▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
ICC KYOTO 2025のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン11)」、全7回の②は、平和酒造 山本 典正さんによるアメリカのSAKE文化の歴史の話。日本人がサンフランシスコに醸造所を開設した1901年にさかのぼり、アメリカ人に愛されるローカルsakeが誕生した歴史をひも解きます。「職人肌の店主とお酒好きな女将は最高の組み合わせ」となるのはなぜか、ハセマコが語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
▼
【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 9E
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン11)
Supported by EVeM
(スピーカー)
大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ
西井 敏恭
シンクロ
代表取締役
長谷川 誠
NTTドコモ
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル
山本 典正
平和酒造
代表取締役社長
(モデレーター)
榊 淳
一休
代表取締役社長
▲
▶『大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン11)』の配信済み記事一覧
酒造の4代目山本さんがアメリカの酒蔵事情を解説
榊 今日、「美食」の何かおもしろいことを、という雑な振りに対し、4つのアジェンダを頂きました。

山本さんからアメリカのSAKE事情、大野さんから世界のガストロノミー事情、トップシェフの名言シリーズをちょっとはさんで、最後にハセマコさんから美食道シーズン11です。
(一同笑)
西井 箸休めみたいに言うのはやめなさい(笑)。
榊 山本さん、お願いします。

山本 はい、ではトップバッターを務めさせていただきます。
この美食セッションに何度も登壇させていただいていますが、私の本業である酒について語っていませんでした。
フードカルチャーとしての酒が世界にどう広まっているか、また、我々はLAに進出するので、アメリカの酒蔵事情はどうなっているのかについてお話しします。
日本の食が世界に羽ばたいていっていることは皆さんもご存知だと思いますが、その象徴の一つが酒ではないかと感じております。
そういう我田引水のようなテーマで、今回はお話しさせていただきます。
20年前は日本酒を「rice wine」と紹介
山本 日本酒の海外輸出については皆さんご存知だと思いますが、ここ何十年という単位で伸びています。

私が実家の酒蔵に戻ったのは21年前ですが、戻った後、最初に行った海外都市がサンフランシスコでした。
当時、「sake」という言葉は通じず、旅立つ時に父から言われたのは、「日本酒という言葉は通じないので、『rice wine』と紹介しなさい」ということでした。
Wineはブドウのお酒なので、riceとwineという全く別の言葉を組み合わせなければいけなかったのですが、日本の外にいる方にとっては、sakeよりしっくりくるであろうrice wineと表現していたわけです。
しかしそれから10年ほどするとsakeという言葉を使っても、税関を通過できるような状況になり、世界的にsakeという言葉が通用し始めたのではないかと思います。
近年、日本酒の輸出は力強く伸びており、直近で400億円規模にまでなっています。

中国は経済不況があったので伸びがゆるやかですが、アメリカ市場は全体の25%近くまで増えております。
▶日本酒を世界に!戦略的取り組みに迫る(農林水産省)
黎明期から1980年代の第一ウェーブまで

山本 アメリカの酒蔵事情について、お話しさせていただきます。
先ほど話した輸出の件は日本の酒蔵事情であり、アメリカの酒蔵事情とはつまり、アメリカ現地で生産する酒についてです。

アメリカの現地生産が、なぜ日本の酒が世界に広がることにつながるのか。
日本で最も飲まれている酒は、ビールです。
国内で消費されているビールは、基本的に輸入品ではなく、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロなどの国内メーカーによって国内生産されているものがほとんどです。
「とりあえずビール」という言葉があるようにビールはとても親しまれており、ビール文化は日本に根ざしています。
例えば、夏は鮎が美味しいですが、香ばしい鮎と、爽やかで苦味のあるビールは最高に合いますよね。
ビールは日本人の味覚とも非常にマッチします。
このように、何かが世界に広まった際、その地で独自の食文化が作られていくことがあると思っています。
日本酒の輸出の黎明期、1901年には、サンフランシスコで醸造所が生まれました。
これは、日本の味が恋しいということで、アメリカに住んでいる日本人が、日本人のために造ったものです。
今、日本酒がアメリカの酒蔵で生まれているのは第2ウェーブだと私は考えています。

第1ウェーブが始まったのは1980年前後で、それはトヨタやキッコーマンがアメリカに進出した頃で、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代でした。
月桂冠や大関、宝酒造など大手メーカーも、世界に羽ばたこうとこの頃に投資をし、アメリカで醸造所を造りました。
私も、月桂冠をはじめ、いくつかの大手メーカーの海外醸造所に見学に行かせていただきましたが、国内とほぼ同規模の非常に大規模な施設で、酒造りをされています。
その後、経営上苦しい時期もありましたが、今は世界的なSAKEブームのもと、アメリカの醸造所で造られた日本酒は、アメリカ国内の消費だけではなく、南米やヨーロッパにも輸出されています。
投資回収後、新たな投資を行おうという段階です。
広大な土地で原料米を生産
山本 では、原料米はどうしているのかというと、アメリカの醸造所では、アメリカのローカル米を使っています。

いわゆるカリフォルニア米、カルローズが使われています。
▶カルローズについて / アメリカ米の種類(USAライス連合会)
スライドの写真は、カリフォルニア州の州都であるサクラメントにある、カルローズ畑のものです。
日本の水田とは全く違う、非常に大規模な畑です。
カルローズはジャポニカ米で、食用としても使えますので、鮨などにも使われます。
榊 これは、水田ではないのですよね?
山本 アメリカにも沼地のようなところがありますが、十分な水がないため、工夫しながら栽培されている印象です。
この写真だと分かりにくいのですが、スケール感がとんでもないのです。
今皆さんと一緒にいる、この部屋の半分くらいの大きさのコンバインで…、いわゆる重機のような大きさのコンバインで稲刈りをし、トラックに米を移動させるのを見ると、日本の米作りとはスケール感が全く違うと感じます。
第二ウェーブはアメリカ人によるローカルなsake造り
山本 我々が進出したのはアメリカ西海岸ですが、第2ウェーブとして、東海岸であるニューヨークに獺祭が既に進出されています。

また、八海醸造が技術・資本面で協力されたニューヨーク近郊のBROOKLYN KURAで造られた酒も、大成功しています。
現在、アメリカにある酒蔵は35前後です。

アメリカでは、ホームブルーイングが早くから解禁され、クラフトビールやワインが小規模で生産されていました。
ホームブルーイングから始まり、ガレッジワインやガレッジビールなどガレッジで造り、そして工場にするという成長モデルがあります。
その対象の一つとして、日本酒が注目されています。
アメリカのクラフトビールシーンは少し穏やかになっており、クラフトビールだけだと辛いので、最近流行りはじめた、同じような醸造酒である米由来のsakeも作ってみようかと取り組まれている傾向もあります。
榊 ということは、この35前後ある酒蔵とは、アメリカの人が日本酒を造っている蔵ということですね?
山本 そうです。
第1ウェーブと第2ウェーブで大きく違うのは、第2ウェーブではアメリカの現地の方々が小規模でも、日本酒の醸造を始め、ローカルsakeとして現地の人に飲んでもらおうとしたという点です。
職人気質の店主&お酒好きな女将は最高の組み合わせ

山本 国内の話にも少し触れておきたいので、私が好きなジャンルの飲食店について、最後にお話しします。
古くからある小料理屋というスタイルは、お酒を飲む人にとっては居心地の良いものだと思います。

小料理屋の、技術があって職人気質の料理人と、お酒好きでおしゃべりが上手な女将というのは最高のセットだと思います。
先日、ハセマコさんとも陰陽論について話していたのですが…。
ハセマコ このスライドの左側にある酉囃子でですね。
山本 そうですね。
技術型の職人とその配偶者で、夫婦で経営されているお店が非常に良いと思います。
この1年で訪れた店のうち、その組み合わせで経営されていて、非常に居心地の良かったお店をいくつかご紹介しようと思っています。
ハセマコさんが名前を挙げた麻布十番の酉囃子は今、話題の焼き鳥店です。
同じ焼き鳥店で言うと、渋谷にあるとり茶太郎も人気で、どの焼き鳥にどのお酒が合うかというペアリングで、珍しい組み合わせも楽しめます。
赤坂の詠月も、女将が非常に日本酒に詳しいです。
ワインも選べますが、日本酒を選ぶ際はたくさん並べてくれるお店です。
関西ですと、新福島にある澤田も、日本酒に非常に詳しいです。

銀座 しのはらの弟子だった方のお店で、酒蔵巡りをされる日本酒好きの女将がいます。
天神橋 青木は料理の写真がありませんが、本湖月出身の方のお店です。
本湖月出身の方の店では料理の写真が撮影できないので、お酒の写真のみですが、ここでもペアリングが楽しめます。
北新地にある肉割烹 山口は、とても美味しいです。
スライド右上の写真は熊肉の鍋料理で、ペアリングも素晴らしかったです。
食べログゴールド店の、名古屋の橦木町 しみずも本湖月出身の方のお店で、女将が日本酒の酒蔵巡りをされています。

最後に挙げたのはあまり有名ではないのですが、私が古くから通っているイルフィーロで、「ゲーテイスト」というレストランガイド(雑誌『GOETHE』の特集)で紹介された店です。
辻調理師専門学校で講師をしていた55歳の店主と、同じく辻調理師専門学校の職員だったパートナーの店で、お二人は、お酒にもお料理にも非常に詳しいです。
毎年1カ月間、お店を閉めてイタリアのワイナリー巡りをされているようです。
イルフィーロは京都では比較的予約が取りやすく、イタリアン割烹ですので、例えば、鱧をイタリア料理としてどう仕立てるか、客の希望を聞いていただけます。
食材を、アラカルトでもコースでも、どんな形にもできる本格的な割烹で、使い勝手が非常に良いお店だと思っています。
西井 さすがですね、こんなにマニアックなお店がさらっと出てくるのは。
これらは、今年(2025年)行ったお店ですものね?
山本 はい、最後の1軒だけはズルで(笑)、私が通い続けていたお店になるのですが、お店としての歴史は長く、結構多くの人が良さに気づき始めています。
榊 Facebookにも投稿していましたよね?
山本 はい。
西井 今日の予約でも、取れそうですか?
山本 多分大丈夫だと思います。
西井 ランチも営業していますか?
山本 はい、ゲーテイストでも「予約が取りやすい」と書かれていて。
2日前に行った時は、「取りやすいと書かれるのもなあ…(笑)」と話していました。
西井 (笑)
榊 ありがとうございます。
「陽」の女将によって「陰」の店が成り立つ
ハセマコ 西井さんは酒を飲まないのに、酒好きの女将のいるお店にもきちんと反応して、さすがですね(笑)。
西井 ちょっと嫌な感じの振りですが(笑)、このテーマはおもしろいなと思いました。
ハセマコ 僕なりの理屈がありまして。
美味しい料理を作る料理人については、私の美食道のフレームワークでは「陰」と「陽」に分かれます。
▶6. 「心技体」に加えて「個性」と「スタイル」で食べ手のポジションが決まる(シーズン3より)
「陽」の料理人のお店は、大将がとても喋るし接客も良いので、それだけで人気店になります。
したがって、女将の役割は接客だけではないパターンが多いです。
料理がめちゃくちゃ上手だけれど、寡黙な職人肌の料理人のお店は、女将のような役割の人がいないと、店がつぶれてしまいます。
「陰」の店が成立するのはそういう背景なので、そういう店が多いと思うのは、生存者バイアスのようなものが働いているのだと思います。
という話を先日、山本さんともしていました。
西井 それ、よく言っていますよね。
料理がめちゃくちゃ美味くて居心地が良いお店はたいてい、女将の役割を持つ人の働きぶりが良いと。
だから大野さんは、良い女将をそろそろ見つけたほうがいいのではないでしょうか。
大野 それをちょうど今、言おうと思いました。
(一同笑)
元気があって、喋るのが上手な女将を募集しようかな(笑)。
西井 そろそろね。
ハセマコ でも接客を改善して、点数は上がったんですよね(笑)?
大野 そうなんです(笑)。
ハセマコ 「陽」のシェフになりつつある(笑)。
大野 努力します。
「sake」の認知度が向上した背景
西井 sakeについて聞きたいです。
昔は確かに「rice wine」と呼んでいたと思いますが、「sake」という言葉が定着したのはなぜなのでしょう?
山本 ジャパニーズ・フードやジャパニーズ・レストランが世界中で圧倒的にウケたというのが大きいと、私は思っています。
私が実家の酒蔵に戻った21年前は、「sushi」という言葉もあまり知られていませんでした。
西井 そうですね、海外ではあまり生魚は食べないですからね。
山本 私もそのことは、父から聞かされていました。
それでもサンフランシスコはシーフードが美味しいところなので、比較的売れていたようです。
それから5年ほどで、ローカルの方が行くスーパーでも鮨が惣菜として売られるようになりました。
この20年、浸透のスピードはめちゃくちゃ速かったと思いますので、sakeも同様に親しんでいただけたのだと思います。
近年、sakeの認知度が世界中でさらに上がっているのは、インバウンド旅行者の影響ですね。
彼らが日本に来る時、一番楽しみにするのは日本の料理や鮨です。
本物の日本酒を飲んでいただき、日本で飲む日本酒を美味しいと思って帰っていただいているのだと思っています。
西井 日本には、ビール、ワイン、日本酒が当たり前にありますが、ウォッカやテキーラなどもありますよね。
アメリカや中国では、sakeはどういうポジションなのでしょうか?
山本 アジアとアメリカでは、事情が違うと思います。
今日はアメリカの話をしましたが、アジアの人からすると、日本の食は憧れです。
高いし、文化が成熟しているので、本物だという印象があるようです。
戦後の日本がフランス料理やワインに憧れたのと似た感じです。
ですので、sakeもそういうイメージで飲んでいただけているのではないかと私は思っています。
西井 日本人にとってのワインのような感覚ですかね。
山本 そうですね。アメリカにおいても、アジアのアルコールであり、魚に合う酒と認識されていると思います。
西井 なるほど、ありがとうございます。
榊 ありがとうございます。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


