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2月17日~20日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2020。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。本レポートでは、DAY3(2月20日)の特別プログラム「ICCリテール・ワークショップ」の模様をお届けします。前半のプレゼンテーション企画(リテール・カタパルト)では10社が事業ピッチを行い、後半はグループに分かれて総勢40名超がラウンドテーブルに参加しました。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページのアップデートをご覧ください。
▶ICCサミット FUKUOKA 2020 開催レポートの配信済み記事一覧
「ICCリテール・ワークショップ」とは何か?
ICCリテール・ワークショップは、その名のとおりリテール(小売)をテーマにスタートアップと大手リテール関連企業が一堂に会し議論を行う場として、1年前のICCサミット FUKUOKA 2019から始まった企画だ。
初回の「ICCリテール・ワークショップ Supported by JR九州 博多シティ」では、最終日となるDAY3の全プログラム終了後に約60名の参加者がJR博多駅の駅ビル施設「博多シティ」に集結し、3時間半に渡る濃密なプログラムが実施された。
その半年後に京都で開催された「ICCリテール・ラウンドテーブル」は、その進化系だ。4会場で別々のリテール系セッションに登壇したメンバーがその参加者とともに一つの会場に集結し、各セッションの内容をインプットとして、リテールにおける異業種間の協業がディスカッションされた。
そして今回。同様に最終日の特別企画としてセッティングされた「ICCリテール・ワークショップ」だが、2つの点でこれまでとは違った形態で開催された。
DAY3のB会場は「全て」リテール関連セッション
一つは、ワークショップに至るまでのインプットの一本化である。
ICCサミット FUKUOKA 2020 プログラム(DAY3)
赤枠(B会場)の下段「Session 13」の時間帯に配置されたのが本セッションだが、午前中の「Session 11, 12」の2セッションにご注目いただきたい。いずれもリテール系のセッションであることが分かるだろう。前回はSession 11の時間帯に4会場に分散していたリテール系のセッションを一つの会場に集約させることで、それらを連続して聴講することが可能になった。
ラウンドテーブルにあたっての共通のインプット、言わば“共通言語”を醸成するのがその狙いだ。
Session 11Bでは、丸井の青野 真博さん、中川政七商店の緒方 恵さん、オルビスの小林 琢磨さん、Spartyの深山 陽介さん、FABRIC TOKYOの森 雄一郎さん、JR西日本SC開発の舟本 恵さんが登壇し、SPA(peciality store retailer of private label apparel:製造小売)やD2C(direct to consumer)といったリテール・ビジネスモデルの現状と課題が議論された。
オンラインの販売チャネルの構築を目指す企業が、そのKPIとして「EC化率」を挙げることの落とし穴や、その反対に“体験価値の提供”を主目的としたリアル店舗を置く企業が、その売上貢献度をどのような指標で測るべきかなど、ネットとリアルの双方からの知見が交わされた。また、製造・流通・販売を一社で垂直統合するメリット・デメリットなど、各社のオフレコトークも交えながら生々しい議論が繰り広げられた。
▶D2Cは「ベネフィット」「世界観」「背景」で“心を動かす”体験をつくる(XD | クロスディー)
Session 12B「Amazonに負けるな!リテールはどのように生き残っていくのか?」
Session 12Bでは、丸井の青野 真博さんに加え、三越伊勢丹(当時)の浦田 努さん、アスクルの輿水 宏哲さん、パルコ/パルコデジタルマーケティングの林 直孝さん、嘉穂無線ホールディングス/グッディの柳瀬 隆志さん、サツドラホールディングスの富山 浩樹さんが登壇し、リテール業界のデジタル化における課題が議論された。
世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートがデジタル化を推し進める背景に加え、ECの覇者たるAmazonがホールフーズを買収しリアル店舗を持つ意味、そして百貨店における「接客価値」とは何かなどが熱く議論された。
「リテール・カタパルト」に集うスタートアップ10社
このように「リテールづくし」」となったDAY3のB会場だが、こうした事前のインプットに加え、リテール・ワークショップ内におけるインプットにも工夫がなされた。
前述のプログラムに記載のとおり、本セッションの前半パートには「リテール・カタパルト」と題したプレゼンテーション企画が用意された。リテール・ワークショップの参加者はまず、リテール系スタートアップのプレゼンテーションを聞き、それを共通のインプットとして、参加企業とのコラボレーションの可能性をディスカッションするのが今回のICCリテール・ワークショップだ。
「リテール・カタパルト」では、総勢10名のプレゼンターが各8分間の事業ピッチを披露した。80分間ノンストップで行われたその模様を、ダイジェストでお届けしたい。
<D2C関連ビジネス>
① 三星グループ(MITSUBOSHI 1887)
1887年から続く老舗の繊維メーカー「三星グループ」。その取引先は国内に留まらず、エルメネジルド・ゼニアやLVMH、KERINGグループのブランドにも、三星の生地は使用されている。
BtoB事業の他、BtoCのテキスタイルブランド「MITSUBOSHI 1887」も展開する。達成率800%超(合計支援額800万円超)を記録した23時間を快適にするメリノTシャツのクラウドファンディングは記憶に新しい。
意外なことに、クラウドファンディングでは「割引販売」よりも「工場見学ツアーつき」のリターンに多くの支援が集まったそうだ。そこで岩田さんは、「最も体験価値が高いのはモノ×コトの組み合わせ。小売は単なるリテールではなく『コネクティングポイント』になる」と考えた。
前日のCRAFTED NIGHTでのディスカッションを元に、「湘南みやじ豚」購入者への豚舎見学&BBQツアーや、京都丹後のネクタイブランド「KUSKA」購入者への手織工場見学&海の幸ツアー、そして三星の人気Tシャツやストール購入者への大迫力の機械式織機見学&木曽川の鮎を楽しむツアーを提案した。
②Next Branders(Foo Tokyo)
株式会社Next Branders 代表取締役社長 桑原 真明さん
Next Brandersが手掛ける「Foo Tokyo」は、高級ルームウェア・パジャマを扱うライフスタイルブランドだ。かつてメリルリンチ日本証券のM&Aバンカーだった桑原さんは、激務の中での唯一のやすらぎだった「睡眠時間」に着目し、睡眠という最高のぜいたくのためのブランド「Foo Tokyo」を設立した。
Foo Tokyoが大切にするのは、生産背景・商流へのこだわり、素材ディテールの創意工夫、そしてデザインや美意識の哲学だ。桑原さん自ら専門学校へ通いデザインを学び、そして縫製工場に足を運び続け、素材から触り心地、着心地までのすべてをディテールまで追求する。
ルームウェアで3万円から、ガウンで15万円ほどの高価格帯で勝負するFoo Tokyoだが、「ギフト」としての購入が大部分を占めているという。桑原さんは「大切な人へのギフトになるかどうか、そして自分自身へのギフトになるかどうかを常に考えている」と話す。
一方、リアル店舗を持たないFoo Tokyoには「どこで生地を触れるのか」「どこで買えるのか」といった問合せが多く届く。桑原さんはリテール・ワークショップの参加者に向けて、リアル店舗での顧客体験の共創、Foo Tokyoブランドをベースとしたオリジナル商品開発などのコラボレーションを呼びかけた。
③Sparty(MEDULLA)
大手広告代理店の博報堂出身の深山さんが立ち上げたSpartyは、パーソナライズケアケアブランド「MEDULLA」を展開する“ビューティーテック”カンパニーだ。MEDULLAでは、9つの質問に答えるだけで3万通りの処方の中から自分にあったシャンプーを見つけることができる。
深山さんは、消費者の曖昧な悩みに直接的な答えを出すのではなく、悩みに寄り添い、消費者が選ぶ過程を楽しみながらプロダクトへとアプローチするような導線設計が大事だとし、自社のコアコンピタンスを「パーソナライズ×思考停止時代のUX」と語る。
Spartyでは上記のオンライン処方サービスに加え、全国の提携サロンでのリアルなヘアケア体験も提供している。
今回のワークショップではリアル店舗における体験設計・フロアづくりや、そこで得られるデータ活用を一緒に取り組むコラボレーターと見つけたいと呼びかけた。
④FABRIC TOKYO(STAMP)
株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役社長 森 雄一郎さん
オーダーメイドのD2Cビジネスウェア・ブランド「FABRIC TOKYO」からは、昨年9月にスタートした新ブランド「STAMP」が紹介された。
STAMPは、無人型店舗の3Dスキャナを活用してオーダーメイドのアパレル商品を購入できる、完全キャッシュレスのD2Cサービスだ。新宿マルイの店舗は2月現在1,200人待ちという非常に好評なブランドだ。
そんなFABRIC TOKYOが今、こうしたD2Cモデルを超えて取り組むのは「RaaS(Retail as a Service)モデル」の小売形態の構築だ。ハードウェア販売とサブスクリプションで確固たる収益基盤を生み出しているAppleや、同様のモデルでエアロバイクフィットネスを展開するPelotonを目指す。
昨年9月に開始した月額398円の洋服保証サービス「FABRIC TOKYO 100(Hundred)」の他、国内縫製工場のDX化を支援するスマートファクトリー事業、そして全店舗で回収した廃棄衣類のアップサイクルにより新商品をつくるサーキュラー・エコノミー構想を発表した。
<飲食関連ビジネス>
⑤アスラボ
アスラボが展開するのは、ITで飲食店の開業・経営を支援する「料理人Empowerment Platform」だ。料理人が起業するための資金サポートにはじまり、実店舗(シェアリングキッチン)のマッチング、経営・マーケティングITツールの提供などを通じて、飲食店経営の継続をサポートする。
ピッチでは、独立・開業を目指す料理人と駅ビル、ホテル、スーパーマーケットなどを運営する事業会社のマッチング成功事例が紹介された。
片岡さんは、インバウンドからの日本の食文化への関心の高さを示した上で、「食は日本の大切な資産。もっと価値のある食体験を皆さんと作っていきたい」と来場者へのコラボレーションを呼びかけた。
⑥favy
同じく飲食業界からは、平均経常利益率2%、3年で7割の店舗が入れ替わるといわれるこの業界において「飲食店が簡単に潰れない世界」をミッションに掲げるスタートアップ、favyが登壇した。
メディア事業や飲食店向けのHP作成サービスなど複数事業を展開する同社だが、今回のワークショップにあわせて紹介したのは、飲食店のサブスクリプション導入を支援する「favyサブスクシステム」だ。
定額飲み放題、会員制店舗、割引定期券など実際に導入可能なサブスク形態とあわせて、顧客の来店頻度アップによるクロスセル事例などが紹介された。
その一方で、「一人が食べられる量・飲める量は一定。そのため(大幅な)客単価上昇は難しい」と高梨さんは語る。そこで、商業施設にテナントを構えるサブスク飲食店から施設内の他店舗への「送客」でマネタイズできないだろうか? というのが今回の高梨さんの提案だ。
高梨さんは、「飲食店のマネタイズをさらに広げていきたい。プロモーションのためのリソースや場所を提供いただける企業さんとぜひディスカッションしたい」と参加企業への呼びかけを行った。
⑦Mellow
ICC FUKUOKA 2018 スタートアップ・カタパルト優勝のMellowからは、2018年11月より同社代表を務める森口さんが登壇した。
▶Mellow「TLUNCH」はフードトラックと空きスペースをマッチングし、ランチ難民を救う(ICC FUKUOKA 2018)
同社が展開するのは、800を超えるフードモビリティ(フードトラック)とオフィスビルや大学などの空きスペースをマッチングするモビリティビジネス・プラットフォームだ。
サービス利用料はゼロ。フードトラックの売上の15%をMellowが受け取り、5%がスペースオーナーに還元される、“一心同体”のレベニューシェアモデルを採用する。
Mellowは今年1月にトヨタファイナンシャルサービスとPKSHA SPARX アルゴリズム1号から資金調達を実施し、これまで蓄積したモビリティビジネスのノウハウを武器にした開業支援、フードトラックの量産・リース体制の確立を通じた、ショップモビリティ開業のサブスクリプション化を目指す。
今回のピッチで森口さんが提案したのは「ショッピングセンターの活用」だ。全国に3,000以上あるショッピングセンターでは1店舗あたりの売り場面積は増加傾向にあり、資金力のある企業しか参入できない現状がある。そこに通常開業に比べて圧倒的に低い初期コスト、ランニングコストのショップモビリティを展開できれば、ショッピングセンターに新たな価値を提供することが可能だ。
森口さんは「ただし課題もある。ショップモビリティ参入への既存入居テナントの反対をどのように解決するのか、ぜひこの後のワークショップでディスカッションさせてほしい」と語った。
<アート・文化・コミュニティ関連ビジネス>
⑧ 電通(THE KYOTO)
スワートアップ企業に交じり、アート・文化・コミュニティ関連ビジネスの枠で登壇したのは、電通京都支社を拠点に京都の魅力を国内外に伝える各務さん。日本の伝統産業の市場規模は過去30年間で5分の1程度まで縮小し、その文化・伝統を維持することの難しさに直面している。
2012年、各務さんは京都の伝統工芸6社の若旦那衆衆と日本の伝統的なものづくりを世界に発信するプロジェクト「GO ON(ゴオン)」を結成し、伝統工芸品ブランドの創設、観光事業、エンタメパーク事業、神社仏閣を舞台にした「能」の興行など様々な取り組みを行ってきた。
こうした活動をライフワークとして行ってきた各務さんが次にチャレンジするのは、京都の文化・アートを愛好する10万人のグローバルコミュニティ形成を目指す「THE KYOTO」だ。
THE KYOTOでは、「知る」「出会う」「育てる」の三つを柱とした事業展開により、現在の京都の伝統工芸市場の2分の1にあたる1,000億円の市場創造を目指すとしている。
正式ローンチはこれからのため詳細は割愛するが、各務さんはこのあとのワークショップに向けて、THE KYOTOをプラットフォームとして活用したリテール各社とのコラボレーションを呼びかけた。
⑨ アドレス(ADDress)
DAY1のスタートアップ・カタパルトにも登壇した佐別当さんが手掛けるのは、月額4万円で全国住み放題の多拠点Co-Livingサービス「ADDress」だ。
ADDressでは、空き家を有効活用したセカンドハウスの提供を通じて、都市部と地方の“多拠点生活”を提案する。佐別当さんはこれらの活動を通じて、10年後には2,000万件まで増加するとされる日本各地の空き家問題や、地方の人口減少の解決を目指すとしている。
住まいに関わるプラットフォームとして、さまざまな業態とのコラボレーションが可能だ。佐別当さんによると、ADDressでは良質な家具、家電、生活用品をセットで提供しているが、それらを利用者が気に入り実際に購入につながるケースもあるそうだ。
その他、一戸建ての1階をショップに、2階をADDressの住居にした「分散型デパート」の構想や、実際に生活体験ができる「D2Cショールーム」、無人の駅舎をリノベーションした「ADDress付き駅舎」などのアイデアが語られた。
⑩ BnA HOTEL
BnA Co., Ltd. Co-Founder & CEO 田澤 悠さん
ラストプレゼンターを務めたのは、宿泊型のアート施設「BnA HOTEL」を手掛けるBnAの田澤さん。
2016年に東京高円寺に第一号となるBnA HOTEL Koenjiをスタート。その後、秋葉原のBnA Studio、京都のBnA Alter Museumと展開し、2020年には東京日本橋に4拠点目となるBnA_WALLの開業を予定する。
一般的なアートホテルとは違い、部屋ごとに異なるアーティストが設計・施工段階からデザインしているのがBnAの特徴だ。利用者が支払う宿泊費用の一部は、その部屋を手掛けたアーティストにレベニューシェアとして還元され、アーティストの次なる活動の原資となる。
そんなBnAがアートホテルと同様に力を入れるのが「パブリックアート」だ。その一つとして杉並区や地元商店街と手掛けるMural City Project Koenjiでは、街中にミューラル(巨大壁画)を描くことで、それを観光資源として高円寺を新たな観光スポットとしてプロデュースする。
BnAが目指すのは、アートホテルを増やすことでもなく、街中をミューラルで満たすことでもない。彼らが目指すのは、アーティストと企業のコラボレーションや街づくりを通じて、アーティストの生き様や活動、クリエイティビティが企業や街のブランディングに直接つながるwin-winな関係の構築だ。
◆ ◆ ◆
以上、ライフスタイル系D2Cブランドから飲食ビジネス、文化・アートまで、多岐にわたる10社のプレゼンテーションが披露された。
コラボレーションが目的の「リテール・カタパルト」では審査員による投票や順位付けは行われない。その代わり、午前中のセッションの登壇者を中心とした「サポーター」の方々に、10社のプレゼンテーションへの感想が求められた。
司会からの指名を受けてマイクを持ったのは、Session 11B「SPA/D2Cの『次』は何か?」でモデレーターを務めたJR西日本SC開発の舟本さん。
JR西日本SC開発株式会社 カンパニー統括本部 開発戦略室 室長 舟本 恵さん
舟本さん「皆さんのプレゼンテーションを聞いて、やはり単純にモノを売る時代は終わったなと改めて実感しました。岩田さんのいうとおり、『コトつきのモノ』『コトの先にあるモノ』の時代になるのだなと。そうした商品の販売でぜひ皆さまとご一緒できればと思いました。
また私どもに関して言うと、今後より一層、顧客とダイレクトにつながってゆかなければならないなと考えています。私は大阪駅のルクアというショッピングセンターを担当しているのですが、同じ商品を買うにしても『他の百貨店ではなく、あえてルクアで買いたい』と言ってもらえるようなコミュニティ形成が必要だと感じました。このあとのラウンドテーブルでは、そうした点も議論できればと思います」
続いて、オルビスの小林さん。
小林さん「本日はサポーターとしてこちら側に座らせていただきましたが、どの方も未来に向けた素晴らしいストーリーを創られていて、とても勉強になりました。
特にSparty深山さんのパーソナライズ×思考停止時代のUXの提案というのは、本当にその通りだなと納得しました。本題からは逸れますが、FABRIC TOKYOの森さんはよくこれだけ新しいことを次から次へと仕掛けているなと、その組織論についてぜひディスカッションさせていただきたいです。
我々はリテーラーではなくメーカーではありますが、全国に111店舗(2019年12月31日現在)を持っているので、皆さんとも機会があれば何かご一緒にできればいいなと思いました。どうもありがとうございました」
ラウンドテーブル開始!90分間の真剣ディスカッション
そしていよいよ、後半のラウンドテーブル・パートが始まった。前半のプレゼンターがホストとなり、会場後方に設営されたテーブルで議論が交わされた。
各ホストは担当テーブルに固定され、参加者は90分間の時間内で自由にテーブルを移動し、ディスカッションを行うことができる。
例えば、Mellowの森口さんがホストを務めるテーブルには、フードトラックを誘致可能な商業施設を持つ方々が、favyの高梨さんがホストを務めるテーブルには、自社の飲食サービスや施設内飲食店への「定額制」導入を検討する方々が集まる、といった具合だ。
Mellow森口さんのテーブルは、フードトラック・ビジネスについて和やかな議論が進む
森口さんがテーブルホストを務めるその裏では、福岡を拠点に活動するMellowの方が、favy高梨さんのテーブルでディスカッションに参戦。対する高梨さんは、横並びでスライド資料を説明する商談さながらのスタイルだ。各社からは、このリテール・ワークショップで新しいコラボレーションを生み出すのだという気合を感じる。
こちらのテーブルではどんなことが議論されているのだろうか?
Sparty 深山さんのテーブルでは、ECプラットフォームとリアル店舗の在り方がテーマに
深山さん「ECプラットフォームのBASEは、年商数百万円くらいの小さなブランドもありますが、それらが集まることで年間のGMV(流通総額)は100億円を超えてきていますよね。これからのリテールは、いかにそうしたビジネスモデルに転換できるかが肝になってくるのかなと思います。
その一方、僕はリアル店舗の価値もどんどん高まると考えています。ただし意識すべきなのは、リアル店舗を直接のマネタイズポイントとするモデルは、すでに時代にあっていないということです」
その他のテーブルも、ホストのプレゼンターを中心に活発な議論が交わされていた。
スマホを指差しながら何やら熱弁するFABRIC TOKYO 森さん
そんな中、常に満員御礼の盛況だったのは三星グループ 岩田さんのテーブルだ。丸井の青野さん、JR西日本SC開発の舟本さんも交えて、リテールにおける「地域性」がディスカッションされていた。
岩田さん「三星は岐阜県の羽島に本社があるのですが、『岐阜から来ました』と言うと愛知の方とかは『えっ、岐阜なんですね!』とすごく親近感をもってくれます。“応援したい”と思ってくれるんですよね。ですから、例えば百貨店の物産展は『北海道』や『九州』しか成り立たないと言われますが、この“応援したい”という部分に注目すれば、実は他の地域の物産展も盛り上げることができるのではないでしょうか」
舟本さん「おっしゃるとおり、購買行動の源泉は“応援”になりつつありますね。岐阜を応援したいからその商品に“投票する”みたいな感覚の購買様式が増えている気がします。おそらく、リテールがグローバルになればなるほど、地域性を伴った応援が増えてくるでしょうね」
岩田さん「はい。さらに言うと、応援は伝わるんですよね。その時は買ってくれなくても、どこかで他の人に紹介してくれるかもしれません。それをどれくらい設計、可視化できるかが面白いと思っています」
▶「体験」と「地域性」で伝わる、モノづくりとブランドの価値〜CRAFTED NIGHT powered by LEXUS【ICC FUKUOKA 2020レポート】
こうして、途中テーブルメンバーの入れ替えもありながら、あっという間に90分間のディスカッションが終了した。
リテール業界には「売上以外の指標」が求められている
最後に、今回のICCリテール・ワークショップの感想を、その“手応え”とともに発表いただいた。終始議論の絶えなかった岩田さんのテーブルでは?
岩田さん「こちらのテーブルでは、東京・大阪・九州と各地域で展開する皆さまとお話しでき、本当に素晴らしい機会になりました。
議論として挙がったのは、商業施設におけるポップアップストアや催事は『売上』を KPI としがちですが、そうするとどうしても短期的な視点になってしまい、施設側と販売側の情報共有も進まないだろうという点です。
むしろ、催事などを通じて『お客さんとどれくらいコネクトできたのか』を互いに共有する取り組みが大事だという話が出ました」
続いて、パルコデジタルマーケティング 取締役を兼任するパルコの林さん。
株式会社パルコ 執行役 デジタル推進部・CRM推進部担当 林 直孝さん
林さん「今日は朝一のD2Cのセッションに始まりずっとこの会場でリテール関係のセッションに出席し、色々な話が自分の中で繋がるのを感じました。
岩田さんもおっしゃったように、これからのショッピングセンターは『売上』を追求するだけではなく、メディア化してどれだけお客さんをコネクトできるか、出店するテナントさんの価値をどれだけ高められるかが、その価値になってくるのかなと思いました」
最後は、第1回のICCリテール・ワークショップでホストを務めたJR九州の小池さん。
九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部 まち創造担当部長 小池 洋輝さん
小池さん「昨年の福岡からちょうど1年となりますが、前半のプレゼンテーションを聞いていて半年や1年間でこれだけ進化するのかと、そのスピード感と圧倒的な視座の高さに衝撃を受けました。ワクワクする反面、我々のようなレガシーな会社もこのままではいられないなと危機感も改めて感じました。
どのテーブルもそうだったと思いますが、ここからどのような事業を生み出すことができるのか、色々な可能性を思考停止せずに考えていかなければなりません。今日この機会で終わらせず、一つでもICCのコンセプトである『Co-Creation』をしっかりと形にすることが大事かなと思います。本日は本当にありがとうございました !」
◆ ◆ ◆
セッション終了後、会場で談笑を続ける森さんにも本日の感想を伺った。
FABRIC TOKYO 森さん「ICCリテール・ワークショップは初回から参加させていただいていますが、毎回進化を感じるというか、ディスカッションのレベルが一段も二段も上がったなという印象があります。やはり継続が大事かと思いますので、2年、3年とこのワークショップが続くことで、さらに新しい産業やビジネスが生まれてくるなと思います。自分もその一角になれればなと思います」
今回のICCサミットが初参加となった、三越伊勢丹(当時)の浦田さんにも率直な感想を伺った。
三越伊勢丹(当時) 浦田さん「今日1日、リテールという共通テーマのもと3つのセッションに参加しましたが、我々のような俗に言うレガシーな大企業とスタートアップの組み合わせに、これまでなかった現実感が出てきたなと身を持って感じました。
この分野では大手は似たような大手と組むとことが多かったのですが、こうした関係性からお互いのリソースを出し合ってイノベーションを起こしていくほうが、絶対に面白いなと感じます。ですので、本日直接お話しできる場を設けていただけて本当にありがたかったなと、意義の深いラウンドテーブルだったなと思います。
一方で、客観的に見て『コラボできたら面白いな』という話と、それを実現する部分にはまだ距離があるのも事実です。今日のディスカッションをスタート地点として、お互いに知恵を出しながら形にしてゆく必要があるかなと思います」
次回ICCでは「完全オフレコセッション」でお届け!
ICCサミット KYOTO 2020では、経営者がどのように市場動向を見ているのか? どのような戦略を考えているのか?を議論する“次の一手”シリーズの一つとして、完全オフレコセッション「リテール・ビジネスの次の一手は?」の開催を予定している。
これからのリテールビジネスの主軸は、はたしてECなのか? リアル店舗なのか? はたまたOMO(Online Merges with Offline)なのか? パネルディスカッション形式のセッションながら、最前列にはリングサイド席(質問席)が設けられ、ラウンドテーブルさながらの活発な議論が期待される。
引き続き、ICCサミットの“リテール・コミュニティ”が生み出すコンテンツ、そして新たなビジネスににご注目いただきたい。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成
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