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5.日本発で作ったSDGsの概念を形にしたブルントラント

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ICC KYOTO 2022のセッション「世界の偉人伝 (シーズン4)」、全8回の⑤は、石川 善樹さんの登場。SDGsというコンセプトを80年代に打ち立てたノルウェーの元首相で元WHO事務局長のグロ・ブルントラントを紹介します。この概念を作るために日本も実は一役買っていたのだとか。前後の興味深い解説も含め、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはリブ・コンサルティングです。


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 7F
世界の偉人伝 (シーズン4)
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「世界の偉人伝 (シーズン4)」の配信済み記事一覧


【Well-being for Planet Earth石川さん選】グロ・ブルントラント元WHO事務局長

石川 僕は、グロ・ブルントラント(1939〜)さんという人を紹介します。

 まだ生きている?

石川 生きています。

価値があるのは過去→未来という考え方にシフト

石川 紹介をこういう問いから始めてみようかなと思いますが、非常に大きい問いです。

人類の意思や国際社会の意思は、どうシフトしてきたか?

山内 これまた壮大な問いから(笑)。

石川 壮大な問いからなのですが、重要なシフトがこの200年ぐらいにありました。

それが、「未来には価値がある」という考え方ですよね。

それまで価値があったのは、過去だったのです。

日本でも江戸時代は、古代中国はすごいとか、ヨーロッパでも古代ローマ、古代ギリシャのように。

基本的に未来は死が待っているだけで、そんなに価値あるものではなかったのですが、未来には価値があって、それを積極的に作るんだというふうに、まず国際社会や人類の意思がシフトしました。

山内 なぜなんですか?

石川 なぜなのか分からないですが、何か共同幻想を持つようになったのです。

では、どうやって価値ある未来を作るのかという問いがあります。

「成長」と「発展」はちがう

石川 ブルントラントさんの話をするためには、この人を紹介しないといけないのですが、ヨーゼフ・シュンペーター(1883〜1950)です。

ヨーゼフ・シュンペーター – Wikipedia

彼は1912年に『経済発展の理論』を発表するのですが、経済“成長”の理論ではなかったところが重要です。

シュンペーターは結局何を一番言いたかったかというと、価値ある未来の作り方には2種類あって、「成長」と「発展」であるということでした。

何が違うかというと、「成長」は基本的に量的な拡大で、国土の拡大、軍事力の拡大、GDPの拡大などのように、いわゆるスケールと言われるようなものです。

「発展」は、社会に質的な変化が起こることと定義しました。

では、社会に質的な変化がどう起こるのか?

それは、起業家によるイノベーションによって起こるのであるとしました。

シュンペーターは、「イノベーション」という概念を提唱したことで有名ですけれども、なぜイノベーションを提唱する必要があったのかという背景には、この「成長」と「発展」を分けて考えたかったんですね。

『経済発展の理論』というように、シュンペーター自身はどちらかというと、発展論者でした。

拡大してもしょうがないだろうと。

ただ残念ながらシュンペーターの思惑通りにならずに、20世紀は経済成長(Economic Growth)がすごく重視されました。

「持続的発展」というコンセプトが誕生

石川 ここに、持続的発展(Sustainable Development)というお化けみたいなコンセプトを1987年に作ったのが、ブルントラントさんなのです。

今僕らがSDGsと言っているものの原型は、ブルントラントさんが作ったそうです。

井上 80年代だったわけですね。

石川 そうなんです。

 ここで、Sustainable Development……と。

石川 そう、ここなんですよ。

重要なのは、Sustainable Growthではなかったことです。

Developmentです。

言葉に込められた想いはすごく大事で、Economic Growthはもちろんいい部分もありますが、環境破壊、人権侵害などの負の側面もあるから、Sustainable Developmentだと。

では、これはどういう定義だったのかというと、将来世代のニーズを「損なうことなく」現在のニーズを満たすこと、これがSustainable Developmentであるとしました。

井上 これもいいですねえ。

石川 これはまずポイントが2つあって、1つは「将来世代」というキーワードです。

「次世代」にしなかったのです。

長い時間軸です。

 もっと将来ということですね。

石川 そうです。

渡邉 時間軸が長いんだ。

石川 もう1つが「損なうことなく」です。

つまり、基本的にSustainable Developmentは、将来世代に負の遺産を残さないというコンセプトです。

SDGsは日本政府の働きかけで作られた

石川 ブルントラントさんの紹介は、今回一気に省こうと思っています(笑)。

ただ重要なのは、彼女はノルウェーの首相を務め、色々国連の組織で働いていた人でもあるのですが、国連ができた時の初代事務総長が、実はノルウェー人でした。

それを幼い頃に見ていて、自分も国際的なリーダーになりたいと思って、ブルントラントさんがリーダーとして、国連の「環境と開発に関する世界委員会」で委員長を務め、ブルントラント委員会と呼ばれました。

これがきっかけとなって1992年のリオ宣言になって、今のSDGsになっています。

SDGsは急に起こったことではなく、ちゃんと歴史的な流れがあります。

ブルントラント委員会は、1984年にできた世界委員会です。

ブルントラントさんが委員長だったので、ブルントラント委員会となりましたが、賢人会議のような感じで、21人の世界的な有識者で構成されました。

この委員会を立ち上げようと誰が言ったかというと、実は日本なんです。

丸・渡邉 へえ!

石川 日本政府が1982年に特別委員会を作ろうと提案して、国連総会で承認されていますね。

つまりSDGsの根幹には、日本政府の働きかけがあったんですよ!

山内 (感心して)はー。

井上 これは、どなたというのは、分かるんですか?

石川 歴史が残っていなくて、分からないのですが、多分外務省の誰かなんですよ。

すごい役人が多分いたんですよ。

井上 すごいですね。

山内 ドンピシャですものね。

石川 そうなんです、SDGsは外から来たのではないんですよ。

日本発で作った概念なんです。

山内 へえ!

石川 もっと分かりやすく見ると、世界恐慌をきっかけにしてGNP、GDPという指標が出てきたんですね。

Gross Domestic Productという言葉にあるように、生産にこそ価値があるという考え方です。

だから生産に組み込まれなかった家事とか、あるいは研究開発みたいなものも当時は生産とみなされなかったんですね。

研究開発がGDPに組み込まれるようになったのは、21世紀に入ってからですよ。

21世紀に入って日本のGDPは、研究開発を取り込んだのでボンと増えました。

それを政治家が見てなんと言ったかと言うと、皆さんGDPが増えましたねと。

実際は、定義が変わっただけなのですが。。。

重要なのは、長らく生産にこそ価値があるという共通理解でしたが、SDGsはニーズにこそ価値があるということなんですよ。

そして、将来世代のニーズを損なわず現代のニーズを満たしていくんだと、だからニーズの満たし方にすごく特徴がある概念なのです。

石川 皆さんご存知の通り、SDGsは2015年から始まって2030年で終わるんですね。

次のグローバルアジェンダは何なのか?

2031年から2045年の国連生誕100周年に向けての、ここのグローバルアジェンダなんですね。

 この2045年でオフセットされているんですね。

石川 オフセットされています。

SDGsを日本が作ったのであれば、次のグローバルアジェンダも、始めるだけでなく、日本がしっかりグリップしたいところですよね。

今やすべての産業がSDGs産業とも言えるようになってきているので、次の産業やコンセプトは何かということです。

それをどういうものにしたいのかというのは、私たち次第です。

ブルントラントに続く偉人は誰?

石川 次のブルントラントが誰なのかという、偉人はどうしても過去の人の話ですが、今日僕は未来志向の話もしたくて、次の偉人がもうこの地球上のどこかにいるのです。

その偉人はSDGsの次のコンセプトを作ってくれる人なんじゃないのかなということで、皆さん名乗りをぜひ上げていただきたいなと思います。 

山内 Well-beingなんじゃないですか?

石川 ん?

山内 Well-beingなんじゃないですか? SDGsの次は。

石川 あっ、……分かっちゃいました?

(会場笑)

山内 えっ、なんか「言え」みたいな顔をしていたから、一応空気を読んで言ってみたんですけど。

 (笑)

石川 ありがとうございます。

色々な理由があって、次は多分Sustainable Well-being Goalsになるんじゃないかな。

山内 なるほど。

石川 そうしたいなと思っています。

山内 ちょっとその機運になってきていますよね?

 でも、Developmentじゃないんだ、発展じゃなくなる。

石川 そうなんです。GrowthもDevelopmentも、どちらかと言うと経済に寄った概念です。

そこに欠けているのが、政治的な平和だったり、あるいは社会的な文化、芸術、例えば、ローカルの工芸品のような社会的視点が、今のSDGsにはないんですよ。

 ないですね。Developmentだからなあ。

石川 だから、経済的概念に寄り過ぎているから、Developmentではないんだと。

次は政治的、社会的な面も含めて何が共通コンセプトになり得るのかということで、日本からSustainable Well-being Goalsを次のグローバルアジェンダにしようではないかという動きが始まっていますが、それはまたどこかで(笑)。

(会場笑)

 Growth、Development、Well-being……

井上 ありがとうございます。

皆さん気付きました?

利根川を曲げる話(Part.1〜2参照)から始まりましたが、それはもう温暖化にとって必要な技術です。

その後で光合成ですね、ルビスコ(Part.3参照)。

そして、SDGsからのWell-being。

ここで満を持して、渡邉さんの登場です。お願いします 。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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