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「未来のテクノロジーが実現する新しいビジネスモデルを徹底議論」9回シリーズ(その6)は、ポストスマホ時代に必須のUI/UXの再設計の必要性について議論します。デバイスが変わるときに、対応すべきこととは何か?ぜひご覧ください。
ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、日本マイクロソフト様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 2A
未来のテクノロジーが実現する新しいビジネスモデルを徹底議論
Sponsored by 日本マイクロソフト
(スピーカー)
國光 宏尚
株式会社gumi
代表取締役社長(登壇当時)
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
横山 直人
フェイスブック ジャパン
執行役員 新規事業開拓 兼 パートナーシップ事業(登壇当時)
(モデレーター)
澤 円
日本マイクロソフト株式会社
マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
サイバークライムセンター日本サテライト 責任者(登壇当時)
西脇 資哲
日本マイクロソフト株式会社
コーポレート戦略統括本部 業務執行役員 エバンジェリスト
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最初の記事
1.マイクロソフト・ナデラCEOが掲げる3つの投資領域
1つ前の記事
5.MRデバイスに関する誤った考え方 −「何ができるか」より「何を解決したいか」
本編
西脇 VRが、VRとして単に見るものに留まらず、現実の世界に入り込んできているのです。
これに対して、澤が先ほど申し上げたように「どのように共感を生み出していくか」という段階になってきています。
考え方自体は新しくなく元々あるものながらそれが現実になってきたということを踏まえて、ここからまた議論をしていきたいと思います。
まず、そういったMR(ミックスド・リアリティ)ないしはVR(バーチャル・リアリティ)の取り組みについて、國光さんお願いできますか?
ポストスマホ時代を見越したUI/UX設計
國光 僕たちは、東京とソウル、そしてヘルシンキで(XRビジネスの)インキュベーションをやっていて、あとはアメリカでGPをやっている、VR Fundを通して22社に投資をしています。
今は、東京、LA、ベルリンでハイエンドVRゲームを作っていますし、この領域はしっかりと取り組んでいます。
僕は、AIというのは結局のところ、Amazonのクラウド(※)に近いと思っています。
▶編集注:Amazon社はAWS(Amazon Web Services)と呼ばれるクラウド・ウェブサービス群を提供している。コンピューティング、ストレージ、データベース、分析ツール、AIサービス等の90以上のITリソースを網羅している。(Amazon.comより)
クラウドを使って何をするにしても、クラウドは単なるソリューションですから、課題が何なのかが明確でなくては使いようがありませんし、それはAIも同じだと思っています。
一番分かりやすいのは、PCからスマートフォンに変わった時のUI/UX(※)の転換です。
▶編集注:UI(user interface、ユーザー・インターフェース)とは、ユーザーと機器の間で情報をやり取りするための仕組み。UX(user experience、ユーザー・エクスペリエンス)は、文字通りユーザーがその機器を通じて得られる「体験」を指す。
デバイスが変わると全てのUI/UXが変わるので、スマホというUI/UXの中で新しいサービスをどのように構築していくかが重要でした。
そして今後VR、AR、MRが注目されていくのはもうはっきりしていますので、「ポストスマホ」時代を見越して作っていかねばならないと考えています。
横山 スマートフォンはやはりインターフェースに限界があるので、AR、VR、MRは結局のところ、インターフェースの革命ですよね。
國光 そうですね。
横山 ですから、そこをどう見捉えて新しいアプリ、サービス、ソリューションをスタートアップの人たちが考えていけるかがポイントですよね。
國光 そしてこの次は、視覚とネットが直接つながって、空間全体がディスプレイになっていくという感じですよね。
空間全体がディスプレイになっていく?
國光 実際マイクロソフトの技術も、高価ですがHoloLensでMRを見せるところまで来ていますし、次はAppleのグラスも出てくるでしょうし、Facebookも(同社傘下の)Oculus(オキュラス)はVRから入っているけれど、当然ARへ向けて何かしら攻めてきますよね。
西脇 Oculusの話も聞きたいですよね!
村上 話せる範囲で、ぜひ。
横山 ええ、まぁ、ハードウェアは大変ですからね(笑)。
(壇上笑)
村上 大事なのは先ほどの話のように「何の課題を解決しにいくのか」という話ですよね。
やはりデバイスは、今までもこれからも変わらずデバイスですから。
今までのPCだと、マルチディスプレイが安くなったとはいえディスプレイに縛られていましたが、これからは無限に広がるExcelとかで作業ができるわけですよね。
そうなると本当に便利です。
これまでは画面に限界があったために、広いキャンバスで作業ができなくて、効率が悪かったわけですが、その課題はたぶん解決できますよね。
國光さんの場合も、エンターテインメントの分野で何か新しい可能性を感じているからこそ、VRをしっかりカバーされているのだと思います。
國光 エンターテインメントだと、VRというのは既存のゲームよりもはるかに体験が上ですからね。
けれどもそれ以上に大きいのが、スマートフォンではできなかったことができるようになる可能性です。
スマートフォンでできなかったことは、山ほどありますから。
スマートフォンの次のサービスのUI/UX設計では、やはりリアルタイムであることやIoT(internet of things:モノのインターネット接続)が結構重要になってくるのではないかと思います。
例えば、スマートフォン時代は基本オンデマンドで、自分が何かアプリを立ち上げて初めて、アプリが始まるという感じですよね。
その中で収集できるデータも基本はオプトイン(事前にユーザーへの承諾を得ること)を前提として、FacebookやInstagramではユーザーが能動的にデータを出してきたわけです。
ネット時代においてデータが一番重要なのだとすると、ここがやはり限界だと思います。
オンデマンドは面倒くさいし、承認欲求をベースに上げるコンテンツでは、収集できるデータ量に限界がありますから。
その次のMR時代で重要なのはやはりIoTで、ARグラスやMRグラスをつけている人々が見ている物の全データを取得することができます。
なおかつ、例えば「この人は誰かな」と調べなくても、顔認識で村上さんだと分かりますし、話の内容も音声データを取ってクラウド側に飛ばして、仕事仲間と共有していくということが可能になります。
このように、オンデマンド、そしてオプトインという形のところが、よりリアルタイムに変わってくるというのが、結構重要な点なのではないかなという感じがしています。
村上 昔から僕たちは『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』などのSF映画や物語の中で、いわゆるMRの世界というのをずっと夢想してきたわけですよね。
これがいよいよ現実になるという時に、社会に与えるインパクトというのは極めて大きいと思うんですよ。
なぜなら、現実世界においては、國光さんと僕で見ているものが違うわけでしょう。
ポケモンGO(Pokémon GO)で既に起こっていますが、僕はスマートフォンを見ながら「ジム戦(ジムバトル)」をしている時に、なぜかリアルな世界を見てしまいます。
スマホを見ながら駅前にジムがある!といって顔を上げると、あるわけがないんだけど、そこにジムが建っている気がするわけですよ。
▶編集注:ポケモンGOでは、マップ上に「ジム」と呼ばれる建造物が複数存在し、ポケモン同士を戦わせてジムを奪取しあうことで、チームの領地を広げていく。ポケモンGOはAR(拡張現実)の世界でプレイするため、村上氏のような錯覚が起こる。
こういうのが人それぞれに行った時に、世の中はどうなるんだろうなと考えるのは、すごく面白いなと。
西脇 我々マイクロソフトは(壇上を指して)このヘッドセットを作っているメーカーですが、個人的な、少しだけネガティブな意見を述べさせていただきたいと思います。
デバイス誕生からコンテンツ普及までのスパン
西脇 國光さんがおっしゃったことは極めて正しくて、スマートフォンが登場してから10年経つので、そろそろ次のものが来ると言われています。
でもスマートフォンの中でARを見ると、やはりすごく軽いんですよ。
スマートフォンであれば、ARが手軽に得られて、データの入力も手軽だし、経験も手軽にできるし、スマートフォンそのものも安いわけですね。
持ち運びもしやすいし、充電も簡単です。
ところがこれ(ヘッドセット)は重いんですよ。
これほど重いものが次のデバイスになるわけがないということで、Googleもマイクロソフトも小型化に注力していますが、それでも面倒くさいです。
その面倒くささを超えてでも「これはすごい」と思える要素があったらつけるかもしれませんが、現時点では果たしてそれがあるかどうか、という話です。
DMM.comのビデオコンテンツを見ると分かるのですが、VRばかりなんです……もちろんアダルトな話ですよ。
村上 これはオフレコですか、オンレコですか?(笑)
國光 オンレコで大丈夫です(笑)。
西脇 なぜそういうことを言うかというと、(VRがアダルトで普及するのは)そうまでしても欲しいコンテンツだからです。
そのようなコンテンツが他にあるのか、というのが疑問なんです。
村上 でもそれは、メディアの歴史がこれまで繰り返してきたことではないでしょうか?
西脇 そうそう、やはりそこですよね。
村上 VHS、DVD、Blu-rayというように、ずっとそうでしたよ。
國光 安く小さくなるのは必然で、スマートフォンもずっと安く小さくなってきています。
村上 最初のMotorola製の携帯電話とか皆、肩にかけていましたよね。
西脇 ある程度技術が進化して、簡単に装着できるようになったり、簡単に網膜に映るようになったら、どんなコンテンツでもいけるだろうと。
國光 普通に考えて、iPhoneが出たのが2007年で、(人気ゲームアプリの)アングリーバードが出たのが2010年、パズドラが2012年です。
西脇 そのぐらいのスパンですよね。
國光 その前のBlackBerry(2000年代初頭に急速に普及した、QWERTY配列キーボードを搭載した多機能携帯電話)の時代からスタートすると、一体どれほどの進化を遂げてきたかと。
当然、ハードは安くなり、性能も良くなり、軽くなり、コンテンツを作る側やサービスを作る側は、そのハードならではの体験の提供を追求しました。
やはり、その体験の提供が重要だなと思う例がメルカリです。
新たなデバイスにあわせてUI/UXを再定義する
國光 メルカリがヤフオクに勝てたのは、やはり“スマホファースト”を意識してUI/UXを再定義したからだと思っています。
重要なのは、UIとUXというのは別で、タッチパネルの操作の快適さというUIの部分に加え、メルカリが優れていたのは、UXの部分でオークションなのにオークションを廃止したことです。
村上 そう、だから売買が成立するまでに要する時間が圧倒的に早いんですよね。
西脇 オークションらしくないんですよね。
村上 2秒で売れる、みたいなところだよね。これがUXだと思う。
國光 そう、だからPC時代であればヤフオクのようにオークションで一晩、二晩と待つことができたけれど、スマホ時代になってくるとやはり待てないんですよね。
なので、やはり即売りが重要になってきたという感じです。
村上 そこは、待てないというよりか、少し説明口調になるけれども、ニーズが変わったのだと考えています。
オークションというのは、「なるべく高く売るゲーム」ですよね。
それに対して、人々が値段よりも「早い」ことに価値を見出すようになったという、生活の変化だと思うんですよ。
西脇 売りたいものは、高く売りたいというよりも、早く手放したいですよね。
村上 棚に服がいっぱいで、今ここが空くんだったら、別に100円、200円安くても、どんどん持っていけと。
だからフリマ(アプリ)なんですけど、オークションの方は1円でも高く売りたいという人が多いわけですよ。
このニーズの逆転が起こったのは、スマートフォンによるリアルタイムで、カジュアルなコミュニケーションというのが、恐らくベースラインにあるのだろうなと思います。
國光 なので、次にMR時代がやってくると、よりリアルタイムで、よりビジュアル化された形で多くの人たちにコンテンツを届けられるようになってくるはずです。
LINE(無料通話・メールアプリ)が普及する前も、Skypeであったりメールによるコミュニケーションがあったけれども、LINEはスマホに最適化したUI/UXを構築したから、ここまで普及したわけです。
更にMR時代になってくると、当然そのUI/UXというのは全部変わってくるはずなので、デバイスの変化も必然ですよね。
2007年にスマホが出てからはスタートアップにとっては黄金時代だったというか、PCに元々あったサービスをスマホファースト、スマホオンリーということで、UI/UXを再構築すれば大きなビジネスを構築できたというような側面がありました。
村上 そうそう。
國光 ここでまた再びデバイスが変わってくるので、もう1度、大きなガラガラポンが起こるだろうと思います。
村上 そこで面白いのが、今ボイスUI(音声インターフェース)が、スマートスピーカーの登場とともに、すごく盛り上がっているということです。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
「このサイト、スマホに最適化されてないなぁ」と思うウェブサービスに出会うことがしばしばです。これが今後は「VRデバイスに最適化されてないな」みたいになるのでしょうか。コンテンツ作りのノウハウも今後どんどん変わってくるのかなと思うと、表現に携わる身としてはとてもワクワクします。(尾形)
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