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3.カーボンニュートラルの大前提、光合成メカニズムを発見したメルヴィン・カルビン

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ICC KYOTO 2022のセッション「世界の偉人伝 (シーズン4)」、全8回の③は、毎回優れた研究者を紹介してくださるリバネス丸 幸弘さんの登場。現代では常識となった光合成の仕組みを解き明かしたメルヴィン・カルビンの偉業は、カーボンニュートラルを語る上で欠かせないといいます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはリブ・コンサルティングです。


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 7F
世界の偉人伝 (シーズン4)
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「世界の偉人伝 (シーズン4)」の配信済み記事一覧


 丸です。

今日は途中でツッコんでください。

全然偉人の話が出てこない可能性があるので。

(会場笑)

あっ、だめなんでしたっけ?

シーズン1では、2020年にバーンと上がったグラフをお見せして、これは何でしょう?と聞いたんですよね。

6. リバネス丸さんが選ぶ偉人は、PCR法の生みの親「キャリー・マリス」(シーズン1より)

答えは「PCRのGoogle検索数」で、コロナになって一気に上がるのです。

PCRは、「ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(Polymerase Chain Reaction)」というDNAの配列を増幅させる方法で、決して検査の名前ではないですよみたいな話をしました。

ただ世界的にPCRというキーワードが一気に沸騰する2年前ぐらいに、PCRの生みの親、キャリー・マリス博士(1944~2019)は亡くなりました。

マリス博士は、死んでなお、「PCR」のGoogle検索数をポンと上げました。

すごく面白いタイミングでした。

「カーボンニュートラル」といえば、この偉人

 今回はこれです、皆さん。

日本における「カーボンニュートラル」のGoogle検索数は、今頃伸びています。

アメリカだともっと前に、カーボン○○、カーボン○○…、と入れているけれども、会場でCO2に興味のある方は?

(会場を見て)興味がありますね!

では、CO2に興味があるなら、今日絶対に覚えて欲しい偉人を紹介します。

井上 ちょっと授業みたいですね。

 今日は授業です!

今日はこれを覚えて帰って、この会場から出たら、「知らないの? CO2について今話したよね? 知っているよね?」と言えるようになって、ドヤ顔ができるようになるのが今日のゴールです。

「時折見かけるカーボンニュートラル達成に向けた新技術のニュース」とありますが、カーボンニュートラル、カーボン、カーボン…、太陽光、人工光合成、CO2、化学物質。

「これは何なの?」と。

皆さん、光合成は知っていますよね? 大丈夫ですかね。

カーボンニュートラルとは、カーボン、CO2を固定して、排出と吸収がニュートラルになるということですよね。

ということは、CO2が下がる理由、上がる理由が分かっていないといけません。

上がる理由は分かりますよね?

「燃やす」です。

下がる理由は皆さん知っていますか? 大丈夫ですよね?

この辺、みんな意外と下がる理由が分かっていません。

だから今日は、最もHOTな偉人です。

【リバネス丸さん選】光合成メカニズムを発見したメルヴィン・カルビン

 このHOTな偉人が、こちらのメルヴィン・カルビン(1911〜1997)です。

かっこいいですね。

山内 ダンディですね。

 ダンディです。偉人の話はこれしかありません。

(一同笑)

山内 これ1枚に集約?(笑)

 これ1枚です。

何もないですよ、表に出ないノーベル賞学者です。

「何も」というのは、意外とシンプルだからです。

今までのシーズンに出てきたノーベル賞学者は、奥さんが4回変わったり(キャリー・マリス)、ノーベル化学賞を2つ獲ったり(フレデリック・サンガー)しましたが、この方はすごくシンプルです。

バークレーにずっといました、放射線の研究所にいました。

面白いのは、イケメンだったので、ケネディ大統領とジョンソン大統領のもとで科学諮問委員会と科学技術政策局の顧問を務めました。

アメリカにはだいたいナレッジ系の顧問がいて、僕なんかは今そんな立ち位置でいるのですが、僕は結構憧れている、ちょっと悪そうなヤツです。

井上 ……イケメンと関係が?(笑) 

 はい、ということで、1961年にノーベル化学賞を単独受賞しました。

この時は、僕の感覚では、本当にシンプルにこの研究がすごく上手くできたということです。

当時何が言われていたかというと、光が当たって、どうやら葉っぱは二酸化炭素をデンプンなどの炭素源(C源)に変えていると。

それが、どうやってC源ができているのか分からなかった時代ですね。

当時の仮説では、光がなんとなく葉っぱの中に来て、CO2に直接何か作用して固定されるんじゃないかと言われていました。そうではなくて、実はクロロフィルという光合成色素に光が当たってそれが励起して、その後色々な化学反応が起きてC(炭素)が固定される。

まさにCO2固定のメカニズムを説いた人なんです。

だから、CO2固定と言った瞬間にカルビン先生を思いつかないなら、もう今日からカーボンリサイクルとか、カーボンニュートラルを語ってはいけないということを、今日は言いたかったのです。

これ、分かりますね?

山内 分かります、分かります。

 カルビン博士がいなかったら、「カーボンニュートラル」という言葉はないのです。

山内 なるほど。メカニズムが分かっていないわけですからね。

 そうなんです。だから解けない。

それが、この写真の人です。

この1枚で分かる「太陽の利用法」

 この偉人が何をやったかというのが、これです!

皆さん、色々なエネルギーの話をするけれども、唯一ですよ、宇宙空間で唯一、我々が利用しているものは太陽です。

太陽がエネルギーとして降り注ぐ。インプットとしては、これが唯一ですからね。

ただ質量保存の法則で、地球の中に全部の物質があって、太陽がインプットをしますが、この光には大きく2つあります。

1つは「波」という光で、もう1つは「熱」という温かいほうですね。

この利用の中で、光を使って合成する。

スライドに「光合成」と書いてありますね。

これはもう太古の昔から緑色の生き物がやっています。

ただ問題があって、太陽が降り注ぐと熱はそのまま当たりますよね。

実は植物は熱を利用していません。波を利用しています。

この熱が、例えば、海とかに跳ね返って二酸化炭素の層が厚くなると外に出ていかなくなるので、地球の中が温まるんですね。

今、NHKより詳しく、分かりやすく話しています。

山内 (笑)

 ここまで、いいですか?

太陽からですよ。

これを全部利用していこうというのが、実はカーボンニュートラルとか、カーボンリサイクルとか、テクノロジーで何をやっていけばという…、上のスライドのコピーライトは僕なので、写真を撮ったら、ドクター・マルと書いておいてください。

『研究応援』vol.27(リバネス出版)……PDFのP10に上記スライドについての解説あり

光合成は天然でやっていて、この利用方法を模倣したのが、人工光合成や太陽光発電です。

光合成を使ってバイオマスができるとバイオ燃料やバイオマス発電が出てきます。

熱をそのまま利用するのが、ガス化する方ですね。

虫メガネで光を集めると、あったかくなるじゃないですか。

これを使って、1,000℃以上、2,000℃以上にして、一瞬で炭素をポンとガス化するというので、バイオガスから水素というのが今流行っています。これは超最先端の話ですね。

そして一番面白いのが、もう狂った人がいるんですよ、研究者って。

太陽を地上に降ろせと言っている狂人がいるんですね。

だって太陽が唯一エネルギーならば、太陽を地上に作ろうぜと。

これが今言われている「核融合」ですね。

山内 右上のですね。

 はい。これはもう狂った研究者です。

山内 (笑)

 2045年以降に、「核融合」が当たり前になります。

原子力ではありません。

核融合というのは、太陽を地上に降ろすという仕組みです。

【解説】 画期的進歩が続く「核融合」、どういうものなのか – BBCニュース

いいですか?

これしかないのですよ。

これをコピーしておいて、頭の中に入れたら、これですべてです。

「ここまで分かって、あなた達、カーボンニュートラルと言っていますか?」ということなんですね。

これを言ったのは、カルビン先生と僕だけです 。

山内 (笑)並列になってる。

渡邉 (爆笑)

 並列です。

いまだ解決されていない光合成の謎

石川 ちょっとだけ、また豆知識を。

光合成の謎はずっとあって、今、ドクター・マルが言ったように、光合成はクロロフィルという植物の中の分子が光をキャッチして、その反応中心(光合成反応の最も重用な反応を行う部位)に持っていくんですね。

光合成|キーワード解説|応用生命科学科|学科紹介|生命科学部・大学院(生命科学研究科)|東京薬科大学 (toyaku.ac.jp)

何が謎かというと、光を捉えて反応中心まで持っていく過程で、普通だったら光のエネルギーがそこでだいぶ失われるはずなんですよ。

それがあまりにも高い効率で植物は行っているんです。

ところが人工光合成はそれが全然できなくて、せっかくキャッチしてもすぐ失われてしまうのです。

山内 効率性が全然違うんですね。

石川 そうなんですよ。

なぜ、植物の中は光のエネルギーが失われずに反応中心まで持っていっているのかというのが分かったら、もうとんでもない…。

 とんでもないことになります。

山内 あっ、まだ分かっていないんですか!

 まだ分かっていません。まだまだ。

石川 全然分かっていないんですよ。

山内 へえ!

 光合成の色素の話、クロロフィルとか、例えば他の藍藻だとフィコシアニン(藍藻類などに含まれる青色の色素タンパク質)とか、一口に「光」といっても波長が全然違うでしょう?

紫色から色々な色があって、どの光を励起して固定に回すか。これは光合成の分野なのですが、まさにすごい速度で電子伝達系、まあ水素が回っていくのですが、その水素の駆動で超効率良く、マンガンクラスターのほうに…

これは話すとすごい、もう頭の中にはPS IIの構造が見えちゃうのですが、これがガーっと回って、グルグルグルといって、シュポンときて、ポンと行くんですね。

(一同笑)

井上 擬音が多いですね(笑)。

山内 後で書き起こしの人が困る……。

 後で紙に起こしておきます。

井上 これは記事になると思うので、ちょっと…。

 シュルシュルシュルシュル、ピピピピーン、スーン、スポンでパッとこう行くのですが、その時に…。

(会場爆笑)

石川 何が言いたい(笑)。

山内 書き起こし泣かせ(笑)。

習っているはず…?「カルビン・ベンソン回路」

 その時に出てくるのが、もう1つ。

光合成の中で最も…、先ほど光の話をしましたよね。

光の力を浴びて、水素でエネルギーATPと、NADPH2が出てくるのですが、これです、皆さんが知っている「カルビン・ベンソン回路」という回路に回ってきます。

なので、先ほどカルビン先生を知っているか会場の方に聞いた時に、知っている方がいたんですね。

カルビン・ベンソン回路は、小学校6年生の教科書に載っています。

だから皆さん知っていなかったらおかしいです。

山内 えっ、本当ですか?

 本当ですよ。(会場に)カルビン・ベンソン回路を知っている人?

いや、ちょっと…、子どもいるでしょ? 教科書を見て!(笑)

(会場笑)

山内 絶対ウソでしょ(笑)。

 全員知ってる! (石川)善樹さん、知っていますよね?

石川 カール・ルイスとベン・ジョンソン的な感じで覚えていただくなら。

(会場笑)

 ノー、ノー! カ・ル・ビ・ン・ベ・ン・ソ・ン回路!

(立ち上がって)知っていますよね?

あれ? 嘘でしょう?

えっ? 小学校からやり直してください。

山内 いや、大丈夫です。会場の皆さんのほうが普通ですから、大丈夫ですよ。

 でも、カルビン・ベンソン回路は教科書に載っていますからね。ねっ!

渡邉 本当ですか? 小6?

 小6だったと思う。中2かなあ?

(会場笑)

資料集だったかなあ。

▶編集部注:検索してみると、カルビン・ベンソン回路は高校生の生物の教科書で紹介されているものが多いようです。光合成は、中学校の理科で学習します。

ちなみに僕は植物工場研究者として、中学校の理科の資料集に載っていますからね。

▶編集注:学校図書『中学校 科学1』P.197(2015年)に掲載

ちょっと自慢です。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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