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ICCニューイヤーパーティ2020で開催された特別セッション「モデレーター勉強会(シーズン2)」の全文書き起こし記事。全6回シリーズの(その3)は、モデレーターをして得られる「ご褒美」について登壇者たちが語ります。議論の展開役ながら、知的刺激をたくさん得ているといいます。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
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【開催情報】
2020年1月22日
ICC New Year Party 2020
モデレーター勉強会(シーズン2)
(スピーカー)
伊藤 羊一
ヤフー株式会社
コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア 学長
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
武田 純人
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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▶【一挙公開】「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは(シーズン2)」の配信済み記事一覧
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最初の記事
1. ICC名物モデレーターが集結! 4人4様、「己の流派」を明かす
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2. 岡島悦子の「一枚の紙」、伊藤羊一の「コンサートの波形」、セッションプロデューサーとして、成功に導く心構え
本編
モデレーターをして得られる「ご褒美」とは
武田 僕はモデレーターをするのが大好きなんですが、モデレーターをたくさんやっている皆さんにとっての「ご褒美」は何ですか?
琴坂 当然、皆さんの発言ですよね。「学び」です。
前回もお話ししましたが、基調講演を断ってでも、モデレーターをしたいぐらいです。
実際、去年も3回ぐらい基調講演を断って、「モデレーターならやります」と言いました。
学びが多く、インプットになって、最高です。
自分の聞きたいことを聴けるわけですから。こんなに素晴らしいことはありません。
(会場笑)
ICC小林 僕は昨日、古巣のグロービス・キャピタル・パートナーズの方々とイベントをしていて、根掘り葉掘り聞いていました。
「あの会社は最近資金調達して、経営者が変わったけれど」「大型資金調達したけれど、こけてだめだった会社はどこ?」などを、元上司ですから色々と聞きました。
自分の聞きたいことを聞けるのは、面白いですよね。
岡島 私もICCの場合は特に、なるべくオフレコセッションにしてもらうケースが多いので、オフレコセッションだからこそ、ぐいぐい聞いています。
「それはなぜですか?」「それはいつ意思決定したのですか?」など、ひたすら根掘り葉掘り聞くことができます。
「言葉を選ばずに言うと…」と、結構バシッと言ったりすることもあります。
そうして聞けることが自分へのご褒美ですね。
相乗効果で、新しい知見が生まれる
琴坂 調査の観点からいくと、それぞれ1人の方に聞くとインタビューですが、「フォーカスグループインタビュー(※)」は皆さんご存じだと思いますが、1つのトピックに複数名がいることによって、そこでの共有知になり得る知見と、それぞれの事象にしか当てはまらないものが差分ができあがってきます。
▶編集注:検証したい仮説に対し、想定されるターゲット層の意識や深層心理などを把握することができるグループ形式の定性調査。1対1のインタビューでは得られない、奥深く幅広い情報を引き出すことが可能とされる。
その場の全員の顔を見ていて、「これだ!」と、全員が「うん!」と納得した瞬間の知識というのは、私にとってアカデミックな価値のある知識です。
そういった、全員の納得感が醸成される要素は、「一般化可能性がある」、つまり別の事例、未来の事例でも当てはまりうる貴重な知見なんです。ICCのセッションは、そういった貴重な知見が発見できる機会としてすごく価値があると思っています。
岡島 「教えてほしい!上場企業の取締役会の運営と社外取締役の実効性(完全オフレコ)」のセッションは「脳汁」が出るセッションで、琴坂さんと、シニフィアンの小林賢治(こばけん)さんと長くやっていて、今回ファイナルでシーズン4になります。
あれはもともとやっていた勉強会がありましたが、会場と一体となって色々な議論をすることで、知見がぐっと上がります。
「あっ、その論点があったね」と、セッション中に知見が積み上げられることがあります。
琴坂 そうですね。
お互い、相乗効果が生まれるセッションは、「やってよかった」と感じますね。
伊藤 おそらく相乗効果は、1対1でモデレーターが各人とやっているとなかなか生まれづらいです。
勝手に話してもらうことによって、モデレーターは話題が終わりそうになったら、さばいて構造化するようなことがいいかと思います。
岡島 それで言うと、お互いを知っているメンバーでやるとよくて、私と琴坂さんとユーグレナの永田(暁彦)さんが出て、「これはユーグレナの取締役会か?」(笑)みたいなセッションもたまにあります。
ICC小林 組み合わせのパターンとしてありますね。
岡島 「このことについてもっと話して」と振りやすいので、そこから一気に展開できます。
ICC小林 セッションの評価はアンケートで取りますが、だいたい終了後、登壇者が会場から出てきて、ものすごく興奮しているときは、「このセッションは非常に良かったんだな」と思います。
登壇者が「すごい、良かった!」「面白かった!」と言ってくれていると、アンケートでも評価の高いセッションになっています。
岡島 セッションの終わりに「もっとみんなで話したかったな」と、会場も含めてそんな様子になっていると、シリーズ化されていくというか、「次もやってほしい」となるので、いい状態なのかなと思います。
ICC小林 セッションの終わりに「次のシーズンも頼むよ」と言われるケースが、最近増えてきました。面白いですね。
名モデレーターがよかったと思うセッションは?
ICC小林 皆さんがICCサミットに登壇されて、よかったセッションなどありますか?
モデレーターとしてでも、スピーカーとしてでも結構です。
過去一番面白かった、モデレーターとしてやりがいがあったセッションは、いかがでしょうか。
(スピーカー、しばし考え込む)
伊藤 僕は前回、ナビゲートという形で、新基軸である、プロフェッショナルにベンチャーの2社が相談する「公開戦略議論」(ICC KYOTO 2019のセッション6D「悩みを聞いてほしい!市場を創造するためのマーケティング戦略とは?」)をやることになった時に、それがどういう場になるか想像できませんでした。
会場は、僕が向かって一番左端に座って、その隣に相談者が座りました。
プロフェッショナルの方は、僕の正面に座っていました。
ICC KYOTO 2019のセッション6D「悩みを聞いてほしい!市場を創造するためのマーケティング戦略とは?」の模様
その配置だと、プロフェッショナルの方がどんな顔をして答えているか会場の方からは分からないので、最初は、座席配置に関してはいま一つなのではと思いました。
けれども、僕はプロフェッショナルの方と正面で向き合っているので、明確に「今答えたい」とか、「今は話したくない」ということが分かるので、しっかりとコントロールできました。
その「コントロールしてて、波形が作れた感」がすごく気持ちよかったです。
結果僕は、5人のプロフェッショナルと2社の相談者と話しているけれど、その後ろに座っている会場の皆さんが、それで楽しんでいるかだけを見ながら、コントロールしていました。
「こういうスタイルのディスカッションってあるんだなあ」と思って、非常に面白かったです。
会場に来ている皆さんも、その形のセッションが今後もいくつかあると思いますので、ぜひ参加してみてください。
ICC小林 このセッションの弱点は、時間が長くないといけないということですね。
これもシーズン2があります(2月19日セッション6Eで予定)。
セッションで「初めての話」を引き出せたとき
琴坂 個別に「これが」というセッションを選ぶのは難しいのですが、登壇した方々の全員の情報を日経テレコンで把握した状態でセッションに臨んで、その方々が多分、外で1回も話に出したことのないことを、次々と発言していたことが何度かあり、こういうセッションは最高のセッションだと思っています。
モデレーターとして、少しでもそういう、ここでしか作り上げられない知識、知見を出す場を作ることに貢献できたことが、私の達成感、満足感につながっています。
あとは、私は哲学的なことが大好きなので、「普段考えていないようなことを、考えてもらう」ことができたセッションは好きだなと思います。
登壇者の方々がちょっと沈黙してしまうようなセッションですね。
話し慣れている登壇者の方々ですら、良い意味で回答に困ってしまうが、楽しくその答えを探してくれるような質問ができると、ときおり含蓄あふれる明言を引き出せます。
まぁ、解りにくすぎて会場に伝わらないことも多いので、満足度が低いセッションになってしまうこともあるのですが(笑)。
議論がモデレーターのコントロールを離れたとき
武田 僕も「このセッション」と具体的な一番とかはないんですが、先ほどお話したことと矛盾して聞こえるかもしれませんが、自分の中でよかったなと思うセッションの多くは、実は自分のコントロールを離れたセッションです。
コントロールをものすごくしたいのだけれども、自分のコントロールを離れてしまう盛り上がりをみせたセッションが、自分の中では「よくやった、自分!」と思えるセッションですね。
例えば前回のICCサミットで、「子育て経営学―私たちは子供をどう育てていくのか?」で、宝槻(泰伸)さんに、僕はモデレーターをジャックされちゃいました。
モデレーター的には大混乱なのですが、それが僕としてはすごくいいセッションだったと思っていて。よく設計して臨みますが、その設計を超えてみんなが走り始めて、ぐちゃぐちゃ議論が進んでしまったり、時間や役割を忘れて興奮の議論が続いたりするのが、僕の中では最高の瞬間です。
岡島 私も「教えてほしい!上場企業の取締役会の運営と社外取締役の実効性(完全オフレコ)」のシーズン1で、琴坂さんがモデレーターで、私と小林(賢治)さんが色々話をしていて、前回のモデレーターセッションで言うと、みんな小林(賢治)さんがモデレーターだと思っているんですよ。
シーズン4になりますが、小林さんは1回もモデレーターをしていなくて、私か琴坂さんが務めていますが、やはり私たちの手を離れていって、最前列にいるセプテーニの佐藤(光紀)さんに私が話を振ったり、会場が一体となって、モデレーターが誰か分からない状態になっているのはいいと思います。
制御不能の名物スピーカーをどう扱う?
岡島 あとは謎のスピーカーがいて、石川善樹さんが登壇するセッションのモデレーターをするのは、面白いけれども制御不能です。
(壇上笑)
「こんなことに気づいてしまったんですよ!」と言って、それで、どんどん彼がモデレーターになっていってしまいます。
▶2. 人間を理解するヒントは、京都の『洛中洛外図』にあり!?
▶組織の原型は古代ペルシア帝国のゾロアスター教にあり(石川善樹)
ICC小林 「違う話をしてもいいですか?」と必ず3回くらい言いますからね(笑)。
伊藤 僕は石川さんに、「ごめんなさい。最初の15分だけ黙っていてください。あとは自由にしていいですから」と言って、他のスピーカーに15分話してもらって、その後、石川さんに振ったことがありました。
岡島 私はリクルートのCareer Cafe 28という幹部育成研修で、毎年石川さんと対談していますが、放置するのが一番よくて、毎年出席者からの満足度100パーセントになっています。
石川さんがお話しされていて、自分がすごく面白いと思ったところでは、「それはなぜ?」と掘り下げて聞くようにしています。
それが、一番満足度が高くなる方法です。
琴坂 僕はどちらかというと、強引にまとめて話を戻す派で、石川さんが入ってきても、強引に戻します(笑)。
そうしないほうがいいんじゃないかということですね。
岡島 彼の場合は、放置がいいかなと思います(笑)。
(続)
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続きは 4. セッションの初速・ターゲット設定・質問の順番……ICC名物モデレーターが実践する運用テクニック をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美
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