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ゼロから何かを生み出せる自信があるベンチャーは借入で資金を集めて来い(リバネス丸)【F17-8C #5】

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「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」【F17-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その5)は、技術シーズの収益化と、資金調達及び投資家の視点について議論しました。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8C
イノベーションを生み出せ!技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論

(スピーカー)

井上 一鷹
株式会社ジンズ
JINS MEME Gr 事業開発担当

鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士

千葉 功太郎
投資家・慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO

(モデレーター)

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論!【F17-8C #1】

1つ前の記事
ビジネスモデルを一部組み替えただけでもゲームチェンジが起こせる【F17-8C #4】

本編

鮫島 もの売りの人は今後、売り切りではなくて、どうやってそこからお金を寄せるかというのがビジネスモデルの設計の基本になっていきます。

千葉 インターネット業界の最大のおいしいところって「チャリンチャリンモデル」だと思います。

僕は1999年のiモードで育ったので、毎月300円が貯まっていき、しかも解約を忘れているユーザーを含めた、あのチャリンチャリンモデルは素晴らしい発明だなと思いました。

インターネットのモデルは広告にしてもクリック課金にしても少しずつチャリンチャリン入っていって、それが永続的に入ってくるのは経営的にも極めて安定します。

投資家 千葉 功太郎氏(左)

売り切りよりも、効果として生み出した分のプロフィットをシェアするという、さきほどのお掃除マシーンの話は良いですよね。

それがロジカルに計算できるようになったら、投資家的においしいですよね。

水島 いわゆるプラットフォーマー論というか、特にインターネットはここ10年ぐらい、皆プラットフォーマーを目指してやっていると思うんです。

千葉さんから先ほど、技術シーズは色々な組み合わせがビジネスモデルとしてできるのではないかというところをお話しいただいたと思うのですが、丸さんはどうですか。

「チャリンチャリン」はチャラい?

 ちょっとね~気持ち悪かったね、今の話。

(会場爆笑)

たぶんここにいる10人ぐらいは、なんでチャリンチャリンとかチャラい話をしているんだって思っていますよね。

良いですよ、(経営が安定するのは)確かにそれは嬉しいです。

でも本物の技術の会社はどう生まれているか?

リバネス 代表取締役CEO 丸 幸弘氏(中央右)

たとえば、4mのロボット(※)は、それを開発する過程で生まれた20個以上の特許が組み合わさっています。もちろんこれがさらに別のかたちでも組み上がっていって、次から次へと発明がなされていく。

▶編集注:ICCにも登壇している株式会社人機一体は4mのロボットを作ろうとしています。

これは知財戦略で非常に重要です。

どう収益化するかと言った時に、「部分売り」ができるんです。

たとえば、手の部分だけの技術を某大手の工場にライセンスして、脚の技術はまた別の企業にライセンスして、それぞれ個別のインフラにしていくというビジネスモデルです。

ロボット全体を大きく売るのではなく、部分部分を切り離してチャリンチャリン。

あ、チャリンチャリンですね。

(会場爆笑)

水島 お後がよろしいようで(笑)

技術はどう事業化するべきか?

 いや、言いたいのは、4mのロボットを作るというところにきちんとビジョンがあって、技術者はやはりこれを売りたいということなんです。

水島 ロボットメーカーにも、いくつかパターンがありますよね。

たとえば一番極端な話では、自社で工場を持って、原材料を買って製造して売りますというパターン。

逆に、ファブレス(※)で設計書だけ持って外の人にOEM(Original Equipment Manufacturer)で作ってもらい、売りますというパターン。

▶ファブレス(fabless):工場を持たずに製造業としての活動を行う企業やそのビジネスモデルのこと

さらに言えば、いわばR&D専業のような会社として、どこかのメーカーに設計図とノウハウと知財をライセンスして稼ぎますというパターン。

究極のパターンが「パテント・トロール(※)」的な、自社では事業は行わないが特許をたくさん持っていて、そこをライセンスしたり法廷に出るところで勝負したりしてお金を稼ぐ。

▶編集注:パテント・トロールとは、手に入れた特許を使い、その特許を侵害していると目をつけた企業に対して、巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする企業などのこと。

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏(右)

同じ技術をビジネスにしますと言った時にもこういうグラデーションがあって、特にインターネットと違ってハードウェアと設備投資、ヘルスケアだとレギュレーション系の工数とかコストがかかってくると思います。

そういう意味ではどうですか。

 研究者や技術者の立場で、夢から話してしまうと、工場で研究したい、ものを作りたいんです。

基本的には4mのロボットを作るなら10mぐらいの天井のある工場が欲しい。

全部を自分たちでやろうとすると確かに厳しいですが。一部はファブレスな部分があっても、コアなところは絶対自分たちで握りたい。

全部ファブレスにするのはあまり良い選択ではありません。

特許にしないというのも重要です。

ノウハウをどれだけ持っているかというのは結構重要視していて、それがないと「うちファブレスで全部作れるんですよ」って言っても、「どこがあなたの会社のノウハウなの?」「あなたの会社だけのナレッジはどこにあるの?」となります。

そこを自分たちで作り込めないベンチャーには投資できないですね。

スカスカの口だけになってしまうので、思いがあれば必ず場が必要で、場を持たなければいけない。

そこは投資と言うよりは当たり前の話で、技術シーズをビジネスにすると言った時にぜひ見てほしいのは、コアをきちんと大切にしている会社かどうか。僕は、そこはすごく見ています。

水島 1つ丸さんに聞いても良いですか。

研究者としては作りたいというお話がありましたが、コアが守れるところがないと投資家としてはダメだというお話がありますよね。

仮にここのモデルを目指した時、どうやったら十分な資金が集まるのか、どう説得するのか。

コアがあるなら借金して資金を集めてこい

 銀行から借りてしまえばいいんです。

腸内デザイン推進企業の「メタジェン」にも、某ロボットの会社にも「とりあえず借りて来い」と言いました。

中小企業というのはだいたい億(の金額)借りるんです。

今はベンチャーファンドが金を持ってるので結構大きな額を入れてもらえたりしますが、そうではなくて、「本気でそれをやりたいんだったらデット(借金)して来い」と。

メタジェンは、3000万円を自分たちでデットしてきています。

注目”便”チャー「メタジェン」は腸内細菌解析技術で病気ゼロ実現に挑む

ありえないですけれど、それぐらい「コア」があるからやれるという自信が彼らにもあるので、だったら借りて来いと、こちらも啖呵を切るんです。

そうじゃないとVCさんからお金なんか絶対入れないですね。

借りたお金でラボを作ると、そのラボで彼らは発明を始めるんです。

大学の知財は問題があって、大学からライセンスしないといけないんですよ。

この工数の方が高くて。ならば「そんな大学の技術は捨てて来い」と。「もう1度自分たちでラボを作って、自前でやれないんだったら僕は投資しない」と言います。

基本的なコアというのは、自分が本当に場所を持ったら一から何かを生み出せるという自信のことです。それを持っているかどうか。これが、技術を中心としたベンチャー企業の見方なんです。

水島 デットの話が出てきたのは面白かったですね。

 リバネスはデットしかしていないですからね、自信があるから。

銀行に行って「3億円ください」と。

水島 自信があることのシグナリングとして使うということですね。

 その通りです。

自分もそうやってきたし、今一番調達コストが少ないのは銀行ですよ。

VCで調達したら大変ですよ。

▶ 資本コストをどう考えるか?は重要な論点です(編集部)

水島 千葉さんはエクイティ投資家として、別の視点やTipsとかありますか。

千葉 今の借入の話は本当にその通りです。僕自身も起業した時、個人がまずデットですよ。

銀行からも借りるし、親にも泣きつくし、貯めたなけなしの2000万円、3000万円をつぎ込む。

さらに法人として銀行からも借りる。

絶対伸びるとわかっているのにもったいないじゃないですか。他の人に一株も渡したくないので、そう考えるとデット(借入)です。

投資家 千葉 功太郎氏

その意見は大賛成です。僕は、投資先を集めて、千葉道場というコミュニティをやっているんです。

スタートアップの経営ノウハウを共有する合宿で言っているのも、エクイティとデットの組み合わせとタイミングがとにかく重要で、伸びている時はとにかくデットで行けと、若干不安になったらエクイティで行け、ただし見せ方はあると伝えています。

デットのファイナンスも色々あって、まさに中小企業向けのものがいっぱいあるので、そこを皆で戦っていければ3000万円とか1億円はデット(融資)で集められます。

自信がなければ絶対できないですし、それで逃げてしまう及び腰のCEOはその事業をやらない方が良いです。

水島 大変刺激的且つ面白い視点でした。

今の間ずっと井上さんがずっとメモしているのが印象的でした。

井上 勉強になります。

(続)

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続きは 資金が限られるスタートアップが取るべき特許戦略とは?【F17-8C #6】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

チャリンチャリンのくだりはちょっと面白かったですが、資金調達関係の議論はためになる話でした…。(立花)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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