2. 企業価値の2つの流派とウェルビーイングの関係

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勝ち続ける企業の「勝ちぐせ」、ウィニングカルチャーとは? ICC KYOTO 2021のセッション「ウイニングカルチャーについて語り尽くす」は、そんな企業が結集し、自分たちの組織のカルチャーを紹介します。全6回シリーズ(その2)は、石川 善樹さんによるレクチャー。欧米企業の企業価値にはウェルビーイングが深く関わり、それこそがウィニングカルチャーを決めることを示唆します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 4D
ウイニングカルチャーについて語り尽くす
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

稲垣 裕介
株式会社ユーザベース
代表取締役 Co-CEO

小林 正忠
楽天グループ株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

(モデレーター)

中竹 竜二
株式会社チームボックス
代表取締役

「ウイニングカルチャーについて語り尽くす 」の配信済み記事一覧


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1つ前の記事
1. “勝ちぐせ”を持つ組織が結集、ウィニングカルチャーを語る!

本編

石川 めちゃくちゃ教科書的な話をします。

「企業価値とはそもそも何ぞや」と聞かれた時に、流派が2つあります。

伝統的なアメリカ型のシングル・マテリアリティという派閥と、どちらかというとヨーロッパ型のダブル・マテリアリティという派閥があります。

マテリアリティというのは、「大事なこと」という意味合いです。

アメリカ型のシングル・マテリアリティにおいては、企業価値とは将来キャッシュフローを現在価値に引き戻したものであるという考えで、企業価値=財務価値というものです。

株式市場や債券市場が企業をどう評価するかですね。

将来キャッシュフローを生み出すには、有形資産と無形資産があります。

製造業中心の時代は、有形資産、つまりどれだけ工場を持っていて、どれだけ生産できるか、で決まっていたと思います。

しかし最近ではそれに加えて、無形資産、つまり非財務資本と言われるものが重要になってきました。

ブランド力=社会・地球環境のウェルビーイング貢献度

石川 無形資産とは、従業員がウェルビーイングであるかどうかや、ヤッホーブルーイングは、まさにそうだと思うのですが、競合商品がたくさんある中で選ばれるブランド力です。

ではブランド力がどうやって決まるかと言うと、最近はSDGsの時代で、社会や地球環境のウェルビーイングにどれだけ貢献しているかが重要です。

つまり、シングル・マテリアリティ陣営からすると、将来キャッシュフローが何より大事で、ウェルビーイングはある意味、手段です。

従業員のウェルビーイングなのか、地球環境のウェルビーイングなのかはさておき、手段としてウェルビーイングが大事とされます。

いっぽう、ヨーロッパ型のダブル・マテリアリティの陣営では、何が企業価値かというと、財務価値と社会価値の両方を大事にしており、ダブルというのはこの2つの要素を指しているのです。

シングル陣営とダブル陣営は仲がめちゃくちゃ悪いのですが、なぜかというとダブル・マテリアリティ陣営は、ときにキャッシュフローを犠牲にしてでも社会価値に貢献すべき時があるという考え方をするからです。

今はとにかく地球環境を大事にしよう、そのためにはキャッシュフローを犠牲にしてもいいということです。

社会価値といっても、社会には色々なステークホルダーがいます。

ダブル・マテリアリティの価値は、ステークホルダー価値ともいわれます。

例えばユニクロは、中国・新疆ウイグル自治区での強制労働への関与が指摘され、人権問題を問われています。

米 ユニクロシャツの輸入差し止め ウイグル自治区めぐる問題で(NHK)
仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグルでの人権問題巡り(朝日新聞)

言いたいのは、企業にとっては人権団体もめちゃくちゃ重要なステークホルダーということです。

人権団体にとっての価値は当然、人権です。

環境団体にとっての価値は環境ですし、株主にとっての価値はキャッシュフローです。

各ステークホルダーにとっての価値があまりにも違うので、それを一言で表現するなら、ウェルビーイングとしか言いようがないというのが、現在の到達点です。

つまり、ダブル・マテリアリティ陣営にとって、ウェルビーイングは目的なのです。

企業価値について考える際、シングル陣営は将来キャッシュフロー、ダブル陣営はステークホルダー価値だと考えます。

どちらが正しいという話ではなく、会社のフェイズによって違うと思います。

シングル陣営としての考え方を重視するフェイズもあれば、社会価値を大事にするフェイズもあり、揺れ動くものだと思うのです。

その揺れ動いている状態を、ダイナミック・マテリアリティとも呼ぶのですが、それは一旦置いておきましょう。

シングル陣営の経営者は、ウェルビーイングを手段として将来キャッシュフローを生み出す一方、ダブル陣営の経営者にとってウェルビーイングは目的そのものです。

上場後、もしくは上場前でも投資家は重要ですが、投資家にも派閥があります。

例えば、シングル・マテリアリティ陣営の投資家に、従業員のウェルビーイングを高めることに投資をすると言っても、「それが達成されたとして、どうなる?」と言われるでしょう。

ですから、「従業員のウェルビーイングが悪化すると、生産性が下がり、休職や離職が増えて、キャッシュフローが悪化するので従業員のウェルビーイングに投資すべきです」と説明するべきです。

もしくは、「炭素税が導入されると、年間これだけの費用がかかります。地球環境のウェルビーイングを悪化させないために、サステイナブルな製造工程実現のために投資します」などですね。

つまり、ウェルビーイングの悪化がキャッシュフローにネガティブな影響があるという言い方が好まれると言われています。

逆に、ヨーロッパの会社とか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などステークホルダー価値により寄った、ダブル・マテリアリティ陣営の投資家に対してですが、まず自分の会社にとって、どのようなステークホルダーがいるかを明確にしないといけないと思います。

今やウェルビーイングは経営マター

石川 日本では、「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)という考えがあるように、昔は3つのステークホルダーがいるという時代がありました。

しかし今や、そんなのんきな時代は終わりましたね。

ステークホルダーが多すぎて、六方よし、十方よし、百方よしの時代です(笑)。

ユニクロの例だと人権団体も含め、ステークホルダーごとに、会社としてどのような価値を目指すかについて、KPI化して示す時代になってきていると思います。

ダブル・マテリアリティ陣営の、ステークホルダー価値の実現について最先端を行くのは、日本だと丸井グループですね。

丸井グループの統合報告書には、丸井グループには6つのステークホルダーがいて、それぞれに対して目指していることを明記しています。

共創経営レポート(統合レポート)(丸井グループ)

言いたいのは、ウェルビーイングがすごく大事になってきているということです。

そしてそれは、手段でも目的でもどちらでもいいです。

流れが大きく変わったのは、去年(2020年)11月に豊田章男さん(トヨタ自動車代表取締役社長兼CEO)が、トヨタの新ミッションを発表した時です。これは非常に大きなインパクトがあります。

▶参考:TOYOTA NEWS #102|すべては「幸せの量産」のために トヨタ中間決算 質疑応答 #1|トヨタイムズ (toyotatimes.jp)

昔、トヨタという会社は機織り機の会社でした。

そして自動車の会社になるという大変革を起こしましたが、それと同じくらいの大変革を起こすと、豊田さんはおっしゃいました。

それくらいのインパクトということで、車を量産する会社から幸せを量産する会社へ、つまりウェルビーイングの会社になるのだということでした。

豊田さんは、強い危機感を持っています。

事実、今後は色々な規制がかかって、ヨーロッパやアメリカで車が売れにくくなることが予想されるため、トヨタのビジネスは本当に危ないのです。

ですから今、大急ぎで会社の変革に取り組んでいます。

その象徴としてウェルビーイングを大事にする、と日本の一番手の会社が表明したというのは、めちゃくちゃ大きいことだと思います。

2022年から日本経済新聞社が始めた「日本版Well-being Initiative」というものがあるのですが、このスライドの右側に名前のある企業は全て、ウェルビーイングを企業経営のど真ん中に置いている会社です。

▶参考:日本版Well-being Initiative始動|日本経済新聞社のプレスリリース (PR TIMES)

ひと昔前は、ウェルビーイングは人事マターでしたが、今は経営マターに変わってきています。

従業員のウェルビーイング度が企業価値の指標に

石川 そして、中小企業でも同じような動きがあります。

企業価値とウェルビーイングが密接に結びついています。

商工中金という銀行は全国の中小企業7万社との付き合いがありますが、中小企業は子供や孫に事業承継しているファミリー企業が多いので、長い付き合いをしています。

ですから商工中金からすると、彼らにウイニングカルチャーを持っていてもらわないと困るわけですね。

ウイニングカルチャーを持っているかどうかは、財務諸表を見るだけではもちろん不十分で、重要な非財務指標の一つとして従業員のウェルビーイングがあります。

少なくとも、従業員のウェルビーイングが悪化傾向にある企業は、将来も経営が安定するとは言えないのではないかということです。

ですから商工中金は、経営状況を判断するための重要な非財務情報として、従業員のウェルビーイング度を見ています。

そして今後、会社の格付けに活用していくとも言っています。

これはつまり、従業員のウェルビーイング度によって、貸付金利が変わってくるということです。

大企業も中小零細企業も、ウェルビーイングが、企業価値やウイニングカルチャーを考える上で外せない指標になってきているというのが、今のトレンドです。

僕がしたのはとても教科書的な話ですが、この後、他の3人が面白い話をしてくれると思います(笑)。

僕はつまらない話を、あえて最初にさせて頂きました(笑)。

中竹 非常に多くの方がメモを取っていましたよ、拍手をお願いします。

(会場拍手)

中竹 通常、(石川)善樹さんは雑談から入っていくのですが、今日は教科書的な話で本領発揮でしたね。

では次に、おなじみの「てんちょ」からよろしくお願いします。

(続)

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続きは 3. ヤッホー“てんちょ”井手さん「売上が伸びているときにカルチャー作りに着手しよう」 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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