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「ベンチャーキャピタリストが注目する次のビッグウェーブとは?」5回シリーズ(その2)は、東南アジア・インド・日本で投資を手掛けるBEENEXTの投資ターゲットについて。新興国での投資では、①マーケットプレイス×決済 ②問題解決型ビジネス ③データ蓄積型モデルの3つの要素を重視していると語っています。その根拠とは?ぜひご覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット FUKUOKA 2018のシルバー・スポンサーとして、for Startups, Inc.様に本セッションをサポート頂きました。
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2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 10B
ベンチャーキャピタリストが注目する次のビッグウェーブとは?
Supported by for Startups, Inc.
(スピーカー)
蛯原 健
リブライトパートナーズ 株式会社
代表パートナー
佐藤 輝英
BEENEXT
Founder & Managing Partner
高宮 慎一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー/Chief Strategy Officer
本間 真彦
インキュベイトファンド
代表パートナー
(モデレーター)
嶺井 政人
株式会社マイネット
取締役 副社長
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1つ前の記事
1. 新しいテクノロジーと既存業界のITによる効率化という2分野に投資する(インキュベイトファンド 本間)
本編
嶺井 今回は「ベンチャーキャピタリストが注目する次のビッグウェーブとは?」というテーマについて、著名なベンチャーキャピタリストの皆さんと探っていきます。
今回、各登壇者にショートプレゼンテーションを頂き、それに沿ってインタラクティブにディスカッションをするスタイルで進めてまいります。
インキュベイトファンドの本間さんに続き、佐藤さん、プレゼンをお願いします。
インドではマクロの掛け算が起こっている
佐藤 輝英氏(以下、佐藤) BEENEXTの佐藤と申します。
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佐藤 輝英
BEENEXT
Founder & Managing Partner
慶應義塾大学総合政策学部卒業。在学中からソフトバンク社にて、米国EC決済のサイバーキャッシュ社(現ベリトランス社)日本法人立上げに参画。2000年から2014年BEENOS(旧ネットプライスドットコム)代表。2004年同社を東証マザーズ上場へと導く。自身の経験を元に次世代の起業家たちをサポートするべく、2011年スタートアップ支援プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ社、カカクコム社と共同で立上げ。2015年シンガポールを拠点とするベンチャーキャピタルBEENEXT設立。インド、東南アジアなど主に新興国のスタートアップ120社以上の投資実績を持つ。その国独自の課題解決に寄与すべく、「起業家の起業家による起業家のためのパートナーシップ」を旗印にグローバルな起業家ネットワークを構築中。2008年世界経済フォーラムよりこの年のヤンググローバルリーダーに選出される。
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20年前にソフトバンクにご縁を頂き、オンライン決済の会社ベリトランスの事業立ち上げを経験しました。
その後サイバーエージェントの藤田晋さんに出会い、Eコマースのネットプライスドットコム(現BEENOS)で社長として立ち上げ、15年ほど経営をしていました。
7年前、「中国の次に伸びるのはインドだろう」ということでインドに渡り、インドがとても好きになってしまいました。
嶺井 どういうところを好きになったのですか?
佐藤 インドは、爆発的な人口に起因するマクロの伸びが掛け算で起こっています。
GDPが伸び、出生率が上がり、人口は増え、ミドルクラスも増え…とそれらが掛け算となって大きな伸長を実現しているわけです。
例えば私が現在投資をしている企業でも、月次のグラフの伸びが…気持ちいいのです(笑)。
2014年にBEENOSを信頼できる仲間に渡した上で、2015年、シンガポールを拠点にしたBEENEXTというベンチャーキャピタルを立ち上げました。
2017年は118回も飛行機に乗ったほど、「足で稼ぐ」ことを実行しています(笑)。
これまでに120社以上に投資をし、東南アジアでは約30社以上、インドでは47社に50億円以上を投資してきました。
そして、投資先の仲間たちを集めてグローバルキャンプを1年に1回行っており、これがその時に撮った自慢の写真です。
起業家には悩みやシェアしたいことがたくさんありますから、 共通の価値観を持っていて信頼できる、国を超えた仲間たちのいるコミュニティ作りを行っているわけです。
これらが、現在の投資先です。
メインは東南アジアとインドで、アメリカと日本はパートナーの前田ヒロが担当しています。
嶺井 管理はどうされているのでしょうか?
佐藤 「月次でモニターをしています」と言いたいところですが、実際は全てはできないです。
ただ、まだアーリーステージの企業が多いので、伸び始めてきた段階や降り始めた段階できっちりサポートをすることを考えています。
僕は普段はシンガポールにいますが、月に1回インドに行くので、その際に各企業とディスカッションをします。
日本人としてインドで投資する強み
嶺井 本間さんがさきほど、「海外の市場は各GP(ジェネラルパートナー)に任せ、日本では自身が案件を探している」と仰っていましたが、佐藤さんの場合はどうですか?
佐藤 自分で見つけてきて、自分で投資をしています。
ここまで多くの企業に投資をしていると、日々、10件程度の案件情報が入るのです。
嶺井 きっと現在の投資先からの紹介もありますよね。
佐藤 ですからインドについては、年間3,000件ほどの案件が目の前を通って行くのです。
その他、カンファレンスに行ったり、現地にあるベンチャーキャピタルと情報交換をしたりしていますね。
インドで活躍するアメリカ系のベンチャーキャピタルも多く、例えばSequoia Capital (セコイア・キャピタル)とは、10社以上共同投資を行ってきました。
日本出身の良さは出してはいきますが、あくまでもアウトサイダーなので現地のVCと共同で投資することを良しとしています。
毎回必ずきちんとオフィスに行って起業家の人となりを把握した上で、マッチングをするようにしています。
ですから去年、118回も飛ぶ必要があったわけです(笑)。
嶺井 インド投資は競争が激しいと思うのですが、インドのベンチャーから見た時、日本のキャピタリストや日本の資金を入れるインセンティブはあるのでしょうか?
佐藤 2017年のインドのVC投資額は13.5B米ドル、つまり1兆4000億円でした。
この数字は2016年比で3倍です。
そのうちの4000億円ほどはソフトバンクが出資したものです(笑)。
シードステージや事業立ち上げフェーズでの投資は、その起業家を信じられるか信じられないか、つまりリスクをとれるかとれないかなので、そこで動くお金に特に色はないと思います。
起業をしていた身からすると、「自分が語ることを信じてくれる」という姿勢が一番貴重でした。
ですから、日本のキャピタリストであるかどうかは問題ではないです。
もう一つ言うと、インドでは中国のキャピタリストやプライベートエクイティファンドを巻き込む瞬間が必ずあります。
そのタイミングの前に、キャップテーブル(資本政策表)の作り方や意思の伝え方などをサポートします。
ローカル度でいえばインドキャピタルには勝てないですし、投資規模でいえば中国キャピタルには勝てないですから、「間に入って調整をする役」をすることが多いです。
もしかしたら、それが日本人としての強みなのかもしれませんね。
嶺井 なるほど。
新興国投資テーマ①マーケットプレイス×決済
佐藤 テーマは、「マクロ×起業家」です。
その中で重視しているテーマが、こちらです。
新興国においては、King & Queen(後述)・社会問題を解決しながら利益を出すモデル・データの活用です。
日本では、B2BとSAAS・マーケットプレイス型モデル・20代の発想や感性を大事にしていますね。
Amazonが1994年に、eBayが1995年に、楽天が1997年にできて、今はメルカリなどもあります。
結果的に長く続いているビジネスモデルは、マーケットプレイスだと思うのです。
同様に、決済もデータの蓄積などが功を奏し、長く続いています。
そこで僕は、マーケットプレイスと決済をKing & Queenと名付けました。
例えばeBayとPayPalのようにKingとQueenが結婚し、離婚し、その後はQueenの方が強くなるという事例もあります。
それは、決済側にデータが貯まるからです。
嶺井 このEコマースと決済はどちらも、佐藤さんが挑戦されてきた分野ですよね?
佐藤 そうですね。ですから業界知識はありますし、当時「楽天はやはり強いなあ…」と悔しい思いをした記憶もあります。
それと同時に、やはりこの2つが長期で続く強いビジネスモデルだということは歴史が証明してきたと思っています。
これから少なくとも10年、人口が伸び続けるマーケットにタイミングよく参入し、起業家と共に大きな波に乗っていくというのが、このKing & Queen戦略です。
新興国投資テーマ②問題解決型ビジネス
佐藤 問題解決型ビジネスは、医療や農業の分野で、マーケットプレイスやSaaSなど様々な形態をとって展開しています。
携帯電話キャリアのデータを活用したクレジットスコアビジネスや、インドのブルーカラーワーカーが仕事を見つけるためのプラットフォームWorkIndiaなどです。
また、インドではカウントされているだけでも8,000万人ほどの糖尿病患者がいて、国が補助金を出したりしています。
この課題を、テクノロジーの力で解決していくビジネスにも投資をしています。
日本では、ICCサミットでもお世話になっているSmartHRやPOLなどのB2BのSaaS領域のマーケットプレイスに投資をしています。
▶参照:
・複雑な労務手続きを簡単にするクラウド労務ソフト「SmartHR」(ICC FUKUOKA 2017)
・POLは、理系学生データベース「LabBase」からLabTech市場を開拓する(ICC KYOTO 2018)
新興国投資テーマ③データ蓄積型モデル
共通項としては、決済などの「データが蓄積される」ということですね。
投資事例をご紹介します。
去年投資したのが、Stellapps(ステラップス)という会社です。
22個のセンサーを、牛の個体・搾乳機・コレクションセンター・クーリングセンターに設置し、管理するサービスを提供しています。
この会社のクライアントは現地の大手の生乳メーカーで、この仕組みは100万戸の農家に導入されています。
インドには、7,000万戸の生乳農家が存在します。
少なくとも10%のマーケットシェア、つまり700万戸は獲れると思っています。
そうすると、ビジネス規模は今の7倍になります。
1農家あたり2~4頭の牛を所有しているので、現段階でも200~300万頭の牛をモニターしています。
それによって膨大なデータが生まれ、そのデータによって、貧しかった農家の方々がお金を借りられるようになります。
嶺井 生乳業の生産性が上がっていくということですか?
佐藤 生産性が上がるのみならず、データが蓄積されるので金融サービスや保険サービスが生まれます。
こちらはインドネシアの、P2Pレンディング(個人間融資)のプラットフォームの事例です。
インドネシアには6,800万人の個人事業主がいます。
彼らは携帯電話を持っていますが、銀行口座を持っていません。
病気の際や子供の教育費などに充てるべき200ドル、300ドルを持っていないのです。
銀行は融資をしてくれないですし、街の金融業に行くと年利300%という条件でしか借りられません。
このプラットフォームでは、女性の起業家だけに貸付をします。
現在、80,000人に貸付をしていますが、貸し倒れ率は0.3%です。
嶺井 すごいですね。
佐藤 ただ、金利は50%です。
嶺井 それもすごいですね…そんなに取るのですか?
佐藤 他から借りると200、300%の金利がつきますし、銀行では借りられないからです。
先ほどもお話ししたように、6,800万人の個人事業主がいることを考えると、このビジネスの規模は100から1,000倍になると予想されます。
ですから、問題解決型で伸びしろがあるビジネスを選んでいますね。
嶺井 このビジネスでもデータを蓄積しているのですか?
佐藤 借り手のデータですね。
そのデータを活用して、教育ローンや保険などのサービスを提供したいと思っています。
嶺井 なるほど。ありがとうございます。
佐藤さん、皆さんから聞きたいことはありますか?
佐藤 今回、ICCへの参加が初めてですが、日本でも色々なことが起きているなと思います。
若い人たちの創るサービスや、日本の「今」を知りたいですね。
特に、高宮さんから!
(続)
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続きは 3. 次のビッグウェーブは「テクノロジーの進化」と「社会変革」の2軸で見る(リブライトP 蛯原)をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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