ICCサミット前の恒例イベント「カタパルト必勝ワークショップ&公開リハーサル」。2024年7月22日に、登壇を控えた17名のプレゼンターたちと、彼らのプレゼンをさらに磨くメンターたちがICCオフィスに集結し、ワークショップと公開リハーサルを行いました。カタパルト入賞経験者4名が自身のプレゼンの作り方を明かすワークショップと、5名のメンターが一人ひとりのプレゼンに対してフィードバック。どのような内容だったのかをお伝えします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
入賞者たちがプレゼンのコツを伝授するワークショップ
猛暑の7月22日、東海道新幹線のトラブルにより会場に来られない人が出るなか、恒例の「カタパルト必勝ワークショップ&公開リハーサル」が開催された。前半のワークショップは、優勝プレゼンターたちから学ぶ座学で、後半の公開リハーサルは、本番さながらに7分間プレゼンを行い、メンターたちからのフィードバックを受けた。
ワークショップの講師1人目はケミカンの清水 俊博さん。さまざまな産業に用いられる化学物質の情報のデータ化という決して派手さはない事業で、ICCサミットのカタパルトの中でも最も注目度の高いスタートアップ・カタパルトで優勝を果たした。専門外にはわかりにくい業界、事業を伝えきることのできたその秘訣とは?
【スタートアップ・カタパルト優勝プレゼン】
「SaaSは映えないのでデモ動画は削り、いかに身近に考えてもらえるかと、競合との違いにフォーカスしました。ポイントは3つです。
まず第一に『この会社は社会を変えそうだ』と思ってもらうことが大切で、そのチャレンジが成功しそうであるという裏付けを伝えました。
第二に、目的を再確認。動画も残りますし、このプレゼンを何のためにするのかを整理して、誰にどういったメッセージを届けるか、他のプレゼンターとの並びを見て、違いを生むことを考えました。
第三は他人からどう見えるか?を理解する。コスト削減効果以上に、社会的にどういう意味があるか。私たちのサービスを導入することで、化学物質の事故が起こらなくなる、社会的にも安全が大事である、ということを訴えました」
続いて登場したのは、ICCのカタパルトでも常勝の実力者、Oh my teethの西野 誠さん。前回に引き続きのワークショップ講師だが、今回は実践ポイントを中心にレクチャーした。
【DXカタパルト優勝プレゼン】
「プレゼンスライドのKeynoteのフォーマットは送るので、デザインに時間を使わないでください。成長を伝えるグラフは、成長していないなら出す意味はない。そして『最後まで』『徹底的に』やるのが重要です。
緊張する前提で、立ち位置、ジェスチャー、配布物のタイミングなど細部まで全部決めておきましょう。ボイスメモやZoom録画などで、プレゼンをシャドーイングして違和感が消えるまで練習、他の人に見てもらってモニタリングも。出番直前まで他のプレゼンターを盗み聞きしてアレンジを加えるなど、最後まで悪あがきしていました」
3番目に登場したのは、優勝こそ逃したもののカタパルト・グランプリ3位に入賞、プレゼン終了直後からさまざまな人達がSNSで感動の声をポストしていたSHEの福田 恵里さん。
【カタパルト・グランプリ3位入賞プレゼン】
「ビジネスモデルはかぶるから、ストーリーで差別化する。プレゼンは尻上がりに、クライマックスの盛り上がりはとても大事です。
意識していたのは、よくある女性向けスクールという先入観や予定調和を崩すこと。他にも似たサービスがあるときに、何がユニークなのかを打ち出すこと。当日審査員はたくさんのプレゼンを見るので、たとえぼーっと聞いていたとしても、すごいと思えるようなキーワードを入れること。
こだわりぬいたのはエモい締めパートです。自分の覚悟と事業意義を伝えて、本質的な結果につながるようにやり切ること。優勝はできませんでしたが、本気でやれば応援してくれる人は見つかります!」
ICC小林 雅のリクエストで、その最後のパートのプレゼンを再現してくださった福田さん。集まった登壇者たちは、福田さんの迫力に圧倒され、改めて真剣に伝えることの大切さを受け取った様子だった。
最後に「”しくじり先生”ですが……」と登場したのは、LOOOFの丸谷 篤史さん。カテゴリを変えてカタパルト3回目の挑戦の末に優勝したのは、過去のプレゼンや審査員の徹底的な研究にあると語った。
【クラフテッド・カタパルト優勝プレゼン】
「少なくとも入賞は目指してください。入らないとせっかくカタパルトに出ても声もかけてもらえません」
と、過去2回で1点足りなくて入賞できなかったエピソードから始めた丸谷さん。優勝できた今回は「伝えたいことをとにかくストレートに伝えた。今思うと、1回目2回目は媚びていたかも」と語った。
「過去の優勝プレゼンを自分でできるくらい見ました。そのうえで、入賞ラインの点数をどう集めるか審査員を研究し、僕らの場合ですが、古民家宿の展開地域を審査員の出身地に設定して一人ひとりに手書きのメッセージカードを配布しました。
プレゼンでどうやって気持ちを乗せたらいいかわからなくても、1回騙されたと思ってやりきってみてほしい。真剣にプレゼンに取り組んだ人ほど得られるものがある。入賞しなかった1回目でも株主が3人見つかり、売上が5倍になりました」
先輩からのティップスやメッセージを真剣に聞きいる今回のプレゼンターたち。後半の公開リハーサルに参加しなくても、この前半ワークショップだけを聴講しに来たプレゼンターたちもいて、会場は真剣な熱気に包まれた。
次回登壇者たちのプレゼン公開リハーサル
後半はいよいよ公開リハーサル。前述のとおり、新幹線のトラブルで出席者に一部入れ替えや欠席があり、ICC小林を含む5人のメンターとプレゼンター17名が登壇した。今回カタパルト運営に携わるスタッフたちもこれが公開練習。司会に演台対応、プレゼンターとのコミュニケーションや現物配布など、本番さながらに行った。
メンターはアニマルスピリッツの荒木 翔太さん、Dual Bridge Capitalの伊東 駿さん、リブ・コンサルティング権田 和士さん、千葉道場の廣田 航輝さんに、ICCの小林。前回より登壇者は7名少ないとはいえ、ここから約4時間にわたるプレゼン&フィードバックが行われた。
A~Cの3グループに分かれてプレゼンが行われ、各グループが終了すると登壇者を除いた参加者で投票をし、集計の結果、順位と得票数が発表された。これも運営スタッフにとっては予行練習であった。
グループA
グループAで登場したのは、リアルテック2組に、ソーシャルグッド、スタートアップ、グランプリに登壇する6組。
従来不可能だった複合プラスチック素材のリサイクルを可能にするesa、空気からCO2を直接回収するDACシステムPlanet Savers、医療資格を持ったクルーによる福祉タクシーと利用者のマッチングmairu tech、パーソナル助産師サポートMamaWell、廃プラスチックを必要とする企業に調達するレコテック、マイクロバイオーム×血液で、新しいケアを目指すKINS。
(※写真下のキャプションは登壇するカタパルトとグループ内順位、得票数)
グループAで1位となったのは、レコテック大村さん。プレゼン終了後に感想を伺うと「前半のワークショップで、プレゼンに足りないものがたくさん見つかったので、それを含めてブラッシュアップしたい」と本番に意欲を見せた。
グループB
グループBをリードしたのは、今回カタパルトの司会に初挑戦するスタッフ鈴木 梨里さん。
グループBは、過去のカタパルト登壇者やアワード参加者などが多く集まった6組。外食DXの人気サラダ店CRISPに、在庫管理ができるIoT重量計エスマット、中小製造サプライヤー向け見積もりDXシステム匠技研工業に、ICCの皆さんならご存知の伊良コーラと稲とアガベ、アワードやCo-Creationスペースで栗羊羹を提供した常陸風月堂。
スタッフは、ネジなどの部品の個数が量れる重量計(スマートマットクラウド)、IYOSHI COLAやカットされた栗羊羹などのプロダクトを、プレゼターのタイミングで審査員席に配布。カタパルト当日は、はるかに広く暗い会場でこれを行うことになる。
▶デジタル売上比率96%! 外食業のDXで顧客体験と労働体験を進化させるサラダ専門店「CRISP」(ICC KYOTO 2023)
▶在庫管理の課題を、リアルタイムに個数を量れるIoT重量計で根本解決する「スマートショッピング」(ICC KYOTO 2023)
▶天然素材のオリジナルレシピで「コカ・ペプシ・イヨシ」を目指す「伊良コーラ(いよしコーラ)」(ICC KYOTO 2022)
▶“田んぼを磨く”クラフトサケ造りから、秋田・男鹿を未来につなげる「稲とアガベ」(ICC KYOTO 2022)
グループBで1位となったのは、稲とアガベ 岡住さん。SAKE AWARDの初代王者だが、その原点は2022年に惨敗に終わったクラフテッド・カタパルトでの雪辱を晴らすため。この日のプレゼンでも緊張したと言うが再登壇でリベンジなるか。
グループC
グループCは、過去の入賞経験者・初参加者が入り交じるが、どの事業も課題解決のアイデアを盛り込んだ力強いものだった。
前回のICCサミットでソーシャルグッド5位に入賞した諏訪発エリアリノベーションReBuilding Center JAPAN、クラフテッド・カタパルト優勝の竹の箸ヤマチク、社労士&労務を助けるDXのFlucle、落とし物プラットフォームのfind、ホテルの多言語対応オールインワンシステムCheck Inn。
▶諏訪発、地域資源の循環によるエリアリノベーションで暮らしを豊かにする「ReBuilding Center JAPAN」(ICC FUKUOKA 2024)
▶純国産・手作り竹箸「ヤマチク」が、廃業危機を賭けても目指す、作る人も幸せな未来(ICC FUKUOKA 2022)
3組が僅差で並んだグループCは、すでに京王電鉄にも導入されているfindが1位。会期中は大量の落とし物が発生するICCのサミット会場でも導入予定で、サービスの実力とプレゼンが、当日のカタパルトでどこまで観客に届くかが勝敗を決めそうだ。
ICCサミット当日には、毎回ここから驚くほどの進化を見せる登壇者たちが生まれる。ここで1位になって、当日優勝する人もいれば、ここでは票が入らなくても、いきなり躍進する人もいる。プレゼンの段取りを疑似体験できなかったデメリットはあるが、この場に来られなかった強力なプレゼンターたちもたくさんいる。
当日ライブ中継され、多くの経営者たちに自分の事業を知ってもらえる大きな機会に全力を出し切ってほしいと、このワークショップの動画は登壇者たちに共有されている。いかに学びを最大活用できるかも実力のうち。当日はメンターたちのみならず、見る人達の心を動かし、社会を変えていくような事業を思い残すことなく伝えてほしい。
9月3日のスタートアップ・カタパルトから9月5日のガーディアン・カタパルトまで7つのカタパルトすべてを会場から生中継します。ぜひご覧ください!
(終)
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/赤石 仁/戸田 秀成