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『起業家よ、大志を抱け!社会課題を解決するビジネスを創るための「志」とは?』全7回シリーズ(その4)では、社会的事業ゆえに生じがちな「壁」を各社の事例とともに議論します。オイシックス・ラ・大地の髙島さんからは、組織に生じがちな“中だるみ”への向き合い方について。レノバの木南さんからは、新興事業だからこその突然の制度変化、スピード感について話題を提供いただきました。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのクライス&カンパニー様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 5F
起業家よ、大志を抱け!社会課題を解決するビジネスを創るための「志」とは?
Supported by クライス&カンパニー
(スピーカー)
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
木南 陽介
株式会社レノバ
代表取締役社長 CEO
髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長
田口 一成
株式会社ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長
(モデレーター)
小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer
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最初の記事
1. なぜ今、起業家に「志」が求められているのか?
1つ前の記事
3. 己の「小欲」を、社会のための「大欲」に変える(ユーグレナ出雲社長)
本編
正忠 会場のみなさんの中にも、出雲さんが感じられていたような、「自分は良いことをやっているはずなのになかなか受け入れてもらえない」「理解者が増えない」といった悩みを抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そのようなことも含めて、今までに想定外の壁を経験されたことはありますか?
田口 先ほども正忠さんからご質問をいただいて「壁は特にありません」とお答えしたと思いますが、あれは適当に答えたのではなくて、やはり思い当たらないのです。
正忠 想定していたということですか?
田口 想定はしていないです。
トラブルや悩みを想定せず、ただただ、一生懸命つくっていっているという感じです。
下手に想定しながら取り組むよりも、試行錯誤を繰り返す、いわゆるHard Things(困難)が当たり前の状態です。
ですから、改めて困難があったのかと問われても、本当に思いつかないのです。
正忠 なるほど。
田口 思いつかなくてすみません。
正忠 大丈夫です。それが答えですから。
田口 創業14年目になるのですが、当時25歳の頃のことを振り返ってみても、あまり思いつきません。
結果が出ていないのに生じがちな“まったり感”への対処
(写真右)オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長 髙島 宏平さん
髙島 困難ということについて、お三方にお聞きしたいことがあります。
先ほど木南さんがおっしゃったように、社会的に良いことをやっているとモチベーションの維持は簡単なのですが、思ったような結果が出ていなくても社員がそれなりに楽しそうな、“中だるみ”のようなことが起きがちです。
それでも離職率が低いので、良い会社だということになってしまいます。
僕たちも、そういったことを何回か経験しています。
木南さんや出雲さんを見ていると、創業時の立ち位置から、ピボットではないですがそれに近い形で、何段ロケットかで会社を引き上げているように見えます。
はっきりとは目に見えなくとも、何となく「まったりした」幸せな雰囲気というのは、社会的企業には結構多いのではないかと思うのですが、そういった困難な状況をどのように打開されたのかについてお聞きしたいです。
また、楽天さんはイノベーターとして最初からすごいと言われていて、僕たちからは、中だるみがあったのかどうかは分かりません。
それどころか、中だるみなど全く無く、常に攻めておられるように見えるのですが、実情についてお聞かせいただけますでしょうか。
次なる課題の発見が、組織から“中だるみ”を遠ざける
(写真左)楽天株式会社 Co-Founder and Chief Well-being Officer 小林 正忠さん
正忠 髙島さんが高い視座を持っておられるからこそ、楽天も社会課題の解決をしている部類の会社だとご理解いただけるのですが、特にマスコミを通じて楽天を知った一般の方々からは、「カネの猛者」や「資本主義の権化」ととられることも多いです。
1997年当時、日本にはカタログショッピングのようなビジネスがあり、我々はそれらとインターネットを統合して「インターネットショッピングモール」をつくりました。
自分たちの商圏だけではなかなか成長・成功できない地方の事業者さんを、全国に広げて成長・成功させるプラットフォームをつくり、この国を元気にしようという理念をもってました。
結果、我々からすると、一つの社会課題を解決したという手応えと実感があります。
しかし、地域に眠っているネットビジネスの事業者はまだまだいらっしゃるので、さらに頑張らなくてはならないと思っています。
課題解決を進めていくと、また新しい課題が見えてくることがありますね。そして、その課題も解決しにいきます。そうするとまた違う課題が見えてきます。
さらに「僕たちならこちらのの課題も解決できるのでは?」ということも見えてくるようになり、それがどんどん広がっていき23年が経ちました。
恐らく、永遠に課題を見つけて解決し続けていくのでしょう。
三木谷は、課題探しをしているのではないかと思うくらい、いろいろなものを見つけてきます。
例えば、「がんを治せるのではないか?」ということで楽天メディカルを立ち上げ、がんで苦しむ人を一人でも少なくしようと取り組んでいます。
今回の携帯事業(Rakuten Mobile)もそうです。
社会課題を本気で解決しようとすると、違う社会課題が見えてきて、それを続けていくと「中だるむ」必要もない気がします。
複数の視座に立つことで、解決すべき課題が見えてくる
髙島 課題が見つかってしまうのか、それとも組織の活性化のために、ちょうど良い大きさとタイミングで課題にチャレンジしているのか、どちらなのでしょうか?
正忠 三木谷が天性でやっている気がします。
彼は右脳派なのですが、頭が良いので左脳とのキャッチボールが異常なくらい早いのです。
右脳で瞬間的に思いついて感覚的に掴んでいるのだけれど、口から出てくるときは、あたかも「ずっと考えていました」ような、極めてロジカルな説明になるのです。
ですから「おー、なるほど」と納得してしまうほど「それっぽく」聞こえるのですが、たぶん右脳で感じているのだと思います。
それは、髙島さんと同じく、いろいろな視座に自分を置いているからできることなのでしょう。
「楽天の社長」としての視座だけだと、見えるものが限られていますが、複数の事業を手掛けると、それぞれ視座から見渡せるものが増えてきます。
さらには楽天を出て、新経済連盟の代表理事という視座からモノを見る、ハーバードビジネススクールのアドバイザリーボードという立場から見る、NBAとの関わりで見るというように、いろいろな視座から見ているので、視野が大きく広がります。
そうすると気になる視点が増えてきて、「この視点とこの視点とこの視点を掛け合わせたら、これも解決できるのではないか?」というように、どんどん見えていってしまうのだと思います。
つまり、視座をいろいろと置き換えてみたり、視座が違う人とディスカッションするというのが、一つのポイントですね。
新興業界における「制度の変化」とどう向き合うのか
木南 髙島さんがおっしゃった“中だるみ”についてはすぐには思いつかないのですが、壁の話とつなげてお話しします。
私たちが取り組んでいる、エネルギー、リサイクル、環境というマーケットは、制度に依拠する部分が大きいのが特徴です。
社会全体がある臨界点を超えて、「これは制度として必要だ」ということになって初めて制度ができて、そこでマーケットが一気に生まれるのです。
それまでは、中だるみというかそもそも「市場の素地」がないのです。
でも、そこで努力を怠らないことが重要なのだと思います。
エネルギー事業を例にお話しすると、日本では、再生可能エネルギーの比率を2030年には2〜3割にしようとしています。
東日本大震災が起こったことが政府のエネルギー政策転換の背景となり、そのための政策ができているので、我々のような事業体が積極的に事業を進められる状態になっています。
一方で、その前から世界潮流というものもあって、今ではアジアでもヨーロッパでも、洋上風力発電といって、海上に風車を建てて発電する方法が主流になっています。
そのようなものがパラパラと始まっていた時に、日本は違う方向を向いていたのですが、大きな出来事によってそれがひっくり返ったのです。
そういう意味では、制度の変化が止まる時が、壁に当たる時になると言えるでしょう。
再生可能エネルギーは変動電源とも言われていて、太陽光でも風力でも、発電ボリュームが増えるとすぐに送電網が一杯になってしまいます。
今はその問題が大きな壁の一つになっていますが、基幹送電線路の工事に1,500億円かかるとか、10年かかるというあまりにも大きな話です。
これは仕方のない社会のインフラの問題なので、ゆったりとした変化に付き合っていかなくてはならない部分はあります。
「攻め時」にスタートダッシュを切れるレノバの戦略
髙島 攻め時が、数年に一回あるという感じですか?
木南 良い質問をありがとうございます。それはありますね。
再生可能エネルギーのマーケットが日本に出現した瞬間に、なぜ我々が、スタートダッシュを切って多くの事業を始められたかということです。
参入した会社はたくさんありますが、なかなかうまくいっていないところもあります。
実は、我々はその手前から準備を始めていたのです。
制度ができて儲かることが保証されてから始めたわけではなく、その手前でかなりの準備をしていたのです。
例えば、日本には制度が無いので、インドネシアに行って小型水力発電の開発をどうにかしようとか、フィリピンでバイオマス発電ができないかなど、いろいろと取り組んでいました。
確かに、当時は先を見通すことはできずマーケットとしてのシェアもありませんでしたが、そこで蓄積したものが、その後のスタートダッシュにつながったと思っています。
正忠 積極的に規制側に働きかけたわけではないのですか?
木南 そうではないです。
正忠 準備だけをしていたということですか?
木南 そうです。制度のあるところにシフトして、トライしていました。
正忠 なるほど。出雲さんは、髙島さんのご質問に対してはいかがですか?
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成
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