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6. “会社の思い出”をオフィスに散りばめることで、カルチャーが醸成される

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「成長企業のオフィス戦略」全8回シリーズの(その6)では、“社員がストーリーを語りたくなるオフィス”をテーマに各社のオフィス戦略を議論します。FABRIC TOKYOでは、社員が採用候補者に対して“旧オフィスビルのエピソード”を語る風景が見られるのだそうです。その理由とは? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)を募集しています。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーのフロンティアコンサルティング様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 10F
成長企業のオフィス戦略〜そこに込めた思い、狙いとは?
Sponsored by フロンティアコンサルティング

(スピーカー)

沢木 恵太
株式会社OKAN
代表取締役 CEO

田中 弦
Fringe81株式会社 代表取締役CEO /
Unipos ファウンダー

森 雄一郎
株式会社FABRIC TOKYO
代表取締役社長

(モデレーター)

森山 和彦
株式会社CRAZY
代表取締役社長

▶本セッション開催に先立ち、フロンティアコンサルティング社のオウンドメディア「Worker’s Resort」にて、各社のオフィス取材記事が公開されています。ぜひあわせてご覧ください。

OKAN:
「ABW」「バイオフィリックデザイン」「五感の刺激」「データ分析」で最先端オフィスを構築するOKAN

Fringe81:
「ベンチャーはユニークさの追求」をオフィスで体現するFringe81

FABRIC TOKYO:
小売系IT企業FABRIC TOKYOが「オープンなカルチャー作り」を徹底した東京・代々木本社

「成長企業のオフィス戦略〜そこに込めた思い、狙いとは?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 今こそ考えたい「オフィスの魅力とは何か?」成長企業のオフィス戦略を徹底議論!

1つ前の記事
5. リモートワーク推奨下で考える「オフィスの本当の価値」とは

本編

沢木 結局、ビジョンやカルチャーなどについては、まさに田中さんがおっしゃっていたように、経営者の権限として最後まで残すべき仕事のような気がします。

経営者だからこそビジョンやカルチャーを具現化できたり、それをオフィスと密接に繋げることができたりするのです。

田中さんがそこに介入されているからこそ、オフィスの一つひとつにストーリーを持たせて伝えることができるのでしょう。

Fringe81 田中さんの、オフィスへのこだわりの正体

Fringe81株式会社 代表取締役CEO / Unipos ファウンダー 田中 弦さん

田中 それには異常にこだわっていて、板材など全て複数パターンの見積もりを取って、この照明だとどういうふうに反射するかといったことまで想定します。

今は、コンピューターで簡単に照明の角度などもシミュレーションができますよね。

そういったことを板材ごとに全てやってもらいながら、どれだけボリュームディスカウントできるかもすべて見積もりなどを取って、こだわり抜きました。

自分でも、少し頭がおかしいなと思います(笑)。

沢木 オフィスの話ではないですが、先ほど登壇前に話している時に「普段何の仕事をされているのですか」とお聞きしたら、「基本的に事業は見ないけれども、外に出るものは一言一句見ます」とおっしゃっていましたよね。

 文章などもすごく細かく添削されるとのことでした。

田中 「私は」がいいのか「私が」がいいのかで悩んだりします。

沢木 そこまで細かく見ているからこそ、会社のブランドを統合するというか、世界観を創れるのでしょうか?

田中 おっしゃる通りだと思うのですが、自分でも少しやりすぎかなとは思っています。

社員がストーリーを語りたくなるオフィス・職場とは

株式会社CRAZY 代表取締役社長 森山 和彦さん

森山 やはり、何かを熱狂的に信じている誰かの世界観を表現していくことは、すごく大事だなと思っています。

例えば今、スターバックスがフラッグシップストアをつくっていますよね。

STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO

家の近くにもあるのですが、あれをつくっている人達にはものすごいこだわりを感じます。

これからの企業にとって、こだわりの詰まったモノを持つことがとても重要になってきます。

ストーリーがあることで、モノに意味が付与され、そこから空間が変わっていくはずです。

例えば外部の方がオフィスに見学に来られた時に、社員がオフィスを説明しながら、その会社のストーリーを話していることってありますよね?

沢木 そうですね。あえて外部の方がいらっしゃるようにして、その説明を社員にやってもらうようにすると、ストーリーが自分の言葉に刷り込まれていくので、どんどん、自分事として語れるようになります。

森山 弊社でも本当にそうです。最近では年間3,000人くらいの社外の方に見学に来ていただいています。

弊社の場合は皆さんランチを食べに来られるのですが、そうやって外部の方がオフィスにいらっしゃることで、社員が自分たちのオフィスやストーリーを語る機会を持てるのは、すごく大事なことです。

森さんの会社で言うと、先ほどのショップ研修のお話もそうなのかなと思います(本セッションPart 2参照)。

社員が共通して語れる何かをオフィスを通してつくり、伝えている大事な作業だなと思います。

FABRIC TOKYOの社員が、旧オフィスのビル名を語り継ぐ理由

株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役社長 森 雄一郎さん

 社長室である僕の部屋には「MARUEI」という名前が付いているのですが、「MARUEI」というのは旧オフィスが入居していた「丸栄ビル」の名称から取っています。

まだ従業員が2人しかいなかった頃に、そこに移転したのです。

それから社員数が70~80人くらいになって、今は170人くらいになったのですが、会社の急成長を支えてくれたオフィスでした。

4年くらいしかいなかったのですが、上の階に住んでいた砂原さんというおばあちゃんオーナーさんとすごく親しくなりました。

僕らは当時平均年齢27、28歳くらいで、本当にすごく色々なご迷惑をおかけしました。

ゴミの捨て方から戸締りまでご指導いただいて、僕らを育てていただいたなという思い入れがあるので、僕の社長室の名前に使わせていただきました。

丸栄ビルはオレンジ色のレンガ造りが素敵なビルだったので、それに似た色のレンガも入れてもらいました。

例えば、採用面接が終わった後などに、候補者と一緒にオフィス一周見学ツアーをしますよね。

その時に社員が結構「MARUEI」のエピソードを話してくれていて、こうして会社の歴史を共有することが、カルチャー醸成になるなと思っています。

オフィス入り口に、社長撮影の“思い出写真”を掲載

田中 弊社では、入り口や食堂に沢山の写真を飾ってあります。

これはオフィスの入り口ですが、壁に飾ってあるのは僕が撮った社員の写真です。

 田中さんはカメラが趣味ですものね。

田中 上場時の写真や昔のオフィスの写真など、色々と残っているものがあるのでそれも飾っています。

最初は「アートを飾りましょう」という提案があったのですが、僕が嫌だと言って、今までの思い出を飾ることにしました。

僕がカメラ部を組織しているので、もちろん社員を撮るという前提で、このうち何枚かは社員に権限委譲しています。

 すごく素敵ですね。

田中 来社いただいた方に僕らのカルチャーを伝える上では、とても有効だなと感じています。

ちなみに写真の掲示は、リクルートさんがされているのを真似させていただきました。

僕はリクルートでの仕事が長かったのですが、何かを受注したり、新人が入社したりすると必ず「歓迎!田中弦」みたいな垂れ幕が天井からドーンと下がります。

垂れ幕文化、やる気促す仕組みにこだわり(日本経済新聞)

それを見て「あー、そっか!」という話になるので、掲示はとても有効な感じがします。

リクルートさんではオフィス内に垂れ幕用のファシリティも作られていて、「垂れ幕がシュッと簡単に出せるんですよ」と担当者の方がおっしゃっていたくらい、垂れ幕が制度として重要視されているようです。

女性候補者の内定承諾率がアップした“ある置き物”とは

 新入社員が多い企業では「この場にいていいんだよ」と承認をしてあげることは、ものすごく大事ですよね。

弊社では、クリエイティビティやデザインセンスの良さが、経営戦略の一つです。

そういった意識を高める目的で、オフィスの入り口にアートブックやファッションデザイナーの自伝などを並べています。

最近効果があったのが、ココ・シャネル(Coco Chanel)の自伝です。

受付を済ませた採用候補者に座ってお待ちいただくスペースがあるのですが、そこから見える本棚に、ココ・シャネルなどの色々なデザイナーの本を並べました。

ココ・シャネルは言わずと知れたシャネルの創業者ですが、彼女がどんな人物かというと、特にファッション業界では「独立した女性」の象徴です。

それまではずっと、ファッションや社交の場が男性のものだったのですが、それを彼女が壊したのです。

そういった強い女性、独立した女性を支援している会社なのだなということを強く感じてくれたのか、女性候補者の内定承諾率が上がりました。

森山 すごいですね。本で内定承諾率が上がるなんて、安いですね。

 そうですね。メルカリで2,000円くらいだったので、そのインパクトは大きいですね(笑)。

プレゼンの場、承認の場としてのオフィスの機能

 あと採用後に関して言うと、弊社では「原動力プレゼン」と呼んでいるプレゼン大会を月に一度開催しています。

入社して3ヵ月で試用期間が終わるのですが、3ヵ月間のうち1ヵ月間はアパレルの接客やスーツ・シャツなどの構造を学ぶ研修をして、2ヵ月間は現場に出ていただきます。

それらを経験した上で、自分の原動力になっているものが何なのかを、社員の前でプレゼンしてもらいます。

自由参加で営業時間外にやるのですが、お酒を飲みながら参加して、皆涙ながらにプレゼンするんですよね。

場の承認というか、「自分はこんなことをやってきてました」「だからこういうふうにやっていきたいです」といったことをプレゼンしてもらい、それを皆で称え合うというとても素敵な場になっています。

森山 私たちも、ほぼ同じことをしています。しかも入社3ヵ月目にやっています。

 本当ですか?

森山 弊社はウェディングのプロデュースを手がけているので、人生を深堀りしていきます。

例えばお客様の人生観は、ご両親との関係などで変わりますよね。

そのことを社員にも実感してもらうために、きちんとバディーが付いて2週間カウンセリングして、プレゼン練習をして発表してもらいます。

プレゼンは全社員強制参加で、業務時間内に行っています。

森さんがおっしゃるとおり、すごく感動します。

自分たちがやっている、ウェディングという事業の意味が分かるのです。

これらは、オフィスの「装置」としての機能の一つなのかなと思います。

 やはりリモートワークの世界になってしまうと、こうした機会が生まれづらいですよね。

ですから、やはり皆で集まる場、承認する場のようなものはすごく大事にしたいと思っています。

「ベンチャーらしいオフィスがよかった」の声への対処

写真左から、CRAZY森山さん、OKAN沢木さん

森山 ここまで皆さんのお話を伺い、各社が明確な意図を持ってオフィスづくりに取り組まれていることが分かりました。

リモートワークが良い・悪いでもないし、社長室があることが良い・悪いでもありません。

そこにきちんとした意図があるからこそ、オフィスに意味が生まれるのだな、素晴らしいなと思います。

田中 綺麗なオフィスに移転しても、「前のベンチャーっぽいオフィスがよかった」と言う人もいます。

そう言う方々に対して、これにはこういう意味があり、だから今のオフィスはこうなんですと全部説明すると、皆最終的には「今のほうがよいです」となります。

やはり、説明できるというのはとても重要だなと思います。

森山 確かにベンチャー感のよさみたいなものはありますよね。

最初は、家具はIKEAで買ってできるだけ自分たちで組み立てよう、なんてあるじゃないですか。

あれは、意外にいいですよね。 皆さんやりました?

沢木 やりましたね。

森山 やりましたよね? それはそれで、すごく大事だなと思います。

ただ企業が成長していくと、そうした在り方も変わっていくということですよね。

(続)

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続きは 7.「C工事にこだわり抜いて、坪単価を抑える」Fringe81田中さんのオフィス設計論 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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