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今を生きる自分は、ものづくりで社会に何ができるのか? 8人の決意を聞いたクラフテッド・カタパルト

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2月13日~16日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、日本各地から集まった8名が自分のものづくりを語り、ふく成の平尾有希さんが優勝を飾った「クラフテッド・カタパルト」の模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回400名以上が登壇し、総勢1,000名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください


今回のクラフテッド・カタパルトに登壇するのは8名。そのうち5名がフード&ドリンクや、デザイン&イノベーションのICCアワードに参加している。カタパルトの間にサンプルが配布されたりもするが、すでにアワード会場でプロダクトに触れていたり、登壇者とコミュニケーション済みの審査員もいる。

アワードブースの運営で話し続けて疲れていたり、いよいよ迫ったカタパルト本番の雰囲気に、気圧されている登壇者もいる。カメラを向けると皆、観念したような笑顔を向けてくれる。

日々、自分の場所でものづくりに向きあい、プロダクトで語ろうとしている人たちだが、ICCサミットの間は言葉で語ることが多くなる。そして我々は完成されたプロダクトから想像もできないような、驚くようなストーリーを聞くことになる。

もしかするとそんな背景など語りたくはなく、プロダクトやサービスの完成度で顧客を十分満足させることをゴールにしているかもしれない。しかしプレゼンの練習にオフィスを訪れた彼らの、本人は謙遜するような「自分の話」がプレゼンに盛り込まれると、プロダクトは大きく変化して見えてくる。

登壇者たちのストーリー

たとえば伊東株式会社の伊東 優さん。日本酒需要の低下から、2000年に製造免許を返上していたにもかかわらず、歴史ある清酒「敷嶋」を復活させたきっかけは、祖父の葬式の席で飲んだ「敷嶋」があまりに美味しかったからだそうだ。

井上寅雄農園の井上 隆太朗さんは、ももなどの果樹農園の3代目。継がないだろうという祖父の予想を覆して、観光地の少ない地元のためにいちご狩り園を作り、夏場のショートケーキのいちごがアメリカ産であることに目をつけ、日本産にリプレイスすべく驚くほどの行動量で挑戦している。

夏にも生産できるイチゴ作りと品種開発で、食料自給率の向上に貢献する「井上寅雄農園」(ICC FUKUOKA 2023)

飛驒産業の岡田 明子さんが語った、縄文時代から続く飛騨の木工集団「飛騨の匠」の話、そして事業を継承してから、1年半以上かけて作り上げたという「匠の心と技をもって 飛騨を木工の聖地とする」という企業理念は、制作する家具が神秘的に見えてくるほど唯一無二の世界を描いた。

匠の心と技で、飛騨の木工産業の次の100年を目指す「飛騨産業」(ICC FUKUOKA 2023)

江戸時代から続く梨の直売農園をいちごの観光農園に変えて営むおさぜん農園の長村 善和さんは、

いちごに魅了されるあまり、コロナ禍でビル屋上に出張いちご狩り農園まで実施。輸出だけでなく、本当に美味しい日本のいちごの魅力を伝えるために、海外でも観光農園の開園を計画している。

聞く人を笑顔にするような出で立ちのヨダファームの功刀 隆行さんは、JA就業時に出会った新鮮なトマトの味に感動して就農。味はA品でも見た目が規格外品であると肥料にされてしまうことを知り、そんな世界を終わりにすべきことを、ワクワクするような未来図も添えて訴えた。

規格外トマトの課題解決から、農家が自立できるビジネスモデル作りに挑戦する「ヨダファーム」(ICC FUKUOKA 2023)

優勝したふく成の平尾 有希さんは、漁業の家業に反発した過去、死を覚悟した闘病、父親の名前をつけた会社の設立から、自分の子ども世代に受け継ぐ漁業を語った。今を生きる自分ができることに向き合うストーリーは、経営者でなくても聞く人すべての心を動かしたに違いない。

養殖xテクノロジーで、こどもたちの未来に持続可能な水産業をつなぐ「ふく成」(ICC FUKUOKA 2023)

増田桐箱店の藤井 博文さんは、高い技術で手作りかつ量産できる桐箱を、梱包の箱から主役の商品に作り変えた。それはニューヨーク近代美術館でも販売されるまでに至っている。受注生産に振り回される「待ち工場」であることへの怒りは、自発的にものづくりを行う「町工場」への変身を促した。

中身ありきの脇役から主役へ。最上級の技術と企画で桐箱の可能性を広げる「増田桐箱店」(ICC FUKUOKA 2023)

大好きなイタリアがヨーロッパ一の米どころだと知り、そこで日本酒を造ると決めたLIBROMの柳生 光人さんは、業界に入るまで日本酒を飲んだことがなかったそうだ。しかし酒造りを学び、志を共にする同級生の仲間たちと自由な発想で酒造りを続けると、生産が追いつかないほどの人気になった。夢を掲げて8年、予定は遅れたが2024年に移住を予定し、夢の実現に挑む。

当日の中継録画では、上記のプレゼンを全編見ることができる。

【速報】父から受け継いだ育てる漁業で、こどもたちの未来に食をつなぐ「Firesh®」(ふく成)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)

「自社のビジョンを書き直そうかと思ったほど」

このカタパルトは審査員と登壇者の距離が近いのが特徴で、審査員たちはプレゼンを聞きながら、まるで自分のことのように笑い、義憤に駆られ、涙して、心からの応援を送った。そんなコメントの一部を紹介しよう。

GRA岩佐 大輝さん「いちごがクラフテッド・カタパルトに2社も出場されて、それだけで感動しています。みなさんのプレゼンを聞いて思ったのが、やっぱり経営者やリーダーは、想いや志を伝え続けなきゃダメだということです。

志や想いをそれで高めて、プロダクトやサービスになっていき、それが社会を良くするという、そういう順番なんだと改めて勉強になりました。

3~4年前に(ICC代表の小林)雅さんに、ピッチや登壇を控えたいと言ったのですが、私が完全に間違っていたというのを今日改めて思いました。やはりどんどん前に出て、想いを語り続けるのがリーダーだと。そんな勇気を逆に皆さんからもらった感動の時間でした」

あさい農園 浅井 雄一郎さん「ICCは大きな発信力があります。私は以前登壇して優勝はできなかったのですが、2位でもいろんな方からお話をいただきました。

今回私と同じような農業関係の方もいらっしゃって、そういう発信が世の中を変えていく最初のきっかけになるのではと思いましたし、皆さん歴史のある企業を背負い、社会が変化していく中で、自分が今何をするべきなのかを的確に理解されて、行動に移されてる方ばかりだと非常に感動しました」

旭酒造 櫻井 一宏さん「毎回お酒が出るようになって、本当に嬉しい限りです。農業も、うちは米を買ってきますので、どんどん高齢化が進んで減っていきます。おそらく今日出ていただいた、どの業界も同じ課題があります。そこをちゃんとつなげていくために、いろんな方たちが一生懸命ビジネスとして引き継いでいく想いを強く感じまして、すごく勉強になりましたし、刺激になりました」

錦城護謨 太田 泰造さん「自分たちがやってることを外だけでなく、働いてくれているメンバー、関わってくれているメンバーに伝えることが何よりも大事やなということを、僕はクラフテッドに出たときに思いました。

登壇は、改めて自分の想いや自分自身とすごく向き合える貴重な機会だったので、今回は、皆さんにとって、これからどう成長していくのか大きなスタートになるんじゃないかと思っています。皆さんのプロダクトをぜひ食べたり買ったりしてみたいですし、これからも一緒に成長していけたら」

三星グループ 岩田 真吾さんふく成さんのプレゼンに感動しました。僕はアトツギという文脈もあるので、過去から引き継いできたものをどういうふうに未来に伝えていくのか意識していたつもりですが、先ほどのビジョンを見せていただいて、自社のビジョンももう1回書き直そうかなと思うぐらい感動しました」

重要性を増す作り手のストーリー

ナビゲーターを務めたICC小林 雅は、プレゼンの開始前にプレゼンター全員にこう伝えた。

「普通じゃない、素晴らしいものを作っているけれどまだ世の中に広く知られていないのは、社会の損失。思いの丈をしっかり伝えて、自らの社会的な責任を果たして、自分の人生や家族、社員の人生を変えると思って、7分間頑張ってください!」

その言葉の通りに、全力でプレゼンし、想いを伝えた8人は清々しい表情をしていて、審査員のコメントを笑顔で聞いた。平尾さんの優勝が発表されると、すでに旧知の間柄のように、頑張っている仲間を称えるように平尾さんを笑顔で祝福した。

【速報】父から受け継いだ育てる漁業で、こどもたちの未来に食をつなぐ「Firesh®」(ふく成)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)

平尾さん「プレゼン中は緊張から、感極まって泣いてしまいまして失礼しました。

私は主人のおかげで今、生きていられます。

父と母と祖父と祖母のお陰で、この未来につながる食品を作ることができています。

このことをまだ知らない方がいると、小林さんからも教えていただきました。

知らない方が多すぎますので、それをどんどん伝えていって未来につなげられる食品にしたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。ありがとうございました!」

養殖xテクノロジーで、こどもたちの未来に持続可能な水産業をつなぐ「ふく成」(ICC FUKUOKA 2023)

再び会場は感動に包まれ、壇上の新たな仲間たちを歓迎するように大きな拍手を送った。続くクラフテッド・ラウンドテーブルは、この興奮と感動そのままに議論が続き、それを証明するように、今回のセッション評価アンケートで満足度1位となった。

クラフテッド・ラウンドテーブルで議論されたテーマ

プロダクトに自信があるからこそ想いや価値を伝えたいし、一人でも多くの人に手に取ってもらいたい。ラウンドテーブルで挙げられたディスカッションテーマは、ここに集まる経営者たちの永遠のテーマともいえて、半年ごとに、飽きることなく議論されているものだ。

クラフテッド・カタパルトやフード&ドリンクアワードで如実になっているように、回を増すごとにプロダクトには作り手のストーリーが必須になってきている。どんなモチベーションがあって、どれだけの想いを背負い、どれだけ真剣に向き合って、本気で伝えようとしているかが問われている。

シンプルに言えば、自分はどんな人で、人生をかけて何を作り、社会に対して何をしたいのか。彼らは伝達のプロではないが、高い水準のものづくりを体現している人たちで、自分を語ればそれが何より説得力のあるストーリーになる。それが人の心を動かす。

伝えなければ、どんなにいいものづくりをしていても届かないし、他のものと同じにしか見えない。知らせなければ状況は変わらない。自分の人生をかけたものづくりを未来へ残したいなら、何を臆する必要があるだろうか。クラフテッド・カタパルトは、そんな人たちの舞台になれればと考えている。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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