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3.「マーケティングは初期に体系的に学ぶべし」トップマーケターが口を揃える業務効率化

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「トップマーケター直伝、マーケティングで事業をドライブする組織・人づくり! 」全6回シリーズの(その3)は、マーケティングの「ステージ1」、基礎のスキル習得について議論します。体系化したシステムによるOJTがある外資系企業に比べると、日本はまだまだ属人的で、業務毎の教育が多いそうです。その弊害とは? 5年経つとスキルが古くなるといわれるスキルを常にアップデートするには? ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 ゴールド・スポンサーのグロース Xにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 8F
トップマーケター直伝、マーケティングで事業をドライブする組織・人づくり!
Sponsored by グロース X

(スピーカー)

田岡 敬
株式会社 office K
代表取締役

津下本 耕太郎
株式会社グロース X
代表取締役社長

リュウ シーチャウ
レノボジャパン合同会社 CMO マーケティング統括本部 統括本部長 / NECパーソナルコンピュータ株式会社 コンシューマ事業本部 マーケティング部長

山口 義宏
インサイトフォース株式会社
代表取締役

(モデレーター)

西井 敏恭
株式会社シンクロ 代表取締役 / オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT / GROOVE X株式会社 CMO

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1. 重要文化財、城下町など歴史的資源を活用した街づくりを進める「バリューマネジメント」

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本編

マーケティング1年生「基礎習得の見習い」の課題とは

西井 この数年、BtoBマーケティングはずっと盛り上がっている領域です。

津下本さんは過去も見てきたし、今もその中心でやっているということですね。

さて、特に僕とシーチャウさんと田岡さんは、色々な企業に様々なポジションで入社しています。

そこで課題を見てきているはずなので、よくある課題や、また、それらに対してどのようなことをしてきたかという対策も含めて、お話を聞いていきましょう。

まずステージ1、「基礎習得の見習い」です。

山口さんからお話があったように、マーケティングに関わって1年目で、マーケティング用語や基礎概念が分からない状態ですね。

「社内で、どうマーケティングの基礎を習得させていますか?」という質問に、津下本さんだけが回答してくれました(笑)。

課題① 基礎のスキルを教えていない!?

津下本 色々な課題があり、グロース Xのサービスも、それらの課題に対するバッチだと思って作っています。

ポテンシャル採用をした会社などで、マーケティング領域についてオンボーディングのトレーニングを実施している会社はあまりないとすごく感じています。

たいていの場合、入社後5、6の座学をした後、先輩社員につけてOJTを実施しますが、その先輩も28歳くらいできちんと学んだことがないので、きちんと教えられない。

その結果、目の前のことを暗中模索状態で行っているという環境になっている会社が多いと思います。

仕組みがかなり不完全で、課題があると思っています。

西井 田岡さんは色々な会社に行かれていると思いますが、ステージ1で、基礎のスキルを教えている会社はありましたか?

田岡 ないですね(笑)。

西井 ゼロですよね、僕の経験でもゼロです。

過去に数社行きましたが、「いきなり放り込まれて本を読んでおけ」以外に何かあったかと言うと……。

田岡 本人が一生懸命、デスクトップリサーチや勉強をするのが限界ですよね。

西井 シーチャウさん、いかがですか?

P&Gほか外資系企業に学ぶOJT

リュウ 私は、あると思いました(笑)。

私の最初の会社はP&Gですが、マーケティングのトレーニングとOJTのバランスが非常に良かったのです。

例えば私が新卒1年目で受けたトレーニングで、アジアのマーケターが集まって、香港に1週間滞在するというものがありました。

それは「エージェンシーマネジメント」というタイトルで、代理店の皆さんとどういう関係性を作っていくかを体系的に学ぶことに1週間かけるのです。

学ぶことはシンプルで、まとめると、「代理店のメンバーはマーケターの奴隷ではない、奴隷として接すると奴隷の仕事しかしてくれない」ということです。

きちんと相手をリスペクトすること、そしてお金を払っているということは、彼らが自分よりもクリエイティビティがあるということなので、コミュニケーションでいかにそれを引き出すか、などを学ぶのです。

私は、そういうふうに考えたことが全然ありませんでした。

例えば、代理店に「これを赤くして」「これを大きくして」と指示をしますが、お金を払っているのに私が指定して決めるというのは、ひどい話ですよね(笑)。

でも、自分は実際そうしてしまっていたと、そのトレーニングで感じました。

1週間かけて、ここまではマーケターの仕事で、ここからは自分よりもプロである代理店の仕事ということを学んだのです。

これは1つの例でしかないですが、同じようなトレーニングがたくさんありました。

当時は辛かったですが、今考えると、本当にありがたい機会だったと思います。

西井 そういうトレーニングは、P&G以外の他の外資でもありましたか?

リュウ P&G出身の人がいる会社だと、みんな自作で行います。

西井 P&Gすごいですね(笑)。

田岡 外資はすごいですよね。

僕がマッキンゼーに中途入社した時も、最初の1カ月は研修だけでした。

パワーポイントの作り方から始まって。

マッキンゼーに中途入社する場合、MBAを持っているのが大前提です。

僕は持っていないので、持っていない人が世界中から集められて、ホテルに3週間缶詰でミニMBA研修を行いました。

2年分を3週間に凝縮して教えるみたいな。

西井 それを3週間で得られるというのは、いいですね。

それがやりたい人が入社すると思うので、入社する社員のモチベーションも上がると思います。

田岡 外資は、Off-JT(Off-the-Job Training)とOJTのバランスがすごく良いと思います。

OJTとOFF-JTの違いと使い分け(グロービス)

初期に体系的に学ぶほうがいい理由とは?

リュウ きちんと教えるほうが、その後の仕事が速くなると思います。

ルールも分からずにやって、あちこちぶつかって、正しいかどうか分からないというのは、中長期的に見ると無駄が多くなります。

最初から理解していれば、仕事に時間もかからないですし、シンプルになります。

西井 僕も色々な企業を見てきましたが、例えばCRM(Customer Relationship Management)の話をするにしても、CRMの概念が企業によって違います。

その概念すら共通理解がないまま話しているので、めちゃくちゃになってしまいます。

先に教えたほうが早いのになぜ教えないかというのは問題ですね。

田岡 僕がJIMOSの社長をしていた時は、アプリを作りました。

津下本 すごいですね。

田岡 概算力研修アプリと言って、KPIの組み合わせで、KGIがどうなっているか、各KPIの実際の数値相場はどれくらいか、というものです。

▶田岡さんが重視する「概算力」については、こちらの記事に詳しい。田岡 敬 氏 – 経営者・有識者インタビュー – ビジネス数学検定(ビジネス数学)

西井 年間数千万円は、教育に使っていたと言っていましたよね。

田岡 そうですね。

西井 ちゃんと教育しようよ、という結論で大丈夫ですよね?

山口さん、いかがですか?

山口 基本的に、クライアント側の事業会社でマーケティング領域の社員教育システムが整っている会社はほとんど無いと思います。

まれに「やけに整っているな」と感じる会社があると、だいたい元P&Gの方が上級職にいらっしゃる会社で、やっぱり流石だなぁ……と(笑)。大半の企業の場合、マーケティングのメソドロジーを体系的に教えている会社はないと思いますね。

西井 ありがとうございます。

津下本さん、続きをお願いします。

「OJT」と「Off-JT」

津下本 企業がポテンシャル採用をしたり、異動で人を受け入れたりした際、どういうスキルを身につけ、心技体を作るべきかが曖昧です。

ですから、この表の三角形の一番下にあるスキルが、パラパラと身についていくような人材育成方法になりがちです。

シーチャウさんが話した、パートナーマネジメントを教えてくれるトレーニングは良いなと思いました。

今はコロナの影響もあり、社員と外部パートナーの垣根が相当低くなっているので、うちの会社も社員6人に対して外注30人くらいで回しています。

業者扱いはせず、どうワンチームになってマネジメントすべきかという話も出ます。

色々な会社と話しますが、そういうふうに要件設計し、能力として高めようとしている会社はすごく少ないと思います。

田岡 OJTを一生懸命やっていると「毎回同じことを話しているな」となるので、Off-JTとして形式化しようとするのだと思います。

OJTを真剣にやらない会社は、Off-JTには移行しないと思います。

半年に一度同じことを話していると、いよいよまとめよう、研修化しようと考えるので、Off-JT化するのだと思います。

山口 それはすごく分かります。

僕が本(『マーケティングの仕事の年収とリアル』)を書いたのは、転職相談を受けて100人くらいに同じことを話しているなと思ったからです。

「この本を読んで」で済ませるために書きました(笑)。

田岡 思いますよね。

ですから、OJTをやり尽くして、Off-JTに移行するのだろうと思います。

西井 僕も起業して8年ほどコンサルを行っていますが、気づけば毎回同じことを言っています。

なぜなら、このスライドにある全体スキームのどこかが欠けていて、バランスが悪くなっていることが多いからです。

ですから結果的に、どの会社に対しても全く同じことを言い続けていることが多いですね。

田岡 だから、西井さんも本(※西井さんの著作はこちら)を書いたのですよね。

西井 そうですね(笑)。

田岡 それも、OJTから形式化したOff-JTということだと思います。

西井 そうですね。

逆に言うと、その会社にとってのマーケティングをちゃんと定義して、ちゃんと教えられる人が、ステージ1の仕事に関して困っている会社にとって必要だということですね。

日本では、そういう会社がほとんどだと思いますが。

アサインの工夫でポテンシャルが引き出せる

リュウ レノボジャパンには、NECパーソナルコンピュータ(※) も入っていると、先ほどお話ししました(Part2 参照)。

▶編集注:NECパーソナルコンピュータ株式会社は、レノボ傘下のNECレノボ・ジャパングループで、NECブランド及びLenovoブランドのパソコンを製造・販売している(Wikipedia参照)

私が今まで働いてきた外資とは全く違い、いわゆるメンバーシップ型(終身雇用を前提とした日本型雇用)です。

最初は営業で、次はいきなりマーケティングに異動というケースもあり、全くトレーニングがなくても作業としての仕事がそこにあるので、皆さん一生懸命覚えます。

例えば、SEO担当をしている方がいて、その方は結構データの分析もできるのですが、ずっとSEOを担当しているので、それしかできないみたいになってしまい、その領域をどんどん深掘りしています。

マーケターが全部を理解する必要はありませんが、得意な領域や分野を組み合わせた専門家にはなれるので、そういうふうにデザインしてあげると、その方のポテンシャルをどんどん引き出せます。

でもそういった強みの部分が分からないと、SEOの分野ばかり強くなってしまいますよね。

ですから、アサインの仕方をきちんとデザインするべきだと思います。

西井 レノボ以外、前職でも同じようなケースはありましたか?

リュウ ありましたね。

私は人間観察が好きで、この人はこれがすごく強いかもしれないと思うポイントがあると、「これじゃなくて、これもできるかも」と、あえて別の分野の仕事を振ってみることもあります。

その方が成長すると、新しいことができるようになります。

それが楽しいので、私の趣味みたいになっていますね(笑)。

西井 僕も、最近頂く相談は、そういう感じです。

人の特性や会社によって社内でのキャリア設計の方法が違うことはありますが、社内での人材育成がうまくいかないという相談を受けます。

今のシーチャウさんの話のように、少し違うスキルをつけてあげるのも大事かもしれないですね。

津下本さん、すみません、続きをお願いします。

課題② 自社のマーケティング人材の能力要件ができていない

津下本 はい、実際に調査をしても、整っていないという会社が多く、これが日本の現状かなと思います。

企業から、マーケターの人材要件の整理に付き合ってほしいという要望をもらいます。

確かにこれは大変で、右側にある、各社ごとの市場理解、チームプレーやマーケティングの手法などを作るだけでも企業は精一杯です。

このスライドの右、経営理念や戦略、自社商品の理解など、各社個別の要件リストを作るだけでも大変なので、まずは右の対応にあたりますが、基本的に備えてほしいビジネスやマーケティングのスキルといった左の情報が前提になければ、右の理解が深まりません。

そういう意味でバランスが悪く、不十分になってしまっていることも多いです。

この課題に対しては、外からのサポートで賄うものと、オンボーディングで、自分たちで作るものを切り分けて整理していくのが重要ではないかと思います。

色々な企業と話していると、これらの情報の輪郭すらない企業が本当に多く、それが問題だと思いますね。

西井 経営者や社長がマーケティング寄りの人だと、こういうことを考えますが、そうではない場合はうまく整理できていないのではと思いました。

課題③ 最新のマーケティングスキルをいかにインプットするか?

津下本 マーケティングは5年経つとスキルが古くなるので、年長者が間違ったことを教えている問題に陥っている企業も多いです。

例えば、10年前だとSEOは、「被リンクを集めて、ページにキーワードを入れる」でしたが、そのトレンドやハックはGoogleによって完全に駆逐されて、やり方が変わっています。

CRMも、データ×メッセージという感じになり、パーソナライズドベースのものになっています。

ですから、企業では運用型で育成プランを作らないといけないのに、古い情報やスキルをインプットしていることも多いと思います。

西井 田岡さん、マーケティングをどう教えるかについて作ったものは、どうやってアップデートしていますか?

専門知識を持つ代理店をコントロールするスキルが重要(田岡さん)

田岡 代理店の専門知識をどう使うかが重要です。

ですから代理店を選ぶ際も、教育や学習機会をもらえることは非常に意識していました。

とはいえ、先ほどのスライドで言うと、左側の専門知識しかない人もたくさんいて、それこそ、彼らは年収が上がらない人たちです(笑)。

西井 そうですね(笑)。

田岡 商品やお客様についての理解がなくて、部分的な専門知識だけを持つ、給料の上がらない人がたくさんいます。

ですから企業側、つまりブランド担当としては、右の知識がある前提で、自分よりもより専門的な知識を持つパートナーである代理店をコントロールするスキルが、実は一番重要なのではないかと思います。

企業側とパートナーそれぞれが持つ情報は非対称ではあるけれど、両方をコントロールできるスキルということです。

西井 比較的社外からサポートを得やすいスキルですね。

田岡 いつまで経っても、専門知識についてはパートナーのほうが詳しいに決まっています。

例えばGoogleのアルゴリズムが変わるとして、それを企業側でキャッチアップし続けるのは現実的ではありません。

だから彼ら外部パートナーの言っていることがロジカルか判断でき、彼ら専門家と議論し意思決定できるスキルのほうが重要かなと思います。

自社商品や自社顧客理解と共に外部パートナーコントロール力をつけ、その上で、最低限の専門知識をつけることが大事だと思いますね。

西井 なるほど、ありがとうございます。

仕事によってアップデートされるもの。スキルだけ見ていると古くなる(リュウ)

西井 シーチャウさん、P&Gでは、20年前からある古典のようなものがずっとあるわけではないですよね。

最新版にアップデートされているのですよね?

リュウ はい、エグゼキューション(実行)のところは、もちろんずっとアップデートしていると思います。

この表で言う右側の部分や、左側の上にあるマインド、キャリア、ビジネススキルなどがある前提で、その下にあるマーケティングスキルはアップデートされていくと思います。

つまり、仕事をしていると自然と分かってくるということです。

例えば、実行している施策が、競合のやり方、市場、世の中の流れやビジネスニーズに合っていなければ、これはやめましょうとなるはずですよね。

そういったアップデートがないまま、マーケティングスキルだけを見ていると、気づけばすごく古い内容をインプットしていることになると思います。

西井 ありがとうございます。

ステージ1は、ちゃんと教育しましょうというということですね。

スライドには、「十分整っていて、効果が出る教育カリキュラム」は全体の8.9%とありますが、僕の肌感覚だと、そこまで多くなく、実際は1、2%ではないかと思います。

逆に、外資のマーケティングがめちゃくちゃ強い会社は、当たり前にできていると思います。

次に、ステージ2です。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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