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「社会をより良くする革新的なハードウェア・スタートアップは日本から生まれるのか?」【F17-5B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その6)では、製作するハードウェアのテーマの決め方・PDCAの回し方について議論しました。各社それぞれの流儀があり興味深いです。是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 8D
社会をより良くする革新的なハードウェア・スタートアップは日本から生まれるのか?
(スピーカー)
岩佐 琢磨
株式会社Cerevo
代表取締役
町野 健
KAMARQ HOLDINGS PTE. LTD.
取締役CCO
吉藤 健太朗
株式会社オリィ研究所
代表取締役CEO
三宅 徹
株式会社未来機械
代表取締役社長
(モデレーター)
守屋 彰人
ダイソン株式会社
Head of Direct
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最初の記事
【新】革新的なハードウェア・スタートアップは日本から生まれるのか?【F17-8D #1】
1つ前の記事
「変な」ハードウェアを矢継ぎ早に市場投入する「Cerevo(セレボ)」【F17-8D #5】
本編
守屋 今日は、オーディエンスの皆さんと一緒に盛り上がれるような論点にフォーカスして議論したいなと思います。
自分たちの生活の実体験から不満を解決しようと領域を定めた人もいらっしゃるかと思います。
一方、そうではなく、ビジネスで勝てそうな領域を論理的に定めたという方もいらっしゃるかもしれません。
アイディアの生み出し方や、研究開発テーマの定め方をどのように行ってきたのか?試作を作るには当然お金がかかりますので、トライアンドエラーの回数、そこに必要な投資額をどのように定義しているのか?
守屋 インターネットサービスですとプランナー、編集、クリエイティブ、フロント・サーバーサイドエンジニアがいて、アプリも作るのであればアプリエンジニアという5、6人のチームで、年間で3,000万円〜8,000万円位あれば色々なトライができますが、ハードウェアはそうそう簡単ではないと思います。
そこで、どのようにテーマを定め、どの程度の試作回数・投資額から始めたのか、それぞれにうかがいたいと思います。
では、三宅さんからお願いします。
施策の回数も予算も決めずに始める
三宅 まず試作の回数も、予算も定めずに始めます。
というのも、いくらかかるか分からないからです。
できたものの性能によってマーケットの大きさが決まるので、いくらかけていいかも最初は分からないんです。
当然マーケットを調べ「これ位のマーケットがあるから、これ位の製品かな?」とは描けるのですが、それで商品ができる保証はありません。
計画はしますが、それには縛られずに取り組みます。
守屋 それは大学発ということも手伝っていますか?
三宅 大学発しか経験していないので分かりませんが、手伝っているかもしれません。
守屋 なるほど。
テーマの定め方はどうですか?
誰もしたことがないことに絞る
三宅 まずは誰もしたことがないことに取り組みます。
皆がすごいと思ってくれることしか行いません。
守屋 ビジネスチャンスを探す発想でしょうか?
三宅 そうです。
ビジネスチャンスがあり、今まで解決されていない問題を考えます。
窓ふきの経験でいうと、窓掃除というマーケットはすでに存在するマーケットなので、スイッチするコストが高い訳ですね。
新しいロボットが出てきても、従来の手作業に置き換えることは難しいのですが、太陽光発電は最近できてきたマーケットなので入りやすいということが分かりました。
そのような意味でも、今できた新しいマーケットの方が入りやすいですし、力を入れていきたいと思っています。
守屋 そのようなテーマがもしも複数あったのであれば、他にどのようなことを考えていたのか教えていただくことって可能でしょうか?
三宅 沢山テーマがあった訳ではないんです。
やはりソーラーパネルの掃除が、今あった考えの中では一番良かったということです。
守屋 窓拭きの応用でいくと、ソーラーパネルの掃除が面白いのではないかということで、的を絞ってトライし、細かく予算を定めずにまずは作ってみて、かかったコストを計算しながら進めてきたということですね。
ありがとうございます。
町野さんはいかがですか?
インドネシアの自社工場で低コスト開発
町野 弊社は、ザ・王道です。
どベンチャーで、大学発でもありませんので、資本がない状態から始めなければなりませんでした。
守屋 手元資金で?
町野 企画を思いついた後、事業計画書を作り、資金調達を行うという方法です。
守屋 どれ位のコスト感で音のなる家具(SOUND TABLE)は作れるイメージでしょうか?
町野 実際にかかった費用でしょうか?
守屋 言える範囲で構いません。
町野 金額は低い方なのかもしれません。
500万円は超えていないと思います。
守屋 そうなんですか?
町野 はい。
弊社は、先程お話したインドネシアの工場を自由に使えるということが非常に強みです。
守屋 元々そのような会社のセットアップだったのですか?
町野 そうです。
弊社代表が元々インドネシアの家具工場を経営していたので、そこをベースに使え、非常に安く取り組みできることが強かったかもしれませんね。
守屋 自社の資産をレバレッジし、できることの範囲内で何をするかという考え方ですね。
町野 はい。
オリィ吉藤「ものづくりをしたい訳ではない」
守屋 なるほど、ありがとうございます。
オリィさんはどうですか?
先程の話で少し触れていましたが、自己の体験からテーマを定めたということですね?
吉藤 そうですね。
守屋 このロボットを作る前、他にどのような取組みで、寝たきり等の方が自分自身を幸せにできると考えましたか?
吉藤 私は、ものづくりがしたい訳ではないんです。
工業高校だったこともあり、たまたま昔からものづくりができるということでロボットを考えました。
人が集まる場を作ることを考えたり、高専では人工知能をしばらく勉強していました。
車椅子で移動できない人にとっても、病室に都合の良い人工知能ロボットがあると良いじゃないですか?
私のやりたいことは孤独の解消なので、手段は問わないことにしています。
何が一番良いのか考えながら、1年ほど人工知能の取り組みをしていたのですが、人工知能では人を癒せないと私は考えるようになりました。
人工知能については止め、その後早稲田大学が呼んでくださったので、「ロボティクスだ」と思い、ロボットを学びました。
吉藤 そのうち人間に合う方法を考えようと思うようになり、ウェブサービスという方法も考えたのですが、人は出会うために外に行くのだと気づきました。
人が外に行く理由は、社会の営みに参加するためでしかないと思います。
今、電話のようなもので社会と繋がることはできます。
けれど、電話やテレビ電話で社会に参加できるかというと難しいのが現状です。
私自身入院している時に電話をしようものなら、相手側は「忙しい時にかけてきて」と折返しのやり取りとなり、それが何度も繰り返されると相手側は苛立ってきます。
「自分に体があれば、こんなことができたはず」というところから、このようなロボットを作ろうと考えました。
一人で考えるとぶっとんだアイデアが生まれる
守屋 その思考のプロセスは、ずっと一人でされてきたのですか?
それともメンバー、仲間がいたのですか?
吉藤 一人で行なっています。
私は、試行錯誤や、プロトタイプを作ること、先程の大きなOriHimeも、人工知能も、目で動く文字盤も、基本的には一人で製作しています。
コンセプトや解決法を皆の知恵を出して考えるということを、実は私はあまり信じていません。
一人で考えた方が、ぶっ飛ぶアイディアといいますか、誰も考えていなかったアイディアが生まれますが、ホワイトボードの前で、皆でワイワイ考えたものは基本どこかにありがちなものになってしまいます。
ですので、私は会社を作る前はずっと一人で考えてきました。
会社になってからは、エンジニアたちが製品化をしっかり頑張ってくれるのでありがたいのですが、基本何かを作る時は自分で考えます。
徹夜も自分一人であればできますしね。
守屋 なるほど。
投資に対する回収についての発想はほぼないということですね?
吉藤 そうですね。
その辺に関しては、社長を早く誰かに代わって欲しいと思っています。
(会場笑)
吉藤 OriHimeを使って下さっている方が何百人といるのですが、現場で彼らに会いに行くと、「絶対ここは解決して欲しい」という意見が必ず上がってきます。
どうすれば解決できるか考え、すぐ作り、次の日に持って行くということを行なっているので。
守屋 そうすると、お三方とも何らかのレバレッジできる資産があったという感じでしょうか?
三宅さんは大学の研究室があり、町野さんは自社の工場があり…。
三宅 私は、大学の研究室の資産は全くありません。
守屋 使っていないのですか?
三宅 はい、勝手に事業を始めたので。
守屋 そうなんですか。
回収についても考えながら進められたということですか?
三宅 もちろんそうです。
守屋 コストは細かく算定しなかったけれど、最終的には回収するリスクを背負って始めたということですね?
三宅 回収するまでやるということです。
守屋 回収するまでやりきると。
Cerevo流「施策の回数は基本3回」
守屋 なるほど、岩佐さんはどうですか?
岩佐 どこから答えましょう?
まずシンプルに試作の回数から行きましょうか。
一番シンプルに、試作は基本3回と決めています。失敗したプロジェクトで4回です。
守屋 ウェブサイトを見ると、幅広いジャンルを手がけられていますよね?
それらをどのように進めているのですか?
社員でブレストし、上位にあげられた商品を全て作ってみるとか、アプローチとしてはどのようにされているのですか?
岩佐 ざっくりですが、6割は私のアイディア、2割は社内から上がってくるアイディア、残りの2割は社外から協業で持ち込まれるアイディアです。
守屋 年間、トータルでいくつの異なるジャンルにトライしているのですか?
岩佐 ジャンルという意味ではそこまで多くないですね。
守屋 製品ではどうでしょう?
岩佐 製品としては、毎年13製品作れる体制です。
今95名ほど社員がいますが、7割となる60数名はエンジニアです。5名位で1チームですので、12、13製品位を作っています。
守屋 その人たちの給料を当然ながら払っている訳ですよね。
岩佐 払っていますね。
守屋 もはやベンチャーではないという説も・・・。
岩佐 たまに言われるのですが、まだまだ100名以下ですので。
守屋 なるほど。
岩佐 僕たちは、決め打ちしてしまうことは良いことだと思っています。
ここからここまでの規模感のものしかやらない。
この期間の中で作れるものしかやらない。
NRE(開発費)は、だいたい数千万円中盤くらいです。10ヶ月という期間内に、5人のメンバーの人件費、金型代、認証取得費全て込みで、数千万円中盤くらいでできるものにフォーカスするということです。
Cerevoはどう資金を調達しているのか?
守屋 資金調達をされる時は、どのようなプレゼンをするのですか?
作るものについて、明確なロードマップを提示しながらプレゼンできませんよね?
岩佐 そうですね。
僕たちの、ニッチな商品を複数種取り組み、プロモーション費用を多分にかけるのではなく、競合のいない商品を扱うという作戦は、一つのビジネスモデルになるのではないかと考えています。
1個1個がニッチであることが実は強みで、ニッチを複数同時並行コントロールできている会社は、実はほとんどありません。
その仕組みが弊社の強みだというプレゼンをしていますね。
守屋 「で、何作るの?」といったことを聞かれそうな印象なのですが、そこは人員の魅力度のような所でアピールするのですか?
岩佐 人員というよりは、先程のスキームですね。
何人で製作し、この規模の商品に限定し、グローバルにこれ位の期間で売っていくという仕組みに投資をいただきたいという話をしています。
各商品は99%の人には理解できない商品なので、あなたが欲しいと思わなくて大丈夫ですという話をしていますね(笑)。
守屋 なるほど。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鎌田 さくら
【編集部コメント】
各社のPDCAの回し方が異なっていて面白かったです。個人的には、もっとKAMARQさんのテーマの決め方やPDCAの回し方を聞きたくなりました。(横井)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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