轟 2017年3月からは、本当に私が入り込んでやっているのですが、「スマートシッタ―」はまだポピンズ社内の一室にある存在。歴史もカルチャーも異なるなか、居心地の悪さもあるかもしれません。例えば、服装や振る舞いマナーからしてポピンズ式で注意されてしまうという、先ほど川鍋さんがおっしゃっていたような、そういう事象は起こっているので、居場所を物理的にも分けなければいけないなと。
岡島 分けるとますます「情報の非対称」が生じるので難しいとは私は思いますけどね。
轟 分けないと、ポピンズに吸い込まれていくというぐらい求心力がすごいので。
岡島 なるほど。
川鍋 僕たちも最初は同じフロアでやっていて、最初はエンジニアも月曜は朝8時半から直立して「社是!」とか言ってやっていて、はじめは皆「面白いな」という反応でした。
2カ月目ぐらいから「9時出社で良いですよね? 8時半からのこの30分は……」と言い始めて、徐々にまずいなと思いました。
結局どうしたかと言うと、同じビルの1階と3階の距離感で、「物理的にそんなにすれ違わないけども、会おうと思えば会える」くらいの距離にしました。
就業規則も全部変えました。
笹川 オフィスのお金の掛け方が1階と3階で全然違いますよね。
3階の日本交通は事務室みたいな感じで、1階はクリエイティブみたいな(笑)。
それは反感があるのではないでしょうか?
川鍋 まあ……お前らそれで我慢しろと。
日本交通の人にしてみれば、千代田区紀尾井町でやれるだけハッピーなんです。
笹川 本当ですか?(笑)川鍋さんが思ってるだけじゃなくて?(笑)
写真左から、ナスタ 代表取締役社長 笹川 順平氏、日本交通 代表取締役会長/JapanTaxi 代表取締役社長 川鍋 一朗氏
川鍋 今度聞いておいてください(笑)。
昔は港区赤坂に本社ビルがあって、そこから品川区八潮という大井競馬場の近くに行って、北区浮間に行って、戻ってきたんです。
だから日本交通(千代田)って書かれるだけでも皆満足、いや、皆というか僕は少なくとも満足です(笑)。
(会場笑)
岡島 八潮に行った人たちはそう思っているかもしれないけど、聞き取り調査が必要ですね。
私も聞いてみても良いですか。
川鍋 よろしくお願いします。これは会長の暴走かもしれない(笑)。
IT・既存事業を行き来できる重要人物を何人か作る
川鍋 僕はその中でどうしているかと言うと、自分を含めて両側をある程度行き来できる人を複数人作っています。
それは本籍が日本交通の人でこちらのことを分かる人もそうだし、逆にJapanTaxi側の人でコミュニケーションに長けた人も、今3人ぐらいいて、「俺たちが接続するんだ」と言って、お互いの経営会議に出るなどしてなるべく伝えています。
最初は“シャッフルランチ”と称して、日本交通全員とJapanTaxi全員を仲良くさせようと思ったんですけど、ちょっとちぐはぐで、より摩擦が起きてしまいました。
もちろん業務で必要な部分、たとえば経理と財務とか総務とかはある程度の接続があって、それ以外の部分は、重要なところだけ、結構上のほうのランクで3人が行き来して俺たちがつなぐぞというのをこの半年ぐらいで作っています。
岡島 あと、人数の問題はありますよね。
おそらく轟さんのところはスマートシッター側の人数が少なくて、大多数がポピンズ側ということなので、パワーバランスが大きくなってこないとのまれてしまうのでしょうね。
川鍋 確かに日本交通の本社が50人で、JapanTaxiは7人から始めて今60人と超えてしまったんですよね。
岡島 人数とか成果もですかね。
成功体験というか実体験の利益が出てこないと「スマートシッターって良いね」とはならない。
轟 IT化や先端技術はスマートシッターが先行しています。ポピンズも追随できれば恩恵を受けますから、技術ハブ・研究所のような存在としてIT投資をやっています。
そこは、ポピンズの社員の心持ちというか「私たちが一生懸命最高水準のサービスを提供した成果が…」という気持ちはあるように思います。
岡島 穴の開いたポケットなのではないかという議論ですね。
川鍋 そこは我々の出番ですね。
笹川 長年築き上げてきたカルチャーをバカにしてはいけないですよね。
それを誤ると大変なことになる。
僕も先ほど簡単にお話しましたけれど、この2年ぐらい買収とかしてきて、「欧米ではPMI、ポスト・マージャー・インテグレーションと言って、これなんだ。掛け算の世界を皆でやるんだ」とか言っていました。
川鍋 「シナジー!」とかね。
笹川 それで人をどんどん移していたのですが、ほとんど辞めてしまったのです。
給与も上げているのに辞めてしまうんです。
それで足し算しか無理だということで、足し算でそれぞれが頑張るように、ヘッドクォーターに新しいIT人材を入れるようにして完全に分けました。
そうするとなんとなくリスペクトしてくれているんだという感じになって上手く回り始めたんです。
だから歴史ってすごく大事なんだなと思いました。
轟 大事です。
ポピンズとスマートシッター共になぜお互いが重要なのかという点は、本当にどちらも尊重しながら、棲み分けと相乗効果の議論を繰り返し、理解者を増やす必要性はすごく感じます。
岡島 そこで難しいのはスピード感ですよね。
もちろんその世界観がポピンズさんだけなら良いのですが、経沢さんたちがやっているキッズラインのような競合がいますよね。
価値観は違うと思うんですけど、でもマッチングをインターネットでやってくるところがある中、自分たちのところは社員やビジネスをリスペクトしてやっていくとすると、じわじわとしかやっていけませんよね。
競合がいるというところはどう考えているのでしょうか?
轟 2年ぐらい前「スマートシッター」と「キッズライン」がじわじわと出始めた頃から、方向性や心意気は全く違っていて。私がずっと注目していたのはスマートシッターのほうでした。
ですから、ご縁があった時点でまずは大変嬉しく思っていました。
経沢さんのところに関しては、ベビーシッター業界の認知度を上げてくださっている・市場の拡大という点で、すごく感謝をしていて良いことだと思います。
ただ、ポピンズが30年かけて培ってきたナニー(プロの教育ベビーシッター)の質、思い・心意気、そして安心安全・信頼は、どうしても守りたい。日本の女性達の意識がようやく、プロにだったら任せても大丈夫と変化してきた今、万が一、安心安全が担保されないようなことがあると業界全体へのインパクトが大きいので、そこはやはりこれからも業界全体で守っていきたいなと思います。
ポピンズは、安心安全・信頼は十分な一方で、手が届きにくい・使いにくいという声もあって、「安価且つ安心安全」というところが今CtoCでできていない部分です。お子様の命をお預かりするということは、商品の売買などとは全く異なるので、そこをどうやって実現していくかというのは、インターネットビジネスに関して一番興味があるところですね。
岡島 この次の議論と関係がありますが、リアルとネットの融合の時に、価値観や今おっしゃっていたようなリアル側で守りたいものと、一方でパイを広げるという意味でインターネットをうまく使っていくという組み合わせの部分に話を移していきたいと思います。
老舗企業はここに来ているようなICCのベンチャー企業とどういうふうに付き合っていくべきか、あるいはベンチャー企業はどうしたら良いのかということについて議論したいと思います。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/立花 美幸/浅郷 浩子
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