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ICC KYOTO 2022のセッション「世界の偉人伝 (シーズン4)」、全8回の最終回は、デュシャンのまとめと、今回紹介された偉人たちについての総括です。彼らに共通して言えることは、その仕事や発見により、私たちの目線がアップデートされることという結論が導き出されます。最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはリブ・コンサルティングです。
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【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 7F
世界の偉人伝 (シーズン4)
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授
(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー
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渡邉 芸術の世界でよく言われるのは、小便器という大量生産された便利なものを、便利じゃないかたちで展示し“脱臼”させるという意図や、アートという制度そのものを揺さぶりたかったという話があります。
デュシャンを偉人と呼ぶ理由
渡邉 なぜデュシャンを偉人と言いたいのかというと、個人的には3つポイントがあると思っています。
1つ目は、「価値を捏造した」。
一見何も作っていない。でもそれによってみんなが議論して、ぎょっとして何か話し始めるじゃないですか。
オリジナルとは何なのかとか、それって本当に価値があるのか?という。
今、Stable Diffusion(画像生成AI)などが話題になっていますね。オリジナリティとは何なのか、そこで認められる権利や倫理とは?といったテーマ、いまだにすごく実際的です。
2つ目は、「ウィットやアイロニーを取り入れた」。
他の作品でいうと、『L.H.O.O.Q. 』(1919)という、ポストカードのモナリザに髭を描き込んだ作品があります。
アルファベットを読み上げたときの発音は “Elle a chaud au cul(エラ・ショ・オ・キュ)”と聞こえます。これは、「彼女はお尻が燃え上っている」という卑猥な意味になるんですね。
デュシャンはこういうジョークが大好きで、言葉遊びみたいなものによって社会批判を行った人なんです。
ルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・デザイナーを務めた、ヴァージル・アブロー(1980~2021)はデュシャンの信奉者で、アイロニー(皮肉)を使うとオタクにならずに人と知的なテーマを話題にできるんだ、と言いました。
たとえば飲み会とかで、突然知性溢れることを言ったら、のりが悪いと思われたり、ドン引きされたりする。
そうならないためには、アイロニーが必要なんだよということを言っている。アブローはデュシャンから学んだんですね。デュシャンは、これを正面からやった人だと思います。
鑑賞者が自分なりの読解で作品を完成させる
渡邉 3つ目の、「人々の知性を信じた」というのが、非常に大事なポイントだなと個人的には思っています。
デュシャンは、絵画というのは網膜に留まりすぎだ、網膜ではなくて、脳に訴えろということを言っていたんですね。
見るほうも考えられるんだから、目で説得させるのではなく、考えさせろと。
だから、アーティストが完成させるのではなくて、鑑賞者が自分なりの読解によって作品を完成させていくんだよということを言ったのです。
これら諸々を踏まえて、現代アートのルールをすべて作ったと評価もされるし、世界中の専門家から一番影響力があったとも言われるわけです。
個人的に偉人とは何か?と聞かれるならば、「ダジャレによって世界を変える人」かなと思っています(笑)。
(一同笑)
丸 なるほどねえ、変な人がいるんだね。
(一同笑)
井上 ある種、自らリスクを取って固定概念を壊しにいって、問いかけたという、問いの天才じゃないですか?
山内 いや、やばいですよね。
渡邉 しかも写真の撮り方が、マリア像とかに見えてきませんか?
丸 いや、見えない(笑)。
(会場笑)
渡邉 寄稿されている文章に、“Buddha of the bathroom”と書いてあるんですよ。
丸 へえー。
渡邉 「ブッダに見えるだろう?」と、別の批評家が書いているのです。
もう価値の転覆ですね。
今回の一番の偉人は誰か?
井上 ありがとうございました。
四者四様の偉人の話を聴きましたが、あっという間でしたね。
最後に恒例の、誰が一番偉人だと思うか、アンケートを取って締めたいと思います。
山内 日本人なら、伊奈 忠次!
井上 伊奈 忠次が一番偉人だという方は?
山内 おお、ありがとうございます、さすが日本人!
井上 メルヴィン・カルビンだという方は?
丸 おおっ!
渡邉 ここでほぼ決定?
井上 グロ・ブルントラントだという方は?
私は、ブルントラントがすごくいいと思いました。
石川 いいですよね。
丸 まだ生きているから。次回に回せばよかった?
井上 では、マルセル・デュシャンだという方は?
登壇者一同 おー。
渡邉 ちょっと上がりました。ありがとうございます。
井上 結構、今回いい勝負でしたね。
渡邉 いい勝負でした。
山内 拮抗していましたね。
井上 伊奈 忠次はいないかなと思ったんですが、結構いましたね。
丸 僕はぶっちゃけ、伊奈 忠次が一番面白かったです。
山内 ありがとうございます。
丸 初めて知ったし、すごい人がいるんだなと。
石川 利根川を曲げた。
丸 そう。
山内 僕はいつか丸さんをここに。
丸 ぜひ。
山内 お亡くなりになられたら。
丸 いやもうぜひ…、いやいや、死ねってこと?(笑)
石川 いや違います。80年後とかに。
丸 まあそうですね、誰か、子どもや孫の世代が言ってくれるといいな。
山内 シーズン165とか。
丸 そうですね、いやー、面白い。
今回の感想&シーズン5に向けて
井上 最後に、それぞれ感想をお願いします。
山内 では、プレゼン順でいきましょうか。
まだまだ世界に誇れる日本人はいますので、ガンガン紹介していきたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
丸 今日面白かったのは、伊奈 忠次のような、知られていないけれども、今の我々の生活にも直結していることをやった人が出てきたり、現在進行形のSDGsも、初めて、「ああ、成長からdevelopment、そして次にWell-beingという流れなんだ」と感じたり、あとはデュシャンみたいになっていいんだなということです。
自分もたまにやっているかもと思いました。
山内 (笑)
丸 (石川さんに)分かるでしょ? なんとなく。
山内 僕からすると、デュシャンに結構近いと思いながら聞いていたんですけど(笑)。
丸 申し訳ないけれど、たまにやってるな、自作自演やってるな、みたいなことを感じたので。
井上 重なっちゃいました?
丸 ちょっと重なりました。
でも、やっぱり僕の本命はカルビンです。研究者なので。次回クビになっていなければ、またその時のホットな偉人を紹介したいと思います。
僕はもっとサイエンスをこのビジネスの業界の人に知ってほしいなと思っているので、もしよければ是非また呼んでください。
ありがとうございました。
石川 アンケートがあって、皆さんが書く内容でシーズンの継続が決まります。
その際に、自分だったらこういう偉人を紹介したいと書いていただければと思います。
多分このセッションは、色々な人が出てきて話したほうが面白いと思うので、ぜひ私が紹介したい偉人をアンケートに書いてもらえるといいなと思います。
丸 ステージに上がってもらっても。
渡邉 川の流れを曲げたり、光合成のメカニズムを説いたり、経済の概念を新しいレベルに引き上げたり、あとは美術の概念も…。
4人の偉人に共通しているのは、私たちが世の中を見る目線をアップデートした人たちだということですよね。
世の中はもちろんこれ以降も変わっていきますが、物質的に変わることと同時に、世界を見る人の「まなざし」が変わってしまうことがある。すると物質が変わっていなくても、昨日と今日が違って見える。そんなパワーを持っているのが、偉人の影響力かなと改めて思いました。
ありがとうございました。
井上 僕は本当にこのセッションが好きです。
偉人のことをすごいなと思うだけではなくて、やはりICCは共に産業を創るということなので、渡邉さんに言っていただいたように、目線をもう一段上げて、人とは違うことを考えて、それをちゃんと伊奈 忠次のようにやり遂げるというところに、自分自身もそうですし、皆さんと一緒に取り組んでいきたいなと思いました。
改めまして登壇者の皆様に拍手いただいて、このセッションを終了とさせてください。
ありがとうございました 。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美