ファンイベントで大赤字? 大手にはできない、短期的な経済合理性を越えた「弱者のブランド戦略」 | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4. ファンイベントで大赤字? 大手にはできない、短期的な経済合理性を越えた「弱者のブランド戦略」

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「愛され続けるブランドを創る」5回シリーズ(その4)は、ヤッホーブルーイングのファンイベントの費用対効果を井手さんが語ります。開催を重ねるごとに膨らむ赤字。それでも「僕らのイベントは、僕らにしかできないのです」と井手さんは胸を張ります。その真意とは? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2018 第二回プレイベント・スポンサーとして、株式会社ガイアックス様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年8月22日開催
ICCサミット KYOTO 2018
第2回プレイベント
愛され続けるブランドを創る
Supported by 株式会社ガイアックス

(スピーカー)

青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

山口 義宏
インサイトフォース株式会社
代表取締役

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「愛され続けるブランドを創る」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. ブランド戦略コンサルタント・山口義宏氏が解説「ブランディングの定義とは?」

1つ前の記事
3. 日清カップヌードル、無印良品などのブランド戦略から何を学ぶか?

本編

小林 ちょうど時間が半分ほど過ぎたのですが、ここまでの議論を面白いと思われた方はどれくらいいらっしゃいますか?

(挙手多数)

ありがとうございます!

前の方に座っている菅原さん、一言感想をいただけますか?

守りのブランディングに徹するディズニー

菅原 健一氏 僕は20代の頃、携帯ビジネスを行っていたのですが、ディズニーをずっと担当していました。


菅原 健一
株式会社 Moonshot
代表取締役

これまでのBtoC、BtoB、大企業、スタートアップ、女性向け、男性向け、サービス、メーカーなど、あらゆる企業のコンサル、アドバイザーの経験を活かし企業の10倍成長を支援するアドバイザー業として2018/7/1にムーンショットを創業。2016年6月スマートニュース入社。 月間600万人を超える利用者、1人あたり毎日12分以上も利用されているSmartNewsの中でブランド広告責任者(Head of Brand Advertising)を務める。スケールアウト社(現Supership社)にてデジタル広告プラットフォームのサービス開発とマーケティングを担当。株式会社medibaによるスケールアウト社買収に伴いmedibaのCMOに就任、広告事業およびマーケティング施策を牽引。執筆:『THE AD TECHNOLOGY』(ザ・アドテクノロジー)。
Note -> http://moonsh.jp
Twitter -> @xxkenai

ディズニーは、完全に「守り」なのです。

つまり、コンテンツを売っているのではなく、「お客様の期待を預かっているのだから、それを裏切ってはいけない」ということです。

裏切ってしまうと、二度とお客様は戻ってこないということを強烈に叩き込まれました。

僕は色々な変化を起こしつつ進めたかったのですが、それがなかなかできませんでした。

ビジネスは伸びていましたが、ブランドを変化させ続けるのは難しいと感じていたことを思い出しながら、議論を聞いていました。

小林 非常に良いポイントだと思います。

例えば、よなよなエールは守りに入っていないイメージがありますよね。

井手 守りに入ってないですね(笑)。

株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手 直行 氏

正直に言うと、どうすれば「愛され続けるブランド」であり続けられるのだろうかと常に自問自答しながら、挑戦しながら、模索している最中です。

もっと言えば、よなよなエールは、基本的に、味もデザインもプロモーションも、大きく変えてはいませんが、少しずつアレンジしています。

ですから、創業時に星野が作った時よりも、進化してきていると思います。

僕らは小さな会社です。

僕は雇われ社長ですが、オーナーの言うことを聞きません(笑)。

そして、山口さんのような参謀がついているわけではありません。

小さな会社にできることは、「製品を自分の感覚に近いものにし、それに全力を注ぐこと」ですね。

ブランドが感覚とずれてきた場合には軌道修正しつつ、今に至っています。

守りに入るのではなく、いい意味で期待を裏切りながら、ブランド価値を進化させていくのだろうなと思います。

「魂ドリブン」と「ビジネスドリブン」のブランディング

山口 今日はスタートアップ企業の方が多いと思います。

つまり、規模があまり大きくなく、ビジョンドリブンで、オーナー的存在の方がいらっしゃる。

その場合、そのオーナー的存在が実現するビジョンが、ブランドに転化されていくのだと思います。

しかしブランドによって、やり方も違います。

青木さんと井手さんはオーナー的裁量を持っていますから、自身のビジョンやメッセージ、魂を表現
する方法がブランディングとしてやりやすいと思います。

そして、お二人には「期待を超えたい」という欲求があり、それが発露し、共感されているというプロセスを取っていると思います。

インサイトフォース株式会社 代表取締役 山口 義宏 氏

僕はこれを、「ビジョンドリブン」とか「魂ドリブン」のブランディングと呼んでます。

一方、ビジネスドリブンのケースもあります。

これは、「ブランドとはビジョンの発露ではなく、ビジネスパフォーマンスを高めるツールである」という発想に基づくものです。

また、会社が大きくなったり複数の事業や商品のブランドが出てきた場合には、「プロダクトブランド」と「コーポレートブランド」というふうに分かれることになります。

例えばP&Gのように、全く別のターゲットに別のメッセージを発するブランドを複数持つようになると、魂の話をしていられなくなるのです。

今日たまたま会場に僕の同級生でもあるブイキューブの間下直晃さんがいらっしゃいますが、彼は、強烈なビジョンや魂を発露させたり、経済合理性のないことを行ったりするタイプではないと思います。

間下さん、投資に対するリターン、気になりますよね(笑)?

(間下氏、頷く)

ですから、「ビジネスドリブンのブランディング」というのが、もう一つの流派である気がしています。

例えば、「スマートニュース」と「グノシー」はよく比較されますよね。

今日、(元スマートニュースの)菅原さんがいらっしゃいますが(笑)。

僕はどちらのCFOともたまたま面識があり、ときどきお話をさせていただくのですが、会って感じる印象が全然違うのです。

スマートニュースは、ミッションとビジョンに準じたいというビジョンドリブンの要素を強く感じる一方、グノシーはビジネスを伸ばすためにブランドがあると考えるビジネスドリブンな組織文化だと感じます。

つまり何が言いたいかと言うと、ビジネスドリブンの方はビジネスドリブンのアプローチをすればいいと思うということです。

「ブランド力が上がればビジネスにおいてどんな良いことがあるのか?」という質問は、間下さんのようなタイプから挙がると思います。

ブランド力が上がれば、顧客獲得コストが下がり、コンバージョンとLTV(顧客生涯価値)が上がります。

つまり、投資回収の算段は、これらの数字を見込むことで予測し、経営をすることができます。

魂の発露なのか、ビジネスドリブンなのか、どちらのタイプなのかを自問自答して適切なマネジメント方法を取らなければ、組織として危うくなるのではないかと思います。

ですから、今日のお二方の話を聞いて、「うちにはできないな」と思っている方がいれば、ビジネスドリブンな方法もあるということをお伝えしたいですね。

大手にはできない、短期的な経済合理性を越えた「弱者の戦略」

井手 費用対効果の話については、一つ面白い事例があります。

我々はよくファンイベントを行うのですが、8年ほど前に一番最初のイベントは、40名ほどを集めて恵比寿で行いました。

結果的に数万円の赤字でしたが、それがあまりにも盛り上がったため、どんどん拡大し、3年くらい前から、軽井沢のキャンプ場を貸し切って、1,000人規模の1泊2日のイベントを始めました。

これは、数百万円の赤字を出すイベントです。

140人しかいない会社にとって、1日で数百万円の赤字というのは、大きな痛手です。

このイベントの費用対効果は計測できないですし、いつ回収できるかも分かりません。

お友達の参加も可能なので、「イベント後に本当によなよなエール買ってくれるの?」という方まで来ますから(笑)。

(会場笑)

しかしアンケートを取ると、7段階評価で上位2つの「非常に満足」「満足」が90%以上を占めるイベントですから、きっとファンになってくれるに違いないと思っています。

去年の1,000人のイベントは、15分でチケットが完売しました。

それに対して「チケットが買えない」というクレームが大量に来たので、半年前、神宮球場を貸し切って4,000人のイベントを行いました。

規模が4倍になるから、赤字も4倍になるかなと思いきや、赤字の桁が1つ増えてしまいまして。

「数千万円の赤字です!」と運営チームが一週間前に言ってきて、「それならもっと早く言えよ!」と思ったのですが(笑)。

それに懲りずに、今年の10月のイベントは、お台場でさらに1,000人増やした5,000人規模で行います。

これは更に大きい赤字になり、費用対効果を考えると、継続できません!

▶編集注:ICCスタッフ一同で参加してまいりました! “よなよなエールの超宴”でブランディングの真髄を体験!井手さん、運営スタッフみんなで乾杯してきました【活動レポート】

それにもかかわらず、なぜ行っているかと言うと、売上が右肩上がりで急成長しているからです。

我々は売上は非公開ですが、ビールの会社でここまでの成長を示している会社は他にはないと思います。

大した広告もせず、こういった活動ばかりをしていますが、小さい規模で実施していた時から感覚をつかんでいるからこそできる大胆な技です。

たった1日で企業規模に対して大きな赤字が出るイベントなんて、通常は絶対に許可できないですよね。

ですが、お客様が「非常に満足」してくれるのです。

これこそが我々にとっての価値で、結果は後からついてくると思っています。

なかなか真似はしにくい事例だと思いますが(笑)。

データやロジックで説明できない意思決定に勝機がある

青木 我々もそれに近い考え方をしますが、これは弱者の戦略ですよね。

つまり、リソースが大量にあれば「合理性に基づいた意思決定」をします。

しかしその場合は体力勝負にならざるを得ない。

ですから僕らには、「現在のデータやロジックだけで説明しきることのできない意思決定」にのみ、勝機があるわけです。

説明しきれるところで勝負をしても、リソースがないので勝負にもならないのです。

それは、AIと計算競争をするようなものです。

小林 何でもそうかもしれませんが、見えるものは真似されますよね。

井手 まさに弱者の戦略だと思います。

「ブランドとは、識別可能なものだ」と僕は理解しています。

大手ビールメーカーはローコストで美味しいビールを製造していますが、味などが差別化しにくかったり、ブランドスイッチをされやすかったりします。

小さく産んで大きく育てていけば、その大きな成果だけを見ても絶対に真似できないと思います。

僕らはほぼ独力で5,000人規模のイベントを実施しますが、他社大手メーカーから、「よなよなエールのイベントをコピーして実施したい」と依頼される大手広告代理店の話を聞きます。

でも、彼らにはできないのです。

なぜなら、全て手作りのイベントで、僕らの「お客様に喜んでもらいたい」という思いを結集させた、エッジの効いたイベントだからです。

ですから、代理店に頼んだところで、無難な企画しか出ません。

僕らのイベントは、僕らにしかできないのです。

模倣が困難なものを常に考えて、ブランドには取り組んでいますね。

小林 なるほど!ICCサミットも、真似されないように頑張ります。

我々も色々イベントを行っていますが、「ここまで狂ったことなら、真似されないだろう」と思いながらやってます。

(続)

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続きは 5.「苦しい・難しいではなく、楽しみながら皆でチャレンジ」愛され続けるブランド創りの組織文化を考える【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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