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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン5 )」全8回シリーズの(その4)は、今回新加入のメタジェン福田真嗣さんが「腸内細菌」を切り口に人間の理解に迫ります。健康や疾患との関係が知られる腸内細菌ですが、実は母から子へと受け継がれることをご存知でしたか? リバネス井上浄さんが“パイセン”と呼んでしまう腸内細菌の驚愕の事実を、ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 2C
大人の教養シリーズ
人間を理解するとは何か?(シーズン5)
Supported by ノバセル
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン5)」の配信済み記事一覧
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最初の記事
1. 人気シリーズ第5弾!今回の人間の理解は「ワクワク」の探究から!
1つ前の記事
3. ビル・ゲイツはなぜ環境保全に取り組むのか? “ゾーン”に入った人間はここが違う
本編
福田 真嗣(以下、福田) メタジェンの福田です。
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福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
2006年明治大学大学院農学研究科博士課程を修了後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2019年より同特任教授。2016年より筑波大学医学医療系客員教授、2017年より神奈川県立産業技術総合研究所グループリーダー、2019年よりマレーシア工科大学客員教授、JST ERATO副研究総括を兼任。2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。2015年文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015」に選定。同年、第1回バイオサイエンスグランプリにて、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」で最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。代表取締役社長CEOに就任。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢 健康と疾患を司る“もう一つの臓器”」(羊土社)。
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(井上)浄さんの話を聞いていて「ワクワク感」や「自分主人公感」を持つのが大事だと分かったのですが、どうすればそれを持てるのかについて考えていました。
石川 なぜ内側から湧き上がるのかということですよね。
福田 そうです。
石川 人間の内には何がいるのか、と。
福田 すごい前振り(笑)。
これ、打ち合わせしてないですからね(笑)。
一同 (笑)。
福田 人間とは何か、ワクワクはどう生まれるのかについて僕は1つ答えを見つけてしまったので、本日はデータと共に現実をお伝えします。
人間の行動は腸内細菌に支配されている?
福田 まず現実①。そもそも、人間は人間の細胞だけで構成されているわけではありません。
北川 ええっ、そうなんですか!?
福田 知ってるくせに(笑)。
一同 (笑)。
福田 僕たち人間のお腹の中には、自分の細胞の数と同等かそれ以上の腸内細菌という微生物が棲んでいるとされています。
そして現実②。その腸内細菌がもし体からいなくなると、人間は生きられません。
分かりやすく言うと、COVID-19などの感染症に冒されないためには免疫力が必要ですが、それを教育してくれるのが腸内細菌です。
仮に腸内細菌がないと、免疫を持てず、すぐに感染症にかかり死んでしまいます。
免疫系が発達しなければワクチンを打っても効果が得られません。ですから人は、腸内細菌がないと生きられない。
井上 やばい。
福田 そして現実③。人間の行動は腸内細菌に支配されている?
石川 おっ、謎が出てきましたね。
北川 「現実」と書いているのに、クエスチョンマークが(笑)。
福田 そうです、流れを読んでいましたから(笑)。
▶編集注:本セッションの前半では、「人間の行動を促進するワクワク感には“謎”を掲げることが必要である」という議論が交わされていました。
「腸は第二の脳」ならぬ「脳は第二の腸」
福田 皆さんに実体験を聞きたいのですが、いかがでしょうか?
北川 今日の朝ランニングをしていたのですが、漏れそうで……腸内細菌に支配されていました(笑)。
福田 腸内細菌に、トイレに行かされたわけですね(笑)。
石川 一般的には、僕らは脳によって自分をコントロールしている感覚がありますよね。
福田 実は脳腸相関というのがあり、脳と腸は迷走神経でつながっていたり、またホルモンを介してもやりとりをしています。
▶脳腸相関(brain-gut interaction)(腸内細菌学会用語集)
脳への刺激が腸に伝わるように、腸への刺激が脳に伝わること、そして脳の病気に腸内細菌が関連していることなども分かってきています。
井上 糖の嗜好性も、腸内細菌によって変わるのですよね。
福田 そうです。
写真左から、Well-being for Planet Earth 石川さん、リバネス井上さん
井上 腸内細菌を入れ替えたマウスでは、どれを食べるか、どの糖を摂るかが変化するという研究があります。
石川 よく考えたら、脳って腸みたいな形をしていますよね。
一同 ……。
井上 もしかしてシワの話をしています(笑)?
北川 小腸に似ている(笑)。
福田 腸は第二の脳とよく言われますが、僕は逆だと。脳こそが、第二の腸だと思っています。
石川 もう脳腸と呼べばいいのでは? 大腸、小腸、脳腸(笑)。
一同 (笑)。
福田 脳を持たない生き物はいますが、腸を持たない生き物はほとんどいません。
腸はまさに人間の中心で、生き物はそこから始まるわけです。
直感という言葉がありますが、これは英語で言うとgut feelingで、gutは腸という意味です。
つまり、お腹で感じると。
それはなぜかというと、人間の行動は腸内細菌に支配されているからではないか、ということです。
井上 「腹落ち」するとか、「腹黒い」とかね。
福田 そういう言葉も、昔からありますよね。
腸内細菌は、母から子へと受け継がれる
福田 次に現実④。歴史です。そもそも、地球上において細菌は人間よりも先住民なのです。
石川 確かに、先輩ですね。
井上 マイクロバクテリアパイセンですね(笑)。
福田 そう、パイセン(先輩)なんですよ。
そして現実⑤、一部の菌はすでに人間の細胞の中に共生しています。
その1つが、ミトコンドリアですね。
ミトコンドリアは私たちの細胞の中で細胞内小器官という役割を担っていますが、もともとはバクテリア(細菌)でした。
それが細胞に棲み着き、エネルギーを作る役割を担うようになったのです。
このミトコンドリアが細胞の中で機能しなくなると、脳卒中や糖尿病など色々な病気につながることが分かっています。
その他にも例えば、これは人間と腸内細菌の例ではないですがトキソプラズマという原虫がいます。
猫に感染して、その猫の中で増えて、また次の猫に…という感染方法なのですが、面白いのが、トキソプラズマに感染したネズミは、猫を恐れなくなるのです。
ネズミは猫に食べられようとする、つまり、トキソプラズマがネズミをハイジャックするのです。
北川 めちゃめちゃ面白いですね。
福田 そのように、色々な菌が私たちをコントロールしているということです。
ミトコンドリアのDNAは、母から子に受け継がれることが知られています。
そして現実⑥、腸内細菌も同じように母から子に受け継がれるのです。
母親の胎内にいる際は無菌状態ですが、生まれた瞬間に便にまみれるなどして、腸内細菌を受け継ぎます。
北川 これは、エピジェネティクス(※)との関係も知られているのですか?
▶編集注:エピジェネティクスとは、DNAの配列変化によらず遺伝子発現を制御・伝達するシステムのこと。シーズン1での北川さん・井上さんによる解説も参照。
福田 知られています。
北川 ほー。
福田 妊娠中、母親の腸内細菌が作った成分が血中に入って全身をめぐるため、胎児にも影響します。
その結果、生まれてくる子供の喘息のリスクが下がったり、肥満が抑制されたりすることなども分かってきています。
ここまで6つの現実を紹介しましたが、皆さん、納得の現実でしょうか?
北川 めっちゃ面白いです。
人は腸内細菌の乗り物である
福田 そしてここで僕の結論です。
「人は腸内細菌の乗り物である」。
石川 ガンダムだったんですか(笑)。
一同 (笑)。
井上 ただ、乗られている側からすると、乗る人(腸内細菌)は選べるわけですよね。
いや、それも今乗っている人(腸内細菌)が選んでいることになるのか…。
福田 そう、乗られている側は、操られ、変えさせられているのです。
北川 我々は、腸内細菌に選ばれているわけですね。
石川 選ばれたいものですね~(笑)。
福田 先ほどワクワク感の話(Part1〜3参照)に戻ると、その考えや行動は誰によってコントロールされているのかという話です。
井上 確かに。
福田 腸内細菌の栄養源は、人間が食べたものです。
人間が、「あれが食べたい、これが食べたい」と思って食べているのも、腸内細菌にコントロールされているのかもしれません。
北川 脳と腸は迷走神経でつながっているので、腸内細菌を変えることでうつ病が治るという話もありますよね。
そうなると、本当にコントロールされている可能性がありますね。
福田 あります。
北川 うつ病になりやすい人は、腸内細菌が悪かったということかもしれないですよね。
福田 実はそれも分かっています。
北川 マジですか?
福田 うつ病だけでなく、他の精神疾患と腸内細菌との関連性も分かってきています。
北川 ほー。
福田 皆さん、手術で臓器移植をすると性格が変わる、という話を聞いたことがありませんか?
井上 聞いたことある。
福田 僕が持っている仮説は、「臓器が変わるから性格が変わる」ではありません。
手術前は、術中の感染症を防ぐために必ず抗生物質を投与しますよね。
ですから、臓器が他人のものと変わるから性格が変わるわけではなく「抗生物質投与により腸内細菌が変わってしまうから、考え方や性格が変わるのではないか」と考えています。
楽天株式会社 常務執行役員CDO グローバルデータ統括部 ディレクター 北川 拓也さん
北川 実際に、抗生物質投与の前後で人の性格が変わることを示した研究はないのでしょうか?
福田 うつ病や自閉症の治療に、抗生物質が使われることはあります。
北川 マジですか、面白い!
福田 腸内細菌が脳機能に大きく影響することは分かっていて、例えば、マウスを無菌状態にすると、危険を感じにくくなります。
ですから、ワクワクとか人間の本質はどこにあるかというと…。
井上 絶対、腸でしょう!
腸内環境のためには、複数ブランドのヨーグルト?
公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹さん
石川 下世話なことを聞きますが、いい感じの細菌に選ばれるには、僕らは何をすればいいのでしょうか?
福田 いいポイントですね。自分のお腹には良い菌に棲んでもらいたいですよね。
石川 サウナはダメですか? 暑すぎる?
福田 悪くはないと思います(笑)。暴飲暴食や抗生物質は良くないですね。
井上 便移植をしている人は、性格が変わるのでしょうか?
福田 それは、これから調べたいところです。
便移植をして病気が治ることがありますが、病気が治ったから結果的に性格が変わっている可能性もあります
井上 確かに。
深井 ファスティング(絶食)で腸内環境が変わることはないのでしょうか?
福田 変わります。浄さん、研究してますよね?
井上 はい、今やっています!絶食と腸内細菌と免疫の関係。
▶絶食後の便のニオイは、心地良いニオイ?(ICC FUKUOKA 2019)
性格までは手が出せていませんが、そこまでやってみようかなと今思いました。
劇的に変えられるかもしれません!
石川 よく、多様な菌を摂った方がいいと言いますよね。
1つのブランドのヨーグルトを食べるのではなく、色々なブランドのヨーグルトを食べた方がいい、とか。
北川 そうなんだ。
福田 たくさんの種類の菌がお腹に棲み着く方が、腸内環境のロバストネス(頑健性)を維持してくれます。
これは企業でも同じですよね。色々な人がいる方が様々なアクシデントに対応できますから、そういうロバストネスを維持することが大事です。
また、健康な人の便を患者の腸内に移植することで病気を治すという試みが行われていますが、性格も変わるとなると、将来的に世界平和を…。
北川 世界平和を目指せると。
福田 世界征服も!
井上 いや、世界平和にしておきましょう(笑)。
北川 みんながワクワクします。
福田 その原動力は腸内細菌ではないか、というのが僕の仮説です。
石川 素晴らしい。
井上 素晴らしい。
北川 めちゃめちゃ面白い。
福田 ありがとうございます。
井上浄さんの遠い日の思い出「お前は誰だ?」
井上 関係ないのですが、小3の時、人は乗り物であることを実感した出来事がありました。
今も鮮明に覚えているのですが、鏡を見ていて、自分が動いているのが不思議で仕方なかったのです。
あの時もしかしたら、腸内細菌にコントロールされていたのかもしれません(笑)。
小3の時の文集に「乗り物」というタイトルで、そう書いたんですよ。「お前は誰だ?」という言葉から始まります。
石川 (笑)。
深井 全く同じ気持ちを感じたことがあります。自我と体が別になる、不思議な感覚ですよね。
井上 なぜその時、腸内細菌を採取しなかったのかという話です。
福田 自分の本体は自分ではないところにあるというのが、1つの答えなのではないかと思います。
ですから、それをコントロールしようという考え自体が、おこがましいのです。
彼らこそがパイセンなのです。
石川 細菌と書いてパイセンと読むのですね(笑)。
一同 (笑)。
石川 細菌が、まさに僕たちの感情を弄んでいると。
福田 そうです、自己肯定感やワクワク感はもしかしたら、彼らが生み出しているのかもしれない。
だから、彼らとうまく共生するのが大事です。
北川 そうか~、めちゃめちゃ面白い。なんだか正しい気がする。
石川 では、その細菌が弄んでいる感情とは、何なのか? これが問題になってきますよね。
北川 さすがですね!
石川 では、そろそろ次に行っていただいていいですか?
北川 行きますか。
(続)
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続きは 5.「感情」と「行動」のフィードバックループが人類を進化させた をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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