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「新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」全10回シリーズ(その8)は、帝国がもたらす負の側面や弱点、現代における帝国の作りにくさについて考察が進みます。楽天 北川さんが訴える「帝国ができる必然」に基づき、さまざまな問いかけに答えていくくだりは本セッションのハイライトのひとつです「我々は何を統一すべきなのか」、あなたはどう考えますか? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 5B
新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」(90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 / 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
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▶新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」の配信済み記事一覧
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最初の記事
ビジネスカンファレンスでなぜ「帝国の作り方」を議論するのか?
1つ前の記事
帝国がもたらす、3つの圧倒的Well-beingとは
本編
琴坂 北川さんは、帝国の良いところばかりを話されている気がしますが?
北川 今は基本的にそうですね。
琴坂 人類にとってネガティブな側面はないのですか?
北川 いや、もうたくさんあると思います。
琴坂 深井さん、その辺りをお願いします。
帝国がもたらす負の側面とは?
深井 人類史における帝国のネガティブな側面ですよね……。
石川 隣の帝国の人からすると、勝手に攻めて来られてたまったものじゃないですよね。
北川 短期的には非常に不幸ですね。
深井 そうですね。だから、誰から見るかで変わるという話なのでしょうね。
山内 ファクトで見ると、帝国はすごく作りづらくなってきていると思います。
僕は帝国は思想と軍事力だと思っていますが、たぶん統一的な思想が作りづらくなっているのだと思います。
昔はキリスト教、現代だと資本主義など、「みんなそう言うよね」といった統一の合意が作りやすかったのですが、かなり民度が上がってきましたので。
琴坂 そこは結構重要なポイントです。紀元前1世紀頃の平均的な人間の知能や教育レベルと、現の我々が持っているデータ量は全く違うので、思想を統制するのは相当難しくなっています。
山内 軍事力的に言うと、統一できる主体はあると思いますが、ソフトウェアの面でいろいろと反撃があると思います。ヨーロッパは、そういう戦い方が一番得意だと理解しているのですが。
なかなかそういう統一体は出てこないのではないかと深井さんが先ほどちょっとおっしゃっていましたが(※)、僕はそちらの意見ですね。
▶編集注:経済力で世界をまとめる時代が終わり、次に何をもって統一するかという議論がPart.6で行われました。
ガンディーの「対立構造を作らない」という信念
深井 いわゆる新しい時代の、北川さんが言っていた3つのベネフィット(※)を得る形態が何かという話なのだろうなと思っていて、それはガンディーが参考になると思っています。
▶編集注:Part.7で、帝国は人々に圧倒的な経済的、身体的、精神的Well-beingをもたらすと言及。
ガンディーが非暴力・非服従を説きましたが、絶対に対立構造を作らないというのが彼の信念でした。
彼は絶対に対立構造で議論をしませんでした。
対立構造で議論をするとそこに必ず勝ち負けが生じるし、攻撃的・防御的要素が入ってしまいます。でも対立構造を作らなければ、理論上絶対に対立することはありませんよね?
歴史の教科書に載っているのですが、彼はそれでイギリスから独立することを成し遂げた人です。
今僕がこれをやろうとすると、いろいろな考え方があるので、どうしたってコンフリクトが生まれますよね?
全く逆のことを言っていたり、自分がアクションすることで相手のベネフィットなどが変わったりする時に、地球を統(す)べようととしても「じゃあどうするか?」という話になると思います。
やはり、絶対に対立しないというガンディーの精神が参考になると思います。
▶愛で世界を変えたインド独立の父、長男はグレた! _feat.ガンディー <育児編#1/4>(コテン深井龍之介の レキシアルゴリズム)
これからの帝国は、どのような信念によるべきなのか?
琴坂 北川さんのこのスライドはすごく重要だと思っています。
軍事的に統一するという発想は現代にはあり得ないとして、先ほど少し議論になっていましたが、何を統一できるのか、何を統一するのか、現代における帝国とは?という議論を最後にカバーしたいと思います。
我々は、宗教があって、軍事的なものがあって、経済、お金に支配される構造があって、今また思想に戻ろうとする議論もありながら話を進めてきているわけですが、たぶん私の捉える帝国とは、人間を何かしらの形で束縛するものだと思います。
人間の自由をなくし、それによって逆に人間に安定を与えて幸福をもたらそうとしていて、では、これからの世界におけるそれって何だろうというところは、ぜひ皆さんのご意見をお聞きしたいところです。
北川 このスライドで僕が言いたかったのは、深井さんの「コンフリクトしない」に極めて近い思想です。
帝国が作られてきた歴史の中で、「悪いことがなかったか?」と言えば、当然短期的には悪いことも非常にたくさんあったと思います。
ただ僕が強烈に主張したいのは、「長期的には良かったのではないか」ということです。
それはどこによって立っているかというと、「啓蒙思想」(※)です。
▶編集注:従来の社会システムや宗教的権威にとらわれず、理性的・合理的に思考し行動するというヨーロッパで17世紀末に起こった思想。フランス革命の原動力ともなった。
つまり、「我々は理性と共感によって人類をよりよくできる」という信念、簡単に言えば「頑張れば良くなるんだよ」ということを信じられるか否かです。
これに対抗する考え方は「ニヒリズム」しかありません。「いや、いくら頑張ったって、世の中悪くなるよ」というような考え方です。
一生懸命生きれば、必然的に帝国ができる(北川さん)
北川 「啓蒙思想」は、世界を統一できるのではないかと思っている一つの思想です。
先ほど帝国ができるのは必然か偶然かという話(Part5参照)がありましたが、あえてスタンスを取るのなら、僕は「帝国は必ずできたはずだ」と思います。
ローマ帝国、モンゴル帝国だったかは分かりませんが、何かしらの帝国ができる必然性はあったと思います。
なぜなら僕は、「人が視座と志高く、一生懸命生きるということは、帝国ができるということだ」と信じているからです。
「僕たちは一生懸命生きれば、必ずそこに誰かしら何かしらの帝国ができて、それが人類を良くするのだ」という思想で、これから世界を僕は統一していきたいと、そういう話になります。
石川 素晴らしいじゃないですか。
深井 熱い。本当に素晴らしい。
帝国と多様性は相反するのではないか?
琴坂 北川さんの帝国の定義「馬鹿でかい、多様な領域を統一すること」(Part.7参照) でいくと、多様性を否定しているような気がするのですが、そこの辺りはどうでしょう?
北川 そんなことはないと思います。
たぶん琴坂さんがおっしゃっている「多様性」とは、例えば啓蒙思想に相対する考え方という意味での多様性のことだと思います。
つまりこの逆をとると、「我々はどう頑張っても人類を良くできない」という思想は、多様性というよりは、その人を受け容れたらいいのだと思います。
その人は受け容れつつもその人に対して「なぜ啓蒙思想がよりよい思想なのか」を説くことはできると思うのです。
このように人としての多様性は受け容れつつも、思想としてはビジョンを持って語りかけていくというのはあってもいいのではないかと思います。
石川 皇帝という人は、そういう人だと思うのですよ。異なることを言っている人がいても、「そうか」と。「ところで俺の話を聞いてくれ」と(笑)。
(会場笑)
▶編集注:石川さんはこちらのディスカッションでも「by the way」で話を変える方法を紹介しています。
繰り返し、繰り返し言う中で、自然と異なる意見が対立構造にならず、調和されていくんじゃないですかね。
北川 そうです。否定するわけではないです。人はやはり否定してはだめです。
琴坂 その発想というのは、イエズス会の「土着のどんな信仰があろうとも、キリスト教を信じるべきだ」論に結構近い感じがしますよね。まさに規範思想。逆に、相対主義とも言うような、色々なものが発生する、多様なものをそれぞれが正しいと認める発想があるような気もしますが、そこはどうでしょうか?
北川 べき論を持つことと多様性を認めることは、僕は決して相反さないと思います。
人はやはり自分を受け容れてほしいという思いを持つ一方で、お互いに異なる考えを持つこと自体は、例えば会社でもそれほど大きい問題にはなりません。
そもそもみんな間違えるし、考えは変わります。考えが異なること自体は、多様性を認めないことではありません。
考えは説得していってもよいと思いますが、人としては受け容れていこうと考えます。
(続)
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続きは 時代の変わり目の今、「資本主義の帝国」の次を大予想 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子
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