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ICC KYOTO 2023のセッション「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」、全7回の④は、いつ、どのように環境問題や社会問題を強く意識するに至ったかを議論します。それは個人の想いからだったり、建築であったり、サステナブルからリジェネラティブへの転換であったりとさまざま。登壇者の熱い想いを、ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 10D
リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)
Supported by エッグフォワード
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▶「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」の配信済み記事一覧
山崎 この後、皆さんに色々なリジェネラティブケースを聞いていこうと思っていますが、そもそも作るという行為自体が環境負荷になるので、理想は作らないことであるという考え方もあります。
僕もリジェネラティブについて調べましたが、環境負荷を減らすというよりも、環境をより良くする、還元するというところまで到達すると、かなりレベルの高い作業だと思っています。
皆さんのケースを聞く前に、もともとリジェネラティブについて考えていたのかどうかを聞きたいと思います。
僕は正直、最初は環境問題にはあまり興味がありませんでした。
マザーハウスの原点は、途上国で虐げられている人たちの可能性を発揮させるというところにあります。
もともとメーカーとして、ものを作ることに対してネガティブな感情がなかったわけではないのですが、最近はRINNE(リンネ)を作るなど急激に、環境問題への取り組みを進めています。
でも皆さんの場合、特に秋吉さんや福島さんは、最初からかなり設計されていた印象を持っています。
脱炭素社会やサステナビリティへの意識は、どう変わってきているのか聞かせてもらえないでしょうか?
失われてしまった人間の能力を取り戻したいという想い
秋吉 僕の場合、どちらかと言えば、人間から始まっています。
学生の時に創業し、僕はデザインを学んでいましたが、デザインの力で世の中に何かインパクトを与えられるリテラシーがなかったのです。
つまり、デザインの絵は描けてもても、それを実現するための能力を持っていなかったのです。
それが自分にとって課題だと思っていました。
頭で考えたものを実際につくることは、本来人間に備わっていた力です。
二項対立(前Part参照)と似た話かもしれませんが、自分では作れない、だからお金でアウトソースして外部に頼んできた、だから裏側で何が動いているかも分からず、結果だけを受理するしかなくなるのです。
それに対して積極的に、自分ごととして関与しようと考えた時、人間本来の能力を回復するサポートをすれば、人間と自然の付き合い方が変わり、それによって環境問題も解決し、もとにあったものを再生できるのではないかと思いました。
社会に出て初めて、木にニーズがあることが分かったので、タッチポイントを作っていったということです。
根本にあるのは、失われてしまった人間の能力を取り戻したいという想いです。
山村に行くと、当たり前ですが、自分で木を切って建てて管理して、食料も自分で調達している人たちがいます。
そういう状況がなくなってしまっていっていることへの危機感から、事業が始まっています。
人間と自然がコミュニケーションをとるためのリテラシーやコンピテンシーみたいなものを回復するべきだという考えから始めているので、環境問題などという大きな主語はほとんど考えていなかったですね。
山崎 すごく面白いですね。
自然を守ろうとする心は自然に触れてこそ生まれる
福島 僕らは、「Live with nature. 自然と共に生きる。」という言葉を掲げています。
創業時、この言葉に行き着くまでに6カ月ほど議論をしました。
僕は自然が好きなので、自然の中に遊びに行きたい、でも自然を事業化すると傷つくから何のためにやるか…という内容を、ずっと議論していました。
その時に、写真家であり冒険家である石川 直樹さんという方の個展を見に行きました。
そこで、「マオリの住む原生林がなぜ今の状態を保っているかというと、彼らが自然に畏怖の念を抱きながらも触れ合ってきたからだ。自然を守るという上から目線の姿勢ではなく、触れ合って対話をして畏れることから物事は始まるのではないか。」という内容のメッセージを見ました。
それを見て、気づきを得ました。
森の中で空気を吸ってすごく気持ち良いと思ったことがない人が、自然を守ろうという本質を持つのは不可能だと思っています。
ですから、まずは人を自然の中に連れて行きたいと思いますし、僕ら自身も行くことで幸せになりたい、これが最初の思いです。
でも、日本の地方に行くと、昭和時代のコンクリート廃墟がたくさんあります。
サステナブルではない建築には、気持ち悪いという体感や嫌だなという感覚があります。
ですから、心地良いと思える建築を作っていこうとして、環境共生型に自然と行き着いたという感じですね。
山崎 すごく面白い話ですね。
田口さん、いかがでしょうか?
チラシ1つ作るのにも環境負荷を考える
田口 最近立ち上がった会社と、17年前に立ち上げた会社では、状況が違います。
17年前から、3つの合言葉というか、バリューのようなものを設定しています。
まず「ファミリーワーク」、これはチームワークと同様、家族のように助け合う仕事をしようということです。
そして「Something New」、新しいことをやろうということです。
最後に「エコロジーファースト」です。
これらは、ずっと昔からあります。
何かを行うにあたり、優先順位をつけなければいけないときは、環境負荷をかけないように行います。
例えば通販事業の場合、DMを送った分だけ、途上国の農村部から購入できるハーブの量は増えますが、環境負荷をかけるDMを送っていいかどうかを考えた上で、「送ってはいけない」というルールにしています。
ですから、何かしようとしたとき、例えばチラシを作ろうとしたときに、「チラシは作っていいのでしたっけ…?」という意見が出ます。
そういう考え方が浸透しており、ふとした時に、逆に僕が指摘されることもあります。
ただ、リジェネラティブという考え方は…僕の定義で言うと、人間が入ることで自然がより良くなるのが、リジェネラティブとサステナブルの違いだと思います。
サステナブルは、環境負荷はかかるが、なるべくかけないように頑張ろうという考え方ですから、リジェネラティブの概念は新しいものです。
この視点を入れる、つまり、人間が手を加えることでより良くなるというのは本当にめちゃくちゃ難しいので、真剣に向き合わなければいけないと感じています。
サステナブルというのは、本当の意味では環境負荷をかけていることになるので、すごく良い言葉を投げかけられたなと思っています。
その視点は、創業時には持ててはいなかったと思います。
永田さん、いかがでしょう?
既存を打ち砕き成功することで道を示したい
永田 そうですね、これは会社というよりは僕個人の話です。
もともと貧困問題に取り組もうとして立ち上がった会社ですが、なぜ今、自分がこれほど情熱を持って頑張れているか。
福島さんはご存知のように、僕は田舎の自然の中で暮らしています。
僕がヤギを飼って野菜を育てて生活しているように、会社で何かをしなくても、自分自身の、個としての自然回帰は実現できるのです。
本当に自然回帰が大切だと思えば、自然の中に住むことはできるはずです。
つまり、個人のリジェネラティブな世界の実現と会社による活動の意味と結果は違う。会社の活動は社会に影響を与えるものであるし、そうあるべきだと信じている。
なので、既存の色々なものを享受している既存企業が、他人や未来のことを考えていないとしたら、それにものすごく腹が立つのです。
山崎 僕も全く同じ考えです。
永田 だから、パンチ力を持ちたいという気持ちがものすごく強いのです。
本来、エネルギーや肥料というコモディティマーケットは、ベンチャー企業としては参入してはいけないのです。
でも自分たちが気持ち良くなるのではなく、既存のものをきちんと打ち砕き、資本主義という考え方に基づいた成功をすることで、みんなが「この方法でもできるんだ」と思えるよう、道を示したいという思いが僕の根本にあります。
ですから僕は、ユーグレナが取り組む社会課題は、環境でも貧困でも、何でも良いと思って立ち向かっていますね。
トレンドフォロー型ビジネスではリジェネラティブの発想はできない
山崎 ありがとうございます。
今の話はすごく大事だと思います。
リジェネラティブという言葉の前に、今日の登壇者に共通するのは、価値へのこだわりというか、自分たちの原点に対するこだわりであり、そこに関わる人たちに対する究極の愛情だと思います。
秋吉さんの考え方も、マザーハウスと全く同じだと思いました。
僕らも途上国で皮革工場で作っていましたが、結局それではできないので、工場から店舗まで全ての機能をやることになったのです。
本気でブランド作りをした結果そうなったということであり、関わる人全員がハッピーになれるバリューチェーンやサプライチェーンを作れないのかというところに、最終的に行き着いたわけです。
それが、自然、人、見えない声などのリジェネラティブという文脈となり、時間軸を伸ばしていくと、負荷削減ではなくむしろ回復に変わっていくということなのだと感じました。
やはり共通点があるなと思って聞いていましたし、どちらかと言えば、起業家目線でそう思いました。
世の中には、トレンドフォロー型のビジネスの方が圧倒的に多いです。
「今AIの波が来ているから、みんなAIに取り組もう」、みたいな。
そういうビジネスは焼畑農業的になりがちだと僕は思うので、リジェネラティブの発想はできないですよね。
今日の登壇者に共通するのはなかった価値を作ることで、それに向き合えたのは、めちゃくちゃこだわりがあるからで、そうなると必然的に周りの人が巻き込まれていくということになるのかな、と僕は理解しました。
どうでしょうか?
永田 いやー…この1つ前は「爆速経営」、その前は「資本主義で勝ち切れ」というテーマのセッションに登壇したので、精神分裂してしまいそうな…(笑)。
(会場笑)
山崎 どうなの、それ(笑)?
永田 この場があって有難いなと思っています(笑)。
山崎 (笑)。
金融の世界との付き合い方を教えて!
福島 僕は、経営者としては、金融の世界とのお付き合いの仕方にすごく悩んでいます。
リジェネラティブや環境問題においては、時間軸を長く捉えましょうという話もありましたよね。
でも、1回目の起業で資金を調達して、既に発車した電車に乗っていると、見えない壁にぶつかるというか……「めちゃくちゃ早く成長して」と言われているわけではないのですが、そうでなければいけないと日々思い悩みながら事業をしています。
どう思いますか?
山崎 外部資本の人たちに、理解してもらえますか?
福島 一応理解はしてもらっているし、一周回って、そういう面も徹底することが事業の…何でしょう、色々な意味での世界観の統一とか、別にそれゆえに顧客が選んでいると100%言うわけではないですが、結果を出していればいいのではと言われている程度かと思っています。
それがずっと継続するものなのか、途中で追い出されるのか(笑)、ぼんやりですが悩みながら経営していますね。
永田 恋愛において、自分のことを100%分かってほしいタイプですか?
福島 えっ…(笑)?
(一同笑)
いや、そんなことないですよ。
永田 僕は、リアルテックファンドというファンドも運営しています。
10年前、研究者に投資すると言ったら、アホだと言われました。
でも今、ディープテックはトレンドです。
なぜそうなったかと言うと、想いが伝わったからではなく、儲かりそうだからです。
そういう理由で人が集まってくるのは嫌なのですが、「目的は果たした」と思おうと思ったのです。
先ほどの資本主義の中でどうしていくかの話に近いのですが、僕は結果的に、相手の土俵で勝負しようと決めているのですよね。
山崎 多分みなさんは、難易度が高ければ高いほど燃えるタイプで、せっかく解くなら難易度の高い問題を解こうという人たちですよね?
なぜなら資本主義だけで評価されようと思うなら、もう少し違うやり方があると思います。
研究者に投資をするなど、難易度が高くて評価されにくい世界で、儲かるというところに到達するまではすごく大変ですよね。
一見儲からなさそうな分野で、モデルを作って儲けていくのは結構大変で、一般的な事業よりも難易度が高く見えると僕は思います。
永田 うん…でも、燃えられないものに人生を懸ける方が、難易度が高くないですか?
山崎 そう、それを当たり前のようにそう言えるから、皆さんはここに座っているのだと思います。
永田 なるほど。
山崎 世の中は、もっと楽して儲けたいと思っている人たちがほとんどなのです。
永田 でもそれだと、ゲームの点が上がっていくのと変わらないですよね。
山崎 でも、基本的にそうですよね、資本主義の世界でも。
永田 そうなんですね、なるほど。
山崎 ということで、このあたりで前段の話は終えて、今日の本題の一つでもある、皆さんのケースを紹介していただきしましょう。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成