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6.「メルカリ」「CASH」から感じるイノベーションのジレンマ

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「モバイル・プロダクトサービスは今後どう進化するのか?」8回シリーズ(その6)は、リアルな世界でのモビリティについて。移動コストや混雑といった社会課題をどうやって解決するのか。ヤフーから見たメルカリの脅威まで議論が発展します。是非御覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、ジョブカン(株式会社Donuts)様に本セッションをサポート頂きました。

 

 


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 4D
モバイル・プロダクト/サービスは今後どう進化するのか?
Supported by ジョブカン

(スピーカー)
岩田 和宏
JapanTaxi株式会社
取締役CTO

菊池 新
株式会社ナビタイムジャパン
取締役副社長 兼 最高技術責任者

松本 龍祐
株式会社ソウゾウ (登壇当時)
代表取締役社長
※現在は、メルペイ取締役CPO 兼 メルカリ執行役員

村上 臣
ヤフー株式会社 (登壇当時)
執行役員CMO
※現在は、リンクトイン・ジャパン株式会社 日本代表

(モデレーター)
須藤 憲司
株式会社Kaizen Platform
代表取締役

「モバイル・プロダクトサービスは今後どう進化するのか?」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.モバイルビジネス、プロダクトサービス創りに携わる登壇者が徹底議論!

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5.「UBER」の登場で韓国のタクシー業界は1つに。日本は”戦国時代”が続く

本編

須藤 今までの話を総合した時に共通点やモバイルの方向性とは何かという話をしたいと思っていたのですが、結構いろいろな論点がでてきましたね。

村上 しかし結局のところ、リアルのモビリティは全然解決していないということですよね。

モバイルサービス最前線の人が、スマホは大体できてきたけれどもリアルな課題が全然解決できておらず、バーチャルで閉じているということです。

多少メルカリやヤフオクで売れるようになった、というところにつながりはあるのですが。

動くことにはあまり変化、イノベーションがありません。

だからそこはやはり伸びしろとしてあるのではないでしょうか。

須藤 さきほどのバスや自動運転の話ももっと広がったら景色が変わりますよね。

自転車に乗ると景色が変わるのと一緒です。

しかし、それは日本でまだ起きていないですよね。

高速道路の自動運転化でこれだけ変わる

村上 高速道路だけでも自動運転を早くやってほしいですよね。

これには物流にもとても影響があります。トラックは長距離が一番人件費がかかるし負担も大きいところです。

ヤフー株式会社 執行役員CMO(登壇当時) 村上 臣氏

ターミナルまでインターの近くにつくって、そこからローカルの配送は人がやれば良いのですが、高速を走るバスやタクシーは全部自動化してしまえば、24時間バンバン走らせても運送費は下がります。

そこまではタクシープールみたいなものがインターの近くにあって自動運転バスに乗り換えて30分に1本高速がつながっているところを全部走っていますといったらとても良いですよね。

旅行もたくさんいけます。かなり安くできると思いますし。

理論的には車間距離30センチくらいで100キロなどを走れるわけです。

少し怖いですが、トラックの隊列走行やそんな感じでやっていますから。

そうすると大分運賃が安くなります。

ちょっとスキー行こうと行って練馬インターから1,000円で湯沢までで、行ったらいつでも24時間乗れるバスがあれば結構使えますよね。

須藤 それがあれば劇的に景色が変わりますね。

岩田 そこをワンストップで解決できるというか、レンタカーがあって電車、バス、タクシー、自転車があるという世界があります。

結局人は1日でいろいろな移動手段を使うわけです。

マルチモデルと言われているのですが、そこをロスタイムなく結びつけるような仕組みができると、移動はもっと変わるのではないかと思います。

解決すべきモビリティにまつわる社会課題

菊池 繰り返しになりますが、事業者同士のさらなる連携に期待しています。

それから、朝の通勤ラッシュを改善したいと思っています。

須藤 混雑に関しては新サービスがありますね。

菊池 去年(2016年) 始めたのは、首都圏だけなのですが混雑状況を出すというサービスです。

1駅ごとの地道な調査であったり、国土交通省が出している大都市交通センサス等の移動需要データや弊社の経路探索エンジンから、一本一本の乗車人数を計算して、混雑度を見える化することを行っています。

須藤 僕は本当にディズニーランドに行って待つことを避けたいです。

ナビしてくれれば言った通りに行くからそれをやってくれないかと真剣に思います。

村上 逆に言うと道を覚えなくなりますよね。気づけばスマホを持ち、電話番号を覚えなくなりましたね。ガラケーの時からそうですが。

須藤 そう考えると、ユーザーさんが思う動機がありますよね。

株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤 憲司氏

例えば、換金したいと思って「CASH」にばっとユーザーが殺到したことと、不要になったものを売り買いすることは似て非なるものなので、サービスが割れていたりするのだと思います。

あのような動機の根源のようなものを取っているサービスは強いと思います。

例えば、WeChatはコミュニケーションからよくこんなにいろいろな事業がくっつくなという感じです。

松本さんに聞いてみたかったのは、メルカリがやろうとしているCtoCには一般的な消費や一般的な人の動機がありますよね。

それについてはどうやって結びつけて行こうと思ってらっしゃるのでしょうか。

ユーザーの根源的欲求にどう訴えるか

松本 CtoCやシェアリングエコノミーはまだ広がりが不十分で、まだまだ一般の経済や生活の一部でしかありません。

株式会社ソウゾウ 代表取締役社長(登壇当時) 松本 龍祐氏

究極的にはほどんどすべての消費行動がシェアリングエコノミーやCtoCに置き換わると思っています。

フルーツグラノーラのような工場で作られる製品メーカーが作らないといけないのですが、例えば、野菜のようなものについてはCtoCでつなげられるとか。このようにここはスマホ化によって情報の非対称性がいったん大分少なくなったのでCtoCなどが成り立ちました。

この次は先ほどのモビリティや物流などのリアルなところの効率化が進むと、BtoCがCtoCになるとか、我々がやっているようなところに置き換えられるのではないかと思います。

須藤 例えば先ほどのメルカリがシェアサイクル事業を始めることは、JapanTaxiとライバルになる可能性も出てきますよね。移動の側面では。

要は全然違う人たちが全然違うマーケットで戦うというようなことが起きるのではないかと思います。

ヤフオクとメルカリの関係性でいくと、ヤフーのCMOとして村上さんはどうみているのですか。

ヤフーから見た「メルカリ」は小粒?

村上 これについてはメルカリというものがヤフーの中でどう見えているかをお話しした方が良いと思います。

我々には、ヤフーショッピングとヤフオクがあり、GMV(Gross Merchandise Value=総流通総額)を見ています。

その中でメルカリをフリマとして見た場合、全体の総流通取扱高の中ではかなり小さいです。KPIとして取扱高を追っているので、メルカリは確かに使われてユーザーも取っているけれども、商売になっていないというのが当社の見方です。

取扱高が少ないからその辺で遊ばせておけば良いというのが正直な肌感でした。

ECビジネスとした場合はそれは正しいことです。結局、ECのうち9割が新品・残り1割が中古という中で、このうちのさらに小さいフリマ市場ですから我々からするとあまり気にしなくていいというのが当初の見立てでした。

もちろん社内でECをやっている人もそのような見立てをします。

しかし、メルカリがこれを人と人とをマッチングさせたコミュニティだとか、メッセンジャーアプリの亜種だと捉えると全然景色が変わります。

僕みたいに、ヤフーにはないメッセンジャーとかコミュニティの領域を頑張ろうとしていた人にとっては、メルカリは脅威に見えるのです。

人と人をこいつらは繋げている、と。だから、きっとメルカリでフリマが成功したらきっとそのまま横展開していろいろなものをやるに違いありません。

こうやって、「イノベーションのジレンマ」が起きていくのだと思います。

将来的にポータル化戦略が取れてしまうので、ヤフーにとってちょっとまずいのではないか、と僕は思っていました。

須藤 未来図があるのですね。

メルカリ・CASHから感じるイノベーションのジレンマの脅威

村上 僕の見方では見えています。

ただ、ECビジネスの切り口で見ると(メルカリはまだ総流通取扱高の中でほんの小さな存在であるという)見立ては正しいです。

当然何度も議論をするわけですが、やはり大きい会社なりの理由があってどっちも正しいです。どっちの見立てを採用してやるかというのはそのときの経営の方針そのものだと思います。

ヤフーの場合は市場をみて、やばそうであれば物量で蹂躙するというキングダム方式で今まできています。ヤフオクにもフリマモードをつけたりとか、なるべく削る戦いをしています。

これはどちらが良い悪いではなく、そういうものだということです。

ヤフー株式会社 執行役員CMO(登壇当時) 村上 臣氏

須藤 こうやっているときに、CASHがさっと出てくるという。

村上 そうです。CASHが面白いのは換金ニーズというのはそんなに強かったのだということです。

それは多分両社にとって驚きでした。

給料前払いのようなものも出ましたね。フィンテックに話を戻しますが、今の金融システムは昭和になってからずっと変わっていません。

たとえばカードの締めは10日か25日になっていて、給料やボーナスの支給日は決まっています。大体1軍、2軍、3軍に分かれています。

要はつなぎ融資に近いです。

デイリー(日々)のキャッシュフローが生活と合わなくなってきた人が多くなってきたということで、これは社会システム自体の歪みなのだと思います。

給料は25日だけれどそれ以前に使いたい、カードの支払日は10日なのにその時には手持ちが少ない。でもあと10日待ってくれればありますよ、というような話です。

そういったものを気づいた人が解決手段を持ってきて、流行っているというのは面白いです。

とても「変えがい」があります。社会システムをこれから変えていくところだと思います。

歪みがたまっているところです。だから注目しているサービスとして、フィンテックと答えたのは、そこが今の人たちと合わなくなってきている兆候が色々なところで見えてきているからです。

これは規制緩和も含めて、この10年くらいで大きく変わる可能性があると思っています。

須藤 先ほどの、ヤフーから見た時にメルカリは小粒にしか見えなかったという同じような構図で、我々には見えていない社会ニーズがあるという「イノベーションのジレンマ」(※)ですね。

本の中に出てくる典型的なものですね。

▶編集注:ハーバード・ビジネス・スクールの教授、クレイトン・クリステンセンが著書『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』で提唱した理論。業界トップの企業が既存製品の改良に囚われている間に、新規市場のチャンスを見失うことを指す。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝

【編集部コメント】

クレジットカード会社の締め日に、なぜ自分の生活を合わせているのかというのは、思いもよらなかった視点でした。「当然のように受け入れている、実は不便なこと」について、ほかにもあるかどうか考えてみたくなります。(浅郷)

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